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アスベストで健康被害を受けた場合に出る症状は?国からもらえるお金も解説

作成日:更新日:
リーガライフラボ

※アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

「最近体調が悪い。もしかして、昔働いていた工場でアスベストを吸ってしまったせいで、何かの病気になったのだろうか……」
アスベスト(石綿)を吸ってしまった場合、石綿肺や肺がん等の重い病気を発症する可能性があります。

しかも、アスベスト(石綿)を吸ってもただちに症状が出るわけではありません。通常、数十年という長い潜伏期間を経てから症状が出ます。
どのような症状が出るのか把握して、該当する症状がみられる場合には、医療機関等の診察を受けるようにしましょう。

本記事では、

  • アスベスト(石綿)を吸ったことにより出る症状
  • アスベスト(石綿)による健康被害に遭ってしまった場合の国の救済制度

について、弁護士が解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 大西 亜希子

香川大学、早稲田大学大学院、及び広島修道大学法科大学院卒。2017年よりB型肝炎部門の統括者。また、2019年よりアスベスト(石綿)訴訟の統括者も兼任。被害を受けた方々に寄り添うことを第一とし、「身近な」法律事務所であり続けられるよう奮闘している。東京弁護士会所属。

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石綿健康被害救済法や労災保険の給付を受けている方でも、賠償金の対象になります!

アスベスト(石綿)を吸い込んだ場合の症状とは?

アスベスト(石綿)を吸い込んだ場合、どのような症状がみられるのでしょうか。
まずは、アスベスト(石綿)によって健康被害が生じる理由から解説します。

(1)アスベスト(石綿)で健康被害が起きる理由

アスベスト(石綿)は、飛び散りやすく、空気中に漂いやすいという性質を持っています。そのため、研磨機や切断機による作業や、吹き付け作業等を行う際に、適切な措置を行わないと、人体に吸われやすくなってしまいます。

そして、人体にいったん吸われると、肺胞に沈着し、その一部は肺の組織内に長期間滞留することになります。
この肺に長期間滞留したアスベスト(石綿)の刺激によって、石綿肺、中皮腫、肺がんなどのアスベスト(石綿)関連疾患を引き起こされると考えられています。

なお、現時点では、どの程度のアスベスト(石綿)を吸うと、健康被害に遭うということは明らかになっていません。

参考:アスベスト(石綿)に関するQ&A|厚生労働省

(2)アスベスト(石綿)を吸って起こる症状

アスベスト(石綿)を吸ってしまってもすぐに症状が起こることは稀です。
通常、発病するまで潜伏期間を挟み、しかも、発病してもある程度進行するまでは症状が出ないことが多いです。
逆にいえば症状が出たときには、ある程度症状が進んでいる可能性があります。

次の症状は、アスベスト(石綿)を吸ったことで病気になると、出る可能性のある症状です。

  • 息切れがひどくなった
  • 咳(せき)や痰(たん)が以前に比べて増えた
  • 痰の色が変わった
  • 痰に血液が混ざった
  • 顔色が悪い
  • 爪の色が紫色
  • はげしい動悸がする
  • 風邪をひいても、なかなか治らない
  • 微熱が続く
  • 高熱が出る
  • 横になると息苦しい
  • 食欲がなくなった、急にやせた
  • 妙に眠い

これらの症状が出た場合には、医療機関等の診察を早めに受けましょう。
また病気が進行しているのに、なかなか症状が出ないこともあります。そのため、アスベスト(石綿)を吸った可能性のある方は、症状が出ていなくとも定期的な検査をすることをお勧めします。

参考:3 日常生活における症状はありますか?│厚生労働省

(3)アスベスト(石綿)による病気別の症状

ここでは、アスベスト(石綿)を吸うと発症する可能性のある病気とその症状について解説します。

(3-1)石綿肺

石綿肺とは、肺が線維化するじん肺の一つで、アスベスト(石綿)の吸引によって発症する病気の1つです。
じん肺は、吸った粉じんが肺胞に沈着して肺の繊維化を起こす病気の総称です。特に、アスベスト(石綿)を吸ったせいで発生するじん肺を「石綿肺」と呼びます。
通常、アスベスト(石綿)を吸引してから10年以上経過して症状が現れます。

初期症状には息切れ、咳、痰がみられます。
石綿肺患者の約15%には、症状が進行して重度の息切れや呼吸不全が現れるといいます。
また、肺結核、肺がん、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、気管支拡張症、気胸などの合併症がみられます。

