「借金の返済が大変……。夫にはバレないように何とかしたいけど……。」
家事や育児などに専念されている方だと、返済のためのお金を捻出するのが難しい場合も少なくありません。
借金を何とかするには家計の見直しが不可欠ですが、無理なく削れる出費があれば、そこから返済していける可能性があります。
また、返済の負担を軽減できる可能性のある「債務整理」の中でも「任意整理」という方法を選べれば、他の方法よりは家族にバレずに済む可能性があります。
この記事では、次のことについて弁護士が解説します。
- 専業主婦が借金から抜け出すための方法
- 家族に相談するという選択肢
早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院（現在名：東京都立大学法科大学院）卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。
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専業主婦が借金から抜け出すための5つの方法
借金問題は、返済が苦しくなったまま放置していては、利息や遅延損害金で総返済額が増えるばかりでなく、差押えに至るリスクも高まり、解決からは遠ざかってしまいます。
自分で返済できるか不安になったら、現状を把握したうえで解決を図ることがおすすめです。
それでは、借金問題の解決に向けてできることを説明します。
（1）自力で完済できないか検討する
自力で完済できる可能性があるかどうかについて、検討しましょう。
（1-1）借金を正確に把握する
まずは、借金の全体像を把握します。
借入先全てと、それぞれにいくらずつ返済が残っているかを紙に書き出しましょう。
毎月支払わなければならないものを全て把握する必要がありますので、いわゆる消費者金融や銀行からの借入れだけでなく、支払いの残っているローンやクレジットカードのキャッシング等も書き出します。
借入先は思い出せるものの残高が分からないという場合には、それぞれの借入先の会員ページを見たり、電話窓口に問い合わせるなどして確認できます。
そもそも全ての借入先を思い出せているか不安な場合は、「信用情報機関」にご自身の「信用情報」を問い合わせてみましょう。
信用情報というのは、個人の方のクレジットカードやローンの申込み、契約、支払いなどの情報のことです。信用情報は、国内に3つある「信用情報機関」で管理されています。
（1-2）収支を見直し、返済に充てられる金額を求める
次に、家計の見直しをします。収支を正確に把握しましょう。
＜収入＞
- 毎月確実に入ってくる金額
※ボーナスなどの臨時収入は、一旦外しておく
＜支出＞
- 家賃（住宅ローン）
- 水道光熱費
- 通信費
- 食費
- 交通費
- 医療費
- その他、毎月固定でかかっている費用
（・予備費 いざという時の出費のため、いくらか確保しておくと安心）
収入から支出を引くことで、毎月の返済に充てることのできる金額はいくらかを算出しましょう。
借金に頼ってしまうのは、お金が足りないことがきっかけです。
お金が足りなくならないよう、削れる出費がないか、家事と両立可能なアルバイト等で収入を増やせないか等の検討をし、借金をこれ以上しなくて済むように家計を見直しましょう。
（1-3）支出の見直しについて
家計を見直す過程で、「この項目にお金を使い過ぎている」「クレジットカードをついつい使い過ぎてしまっている」など、お金が足りなくなってしまう原因が分かることもあるかと思います。
削ることのできそうな出費については、もちろん見直したいところですが、極端な節約を前提にしてしまうと、予定通り節約できなかった場合に返済計画が行き詰まってしまうおそれがあります。無理のない節約から始めましょう。
また、クレジットカードなどのキャッシュレス決済は、現金での決済と違って、どうしてもお金を使っている感覚が希薄になりがちです。ある分のお金しか使わずに済む、「現金払い」にシフトしていくことがおすすめです。
一方、人によっては「夫の収入で家計のやり繰りをしていて、生活費が足りなくなったときに借金を始めてしまった」という場合もあります。このようなケースでは、削ることのできる出費が少ない分、「節約して浮いた分のお金で、借金を自力返済する」のは難しいことが少なくありません。
家計を見直しても自力での完済が難しい、という場合であっても、早めに「債務整理」を始めれば、夫に知られずに借金を解決できる可能性は0ではありません。少なくとも、このまま返済できなくなって裁判を起こされたり、財産を差し押さえられてしまうことになるよりは、知られずに済む可能性があると言えます。
債務整理って何だろう、と興味を持たれた方は（4）「債務整理を検討する」をご覧ください。
