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債権差押命令を受けると、給料はいくらまで差し押さえられてしまう?

作成日:更新日:
リーガライフラボ

「借金を返せなかったら、給料を差し押さえられるの?差し押さえられるとしたら、いくらまで差し押さえられる?」

借金の返済が遅れていると、いずれ給料などの財産の差押えを受けてしまうことがあります。

給料を差し押さえられると、通常、差し押さえられた分は勤務先から債権者(貸主など)に直接支払われますので、本人が受け取る給料が減ってしまいます。

また、債務名義(法律で認められた、差押えの根拠となる文書。確定判決など)で認められた金額の支払いが終わるまで、給料の差押えは続きます。

給料が差押えを受けると、いくらまで給料が減ってしまうのでしょうか。

この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

給料が差し押さえられる債権差押命令とは?

差押えとは、

金銭債権を強制執行できるようにするため、債務者が財産譲渡などの事実上または法律上の処分をすることを禁じる目的で行われる手続

引用:三省堂編修所 (編集)『デイリー法学用語辞典』三省堂 236頁

のことです。

強制執行とは、裁判所が債務者(借金で言えば借主)の財産を強制的にお金に換え(換価)、債権者(貸主)に分配するなどして、債権者の債権を回収させる手続です。

強制執行の前に債務者が財産を処分してしまうと、債務者の財産を換価することができなくなってしまいます。ですから、債務者の財産について強制執行をするために、まずは、債務者が自由に財産を処分できなくしなくてはいけません。

債務者が自由に財産の処分をできなくする手続が「差押え」なのです。

差押えが可能な財産は、動産や不動産、債権です。
債権とは、例えば勤務先に対する給料債権、銀行に対する預金債権などです。

債務者は、給料を差し押さえられると、給料の一部を受け取ることができなくなりますし、預金を差し押さえられると、差し押さえられた預金を自由に引き出すことができなくなります。

差押えは、本来、債務者が自由に処分できるはずの財産の処分をできなくする強力な手段ですから、債権者がいつでも自由にできるわけではありません。

債権者が債務者の財産を差し押さえるためには、「債務名義」が必要です。

借金の場合、よく用いられる債務名義には『確定判決』(又は仮執行宣言付きの判決)と『支払督促』があります。

給料への差押えがなされるまでの大まかな流れは、通常次のようになります。

裁判所からの書面(訴状や支払督促)が届く

裁判所への対応をしないか借金を返済していない事実を裁判所が認めると、債権者の主張が認められ、債権者が債務名義(確定判決や仮執行宣言付支払督促)を取得する

債権者が裁判所に給料の差押えを申立てる

裁判所が債務者の勤務先に対して「債権差押命令」を送る

勤務先に債権差押命令が届いたのち、債務者に債権差押命令が送付される

債権者が勤務先から、差し押さえた分の給料を直接取り立てる

参照:支払督促|裁判所 – Courts in Japan

給料が差し押さえられると、その分の給料は、勤務先は債務者へ支払えなくなる

給料を差し押さえると、基本的には、債権者は債務者の勤務先に自ら連絡を取って差し押さえた分の回収ができることとなります。

この項目では、勤務先が債権者に対して直接金銭を支払うこととなる仕組みを説明します。

(1)債権差押命令が送達されると、勤務先は「第三債務者」となる

金融業者などからお金を借りた借主を「債務者」、金融業者などの貸主を「債権者」と言います。そして、「債務者」に対して金銭の支払義務などがある者を「第三債務者」(民事執行法第144条2項)といいます。

借主の勤めている勤務先は、雇っている債務者に対して給料を支払う義務があるため、「第三債務者」です。

債権者は、債務者に債権差押命令が送達されて1週間が経過すると、差し押さえた分の給料について、第三債務者に対して直接支払いを求める(「取立て」と言います)ことができるようになります(民事執行法第155条1項)。

