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【弁護士が解説】建設アスベスト 国と企業の責任認める 最高裁が初判決

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2021年5月17日、最高裁判所第一小法廷により、4つの建設アスベスト(石綿)訴訟(横浜訴訟、東京訴訟、京都訴訟、大阪訴訟)について、国及び建材メーカーの責任を認める判決が出されました。
また、同月18日、この最高裁判決を受け、建設アスベスト(石綿)訴訟の原告団・弁護団等は、国との間で基本合意書を締結しました。これにより、原告と国と間で和解が成立することになります。

本記事では、2021年5月17日に言い渡された最高裁判決について解説します。

建設アスベスト(石綿)訴訟のこれまでの経緯

建設型アスベスト(石綿)訴訟とは、アスベスト(石綿)含有建材を用いて建設作業に従事していた元建設作業員らが、適切な規制権限を行使しなかった国及びアスベスト(石綿)含有建材を製造・販売した建材メーカーを相手に賠償を求める訴訟をいいます。
日本に輸入されるアスベスト(石綿)の大部分が建材に使用されていましたが(1995年ころには、日本のアスベスト(石綿)消費量のうち、約9割を建材製品が占めるようになっていました)、アスベスト(石綿)には人体に対する非常に高い有害性があり、アスベスト(石綿)含有建材を用いて作業に従事していた建設作業員らにアスベスト(石綿)被害が多発していました。
建材メーカーは、このようなアスベスト(石綿)の有害性を知りながら、その有害性について何らの警告もせずに、アスベスト(石綿)含有建材の製造販売を行い利益を上げ続け、国もこれらに適切な規制を課していませんでした。
このような国と建材メーカーの責任を問うため、2008年に東京地裁で集団訴訟が提起されたことを皮切りに、横浜、京都、大阪、福岡、札幌、さいたま、仙台の各地の地方裁判所で同様の提訴がなされるに至りました。

今回最高裁判決が言い渡された横浜訴訟、東京訴訟、京都訴訟、大阪訴訟については、すでに高等裁判所により判決が言い渡されていました。

国の責任一人親方等に対する国の責任建材メーカーの責任
東京高判平成29年10月27日
(横浜訴訟)
東京高判平成30年3月14日
(東京訴訟)
大阪高判平成30年8月31日
(京都訴訟)
大阪高判平成30年9月20日
(大阪訴訟)

上記のように、東京高判平成29年10月27日(横浜訴訟)では、労基法上の労働者に該当しない一人親方等に対する国の責任が否定されており、東京高判平成30年3月14日(東京訴訟)では、建材メーカーの責任が否定されていました。

その後、令和に入り、東京訴訟、京都訴訟、大阪訴訟について、国の上告受理申立てを不受理とする最高裁決定が出され、一人親方等を含む労働者すべてに対する国の責任が確定しました。また、京都訴訟、大阪訴訟については、建材メーカーの上告受理申立てを不受理とする最高裁決定が出されており、建材メーカーの責任が確定ました。
今回の最高裁判決は、国の責任や建材メーカーの責任を前提とした上で、どのような理由付けをするかに焦点があてられていました。

最高裁判決の内容

それでは、今回言い渡された最高裁判決の内容とはどのようなものだったのでしょうか。具体的にみていきましょう。

(1)国の責任

建設アスベスト(石綿)訴訟において国の責任を判断する上で、複数の論点が存在していました。
ここでは、

  • 国の加害行為
  • 国の責任期間
  • 一人親方等に対する責任の有無
  • 屋外作業者に対する責任の有無

について解説していきます。

(1-1)加害行為

建設アスベスト(石綿)訴訟では、国のどのような行為を加害行為ととらえるかが論点となっていました。
今回の最高裁判決では、

  1. 安衛法に基づく規制権限を行使して、通達を発出するなどして、
    (1)石綿含有建材の表示
    (2)石綿含有建材を取り扱う建設現場における掲示
    として次の各事項を示すよう指導監督する義務
    (ア)石綿含有建材から生ずる粉じんを吸入すると石綿肺、肺がん、中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること
    (イ)石綿含有建材の切断等の石綿粉じんを発散させる作業及びその周囲における作業をする際には必ず適切な防じんマスクを着用する必要があること
  2. 安衛法に基づく省令制定権限を行使して事業者に対し、<屋内建設現場において上記各作業に従事する労働者に呼吸用保護具を使用させることを義務付ける>という義務