（2）公的機関に相談する
借金について夫に隠しているストレスや、このまま返済できなくなってしまったらどうしようという不安を抱えているなか、自分ひとりで状況を正確に把握するのは決して簡単なことではありません。
しかし、借金について、人に打ち明けるだけでも心が軽くなる可能性があります。
夫や家族に相談しにくくても、借金問題について話ができる窓口がありますので、いくつか紹介します。
（2-1）日本貸金業協会
日本貸金業協会では、借金問題全般について相談できる貸金業相談・紛争解決センター相談窓口を設けています。
こちらに電話をかけると、家計の見直し方のアドバイスや、買い物・ギャンブル依存症の克服方法など、多岐にわたる生活再建支援カウンセリングといった支援を受けることができます。
（2-2）日本クレジットカウンセリング協会
日本クレジットカウンセリング協会でも、借金返済で困っている人向けの相談窓口を設けています。
「多重債務ほっとライン」というのですが、借金問題の解決に向けたアドバイスや他の相談機関の案内などの支援を受けることができます。
参照：多重債務ほっとライン｜公益財団法人日本クレジットカウンセリング協会
（3）特定調停を検討する
特定調停とは、借金の返済が困難になってきている人の申立てで始まる、裁判所が債務者と債権者の仲裁を行い、返済計画について合意ができるよう働きかける手続きです。
返済負担の軽減につながる可能性もありますが、裁判所が間に立つとはいえ必ずしも債権者との間で返済計画について合意ができるとは限らない、解決まで時間がかかる場合がある等の注意点もあります。
（4）債務整理を検討する
債務整理とは、借金を始めとする負債について支払いの負担を軽減するための手続きです。
ここまで見てきた家計の見直しなどは、基本的には「家計を見直すことで返済に充てることのできる金額を増やし、自力での完済を目指す」という発想でした。
一方、債務整理をすれば、ケースにもよりますが、毎月の返済額や総返済額自体を減らせる可能性があります。
たとえ家計を見直しても、自力での返済は難しいという場合、いろいろな相談窓口を回っても債務整理を勧められる可能性が高いです。
そのため、返済が厳しいと感じている場合は最初から債務整理を検討することで、借金問題の解決を早められる可能性があります。
また、今はそれほど返済が困難でなくても、債務整理をすれば返済の負担を見直せて、家計のやり繰りが今まで以上に楽になる可能性があります。無料相談できる法律事務所も少なくないので、まずは気軽に相談してみることがおすすめです。
債務整理には、主に次の3種類があります。
- 任意整理
…支払い過ぎた利息がないか、借金の額を再計算。残った借金について、返済期間を長期化することで毎月の返済額を減らすことなどを目指して、個々の債権者と交渉。 - 個人再生
…裁判所から認可を得たうえで、基本的には大幅に減額された負債（任意整理以上に大幅減額できるケースが多い）を原則3年間で分割払い。 - 自己破産
…裁判所が「免責許可決定」を出せば、原則全ての負債について支払義務が免除となる手続き。
※どの手続きでも、税金や養育費などの一部の負債については減らしたり無くしたりすることができません。
「債務整理なんてしたら、家族にバレるのでは？」とご心配の方へ
「債務整理をしたら、家族に借金問題がバレるのでは……？」と不安になる方もいるかと思います。
「任意整理」「個人再生」「自己破産」のうち、一般的には、家族に知られずに終えられる可能性が高いのは任意整理です。
任意整理は、既に債権者から裁判を起こされているといった事情がない限り、基本的には裁判所を通さずに行う手続きです。そのため、裁判所に同居人の資料を提出したりする必要はありません。
また、弁護士に依頼すれば、その後は債権者からの督促などが止まり、弁護士が債権者との交渉などを行います。
法律事務所からの連絡については、「極力、依頼者の携帯電話」「どうしても自宅に電話をかけなければいけない場合でも、『法律事務所』『弁護士』などと名乗らず、個人名で名乗る」「自宅宛てに書類を送るときも、個人名で送る」などの配慮をしてくれる法律事務所も少なくありません。
家族に知られたくない、とお思いの方は、相談時にこうした対応が可能かどうか聞いてみることをおすすめします。
そのため、依頼した法律事務所との電話や書面でのやり取りのみで手続きを進めることができるのです。
もっとも、任意整理は、支払い過ぎた利息である「過払い金」や消滅時効によって借金がゼロになるなどの事情がない限り、借金を分割で支払っていく手続きですので、その返済資金は確保する必要があります。