初期症状は…                 症状が進行すると…

参考:アスベスト(石綿)に関するQ&A|厚生労働省
参考:アスベスト(石綿)とは? 石綿(アスベスト)関連疾患 石綿肺|独立行政法人 環境再生保全機構

(3-2)肺がん(原発性肺がん)

原発性肺がんは、気管支または肺胞を覆う上皮に発生する悪性腫瘍です。
原発性肺がんはアスベスト(石綿)の吸引以外でも発症する可能性のある病気であり、喫煙等も原発性肺がんの重要な危険因子とされています。
通常、アスベスト(石綿)の吸引から原発性肺がんを発症するまで、30~40年程度の長い潜伏期間をはさみます。

症状は、咳、痰、血痰、胸の痛み、動いたときの息苦しさ、発熱などがありますが、肺がんができた場所や大きさによってはほとんど症状がでないこともあります。

参考:アスベスト(石綿)に関するQ&A|厚生労働省
参考:アスベスト(石綿)とは? 石綿(アスベスト)関連疾患 肺がん(原発性肺がん)|独立行政法人 環境再生保全機構

(3-3)悪性中皮腫

中皮とは、胸膜、心膜、腹膜などの内臓を覆う膜の表面を覆う薄い細胞層をいいます。
中皮腫とは、この中皮細胞から発生する悪性腫瘍をいいます。
平均潜伏期間は40~50年と非常に長く、20年以下での発症例は非常に少ないです。10年未満での発症例はないといわれます。

症状としては、咳、胸の痛み、大量の胸水による呼吸困難や胸部圧迫感があり、原因不明の発熱や体重減少がみられる場合もあります。

参考:アスベスト(石綿)に関するQ&A|厚生労働省
参考:アスベスト(石綿)とは? 石綿(アスベスト)関連疾患 中皮腫|独立行政法人 環境再生保全機構

(3-4)びまん性胸膜肥厚

びまん性胸膜肥厚とは、肺を覆う胸膜が線維化し肥厚する病気をいいます。
びまん性胸膜肥厚は、アスベスト(石綿)の吸引以外の原因によっても発症する可能性があります。
この点、胸膜の肥厚という点で共通している良性胸膜プラークという良性の病変があります。この良性胸膜プラークは、アスベスト(石綿)の吸引以外によって発症することはほとんどないといわれており、「我が国では、胸膜プラークは石綿ばく露によってのみ発生すると考えて良い」とされています。

参考:IV 石綿肺、肺がん、中皮腫以外の石綿による疾病等についての検討|厚生労働省

なお、良性胸膜プラークは、それ自体では肺機能障害を伴わず、胸膜の疾患を意味するものではありません。
潜伏期間は、アスベスト(石綿)粉じんをどの程度吸引したかにより差があり、30~40年程度です。
症状については、呼吸困難、胸の痛みがあります。

参考:アスベスト(石綿)とは? 石綿(アスベスト)関連疾患 びまん性胸膜肥厚|独立行政法人 環境再生保全機構

(3-5)良性石綿胸水

胸水とは、胸腔内に体液が貯留されることで、アスベスト(石綿)の吸引以外の原因によっても生じます。
アスベスト(石綿)の吸引によって胸腔内に胸膜炎による胸水が貯留することを、「良性石綿胸水」といいます。
アスベスト(石綿)の吸引から15年以内で発症することもありますが、平均潜伏期間は40年程度です。
呼吸困難や胸の痛みといった自覚症状があることもあれば、自覚症状がないこともあります。

なお、良性石綿胸水は、労災保険給付の対象とはなりますが、石綿健康被害救済法による救済の対象とはなりませんのでご注意ください。

参考:アスベスト(石綿)とは? 石綿(アスベスト)関連疾患 <参考> 良性石綿胸水(救済給付の対象外)|独立行政法人 環境再生保全機構

アスベスト(石綿)の健康被害に対し、国からもらえるお金がある

「もしこの症状がアスベストの健康被害だった場合、この後どうなるのだろうか。体調も心配だし、治療費もいっぱいかかるんじゃないか。などお金の面も心配」

このような方も多いことでしょう。

アスベスト(石綿)によって健康被害に遭った場合、一定の要件を満たせば、国からお金をもらえる可能性があります。

例えば、労災保険制度や石綿健康被害救済制度を利用することにより、医療費などをもらえる可能性があります。
また、アスベスト(石綿)工場に就労することでアスベスト(石綿)を吸引し発病した方や、アスベスト(石綿)含有建材を用いて建設作業に従事したことでアスベスト(石綿)を吸引し発病した方については、アスベスト訴訟等により賠償金や給付金を受けることができる可能性もあります。

