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個人事業主破産の影響は?事業継続の可否や売掛金の扱いなどを解説

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借金をどうしても返していくことができなくなった場合のために、自己破産という制度が存在します。自己破産の手続きでは、自己破産する者の不動産や自動車といった財産は換金されて債権者へ分配され、それでも残った債務については、支払いを免除してもらうことになります。
では、個人経営の喫茶店や個人タクシーといった個人事業主が自己破産をする場合、どのような影響があるでしょうか。一般的な会社員が自己破産する場合との違いを踏まえつつ、「個人事業主の破産」について弁護士が解説します。

目次

個人事業主(自営業者)の自己破産

個人事業主が自己破産する背景を解説します。

(1)新型コロナウイルス感染症による事業倒産の増加

新型コロナウイルス感染症の影響で、売上が大きく減り、倒産に追い込まれている事業者が2020年11月20日時点で600件を超えています。
そのうち、自己破産や民事再生といった裁判所を通じた手続きである法的整理を選ばざるを得なくなった事業者が500件を超え、その9割以上が自己破産を選択しています。
新型コロナウイルス感染症が沈静化していない現状にあって、万一の場合に備えて、個人事業主が、自己破産の手続きの概要を知っておくことは有益と思われます。

参考:「新型コロナウイルス関連倒産」は723件~飲食店の累計倒産件数は110件に|帝国データバンク

(2)個人事業主(自営業者)による自己破産は原則管財手続

自己破産の手続きには、大きく分けて、管財手続事件と簡易な同時廃止事件があります。管財手続は、裁判所に選任された破産管財人が、換金して債権者に分配するために財産を調査したり、免責つまり自己破産者を借金の支払いから免れさせることが相当かを調査したりします。そのような管財人の仕事の報酬も破産者が支払わなくてはなりません。
個人事業主の場合、一般的に、店舗や事業所を借りていたり、リース物件があったり、在庫・売掛金といった財産があったりするため、管財人による調査が必要です。そのため、原則として、簡易な手続きである同時廃止でなく、管財手続になります。

自己破産後における個人事業主(自営業者)の事業継続

自己破産をしたからといって、その後に必ずしも事業ができなくなるというわけではありません。
しかし、一定の財産は、お金に換えられ、債権者に分配されるのが原則です。
個人タクシーの事業主が車両を換価されて分配されたり、個人経営のピアノ教室のピアノが換価されて分配されたりする場合もあります。そのような場合、事業を継続することは事実上困難になります。
事業を継続できるケースについては、後の項目で詳しく解説します。

個人事業主(自営業者)の自己破産手続きの流れ

個人事業主の自己破産手続きの流れについて詳しく解説します。

(1)法律相談と委任契約の締結

借金問題について相談できる法律事務所を探します。
相談に無料で応じてくれる法律事務所もありますので、そういった事務所を探すのもいいでしょう。
相談の結果、自己破産の手続きを取らずに、任意整理といった裁判所を介しない手続きで済む場合もあります。
自己破産することを決めたら、自己破産の手続きを弁護士に任せる内容の契約を交わします。

(2)受任通知の発送と必要書類の収集

依頼を受けた弁護士は、貸金業者等の各債権者に受任通知すなわち依頼を受けたことを知らせるための通知を発送します。
受任通知を発送したことの効果として、弁護士に依頼した自営業者は、貸金業者や債権回収業者による催告や取り立ての悩みから解放されます。
受任通知を受け取った債権者は、債務の金額を記した債権調査票やそれまでの貸付や返済の記録を記した取引履歴を弁護士に送ります。
弁護士は取引履歴を元に払いすぎた利息等がないかを調べます。払いすぎた利息等が債務を上回っている場合には過払い金の返還を業者に求めます。
このような債権の調査と並行して、住民票や給与明細、通帳の写しなどの自己破産の申立てに必要な資料の収集も行います。

