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アスベスト(石綿)訴訟 最高裁判決の内容は?国の対応と賠償金(和解金)制度

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yamazaki_sakura

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

アスベスト(石綿)訴訟において最高裁により国の責任を認める最高裁判決が言い渡されていることはご存じですか?

2014年10月9日、大阪泉南地域にあるアスベスト工場の元労働者やその遺族が、国を被告として賠償を求めた訴訟について、最高裁は、原告勝訴の判決(以下、「泉南アスベスト訴訟判決」といいます。)を言い渡しました。

現在、この最高裁判決をベースとして、国との和解要件が明確化されており、アスベスト工場の元労働者やその遺族は、国を被告とする国賠請求訴訟を提起し、国と裁判上の和解を成立させた場合、賠償金(和解金)を受け取ることができる仕組みが整備されています。
この仕組みによって、アスベスト工場の元労働者やそのご遺族は、最大1300万円の賠償金(和解金)を受け取ることが可能です。

本記事では、泉南アスベスト訴訟判決の内容や、和解要件、賠償金(和解金)額等について解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 大西 亜希子

香川大学、早稲田大学大学院、及び広島修道大学法科大学院卒。2017年よりB型肝炎部門の統括者。また、2019年よりアスベスト(石綿)訴訟の統括者も兼任。被害を受けた方々に寄り添うことを第一とし、「身近な」法律事務所であり続けられるよう奮闘している。東京弁護士会所属。

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アスベスト訴訟とは?

アスベスト訴訟とは、アスベストの製造加工やアスベスト含有製品を用いて業務を行ったことによって、アスベスト粉じんにばく露し、これを原因として石綿肺や肺がんなどのアスベスト関連疾患を発症したことについて、国や企業を被告として、その賠償を求める訴訟をいいます。

アスベスト訴訟は、大別すると2種類あり、アスベスト工場の元労働者やその遺族による訴訟を「工場型アスベスト訴訟」いい、アスベスト含有建材を用いて建設作業等に従事していた元建設作業員やその遺族による訴訟を「建設型アスベスト訴訟」といいます。
本記事では、主に、工場型アスベスト訴訟について解説していきます。

泉南アスベスト訴訟判決の内容

大阪泉南地域には、戦前戦後を通じて多数のアスベスト工場が存在していました。
泉南地域におけるアスベスト製品の製造等の工程では、多くのアスベスト粉じんが発生し、アスベスト工場に従事する労働者は、作業中、相当量のアスベスト粉じんにばく露しアスベスト関連疾患を発症することになりました。

そこで、大阪泉南地域にあるアスベスト工場の元労働者やその遺族は、国に対して、適切な規制権限を行使するなどしなかったことを理由に、アスベスト関連疾患を発症したことについてその賠償を求める訴訟を提起しました。

2014年10月9日、最高裁は、

労働大臣は、昭和33年5月26日には、旧労基法に基づく省令制定権限を行使して、罰則をもってアスベスト(石綿)工場に局所排気装置を設置することを義務付けるべきであったのであり、旧特化則が制定された昭和46年4月28日まで、労働大臣が旧労基法に基づく上記省令制定権限を行使しなかったことは、旧労基法の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、著しく合理性を欠くものであって、国家賠償法1条1項の適用上違法である

と判断し、国側敗訴の判決(以下、この判決を「泉南アスベスト(石綿)訴訟判決」といいます。)を言い渡しました。

泉南アスベスト(石綿)訴訟判決では、国の責任期間は、『1958年5月26日~1971年4月28日』とされました。
この期間内に局所排気装置を設置すべきアスベスト工場で作業に従事していた労働者に対して、国は賠償責任を負うということとになりました。

現在、この判決をもとに、同様の状況にあるアスベスト工場の元労働者及びその遺族については、国を相手に国家賠償請求訴訟を提起し、所定の要件を満たすことが確認されれば、国と裁判上の和解をすることにより賠償金(和解金)を受け取ることが可能となっています。

アスベスト訴訟における和解要件と賠償金額

現在、泉南アスベスト(石綿)訴訟判決をベースとして、国との和解要件および賠償金(和解金)額が明確化されております。
ここでは、国との和解要件、賠償金(和解金)額について解説します。

