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差押えの仕組みと手続きを徹底解説!差押可能な財産や必要費用も紹介

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ドラマで「お金を払ってもらえない!裁判だ!」と息巻くシーンを見たことがありませんか。
その影響で、裁判をすればお金を受け取れると思っている人が多いかもしれません。
しかし、裁判は原告にお金を受け取る権利があるかを公的に明らかにする手続きであって、強制的にお金を支払わせる手続きではありません。判決が下されても被告(裁判をされた方)が支払わなければ、お金を受け取ることはできないのです。
今回は強制的にお金を支払わせる手続きの“準備段階”にある「差押え」を解説しましょう。

差押えの仕組み

差押えとは、

金銭債権を強制執行できるようにするため、債務者が財産譲渡などの事実上または法律上の処分をすることを禁じる目的で行われる手続き

引用:三省堂編修所 (編集)『デイリー法学用語辞典』三省堂 236頁

のことです。

強制執行の対象となるのは、お金を支払う義務のある人(債務者)の財産に限られます。

そのため、名義を変えられてしまわないように処分を禁じるのです。

たとえば、次のような状況が差押えにあたります。

  • 住宅ローンを返せないなら別の人に売ってお金をもらうから名義変更しないで!
  • その有名画家の絵画をお金に換えて借金の返済に充てるから売却しないで!

一般的に差押えというと、財産を強制的に奪うことまで含むイメージかもしれません。
しかし、財産を奪う手続きは「強制執行」にあたり、「差押え」はあくまでも処分を禁じる手続きです。

私たちは、自由に自分たちのものを処分することができます。
たとえば、乗らなくなった自動車があれば維持費を考えて売却や廃車手続きを行うでしょう。
しかし、差押えをされてしまうと、自由に処分することができません。
このように差押えは重要な制約にあたるため、きちんと手続きを踏む必要があります。そこで必要となるのが「債務名義(さいむめいぎ)」です。

債務名義とは、

法律上執行力を認められている公の文書であり、強制執行によって実現されるべき請求権の存在・範囲を表示する文書

引用:三省堂編修所 (編集)『デイリー法学用語辞典』三省堂 233頁

のことです。
簡単に言うと、債務名義とは、強制執行できる範囲を明確に示した公的な文書です。

AさんがBさんにお金を100万円貸したと主張しているとしましょう。
一方、Bさんは50万円しかお金を借りていないと反論しているとします。
差押えが認められるためには、どちらの言い分が正しいのかを明確にする必要があります。

その役割を担うのが債務名義です(民事執行法22条)。実務においてよく用いられる債務名義は次の4つです。

  • 確定判決……確定した裁判所の判断
  • 仮執行宣言付判決……直ちに執行できることを許した裁判所の判断(未確定でもOK)
  • 和解調書……裁判所が和解の内容をまとめた書面
  • 執行証書……一定の条件を満たす公正証書

債権者が差押えをするメリット・デメリット

自分で差押えをするならともかく、弁護士に差押えを依頼すると費用がかかります。
そのため、メリット・デメリットを比較して、差押えするかを決めたいところです。

(1)メリット

差押えが功を奏するのは、支払おうと思えば支払える財産があるのに支払わない人です。
そのような人々の中には、なんとかしてお金を支払うことから逃れようとする人がいます。
極端な話をいえば、家にある宝石や自動車など高価なものをすべて売却して、一夜で使うかもしれません(悪質なケースでは、強制執行妨害目的財産損壊等罪や強制執行行為妨害等罪などが成立します)。
差押えの最大のメリットは、相手方の処分を防ぎ確実に強制執行できることです。

また、「差押えをする」と伝えれば、相手にお金を払うようにプレッシャーを与えられます。給料を差し押さえられて会社に借金などが発覚するよりは支払ったほうが良いと考えるのが一般的でしょう。給料の差押え後、一括弁済を申し出てくるケースもあります。

(2)デメリット

逆に、差押えをしてもあまり意味がないのは、無職でお金もない人です。
「ない袖は振れない」との言葉があるように、存在しないお金は回収のしようがありません。
差押えをするには裁判所の費用や弁護士費用がかかるため、費用倒れになってしまいます。