(3)自己破産の申立て

裁判所に自己破産を申立てます。
自己破産を申立てると、破産管財人が、裁判所により選任され、自己破産する者の一定の財産を管理したり処分したりする権限は破産管財人に専属します。

(4)債権調査と破産管財人による調査

裁判所により定められた債権調査期間内に、債権者は債権の金額などを届け出ます。
破産管財人は、通帳を精査するなどして、個人事業主の契約関係や財産関係を調査します。
必要に応じて、リース契約やテナントの賃貸借契約といった契約関係を解消したり、また、財産を換金して自己破産財団すなわち債権者への配当にあてられる財産に組み込んだりします。
破産管財人が選任されると、自己破産する個人事業主宛ての郵便物はすべて破産管財人に転送されます。
その目的は、破産者から申告の漏れていた財産や債務や契約関係を把握することにあります。

(5)債権者集会

債権者集会とは、破産管財人に破産手続きの状況や免責についての意見を報告させたり債権者の意見を反映させたりするために裁判所が開催する集会をいいます。
債権者の意見を反映させることを目的としていますが、銀行や貸金業者といった債権者は、ほとんど参加しません。債権者集会に来る債権者は買掛先や知人などの個人債権者がほとんどです。
配当の見込みがない場合には、一回で終わりますが、個人事業主が所有する不動産の換価や未回収の売掛金を回収するために提起した訴訟に時間がかかる場合には、期日が続行されます。

(6)免責許可決定

債権者集会の際、破産管財人は免責の可否について意見を述べます。
問題がなければ、裁判所により免責許可決定が下ります。
免責許可決定が覆らずに確定した場合、手続きは終結となります。

個人事業主(自営業者)が自己破産する場合にかかる費用

個人事業主が自己破産する場合にかかる費用は、主に、以下の3種類です。
以下で詳細を解説します。

(1)引継ぎ予納金

裁判所によって選任される破産管財人は、無償で調査などの業務を遂行してくれるわけではありません。またテナントの明け渡し、残置物の撤去など、管財人の業務に関する費用が発生する場合もあります。そのような費用や管財人の業務に対する報酬は、自己破産を申立てる者が用意しなければなりません。
自己破産を申立てる者は、通常、この管財人の業務に要する費用や管財人への報酬を、代理人弁護士を通じて管財人に引き継ぎます。
このお金を引継ぎ予納金といいます。

(2)弁護士費用

弁護士費用は、事務所によって異なりますが、30万~60万円くらいが一般的です。

(3)手続費用等

申立てに際し、収入印紙、郵送料、官報公告料などの手続き費用がかかります。

自己破産後に個人事業主(自営業者が)事業継続できるケース

自己破産後に個人事業主が事業を継続するためには、ポイントとなる点を解説します。

(1)事業継続のためには事業による収益の確保が必須

事業で売上げを確保できるかどうかがポイントとなります。
負債を増やした主な原因が事業であった場合、事業はやめざるを得ないでしょう。
そうでなかったとしても、自己破産によって経済的信用が失われる結果、取引先が取引から手を引いてしまうおそれがあります。
取引先が債権者の場合、その取引先が取引を継続してくれる可能性は極めて低いでしょう。

(2)新たな融資は受けられない

自己破産をすると、新たな融資は受けられなくなります。
自己破産の申立てによって信用情報機関、いわゆるブラックリストに載った場合、銀行等の金融機関は、通常、融資をしてくれなくなります。
そのため、自己資金で事業を継続できることを要します。

個人事業主(自営業者)が自己破産をする場合の売掛金の扱い

自己破産をするまで事業を継続していたのであれば、通常まだ支払いを受けていない商品やサービスの対価(売掛金)もあるでしょう。
自己破産は、自己破産する者の財産をお金に換えて債権者に分配し、それでも賄いきれない分の返済を免れさせてもらうという手続きです。売掛金も財産である以上、破産管財人に引き継ぎ、債権者への分配に充てられるのが原則です。