ここでは、アスベスト(石綿)を吸ったことによって発病した方が、国からもらえるお金について解説します。

(1)労災保険

労災保険に加入(または特別加入)している方は、労働基準監督署長あてに申請を行うことによって、労災保険給付を受けることができる可能性があります。

なお、労働者(パートやアルバイトを含む)を1人でも雇っている会社には、基本的には労災保険への加入義務が課されます。
そのため、会社などで働いている方のほとんどは、労災保険給付の対象となります。

【要件について】
労災保険給付を受けるためには、次の条件を満たす必要があります。

  • 石綿肺・中皮腫・肺がん・良性石綿胸水・びまん性胸膜肥厚を発症している
  • 労働者としてアスベスト(石綿)を取り扱う仕事に従事していたことによって、これらの病気を発症したこと(業務上疾病)が認められる

発症した疾病が業務上疾病であると認定される具体的な要件については、次の記事で詳しく解説しています。
アスベストによる労災保険の要件について詳しくはこちらをご覧ください。

アスベストによる労災保険の要件は?給付の要件・内容・申請方法について解説

参考:石綿(アスベスト)による疾病の労災認定|厚生労働省

【保険給付の内容について】
労災保険による給付の内容は次のとおりです。
※保険給付には、消滅時効があります。消滅時効を経過してしまうと保険給付を受けることができなくなってしまうので注意が必要です。

保険給付の種類保険給付を受けられる場合保険給付の内容時効
療養補償給付業務上疾病等により療養する場合治療費、入院の費用、看護料、移送費等通常療養のために必要なもの療養の費用を支出した日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年
休業補償給付傷病の療養のため、労働することができず賃金を受けられない場合休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の60%相当額賃金を受けない日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年
傷病補償年金療養開始後1年6ヶ月経っても傷病が治らず、障害の程度が障害等級(1~3級)に該当する場合障害の程度に応じ、給付基礎日額の313~245日分の年金
第1級 313日分
第2級 277日分
第3級 245日分
監督署長の職権により移行されるため請求時効はない
障害補償給付傷病が治って身体障害が残った場合障害等級にしたがって、第1~7級までは、給付基礎日額の313~131日分の年金。
第8~14級までは、給付基礎日額の503~56日分の一時金。
傷病が治癒した日の翌日から5年
介護補償給付傷病年金または障害年金の対象となる障害により、介護を受けている場合常時介護の場合は、介護の費用として支出した額(ただし、16万6950円を上限とする)。
親族等により介護を受けており介護費用を支出していない場合、または支出した額が7万2990円を下回る場合は、7万2990円。
随時介護の場合は、介護の費用として支出した額(ただし、8万3480円を上限とする)。
親族等により介護を受けており、介護費用を支出していない場合または支出した額が3万6500円を下回る場合は3万6500円。
介護を受けた月の翌月の1日から2年
遺族補償給付労働者が死亡した場合遺族の数等に応じ、給付基礎日額の245~153日分の年金。
1.遺族(補償)等年金を受け得る遺族がないとき、または、2.遺族(補償)等年金を受けている人が失権し、かつ、他に受け得る人がいない場合であって、すでに支給された年金の合計額が給付基礎日額の1000日分に満たないときは、給付基礎日額の1000日分の一時金(2の場合は、すでに支給した年金の合計額を差し引いた額)
被災労働者が亡くなった日の翌日から5年
葬祭料労働者が死亡した場合31万5000円に給付基礎日額の30日分を加えた額(その額が給付基礎日額の60日分に満たない場合は、給付基礎日額の60日分)被災労働者が亡くなった日の翌日から2年

(2)石綿健康被害救済制度

アスベスト(石綿)による健康被害に遭ってしまった場合、「石綿による健康被害の救済に関する法律」(「石綿健康被害救済法」といってご説明します)に基づく給付を受けることができる可能性があります。

この石綿健康被害救済法は、労災給付の対象とならない方(アスベスト(石綿)工場の周辺住民等でアスベスト(石綿)による健康被害に遭われた方など)や、労災保険の対象であったが時効が経過してしまい給付を受けることができなくなった方について、その迅速な救済を図るために制定されました。