他方、個人再生や自己破産を行う場合には、裁判所に申立てを行う際に、同居人の収入等に関する資料（給与明細、源泉徴収票、預金口座の取引履歴等）を提出する必要がある場合が多いです。そのため、（特に、家計が同一の）同居の家族に知られずに手続きを進めることは困難であることが多いと言えます。もっとも、申立てに必要な資料は、各地域の裁判所の運用によっても異なりますので、債務整理を依頼する弁護士に相談してみるとよいでしょう。
先ほど少し触れたように、個人再生の場合は任意整理より支払額が少額で済むのが通常ではありますが、将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあることなどが裁判所での手続きを開始するための要件となっていますので、自身でパートなどをして安定的な収入を得る必要があります。
自己破産の手続きは、3つの手続きの中では最終的な支払いの負担が最も軽くなる可能性があります。もっとも、自己破産の手続きを行うには、弁護士費用や裁判所等に収める予納金などのために一定の金額は確保する必要があります。こうした費用は数ヶ月間かけて積み立てていけばよい（一括で用意しなくてもよい）法律事務所が少なくありませんが、最低でも月数万円ずつは用意しなければならないケースが多いです。
自己破産の手続きにかかる費用について、詳しくはこちらをご覧ください。
家族にバレずに済む可能性がある「任意整理」は、3つの手続きの中では借金減額が小幅にとどまるケースが通常です。
時間が経てば経つほど、借金の総額は利息などで膨らみますので、このまま放置すると「任意整理をしたとしても、返済するのは無理」といった事態になりかねません。
ですので、「バレない可能性が少しでもあるなら、任意整理にしたい！」とお思いの方ほど、早めに検討することが必要となります。
家族に知られたくない、とお思いの人は、その点も含めて弁護士にご相談ください。
（5）家族の生活費のための借金を、あなただけで抱え込む必要はないかもしれません
「家族に借金のことがバレたら恥ずかしい、心配をかけたくない」という方は少なくありません。
ですが、「夫や家族に相談する」という選択肢も残しておいてください。
お金に関する問題は、家族全体で向き合うべきことです。
特に、家族の生活費が足りなくなって始めた借金の場合、主婦一人で借金の負担を抱えることは不平等といえます。
家族の生活を維持するための債務（日常家事債務と呼ばれます。民法761条）については、夫婦の一方が負ったものでも夫婦で連帯して支払う責任を負います。
そのため、主婦の抱えた借金について夫にも支払義務が生じることがあるのです。
また、夫に知られずに借金問題を解決したいと思っている人でも、生活の立て直しや今後の支払いについて家族の協力が欠かせない場合があります。
また、債務整理の手続きの過程では、家族に伝わることを避けにくい場面も出てきます。
家族に知られずに済む見込みがあるかどうかは、債務整理のご相談の際に弁護士に合わせてお聴きいただければと思いますが、いざとなったら家族に打ち明けるという選択肢は、心の片隅に残しておいてください。
【まとめ】借金から抜け出すには、家計を見直し、返済の見通しを立てる必要がある
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 借金問題の解決のためには、まずは借金の全体像の把握と家計の見直しが不可欠。借金問題について相談できる窓口も複数あるため、一人で借金問題を抱え込まないために気軽に利用してみることがおすすめ。
- 返済負担を軽減できる可能性のある債務整理は、家計の立直しにつながる。また、家族に知られずにできる可能性も決してゼロではない。
借金問題は返済が困難になって放置しても、催促の連絡を何度も受けたり、差押えのリスクが高まったりと、解決からは遠ざかるばかりです。
「夫に借金がバレないようにするには、自力で何とか完済するしかない」と思って無理やり返済を続けていても、返済できなくなって預貯金などを差し押さえられてしまえば、家族にバレるだけでなく、生活も一層苦しくなってしまいます。
しかし、早めに債務整理を始めれば、差押えなどのリスクが下がるうえ、家族に伝わりにくい方法を選べる可能性もあります。
とにかく借金問題は、抱え込んでいても利息などで膨らむばかりです。まずは、誰かに相談だけでもしてみませんか？
アディーレ法律事務所では、任意整理を始めとする債務整理についてのご相談を承っております。
また、アディーレ法律事務所では、所定の債務整理手続きにつき、所定の成果を得られなかった場合、原則として、当該手続きに関してお支払いいただいた弁護士費用を全額ご返金しております（2022年10月時点）。
借金のことでお困りの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。
