あなたの法律のお悩み一発解決サイト
リーガライフラボ

銀行口座が差し押さえられるまでの流れとは?

作成日:
リーガライフラボ

借りたお金を返さなかった、クレジットの支払ができなかった……そのまま放置していたら、銀行の預金口座の差押えを受けるおそれがあります。

今回は、

  • 差押えを受けるまでの流れ
  • 銀行口座の預金が差押さえられるケース

について解説します。

強制執行(差押え)とは強制執行(差押え)とは、債権者が裁判所に申立てることにより、債務者が自分の財産を自由に処分することができなくなる手続です。


 なお、何らかの権利を持っていて、相手に何かを請求できる側を「債権者」、請求される側を「債務者」と言います。「債権者」と「債務者」の関係について詳しくは、こちらをご覧ください。

債務者が知っておくべき自身の立場とは?債権者との関係に触れながら解説

なぜ、債務者の財産を自由に処分できなくするのでしょうか。
それは、最終的に債務者の財産から強制的に回収するためです。
例を挙げてご説明します。


借金の返済を求めて債権者が債務者を訴えたとしましょう。
債権者が債務者にお金を貸して、返済されていないという事実が認められると、裁判所は債「債務者は債権者に対し、金●円を支払え」という判決を出します。


もっとも、判決は債務者に支払いを命じているだけで、債務者が必ずしも判決に従って支払うとは限りません。
債務者が判決を無視して、貸したお金が回収できないのでは、わざわざ訴訟した意味がありません。


そこで、債務者の財産(不動産や銀行預金)に強制執行(差押え)して、判決で認められた金額を回収することになります。
例えば、預金口座(預金債権)が差押えされると、差し押さえられた分については、債務者は自由に引き出せなくなり、差し押さえられた預金債権から、債権者が回収することになります。

いきなり差押さえられてしまうの?

差押えとは言っても、お金を借りているだけで、ある日突然、債権者から預金が差し押さえられるわけではありません。


差押えには、ちゃんと準備段階があります。
それでは、どのような流れで差し押さえられてしまうのかご説明します。 
差押えは、本来であれば当然債務者に認められている財産の自由処分を禁止する強力な処分ですから、債権者がいつでも自由に行えるわけではありません。

リーガライフ債務者の財産を差し押さえるためには、債権者に『債務名義』が必要です。
『債務名義』とは何か?債務名義の取得方法をいくつかご紹介します。

(1)債権者が債務者を訴えて、裁判を起こすケース

債権者が借金の返済を求めて債務者を訴えて裁判を起こした場合、債権者は裁判に勝てば、判決という『債務名義』を取得します。

(1-1)債権者が『確定判決』と『仮執行宣言付判決』を得た場合

『確定判決』と『仮執行宣言付判決』は、いずれも『債務名義』になります。
貸したお金を返してもらえない時など、債権者は債務者を訴えて裁判を起こします。
裁判所は、債権者と債務者の提出する証拠や主張を聞いて、「判決」を出します。

債権者の主張する事実が認められると、債権者勝訴の判決がでます。
債権者と債務者がそれぞれ判決書を受け取ってから2週間の間、どちらも判決に不服を申立てなければ、判決は「確定」します(不服がある場合には、控訴をする必要があります)。
確定した判決のことを『確定判決』といいます。

そして、債権者は『確定判決』を債務名義として、債務者の財産を差し押さえることが出来るようになります。
(ならば、債務者がいつまでも判決を受け取らなければ良いのかと言うと、わざと判決を受け取らないような場合には、裁判所から判決を送ったことをもって受け取ったとみなされるような制度もありますので、最終的には、必ず判決を「受け取った」と評価されてしまいます。)

また、判決に「仮執行宣言」がつくこともあります。
本来、判決は「確定」しないと強制執行はできませんが、「仮執行宣言」が付いた判決は、確定する前であっても差押えができるのです。
これを『仮執行宣言付判決』といって、これも『債務名義』になります。

(1-2)『和解調書』を得た場合

裁判の期日で、債権者と債務者が返済について話し合い、話がまとまった場合『和解調書』が作られます。
『和解調書』とは、債権者と債務者の合意内容を裁判所がまとめて作成する書面です。

例えば、債権者が債務者に対して50万円の支払を求めて裁判を起こしたのに対し、債務者が毎月2万円ずつ25回に分割して返済したいという場合に、債権者が債務者の分割返済を認めると、「債務者は債権者に対し、●年●月●日~●年●月●日までの間、毎月●日限り、金2万円ずつ分割して支払う。」などという和解調書が作られます。

『和解調書』は、債務者が約束どおりに支払っている限り、何も問題はありません。
問題は、債務者が約束を破った時です。
この例のような分割払いの和解の場合、『和解調書』には必ず「期限の利益の喪失」について決められています。
「期限の利益」とは、債務者が借金などを一括ではなくて分割で支払う(=その間、債権者が待ってくれている)ことです。
「喪失」とは、債権者が待ってくれている利益がなくなってしまうことです。