そのため、労災保険の対象とならない方であっても、次にご説明する要件を満たすことによって石綿健康被害救済法に基づく給付を受けることが可能です。

なお、労災保険の対象となる方については、同法に基づく給付の対象とはなりませんのでご注意ください。
申請・請求から認定までの流れについてはこちら
申請に必要な書類についてはこちら
申請窓口についてはこちらをご参照ください。

参考:アスベスト(石綿)健康被害救済給付の概要|独立行政法人 環境再生保全機構

【要件について】

  • 「日本国内において石綿を吸ったことにより指定疾病にかかった旨の認定を受けた」こと(石綿健康被害救済法4条1項)
    または
  • 指定疾病にかかって死亡した者の遺族である旨の認定を受けること(同法5条1項)
    が要件です。
    そして、「指定疾病」とは、アスベスト(石綿)を吸ったことにより発症する疾病であって、次の4種類の疾病をいいます(同法2条1項)。
    • 中皮腫
    • 肺がん
    • 著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺
    • 著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚

【給付の内容について】
給付の内容は次のとおりです。
こちらも請求期限がありますので注意しましょう。

(ア)指定疾病で療養中の方への給付

給付の種類請求できる場合給付内容請求期限
医療費被認定者で認定疾病にかかる医療を受け、自己負担額が発生した場合療養を開始した日以降の健康保険等による給付の額を控除した自己負担額医療費の支払いを行った日の翌日から2年以内。ただし、療養を開始した日から申請日の前日までの医療費については、申請日から2年以内。
療養手当被認定者であれば、月を単位として定額支給される。療養を開始した日の翌月から、支給する事由が消滅した日の属する月まで月額10万3870円なし

(イ)指定疾病で療養中の方が救済制度で認定後に死亡した場合の給付

給付の種類請求できる場合給付内容請求期限
葬祭料死亡した被認定者の葬祭を行う場合19万9000円被認定者が死亡した日の翌日から2年以内
未支給の医療費・療養手当死亡した被認定者に支払うべき医療費・療養手当で、被認定者に未支給のものがある場合、被認定者が死亡した当時、被認定者と生計を同じくしていた二親等以内の親族のうち最優先順位の者に支給される。医療費については、死亡した被認定者が、療養を開始した日以降にかかった認定疾病にかかる保険医療費の自己負担分のうち、医療費として被認定者に支給していないもの。
療養手当については、対象月のうち、未支給となっているもの。
医療費の支払いを行った日の翌日から2年以内。
ただし、療養を開始した日から申請日の前日までの医療費については、申請日から2年以内。
救済給付調整金被認定者に支給された医療費と療養手当および遺族に支給した未支給の医療費・療養手当の合計金額が280万円に満たない場合、その差額を、被認定者が死亡した当時、被認定者と生計を同じくしていた二親等以内の親族のうち最優先順位の者に支給される。被認定者に対して支給された医療費、療養手当および未支給の医療費・療養手当の合計金額が280万円に満たない場合、その差額。
なお、医療費には、石綿健康被害医療手帳を医療機関に提示することにより支給された医療費を含む。
被認定者が死亡した日の翌日から2年以内。

(ウ)救済制度に申請する前に指定疾病で死亡した場合の給付(疾病が中皮腫・石綿による肺がんの場合)

給付の種類請求できる場合給付内容請求期限
特別遺族弔慰金・特別葬祭料(2006年3月26日以前に死亡した場合)石綿健康被害救済法施行日(2006年3月27日)以前に、指定疾病に起因して死亡した者の遺族で、死亡した当時、その者と生計を同じくしていた二親等親族のうち最優先順位の者に支給される。特別遺族弔慰金として280万円。
特別葬祭料として19万9000円。
2022年3月27日まで
特別遺族弔慰金・特別葬祭料(2006年3月27日以降に死亡した場合)石綿健康被害救済法施行日(2006年3月27日)以降に認定の申請を行わず指定疾病により死亡した者の遺族で、その者と生計を同じくしていた二親等親族のうち最優先順位の者に支給される。特別遺族弔慰金として280万円。
特別葬祭料として19万9000円。
死亡した日の翌日から15年以内。
ただし、中皮腫または肺がんにより、2006年3月27日~2008年11月30日までに死亡した者の遺族からの請求は、2023年12月1日まで。

(エ)救済制度の申請する前に指定疾病により死亡した場合の給付(疾病が著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺・著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚)