もう1つ厄介なのが破産手続きの開始が決定されると、差押えが効力を失うことです。
支払不能かどうかなど自己破産が認められる状況かは客観的に判断されますが、実際に多額の借金を抱えている場合には差押えをしても回収が難しいことがあります。

相手方が財産を持っているかどうか不安な場合には、とりあえず財産開示手続の申立てをしてみるのも1つの手です。よくわからない場合には、弁護士に相談してみてください。

差押可能な財産

差押え可能な財産をご紹介します。

(1)不動産(土地・建物など)

土地や建物など不動産は財産的な価値も高く、差押えの対象となります。もっとも、土地や建物に抵当権が設定されている場合には、抵当権者が優先的に弁済を受けるので、土地や建物の価値によってはお金の回収を図れない可能性があります。
複数人で土地や建物を共有している場合には、共有部分に限り差し押さえられます。

(2)動産

生活に必要な家電や家具を除き、現金や骨とう品、貴金属など動産は差押えの対象です(ただし、66万円未満の現金は差押え禁止です)。
民事執行法122条1項では、具体的に次のものが差押え可能な動産として挙げられています。

  • 民法上の動産(土地及びその定着物以外のもの)
  • 石灯篭や立木など登記することができない土地の定着物
  • 1ヶ月以内に収穫することが確実である農作物
  • 裏書の禁止されていない有価証券(株券、手形、小切手など)

民法で動産とされるものよりも差押えの対象となる動産のほうが広いといえます。

(3)自動車

債務者の生活に必要不可欠な場合を除き、自動車も差押えの対象です。
民法上、自動車は動産に当たりますが、差押え手続きは通常の動産執行とは異なります。そのほか船舶や建築機械も、通常の動産執行とは異なる手続きが用意されています。

(4)債権

債務者が第三者(第三債務者)に対して有する債権は、差押えの対象です。

たとえば、給与債権、預金債権、賃金債権、売掛金債権などが挙げられます。

債権には、診療を受ける権利、イラストを描いてもらう権利のように金銭評価できないものもありますが、これらは差押えの対象外です。

(5)銀行預金

銀行に預金がある場合、預金の分だけ銀行に対して払戻しを請求する権利(債権)を持っていることになります。
そのため、銀行預金は債権執行の対象となります。
普通預金だけでなく、定期預金や当座預金も差押えの対象です。
銀行預金を差し押さえると、銀行は預金者にお金を払い戻すことができなくなります。

(6)給料

差押えの時点で存在しなくても、近い将来確実に発生する場合には、その債権も差押えの対象です。そのため、その会社を退職していない限り給料日に給料債権が発生するのが確実なので、給料日の前に給料債権を差し押さえることができるというわけです。

給料の差押えといっても、給料全額を差し押さえられるわけではありません。
給料全額を差し押さえられると、債務者が生活できなくなってしまいます。
法律上、税金等を差し引いた手取り給料の4分の1までは、債権者が差し押さえられることになっています(手取りが44万円を超えるときは,手取り額から33万円を差し引いた額)。

たとえば手取り給料が24万円であれば、会社は、その4分の1である6万円を毎月債権者に渡さなければなりません。その債権者が200万円を回収できるとすれば、きちんと完済しない限り、約3年(34ヶ月)は給料が差し押さえられたままです(債務者が申し立てた差押え禁止の範囲変更が認められた場合を除く)。また、ボーナスも差押えの対象になります。

差押不可能な財産

お金を払う義務があるのにお金を払わないからといって、最低限の生活まで奪う権利は誰にもありません。そのため、法律上差押え不可能な財産がいくつか明記されています。
もし外見上明らかに差押禁止である財産を差し押さえたら、差押えは無効となります。