要は、「期限の利益の喪失」とは、分割払いを認められた債務者が支払の約束を破った時に、その時点で残っている債務全額を一括で支払わなければならなくなることです。
『和解調書』では、例えば、債務者が「2回以上支払を怠った時」や「支払を怠った金額が4万円に達した時」は期限の利益を失うなどと定められます。

債務者が『和解調書』で決めた期限の利益を喪失した場合には、債権者は『和解調書』を使って、債務者の財産を差し押さえることができるようになります。

債権者と裁判所で和解をした方は、今一度、和解調書を確認して、どうなった時に期限の利益を失い、債権者から差押えを受ける状態になるのか確認してみてください。

(2)債権者に「裁判所で和解をしたい」と言われるケース

裁判になる前の段階で、裁判とは関係なく債権者と債務者の間で支払について合意ができる制度があります。

債務者が合意通りに支払っていれば問題はありませんが、債務者が合意どおり支払わなくなった時、債権者が債務者の財産を差し押さえたければ、債権者はあらためて債務者に対して裁判を起こさなければなりません。
ですから、債権者によっては、合意ができた時点で『債務名義』を取得しておきたい、と考えます。

とは言え、裁判を起こすのは手間も費用もかかる……そんな時に活用されるのが『訴え提起前の和解』です。

『訴え提起前の和解』とは、訴訟手続せずに、和解だけを目的とした手続です。
和解の方法は、先ほどご説明したのと同様で、債務者との間で支払の条件を決め、その内容を裁判官に認めてもらい『和解調書』を作成してもらいます。

この時点で『和解調書』を作っておいた場合、その後債務者が約束を破った時は、債権者は債務者を訴える必要はなく、裁判をすることなく『訴えの提起前の和解』で作成しておいた『和解調書』を使って、債務者の財産を差し押さえることができるようになります。

裁判所で債権者と和解をした後、和解の内容を守っていない、という方がいたら、いずれ債権者が財産を差し押さえてくる可能性がありますので注意が必要です。

参考:訴え提起前の和解手続の流れ|裁判所 – Courts in Japan

(3)裁判所から支払督促が送られてきた場合

『支払督促』とは、債権者の申立てにより、裁判所から債務者に支払を督促(=うながすこと)する手続です。
『支払督促』は、訴訟とは違い、債権者も債務者も裁判所に行く必要はありません。

債権者が『支払督促』を申立てると、裁判所は、申立ての内容を確認して問題がなければ、債務者に対して『支払督促』という書面が送ります。
債務者は、その督促を争いたいという時は、同封されている「異議申立書」を裁判所に返送します(同封していなくても、裁判所に行けば窓口に備え付けてあります)。

債務者が『支払督促』に異議を申立てると、自動的に通常の裁判手続に移ります。
その場合には、裁判官が債権者と債務者両方の主張や証拠を見て、判決を出します。

『支払督促』は、裁判所が債権者の提出する書面だけを見て債務者に支払を促す簡易な手続ですので、債務者に別の意見があるようなら、通常の裁判手続の中でじっくり双方の話を聞き、証拠を吟味して判決を出しましょう、というわけです。

他方、最初の『支払督促』に対して、債務者が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議を申立てなければ、債権者は「仮執行宣言」を申立てることができるようになります。

『仮執行宣言』とは、『支払督促』に執行力(=強制執行が出来るようになる効力)を持たせる手続です。
『支払督促』は、単に裁判所が債務者に支払を促すためのものですから、それだけでは強制執行はできません。
『支払督促』に『仮執行宣言』が付くことによって、はじめてその支払督促が執行力を持ち、強制執行が出来るようになるのです。

債権者が「仮執行宣言」を申立てると、裁判所は、再び『仮執行宣言付支払督促』という書面を債務者に送ります。
裁判所から債務者に送る2度目の書面ですね。
債務者が『仮執行宣言付支払督促』を受け取ってから2週間以内に異議を申立てた場合、やはり通常の裁判手続に移ります。

他方、債務者が2週間以内に何にもアクションを起こさなかった場合、『仮執行宣言付支払督促』は執行力を持ち、債権者は、債務者の財産を差し押さえることが出来るようになります。

参考:支払督促|裁判所 – Courts in Japan

その他の『債務名義』

その他『債務名義』になるのは、例えば次のものがあります。

  • 執行証書(強制執行されても良いという文言のある『公正証書』)
  • 認諾調書(債務者が裁判で債権者の訴えを認めた場合に作られる調書)
  • 調停調書(調停が成立した時に作られる調書)

 いずれも債務者の何らかのアクションが必要なものですので、債務者の全く預かり知らないところで『債務名義』が出来上がるということはありません。

税金滞納の場合は差押えのために『債務名義』はいらない!