給付の種類請求できる場合給付内容請求期限
特別遺族弔慰金・特別葬祭料(2010年6月30日以前に死亡した場合)改正政令施行日(2010年7月1日)より前に指定疾病により死亡した者の遺族で、死亡した当時、その者と生計を同じくしていた二親等親族のうち最優先順位の者に支給される。特別遺族弔慰金として280万円。
特別葬祭料として19万9000円。
2026年7月1日まで
特別遺族弔慰金・特別葬祭料(2010年7月1日以降に死亡した場合)改正政令施行日(2010年7月1日)以降に指定疾病により死亡した者の遺族で、死亡した当時、その者と生計を同じくしていた二親等親族のうち最優先順位の者に支給される。特別遺族弔慰金として280万円。
特別葬祭料として19万9000円。
死亡した日の翌日から15年以内

(3)アスベスト(石綿)訴訟等

アスベスト(石綿)工場での労働が原因でアスベスト(石綿)による健康被害に遭われた方またはそのご遺族については、工場型アスベスト訴訟により賠償金をもらえる可能性があります。

また、アスベスト(石綿)含有建材を用いた建設作業によってアスベスト(石綿)による健康被害に遭われた方またはそのご遺族については、建設アスベスト(石綿)給付金をもらえる可能性があります。

(3-1)工場型アスベスト(石綿)訴訟について

大阪泉南地域にあるアスベスト(石綿)工場の元労働者やその遺族が、国に対して、適切な規制権限を行使するなどしなかったことを理由に、アスベスト(石綿)関連疾患に罹患したことについてその賠償を求める訴訟を提起し、2014年10月9日、最高裁は、国側敗訴の判決(この判決を「大阪泉南判決」といってご説明します)を出しました。

現在、この判決をもとに、同様の状況にあるアスベスト(石綿)工場の元労働者及びその遺族については、国を相手に国家賠償請求訴訟を提起し、所定の要件を満たすことが確認されれば、国と裁判上の和解をすることにより賠償金を受け取ることが可能となっています。

国と和解を成立させるためには、次のすべての要件を満たす必要があります。

  • 1958年5月26日~1971年4月28日までの間に、局所排気装置を設置すべき石綿工場内において、アスベスト(石綿)粉じんにさらされる業務に従事したこと
  • その結果、アスベスト(石綿)による一定の健康被害を被ったこと
  • 訴えを提起した時期が損害賠償請求権の期間内であること

なお、ここでいう『一定の健康被害』とは、次の4つの疾病を指します。

  • アスベスト(石綿)肺
  • 肺がん
  • 中皮腫
  • びまん性胸膜肥厚

厚生労働省が公表している賠償金(和解金)額は次のとおりです。

病態賠償金額
石綿肺(じん肺管理区分の管理2)550万円(合併症がない場合)
700万円(合併症がある場合)
石綿肺(じん肺管理区分の管理3)800万円(合併症がない場合)
950万円(合併症がある場合)
石綿肺(じん肺管理区分の管理4)、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚1150万円
上記疾病による死亡症状に応じて
1200万~1300万円

※この表にある「じん肺管理区分」とは、じん肺健康診断の結果を基に、じん肺を区分したものです(じん肺法4条2項)。

じん肺とは、「粉じんを吸引することによって肺に生じた繊維増殖変化を主体とする疾病」(同法2条1項1号)をいい、アスベスト(石綿)粉じんを吸引したことによる石綿肺もこのじん肺の一つとなります。
粉じん作業に従事した事業場に勤務している間は、事業者によりじん肺健康診断が行われ、じん肺管理区分の決定申請等についても事業者が行うこととなっています。

これに対して、離職後にじん肺管理区分の決定を受けるためには、ご自身でじん肺健康診断を受けて、お住まいの労働局へ申請をする必要があります。
じん肺管理区分の決定申請をお考えの方は、お住まいの労働局へお問い合わせください。

参考:アスベスト訴訟(工場労働者型)|法務省
参考:石綿(アスベスト)工場の元労働者やその遺族の方々との和解手続について|厚生労働省

(3-2)建設アスベスト給付金について

給付金の支給要件は、次の2つです。

  • 特定石綿被害建設業務労働者等であること
  • 期間制限を経過していないこと

給付金額については、『疾病の類型によって基本的な給付金額を算出→減額事由の有無により減額』というプロセスで決定されます。

【基本的な給付金額】

[疾病][金額]
(a)じん肺管理区分管理2の石綿肺又はこれに相当する者で指定合併症にかかっていない者550万円
(b)じん肺管理区分管理2の石綿肺又はこれに相当する者で指定合併症にかかった者700万円
(c)じん肺管理区分管理3の石綿肺又はこれに相当する者で指定合併症にかかっていない者800万円
(d)じん肺管理区分管理3の石綿肺又はこれに相当する者で指定合併症にかかった者950万円
(e)中皮腫、肺がん若しくは著しい呼吸器障害を伴うびまん性胸膜肥厚にかかった者、じん肺管理区分管理4の石綿肺にかかった者若しくはこれに相当する者又は良性石綿胸水にかかった者1150万円
(f)(a)又は(c)により死亡した者1200万円
(g)(b)(d)(e)により死亡した者1300万円