(1)動産

民事執行法131条では、差押え禁止である動産が挙げられています。代表的なものは次の6つです。

  • 債務者等の生活に欠かせない衣服、寝具、台所用具、畳、建具、1ヶ月分の食料
  • 66万円未満の現金
  • 仏像、位牌等の礼拝、祭祀に供するため欠くことができないもの
  • 債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物
  • 犬や猫などペット
  • 日記やアルバム

自宅を対象に動産執行が行われても、あらゆる財産を持っていかれるわけではありません。

(2)債権

金銭的な評価が可能なものでも、債務者が行使することに意味がある債権は差押えの対象になりません。たとえば(元)夫婦間や親子間にある扶養請求権は、生活費を受け取るという意味で金銭評価ができるものの、債務者が行使することに意味があるため、対象外です。

給料や賞与、退職金に関する債権の4分の3に該当する部分は差押えが禁止されています(民事執行法152条)。退職金であっても、次のものは全額差し押さえることができません。

  • 確定給付企業年金
  • 確定拠出年金
  • 社会福祉施設職員等退職手当共済法に基づく退職金
  • 中小企業退職金共済法に基づく退職金

また、国民年金、厚生年金、健康保険、生活保護給付金のように社会保障のために受給する権利は差押えの対象外とされています。

差押えの手続きと必要な費用

不動産、動産、債権のそれぞれについて、差押えの手続きと必要な資料・費用を解説します。

(1)不動産の差押手続き

不動産を差し押さえて競売するまでの手続きの流れは、次のとおりです。

  1. 不動産の所在地を管轄する地方裁判所に申し立てる
  2. 競売開始決定が下りる
  3. 裁判所による不動産調査(現況調査・価格評価)が行われる
  4. 入札・売却手続き
  5. 購入者による入金
  6. 配当手続

一般的に、競売の申立てから配当手続までは1年かかります。
不動産の売却価格によってはまとまったお金を回収できるものの、逆に不動産の価値が残ローンの債務額を下回る場合、お金を全額回収することは難しいでしょう。

不動産を対象とする強制執行には、強制競売のほかに強制管理と呼ばれる方法があります。
強制管理は、目的不動産を売却せず、第三者から賃料収入を得てお金を回収する方法です。

(1-1)必要資料

強制競売を申し立てるための必要な資料は次のとおりです。

  • 申立書
  • 債務名義正本(執行文付与付き)
  • 送達証明書(相手方に債務名義の謄本が送達されたことを証明する書類)
  • 目的不動産の登記事項証明書
  • 固定資産税評価証明書
  • 執行場所を記した位置図(例:地図のコピー)
  • 予納金

差押え以降も、債務者は通常どおりその不動産を利用することができます。

(1-2)必要費用

不動産の強制競売にかかる予納金は地域によって異なります。
東京地裁では、回収したい債権の額によって次のように定められています。

回収したい債権の額予納金
2000万円未満60万円
2000万円以上5000万円未満100万円
5000万円以上1億円未満150万円
1億円以上200万円

これ以外に、差押登記の登録免許税(確定請求額の1000分の4)、申立手数料(一般的には4000円)、郵便切手代、弁護士費用がかかるため、不動産執行にかかるお金は高額になりやすいといえます。

(2)動産の差押手続き

動産を差し押さえてからお金を得るまでの手続きは、次のとおりです。

  1. 対象となる動産の所在地(主に債務者の自宅や事業所)を管轄している地方裁判所の執行官に申し立てる
  2. 執行官と面談をして、動産執行の日時などを決める
  3. 執行日当日、執行官が売却してお金に換えられそうなものを差し押さえる
  4. 入札・売却手続き
  5. 購入者による入金
  6. 配当手続

執行日には、債権者も立ち会うことができるので、立ち会いたい場合にはあらかじめ執行官に伝えておきましょう。ただし、建物内に入ることはできませんので、注意してください。

(2-1)必要資料

動産執行を申し立てるための必要な資料は次のとおりです。

  • 申立書
  • 債務名義正本(必要に応じて執行文付き)
  • 送達証明書(相手方に債務名義の謄本が送達されたことを証明する書類)
  • 執行場所を記した位置図(例:地図のコピー)