(1)和解要件

賠償金(和解金)を受け取るためには、次の3つの和解要件をすべて満たす必要があります。

(1-1)1958年5月26日~1971年4月28日までの間に局所排気装置を設置すべきアスベスト工場内においてアスベスト粉じんばく露作業に従事

泉南アスベスト(石綿)訴訟判決では、国が責任を負うべき期間は、「1958年5月26日~1971年4月28日までの期間」であるとされました。
そのため、この期間内に局所排気装置を設置すべきアスベスト工場内においてアスベスト粉じんばく露作業に従事したことが要件となります。

この要件を証明するための資料として、日本年金機構発行の被保険者記録照会回答書(当時の勤務先等が表示される)等が必要とされています。

(1-2)(1-1)の結果として、一定の健康被害を被ったこと

賠償の対象は、あくまでアスベスト工場内においてアスベスト粉じんばく露作業に従事したことによってアスベスト関連疾患を発症した方ですので、その他の原因によって肺がんなどの病気を発症した方は対象外となります。
したがって、(3-1)の結果として、一定の健康被害を被ったことが要件となります。

ここでいう一定の健康被害とは、

  • アスベスト(石綿)肺
  • 肺がん
  • 中皮腫
  • びまん性胸膜肥厚

をいいます。

(1-3)提訴の時期が損害賠償請求権の期間内であること

アスベスト粉じんばく露作業に従事したことを理由として国に対してその賠償を求める場合、国家賠償法4条により、民法724条が準用されますので、消滅時効は、「被害者又はその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間」、「不法行為の時から20年間」ということになります。

ただし、民法724条の2により、「人の生命または身体を害する」不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効は、「5年間」とされており(アスベスト訴訟の場合、「人の生命または身体を害する」不法行為に基づく損害賠償請求権となります)、改正民法施行日(2020年4月1日)の時点で、改正前民法の消滅時効(3年間)が完成していない場合には、改正民法の規定が適用され、消滅時効は「5年間」となるとされます。

民法の改正がありましたので、少々複雑となっていますが、次のように、2020年3月31日以前に被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った場合には、3年の時効となり、2020年4月1日以降に知った場合には、5年の時効となります。

そして、ここでいう被害者が「加害者を知った時」とは、被害者において、加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度にこれを知った時を意味すると裁判例上解釈されています(最高裁昭和48年11月16日第二小法廷判決)。つまり、単に加害者を知っているだけでは消滅時効は進行しません。

この点について、建設型アスベスト訴訟の裁判例ではありますが、大阪高判平成30年8月31日判決は、労災認定を受けることができた時点において、「損害及び加害者を知った時」にはあたらないとして、労災認定を受けることができた時点から消滅時効が進行するとした被告側の主張を退けました。

また、神戸地裁平成30年2月14日判決は、大手タイヤメーカーに従事したことで石綿被害にあった元労働者等が同社を相手にその賠償を求めた事件ですが、被告側の消滅時効の主張について、「権利の濫用として許されない」として、時効主張を認めませんでした。

被害者らは、法律や医学についての専門的知識を持ち合わせていることは多くはないため、被害者らが、病気の原因が就労時のアスベストばく露によるものであり、国や企業に対してその責任を法的に追及することができるものだと早期に知ることは大変困難です。

そのため、上記の裁判例のようなかたちで、消滅時効をなるべく被害者に有利な方向で解釈するのが妥当であるといえるでしょう。

(2)賠償金額

厚生労働省が公表している賠償金(和解金)額は以下のとおりです。
この表にある「じん肺管理区分」とは、じん肺健康診断に基づいて、じん肺を区分したものです(じん肺法4条2項)。

なお、じん肺とは、「粉じんを吸入することによって肺に生じた繊維増殖変化を主体とする疾病」(同法2条1項1号)をいい、アスベスト(石綿)粉じんを吸入したことによる石綿肺もこのじん肺の一つです。