減額事由は、石綿ばく露期間による減額、喫煙習慣による減額の2つです。

【石綿ばく露期間による減額】
下記表の石綿ばく露期間を下回る場合には、100分の90に減額されます。

[疾病][石綿ばく露期間]
肺がん又は石綿肺10年
びまん性胸膜肥厚3年
中皮腫又は良性石綿胸水1年

減額後の給付金額は次の表のようになります。

[疾病][金額]
(a)じん肺管理区分管理2の石綿肺又はこれに相当する者で指定合併症にかかっていない者495万円
(b)じん肺管理区分管理2の石綿肺又はこれに相当する者で指定合併症にかかった者630万円
(c)じん肺管理区分管理3の石綿肺又はこれに相当する者で指定合併症にかかっていない者720万円
(d)じん肺管理区分管理3の石綿肺又はこれに相当する者で指定合併症にかかった者855万円
(e)中皮腫、肺がん若しくは著しい呼吸器障害を伴うびまん性胸膜肥厚にかかった者、じん肺管理区分管理4の石綿肺にかかった者若しくはこれに相当する者又は良性石綿胸水にかかった者1035万円
(f)(a)又は(c)により死亡した者1080万円
(g)(b)(d)(e)により死亡した者1170万円

【喫煙習慣による減額】

肺がんにかかった特定石綿被害建設業務労働者等で、喫煙習慣がある者については、100分の90に減額されます。なお、石綿ばく露期間による減額事由も認められる場合、石綿ばく露期間による減額により算出された金額に、100分の90を乗じた金額が給付金額とされます。

[疾病][ばく露期間減額の有無][減額後の金額]
肺がんによる死亡ばく露期間による減額なし1170万円
ばく露期間による減額あり1053万円
肺がんばく露期間による減額なし1035万円
ばく露期間による減額あり931万5000円

参考:建設アスベスト給付金制度について|厚生労働省

【まとめ】アスベストを吸ったことで、咳や痰の増加等の症状が発生することがある

今回の記事をまとめると次のようになります。

  • アスベスト(石綿)を吸うと、アスベスト(石綿)が肺胞に沈着し、長期間の潜伏期間を経た後、様々な症状を引き起こす可能性がある。
  • アスベスト(石綿)により発症する可能性のある病気としては、石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水等がある。
  • 症状は様々であり、咳や痰の増加、胸の痛みや呼吸障害を伴うものもあれば、自覚症状がない場合もある。
  • アスベスト(石綿)の健康被害に遭った方については、要件を満たせば、次のお金がもらえる可能性がある。
    • 労災保険給付
    • 石綿健康被害救済制度による給付
    • 工場型アスベスト(石綿)訴訟による賠償金
    • 建設アスベスト(石綿)給付金

アスベスト(石綿)による症状かも?と心配になった方は、早めに病院で検査してもらいましょう。
万が一、アスベスト(石綿)のせいで病気にかかったことが判明した場合、体調のことだけでなく、今後の治療費や生活費などの心配もでてきます。

アスベストのせいで健康被害に遭ってしまった場合、要件を満たせばもらえるお金があります。もらえる方はもらっておくと、心配を少しでも減らすことができます。

アディーレ法律事務所では、工場型アスベスト訴訟、建設アスベスト給付金の手続きに関し、相談料、着手金ともにいただかず、原則として成果があった場合のみ報酬をいただくという成功報酬制です。
そして、原則として、この報酬は獲得した賠償金や給付金からお支払いとなり、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。

また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。
※以上につき、2023年1月時点

現在、アディーレ法律事務所では、アスベスト(石綿)被害に悩まれておられる方を一人でも多く救いたいとの想いから、アスベスト(石綿)被害についての相談をお待ちしております。

アスベスト(石綿)被害にあわれた方およびそのご遺族は、アディーレ法律事務所にお気軽にご相談ください。

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