(2-2)必要費用

動産執行の予納金は3万~4万円とされており、これに加えて申立手数料(一般的には4000円)、郵便切手代が必要です。また、債務者の自宅に鍵が掛けられていた場合に備えて解錠技術者に同行してもらうならば、1万~5万円程度の日当がかかります。
また、弁護士費用は、動産執行に同行してもらうかによって金額が異なります。
不動産の強制競売に比べると、手続き費用は安く済みます。もっとも、お金に換えられる財産があるかどうかは実際に執行してみるまでわかりません。そのため、動産執行は差し押さえた動産をお金に換えることよりも執行官が自宅に来るプレッシャーを与え、債務者が自らの意思でお金を払うことを主な目的にしているといわれています。

(3)債権の差押手続き

債権を差し押さえてお金の回収をする流れは、次のとおりです。

  1. 債務者の住所地を管轄とする地方裁判所に申し立てる
    あわせて、第三債務者に対する陳述催告を申し立てる
  2. 裁判所から債権差押命令が発令される
  3. 裁判所から第三債務者に債権差押命令書が送達される
  4. 裁判所から債務者に債権差押命令書が送達される
  5. 第三債務者から裁判所に陳述書が返送される
  6. 裁判所から送達通知書と陳述書を受け取る
  7. 第三債務者からお金を回収する

第三者が陳述書を提出するのが遅かったり、債務者が債権差押命令書を受け取らなかったりすると、手続きがなかなか進みません。これらを早める手段はないので、不備のない申立書を提出する等、自分でもできるだけ手続がスムーズに進むよう努めたいところです。

(3-1)必要資料

債権執行を申し立てるための必要な資料は次のとおりです。

  • 申立書
  • 請求債権目録(債権者が債務者に対して有する債権の情報)
  • 差押債権目録(債務者の債権情報)
  • 債務名義(必要に応じて執行文付き)
  • 送達証明書(相手方に債務名義の謄本が送達されたことを証明する書類)

(3-2)必要費用

不動産執行、動産執行と異なり、債権執行では債権者が自ら取り立てるため予納金はいりません。必要なのは、申立手数料(一般的には4000円)と郵便切手代、弁護士費用です。

債権回収が得意な弁護士の選び方

自分で差押えをすることもできますが、手続きが煩雑でよくわからないのであれば、弁護士に任せることをおすすめします。
債権回収の得意な弁護士を選ぶ際の3つのポイントをお伝えします。

(1)費用・支払方法は明確か

弁護士費用、支払方法が明確な法律事務所かは必ずチェックしましょう。
きちんと契約書の内容を確認して、後々トラブルになるおそれがないかを確認してください。

(2)信頼できる弁護士事務所かどうか

弁護士との相性も大切なので、信頼できる弁護士事務所かどうかを判断しましょう。
きちんとわかりやすい言葉で説明してくれるか、メリットだけでなくデメリットも教えてくれるかなどご自身なりのポイントを設けておくと良いでしょう。

債務整理(借金に関するご依頼)でなければ、弁護士と直接面談する必要はありません。
電話でも事務所の雰囲気や弁護士の対応を感じ取ることはできるので、仕事やプライベートで忙しい場合には電話面談を有効活用してください。

(3)債権回収の実績が多いか

弁護士なら誰もが差押え・強制執行の知識・経験が豊富とは限りません。
もし差押え・強制執行の知識・経験の少ない弁護士に依頼してしまうと、適切なタイミングを逃すなど最善の対応を採ってもらえないかもしれません。
そこで、あらかじめ債権回収の実績が豊富なのかを確認しておきましょう。

【まとめ】債務整理のご相談はアディーレ法律事務所へ

事前の予告なく、強制的に財産の処分を禁じる差押え。
財産開示手続制度における罰則が強化されたことから、子どものために養育費の差押えをする方が増えると見込まれています。
既に裁判を起こされ、借金の返済を命じる判決が下りたならば、いつ差し押さえられても不思議ではありません。債務整理に関してはお早めにアディーレ法律事務所にご相談ください。

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