があり、これらの義務を怠って権限を行使しなかったことが加害行為とらえられています。

参照:最高裁判所第一小法廷 判決 令和3年5月17日|裁判所 – Courts in Japan

(1-2)国の責任期間

国の責任期間とは、国が責任を負う期間のことです。責任期間外に作業に従事していた被害者に対しては、国は責任を負いません。
これまでの判決では、国の責任期間について異なる判断がなされていました。
今回の最高裁判決では、改正特化則の施行日である1975年10月1日から、改正安衛令施行日前日である2004年9月30日までの間が国の責任期間であると判断されています。
なお、最高裁判決では明示されていませんが、大阪高判平成30年8月31日判決では、石綿吹付け作業については、1972年10月1日が責任期間の始期と判断されており、後述する基本合意書においても、石綿吹付作業については、1972年10月1日からが責任期間とされています。

(1-3)一人親方等に対する責任の有無

一人親方や個人事業主等の労働基準法(以下「労基法」といいます。)上の労働者に該当しない建設作業員に対する国の責任については、これまでこれを否定する判決も言い渡されていました。
これは、国の規制権限の根拠となる労働安全衛生法(以下「安衛法」といいます。)が、「労働者の安全と健康を確保する」ことを目的としており(安衛法1条)、警告表示の規制権限の法的根拠である安衛法57条は「労働者に危険を生ずるおそれのある物」について警告表示を義務付けているところ、安衛法上の「労働者」については、安衛法2条2号により、労基法上の労働者と定義されていることと関係しています。つまり、安衛法57条は、あくまで労基法上の労働者を保護する目的の下、国の規制権限を定めているのであるから、労基法上の労働者に該当しない者に対してまで国は責任を負わないという論理です。
しかし、今回の最高裁判決では、

安衛法57条は,これを取り扱う者に健康障害を生ずるおそれがあるという物の危険性に着目した規制であり,その物を取り扱うことにより危険にさらされる者が労働者に限られないこと等を考慮すると,所定事項の表示を義務付けることにより,その物を取り扱う者であって労働者に該当しない者も保護する趣旨のものと解するのが相当である

引用:最高裁判所第一小法廷 判決 令和3年5月17日|裁判所 – Courts in Japan

などの理由から、労基法上の労働者に該当しない一人親方等に対する国の責任を認める判断をしました。

(1-4)屋外作業者に対する責任の有無

屋外作業者に対する国の責任については、これまで国の責任が否定される傾向にありました。
今回の最高裁判決でも、国が屋外作業者に対する危険性を予見することはできなかったとして、屋外作業者に対する国の責任は否定されています。

(2)建材メーカーの責任

建材メーカーの責任との関係では、

  • 加害行為をどのように考えるか
  • 共同行為者の特定方法
  • 屋外作業者に対する責任の有無

について解説します。

(2-1)加害行為

最高裁判決では、

石綿含有建材を製造販売する際に,当該建材が石綿を含有しており,当該建材から生ずる粉じんを吸入すると石綿肺,肺がん,中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること等を当該建材に表示する義務

引用:最高裁判所第一小法廷 判決 令和3年5月17日|裁判所 – Courts in Japan

が建材メーカーにあるとされ、このような警告表示義務を行わなかったことをもって加害行為としています。

(2-2)共同行為者の特定方法

最高裁判決では、民法719条1項後段の類推適用により建材メーカーの共同不法行為責任が認められています。
民法719条1項後段が類推適用されるためには、被災者との関係で、被告である建材メーカーが共同行為者と認められることが必要になります。そして、被告である建材メーカーが共同行為者であると認められるためには、当該被告建材メーカーの製造した建材が原告の建築現場に到達した事実を立証する必要があり、その立証方法について争いがありました。
原告側は、被災当時における被告建材メーカーのマーケットシェアを主軸とした立証方法により、その事実を立証しようとしていました。この立証方法は、被災者ごとに特定した石綿含有建材のうち、同種の建材の中での被告建材メーカーが製造した石綿含有建材の市場占有率がおおむね10%以上であれば、当該被告建材メーカーが製造した石綿含有建材が当該原告らが就労する建築現場に到達した蓋然性が高いとするものです。
東京高裁判決平成30年3月14日では、この方法による立証を否定されていたのですが、最高裁判決は、

本件立証手法により建材現場到達事実が立証され得ることを一律に否定した原審の判断には、経験則又は採証法則に反する違法がある

引用:最高裁判所第一小法廷 判決 令和3年5月17日|裁判所 – Courts in Japan

として、東京高裁の判断を否定し、マーケットシェアを主軸とする立証方法によって当該被告建材メーカーの製造した建材が原告の建築現場に到達した事実を立証できる場合があることを認めました。