通常は、債権者と勤務先が連絡を取り合った上で、勤務先が債権者の指定する口座に差押え分を振り込む形で支払うことが多いです。

そのため、第三債務者である勤務先は債権者に対して差し押さえられた分を支払い、差し押さえられた分を差し引いた残りの給料を債務者に対して支払うこととなります。

なお、債権者が複数いて、債権差押命令が複数出た場合、勤務先が独断でそのうち1つのみに支払いを行うなどしては債権者にとって不公平な結果となってしまいます。

このように複数の債権者による給料への債権差押命令が競合した場合、勤務先は供託所へ差押え可能額を供託しなければならないこととされています(民事執行法第156条2項)。

参照:供託制度についてのご紹介|札幌法務局

給料が差し押さえられると、私が借金を返さずに訴えられたことまで、勤務先にバレてしまいますか?

裁判所から勤務先に送られる「債権差押命令」には債権者の名前や差押えの根拠となる債務名義(判決や仮執行宣言付支払督促など)が記載されています。消費者金融などの借金であれば、債権者名でバレてしまうでしょう。

(2)差押えの対象となる給料には、ボーナスや退職金も含まれる

給料への差押えは、債務名義で認められた金額に到達するまで将来にわたって継続します(民事執行法第151条)。

そして、差押えの対象となるのは月給のみではなく、ボーナスや退職金なども含まれます。

債権者が差押えを申立てる際に裁判所に提出する「差押債権目録」という差押え対象となる債権を表記する書類に、ボーナスや退職金への言及がある場合これらについても差押えを受けることとなります(※中小企業退職金共済法に基づく退職金など、差押えが禁止されているものもあります)。

参照:差押債権目録 書式8|裁判所 – Courts in Japan

給料はいくらまで差し押さえられる?

給料を差し押さえられると、原則として差し押さえられた分を取り戻すことはできません。

ただ、債務者自身の生活もありますので、給料の差押えは、給料の全額を差し押さえられるわけではありません。

債務者の生活保障のため、「差押禁止財産」として債務者の受取りが確保されている部分があります。

この項目では、給料はいくらまで差し押さえられるのか、給料の差押えの上限について解説します。

(1)借金についての差押えの場合、原則として手取り金額の4分の1が差押えの上限

差し押さえを受ける金額は、一律でいくらと決まっているわけではありません。

差押えによって回収可能な金額の割合は、原則として税金や社会保険料等を控除したのちの手取り額の4分の1までで、手取り額の4分の3の金額は差押が禁止されています。

ですので、手取り額の4分の3は債務者が受け取ることができます(民事執行法第152条1項2号)。

手取り給料が20万円の場合、差し押さえられるのは5万円までです。

ただし、お給料の高い人であれば、より高い割合での差押えでも生活保障はできるということで、例外として手取り額が44万円を超える人の場合は、33万円を超える部分全額が差押え可能となっています(民事執行法施行令第2条1項)。

手取り給料が50万円の場合、50万円-33万円=17万円が差し押さえられます。

<借金についての差押え・月給やボーナス>

差押えが禁止されているのは、次の範囲です。

  • 手取り給料が44万円以下なら……4分の3まで
  • 手取り給料が44万円超えなら……33万円まで

この、差押えが禁止される範囲はボーナスについても同様です。

一方、退職金については額にかかわらず差押えが可能なのは手取り額の4分の1までです(民事執行法第152条2項)。

また、手取り金額が少なく、4分の1の差押えを受けては一般的な生活水準も維持できないという場合には、給料の4分の3より多くを受け取れるように、「差押禁止債権の範囲の変更の申立て」の債権差押命令を出した裁判所に対して行います。

(2)税金や養育費の支払いが遅れたことによる給料の差押えはいくらまで?

税金を滞納し、滞納処分としての差押えが行われる場合の、生活保障のための差押禁止の範囲は私人間の借金などのときとは算出方法が異なり、国税徴収法や地方税法などによって算出されます。
そして、単身者や高所得者ほど高額の差押えを受ける可能性が高くなります。

また、離婚の際に取り決めた養育費を支払わないでいると、強制執行の手続きの一環としての差押えがされることがあります。

離婚調停や離婚裁判を経た上で離婚した方や、協議離婚時に公正証書を作成した方は、それ自体が債務名義になりますので、養育費の支払を怠ると、すぐにでも給料を差し押さえられる可能性があります。滞納には注意してくださいね!

