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夫の死後も今の家に住める?配偶者居住権のデメリット・注意点(2)

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リーガライフラボ

夫の死後も今の家に住める?配偶者居住権の意味とメリット(1)」では、配偶者居住権の意味と、そのメリットについて、ご説明しました。

今回の記事では、配偶者居住権を取得した配偶者が受け得るデメリットや注意点について弁護士がご説明します

この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

配偶者のデメリット・注意点

(1)配偶者に建物の売却権限なし

配偶者居住権には、居住建物を売却するなどの処分権限はありません。
そのため、配偶者居住権を取得した配偶者が、十数年後、居住建物を売って、そのお金を老人ホームの入居資金にしたいと考えたとしても、居住建物の所有者ではないため、居住建物の売却はできないことになります。

(2)賃貸に出すにも居住建物所有者の承諾が必要

配偶者は、居住建物の所有者の承諾がなければ、第三者に居住建物を使用又は収益させることはできません(民法1032条3項)。
配偶者が、居住建物の所有者に無断で第三者に居住建物を使用又は収益をさせた場合、居住建物の所有者は、配偶者居住権を消滅させることができます(民法1032条4項)。

例えば、配偶者居住権を取得した配偶者が、自身は老人ホームに入って、居住建物を賃貸に出そうとしても、建物所有者が承諾しなければ、賃貸には出せないことになります。

(3)増改築をするにも居住建物所有者の承諾が必要

配偶者は、居住建物の所有者の承諾がなければ、居住建物の改築・増築をすることができません(民法1032条3項)。
配偶者が、居住建物の所有者に無断で改築・増築をした場合、居住建物の所有者は、配偶者居住権を消滅させることができます(民法1032条4項)。

例えば、配偶者が、改築・増築に当たるようなバリアフリー工事をしたいと考えても、建物所有者がこれを承諾してくれないと、バリアフリー工事ができないことになります。
ただし、バリアフリー工事が、修繕に当たるような場合は、建物所有者の承諾はいりません。
バリアフリー工事が改築・増築に当たるのか、修繕に当るのかは、ケースバイケースですので、事前に、専門家に相談した方が安全でしょう。

(4)居住建物の使い方への制限

配偶者は、従前の用法に従い、「善良な管理者の注意」をもって、居住建物の使用及び収益をしなければなりません(民法1032条1項 本文)。
なお、配偶者が、相続開始前には居住建物の一部にしか居住していなかった場合でも、配偶者居住権を取得後に、従前居住していなかった部分も使用・収益することができます(民法1032条1項 但書)。

「善良な管理者の注意」とは、あることを任された人の能力、職業、社会的地位などから考えて、通常要求されるレベルの注意のことをいいます。
簡単にいえば、配偶者居住権を取得した配偶者は、居住建物を大切に扱わなければならない、ということです(客観的にみても、大切に使っていると評価できる使い方が必要です)。
配偶者は、居住建物を好き勝手に使えるわけではないのです。

配偶者が善管注意義務を守らなかった場合には、建物所有者は配偶者居住権を消滅させることができる場合があります(民法1032条4項)ので要注意です。

(5)通常の必要費は配偶者の負担

配偶者は、居住建物の「通常の必要費」を負担する義務があります(民法1034条1項)。
この「通常の必要費」には、次のものが含まれると考えられます。

  • 居住建物の保存に必要な修繕費
  • 居住建物やその敷地の固定資産税 等

配偶者は、家賃を払わずに、居住建物に住めますが、通常の修繕費や固定資産税は配偶者の負担になることに注意しましょう。

(6)居住建物に何かあったときの通知義務

配偶者は、居住建物の使用及び収益に必要な修繕をすることができます(民法1033条1項)。

しかし、配偶者が、修繕が必要な状態なのにそれをしない場合、配偶者は、修繕が必要であることを知らない居住建物の所有者に対し、修繕が必要であることをすぐに通知する義務があります(民法1033条3項本文前段)。

配偶者が、居住建物の修繕が必要な場合に、しばらくたっても必要な修繕をしないときは、居住建物の所有者が修繕できます(民法1033条2項)。

また、居住建物について権利を主張する者があるときは、配偶者は、これを知らない居住建物の所有者に対し、すぐにその旨を通知する義務があります(民法1033条3項本文後段)。

配偶者と居住建物所有者の仲が悪く、極力連絡を取りたくないと思っている場合でも連絡を取り合う必要がある場面が出てくる可能性があるため注意しましょう。

(7)居住建物の敷地だけ売却されてしまうと配偶者居住権を主張できなくなる

配偶者居住権は、これを登記すると、居住建物の所有権など物権を取得した第三者に、配偶者居住権を妨げないように対抗することができます(民法1031条2項、605条、605条の4)。
※登記がないと対抗できないので、配偶者居住権の登記はお忘れなく!

しかし、対抗できるのはあくまで「居住建物」の物権を取得した第三者に対してであって、居住建物の「敷地」が他人に譲渡されてしまうと、敷地の新たな所有者に対しては配偶者居住権を主張できなくなると考えられます。
敷地が無断で譲渡されてしまったときに、

  • 配偶者は全く保護されないのか
  • 敷地を無断で譲渡した相続人に対して法的責任を追及できないのか

等に関しては、今後の裁判所の判断が待たれるところですが、配偶者が立ち退きを迫られる可能性があることに注意が必要です。

(8)配偶者居住権の存続期間が長いと、他の遺産からもらえる額が減少する可能性

配偶者居住権はその存続期間を決めることできますが、存続期間が長ければ長いほど、配偶者居住権の価格が高額となり、その分、他の遺産からもらえる額が少なくなる可能性があります。
特に終身で取得する場合には注意が必要です。

配偶者居住権の評価額の計算方法については、こちらの記事をご覧ください。

【まとめ】配偶者居住権を取得した配偶者には様々なデメリットがある

今回の記事をまとめますと、配偶者には、次のようなデメリットや注意点があります。

  1. 配偶者に建物の売却権限なし
  2. 賃貸に出すにも居住建物所有者の承諾が必要
  3. 増改築をするにも居住建物所有者の承諾が必要
  4. 居住建物の使い方への制限
  5. 通常の必要費は配偶者の負担
  6. 居住建物に何かあったときの通知義務
  7. 居住建物の敷地だけ売却されてしまうと配偶者居住権を主張できなくなる
  8. 配偶者居住権の存続期間が長いと、他の遺産からもらえる金額が減少する可能性

夫の死後も今の家に住める?相続人が配偶者居住権付き建物を所有するデメリット(3)」では、配偶者居住権付きの建物の所有権を取得した相続人が受け得るデメリットについてご説明します。

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この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

※¹:2024年2月時点。拠点数は、弁護士法人アディーレ法律事務所と弁護士法人AdIre法律事務所の合計です。