(2-3)屋外作業者に対する責任の有無

屋外作業者に対する建材メーカーの責任については、これまでこれを否定する判決と、肯定する判決で分かれていました。
今回の最高裁判決では、

上告人建材メーカーらにおいて,平成13年から平成15年12月31日までの期間に,自らの製造販売する石綿含有建材を使用する屋外建設作業に従事する者に石綿関連疾患にり患する危険が生じていることを認識することができたということはできない

引用:最高裁判所第一小法廷 判決 令和3年5月17日|裁判所 – Courts in Japan

被告積水化学工業が,昭和50年から平成2年までの期間に,自らの製造販売する石綿含有建材を使用する屋外建設作業に従事する者に石綿関連疾患にり患する危険が生じていることを認識することができたということはできない

引用:最高裁判所第一小法廷 判決 令和3年5月17日|裁判所 – Courts in Japan

と判断され、被告建材メーカーが屋外作業者に対する危険性を予見することはできなかったとして、屋外作業者に対する責任を否定する判断がなされています。

基本合意書の内容

最高裁判決が言い渡された翌日の2021年5月18日、建設アスベスト(石綿)訴訟の原告団・弁護団等と国との間で基本合意書が締結されました。
基本合意書の内容は以下のとおりです。

【要件】
2021年5月17日以前に提訴して、現在も訴訟が続いている原告については、以下の1~4までのすべての事由に該当する場合には、特段の事由がない限り、裁判上の和解をするとされています。

(1) 各原告(石綿関連疾患に罹患した当事者。石綿関連疾患に罹患後に死亡した者の相続人を当事者とする事案にあっては、その死亡者。以下同じ。)(労働者並びに一人親方及び労災特別加入制度の加入資格を有する中小事業主)が、以下に記載する作業(最高裁判決及び確定した高裁判決で認められた作業とする。)及び国の責任期間において、石綿粉じんに曝露したこと

ア 屋内建設作業(屋内吹付作業も含む)に従事した者にあっては、昭和50年10月1日から平成16年9月30日までの間

イ 吹付作業に従事した者にあっては、昭和47年10月1日から昭和50年9月30日までの間

(2) 各原告が、(1)によって、【和解の内容】記載の表に列挙された石綿関連疾患に罹患したこと

(3) 民法第724条所定の期間制限を経過していないこと

(4) 石綿関連疾患に罹患後に死亡した者の遺族を当事者とする事案にあっては、当該遺族が、当該死亡者の相続人であること

引用:基本合意書|厚生労働省

【和解の内容】
以下の表に従って和解がされるとされています。和解金額は、和解成立時点で各原告に生じている病態等に応じて、最も高い基準のものとするとされています。

1石綿肺管理2でじん肺法所定の合併症のない者550万円
2石綿肺管理2でじん肺法所定の合併症のある者700万円
3石綿肺管理3でじん肺法所定の合併症のない者800万円
4石綿肺管理3でじん肺法所定の合併症のある者950万円
5石綿肺管理4、中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水のある者1150万円
6上記1及び3により死亡した者1200万円
7上記2、4及び5により死亡した者1300万円

ただし、以下の減額要素がある場合には、上記金額から減額した金額を支払うとされています。

ア 肺がん罹患又は肺がんによる死亡を損害とする各原告について、喫煙歴が認められた場合は、10%減額する。
イ 国の責任期間内において、各原告らが上記1に定める作業に従事し石綿粉じんに曝露した期間が以下の期間に満たない場合には、10%減額する。

  • 石綿肺及び肺がん:10年
  • 中皮腫及び良性石綿胸水:1年
  • びまん性胸膜肥厚:3年

なお、アとイの両方の減額要素が認められる場合には、まず10%減額した後、その残金について10%減額されるとされています。
弁護士費用については、上記表で算出した和解金に対する10%の割合の金員を支払うものとされています。

【未提訴の被害者に対する補償について】
国は、上記の基本合意書の内容を踏まえて、今後、与党における法案化作業に積極的に協力するとしており、被害者が提訴をすることなく早期に救済されるような仕組みの整備が期待されます。

【まとめ】建設アスベスト(石綿)訴訟において、最高裁判決により、国と建材メーカーが認められた

本記事をまとめると以下のようになります。

  • 建設アスベスト(石綿)訴訟において、最高裁により、国と建材メーカーの責任が認められる判決が言い渡された
  • 最高裁判決では、国の責任期間は、1975年10月1日~2004年9月30日までの間とされた(石綿吹付作業に従事した方については1972年10月1日から)
  • 一人親方等に対する国の責任が認められた
  • 屋外作業者に対する責任については、国及び建材メーカーの双方について否定された
  • 原告団、弁護団と国との間で基本合意書が締結され、和解要件が明確となった

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