これまで、差押えには『債務名義』が必要とご説明しましたが、税金を滞納した場合には、『債務名義』がなくても債務者の財産が差し押さえられます。

もっとも、差押えのためには、「督促」が必要ですので、税金を滞納したからと言って、ある日突然、何の連絡もなく給料が差し押さえられることはありません。

差押え前には、必ず税務署や役所から電話や書面で連絡がありますので、そのような場合には連絡を無視せず、必ず税務署などと相談をしてください。

銀行口座の給料が差し押さえられるまでの流れ

債権者が『債務名義』を取得したら、債権者は裁判所に対して債務者の銀行口座の預金に対して「債権差押命令の申立て」ができます。

そして、裁判所が申立てに理由があると認めた場合には「差押命令」を出し、銀行口座の預金を差し押さえます。
この時、『債務名義』において認められた金額や強制執行費用などを含めた金額に満ちるまで、銀行口座の預金は差し押さえられてしまいます。

ですから、預金の残額が債権者の債権額に満たない場合には、全額が差し押さえられることになります。
勤務先から、銀行口座に給料が振り込まれている場合には、その全額について、単なる預金として差し押さえられます。
なお、銀行口座の差押えの効力は1回限りなので、差押え後に入金があった場合には、その入金分には差押えの効力は及びません。

ですから、1回の差押えで債権額に満たない場合には、同じ口座について、日を改めて再度差し押さえられる可能性があります。
また、別の銀行に口座がある場合には、別の銀行口座が差し押さえられる可能性もあります。

銀行口座って、債権者はどうやって知るの?

ところで、債権者はどうやって債務者の銀行口座を知るのでしょうか?
毎月の引落し口座として伝えたり、最初に借りたお金を振り込んでもらったりするときに、自分から口座を申告していることが多いです。
勤務先の主要取引銀行で判断することもあります。
また、弁護士会照会や民事執行法の情報取得手続を用いて、調査することもあります。

参考:第三者からの情報取得手続について|裁判所 – Courts in Japan

債務整理を検討してみてください

差押えの後も債権が残っている場合、債権者は別の口座の差押えや給料の差押えなど様々な手段で債権を回収しようとします。
借金をそのままの状態にしておくのではなく「債務整理」を検討してみてはいかがでしょうか。

債務整理には、次の3つの手続があります。

  1. 任意整理
    「任意整理」とは、債権者と話し合って、将来分の利息をカットしてもらうなどした上で、借金を3年ほどで分割して支払っていくことを目指す方法です(個別の事案により和解の可否・和解の内容は異なります)。
    民事再生や自己破産とは異なり、基本的にはどの負債を任意整理の対象にするのか債務者が選ぶことができます。
  1. 民事再生
    「民事再生」とは、裁判所の認可決定を得たうえで負債の額を5分の1程度(負債や保有資産等の金額によって減額の程度は違います)まで減額してもらい、減額された負債を原則として3年ほどかけて返済していくという手続です(税金や養育費など一部の負債は認可決定を得ても減額されません)。
    自己破産とは異なり、民事再生では原則として財産は処分されません(担保がついている場合や差押えされた場合などは除きます。なお住宅ローンが残っている住宅の場合は、一定要件を満たせば住宅を維持したまま民事再生をできる場合もあります)。
  1. 自己破産
    「自己破産」とは、借金返済の見込みがない場合に、債務者の一定の財産をお金に換えて債権者に公平に分配する手続です。
    免責許可決定を得れば、原則として負債を支払わなくても良くなります(税金や養育費など一部の負債は、免責許可決定を得ても支払義務は免除されません)。

この先何年も、差押えを受けるリスクを抱えながら生活するよりは、自分にあった形で債務整理をした上で生活を立て直すことをご検討ください。

【まとめ】債権者は『債務名義』を得て、債務者の銀行口座の預金の差押えができる

今回の記事のまとめは、次の通りです

  • 債権者は『債務名義』に基づいて、銀行口座の預金債権などを差し押さえることができる。
  • 『債務名義』には「確定判決」、「仮執行宣言付判決」、「和解調書」、「仮執行宣言付支払督促」などがある。
  • 債権者は、債務名義で認められた債権額全額について差押えができるので、預金額が債権額よりも少ない場合には、預金は全額が差し押さえられてしまう。
  • 預金債権の差押えの効力は1回限りなので、その後、新たに入金された預金は、改めて差押えをしない限り債権者のものにはならない。
  • 預金全額を差し押さえても、債権全額に足りない場合には、さらに別の口座の預金債権を差し押さえたり、同じ口座を何度も繰り返し差押えされるおそれがある。
  • 債務者の銀行口座は、債権者が調べることができる。
  • 債務整理を検討することもできる。

借金問題でお悩みの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。