粉じん作業に従事した事業場に勤務している間は、事業者によりじん肺健康診断が行われ、じん肺管理区分の決定申請等についても事業者が行うこととなっていますが、離職後については、ご自身でじん肺健康診断を受けて、お住まいの労働局へ申請をする必要があります。

じん肺管理区分の管理2で合併症がない場合 550万円
管理2で合併症がある場合 700万円
管理3で合併症がない場合 800万円
管理3で合併症がある場合 950万円
管理4、肺がん、中皮腫、びまん性硬膜肥厚の場合 1150万円
アスベスト(石綿)肺(管理2・3で合併症なし)による死亡の場合 1200万円
アスベスト(石綿)肺(管理2・3で合併症あり又は管理4)肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚による死亡の場合 1300万円

アスベスト訴訟で賠償金(和解金)を受け取るまでの流れ

工場型アスベスト訴訟で、賠償金(和解金)を受け取るまでの大まかな流れは次のようになります。

(1)弁護士への相談・契約

まずは、弁護士に法律相談をすることになります。
この際、弁護士の方から、アスベスト訴訟の概要やその事務所における手続きの進め方、着手金や報酬等についての説明がなされます。

また、どこの工場にいつからいつまで従事していたか、従事していた時の作業内容や様子、現在の症状や通院・治療歴、喫煙歴の有無、労災保険や石綿健康被害救済制度の利用の有無、じん肺管理区分の決定申請の有無などの事情が聴取され、賠償金(和解金)を受け取れる見込みの有無や程度、金額等についての話がされることでしょう。

そして、弁護士との相談内容に納得がいった場合、弁護士との間で委任契約書を作成し、契約を交わすこととなります。

(2)資料収集等の訴訟の準備

賠償金を受け取るためには、和解要件を満たすことを証明するための証拠を提出しなければなりません。

そのため、依頼者は、弁護士との契約が済んだ後、弁護士のアドバイスの下で資料収集を行います。資料によっては、弁護士がその収集を代行することもあるでしょう。
そして、弁護士は、個々の依頼者の症状や証拠収集の進展具合に応じて、訴訟でどのような主張をしてどのような証拠を提出するかを決定し、訴状等の作成に取り掛かります。

(3)訴訟提起・期日

必要な証拠の収集が完了し、訴状などの作成が完了したら、訴訟を提起します。
訴訟の提起や期日への出廷については、弁護士が依頼者の代理で行いますので、依頼者自身が出廷することは基本的にはありません。

(4)裁判上の和解の成立

提出された証拠から和解要件を満たすと裁判所に判断された場合、和解手続に移行します。その中で、国との間で裁判上の和解が成立した場合、訴訟は終了することになります。
和解が成立した場合、賠償金(和解金)が支払われることになります。

【まとめ】泉南アスベスト(石綿)訴訟判決では、1958年5月26日~1971年4月28日の間に、局所排気装置を設置すべきアスベスト工場で作業した労働者に対して賠償責任が認められた

本記事をまとめると次のようになります。

  • 泉南アスベスト(石綿)訴訟判決では、1958年5月26日~1971年4月28日の間に、局所排気装置を設置すべきアスベスト工場で作業した労働者に対して賠償責任が認められた
  • 現在、泉南アスベスト(石綿)訴訟判決をベースとして、国との和解要件、賠償金(和解金)額が明確化されており、アスベスト工場の元労働者やその遺族は、国を被告とする国賠請求訴訟を提起し、その中で国との間で裁判上の和解を成立させることによって、賠償金(和解金)を受け取ることが可能
  • 工場型アスベスト訴訟において賠償金(和解金)を受け取るまでのおおまかな流れは、『弁護士への相談・契約→資料収集等の訴訟の準備→訴訟提起・期日→裁判上の和解の成立』ということになる

アディーレ法律事務所では、アスベスト賠償金請求に関し、着手金、相談料はいただいておらず、原則として報酬は賠償金受け取り後の後払いとなっております。
そのため、当該事件をアディーレ法律事務所にご依頼いただく場合、原則としてあらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。

※以上につき、2023年1月時点

アスベスト被害に遭われた方またはそのご遺族の方は、アスベスト被害に積極的に取り組んでいるアディーレ法律事務所にお気軽にご相談ください。

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