売掛金を引き継がなくてもよいケース

回収した売掛金は、破産管財人に引き継がなければなりません。
ただし、自己破産手続きの開始決定前に回収した売掛金や、開始決定後に契約をして売掛金を回収した場合は、引き継ぐ必要はありません。

個人事業主(自営業者)が自己破産をする場合の買掛金の扱い

売掛金とは逆に、商品やサービスの提供を受けたにもかかわらず代金を支払っていないこと(買掛金)もあるでしょう。この場合、すべての取引先に対して受任通知が送られ、支払いをストップする必要があります。取引先には経営状態がひどく悪いことも知られてしまいますので、それ以後、取引を続けてもらうのは事実上難しくなるでしょう。

自己破産手続き中は、後払いにして取引先から商品やサービスを受け取ることもできません。後払いにしてもその支払いはできませんし、場合によっては「詐術による借入れ」(破産法252条1項5号)として免責不許可事由に該当します。

生活が困難になる場合は自由財産の拡張の申立てが認められる可能性も

自営業者にとっての売掛金は、サラリーマンにとっての給料に相当する場合もあります。そのため、破産管財人に売掛金を引き継がせてしまうと、自己破産する個人事業主の生活が困窮するおそれがあります。
このような場合に、自由財産拡張の申立てと呼ばれる制度があります。
自由財産とは、自己破産をする場合において、生活の維持のために破産者が保有できる財産のことをいいます。売掛金は、原則として、自由財産拡張申立ての対象になりませんが、破産者の生活の状況等の事情により、例外的に拡張の対象になることがあります。

個人事業主(自営業者)が自己破産をする際に気をつけること

個人事業主が自己破産する場合には、以下の点に気をつける必要があります。
まず、取引先などへの適切な連絡や対処に気を付けなければなりません。自己破産することを知った債権者が事業所に押し寄せた、商品等を持ち出そうとする場合もあるからです。
次に、従業員への対応にも気を付ける必要があります。未払い賃金がある場合には、什器・備品を持ち出して自力救済を図ろうとするおそれもあるからです。

(1)個人再生も併せて検討すること

自己破産を選択すると、事業資産や事業そのものが処分される可能性があり、事業を継続できなくなる恐れがあります。継続的に安定した収入があれば、個人再生を選択できる場合もあります。
個人再生の手続きであれば、原則として事業資産や事業そのものを処分されないため、事業を継続できる可能性が高まります。

(2)弁護士費用を準備しておくこと

管財人の報酬は、管財人の仕事が多くなればなるほど高くなります。
個人事業主の自己破産の場合、什器・備品をお金に換えたり、テナントを明け渡したり、従業員の未払い賃金を計算したりするなど、一般的な会社員の自己破産に比べて多いことがあります。
そのため、管財人の報酬も高くなる場合が多いです。
裁判所に自己破産の申立てをしても、管財人の報酬を用意できるまで、手続きを進めてもらえません。
そこで、自己破産を検討する場合には、費用を用意しておく必要があるといえます。

(3)消費税等の税金は非免責債権

自己破産をしても、すべてのお金の支払いを免除されるわけではありません。
法人税などの税金は非免責債権なので、税金の支払いを滞納している場合、自己破産をしたとしても、支払い義務は免れません。

【まとめ】個人事業主の自己破産手続に関するご相談はアディーレ法律事務所へ

個人事業主(自営業者)が自己破産をしようとする場合、サラリーマンが自己破産する場合に比べると、売掛金や従業員の扱いなどいろいろな問題が生じます。そのため、個人事業主による自己破産は原則として、同時廃止ではなく、管財事件になります。
自己破産をしてしまうと、新たに借り入れることはできなくなるため、事実上事業を継続することは難しくなるでしょう。もっとも、例外的に事業を継続できる場合もありますので、個人事業主で、借金の問題でお困りの方は、アディーレ法律事務所にお気軽にご相談ください(ただし、2020年11月時点で、自営業の規模によってはご相談をお断りしておりますので、あらかじめご了承ください)。

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