養育費の滞納を理由に給料を差し押さえる場合には、子供の福祉の面からより多くの金額の差押えが可能となっており、手取り額の2分の1(手取りが66万円を超える場合は、33万円)を超える部分を差し押さえられてしまいます(民事執行法第152条3項)。

手取り給料が20万円であれば10万円まで、手取り給料が50万円であれば25万円まで、手取り給料が70万円であれば37万円までが差し押さえられます。

<養育費についての差押えの場合>

差押え禁止なのは

  • 手取り給料が66万円以下なら……2分の1まで
  • 手取り給料が66万円超えなら……33万円まで

給料への差押えは未払い金額がなくなるまで続く

給料への差押えは、裁判所へ請求があった未払いとなっていた金額に至るまで続きます。

また、養育費の支払いが滞った結果差押えに至った場合には、裁判所での手続開始時に既に未払いとなっていた金額のみならず、将来発生する養育費についても差押えが可能となっています(民事執行法第151条の2第1項3号)。

給料の半分も差し押さえられたら生活ができません。勤務先を辞めて転職した場合はどうなりますか?

退職した場合には、それ以上給料債権は発生しませんから、差押えは効力を失います。
ただ、養育費を滞納した場合には、「第三者からの情報取得手続」といって、市区町村などを相手に、勤務先の情報を教えてもらう手続があります。
転職先を調べられて、転職先の給料を差し押さえられる可能性がありますから、転職は根本的な解決にはなりません。
もしも、他にも借金があって養育費が支払えないのであれば、他の借金について次にご説明する債務整理をご検討ください。

参照:第三者からの情報取得手続|裁判所 – Courts in Japan

(1)借金は個人再生や自己破産によって支払い負担の減免が可能

借金の返済が滞ってしまったら、裁判や差押えを受けるよりも前に、債務整理を扱っている弁護士に相談することで、次のメリットを受けられます。

  • 貸金業者からの督促が一旦止まる
  • 差押えを回避できる可能性が生まれる
  • 債務整理によって実現可能な返済計画を立てられる

まず、弁護士は債務整理の依頼を受けると債権者に対して「受任通知」を送付します。

受任通知には、債務整理の手続きが始まったことや、今後直接の取立を行わないようにということが記載されています。
受任通知を受け取って以降、貸金業者は正当な理由なく債務者に対して連絡や取立てを行ってはいけないこととなっています(貸金業法第21条1項9号)。

そのため、債権者からの返済の催促による心理的負担をひとまずなくすことができます。

もっとも、債権者は債務者への直接の連絡などがいったんできなくなるのみで、貸金業法上、裁判を起こして債権回収することは禁じられておりません。したがって、債権者が裁判を起こしてくることは、可能です。

ですので、弁護士に債務整理を依頼したというだけで直ちに安心することはできず、いずれ訴訟を起こされ差押えに至るリスクはあるということです。
債務整理の依頼後も、資料集めなど依頼者自身でなければできないことがあります。
弁護士に依頼したからといって気を緩めずに、迅速に債務整理の手続きを進めるようにしましょう。

また、債務整理を開始すると差押えを回避できる可能性が生まれます。

現在ある借金は全額返すのが原則で、毎月の返済額の見直しなどの負担減を図る任意整理の場合、弁護士と債権者とで返済の条件交渉を行います。交渉中は弁護士が代理人になっていて実現可能な返済計画を立てられる可能性があることを踏まえ、一定期間、債権者が裁判を差し控えることは少なくありません。

一方、個人再生や自己破産の場合、裁判所への申立てをしたり、申立てを受けて裁判所での手続が開始すると、タイミングに違いこそあれ、それまでの差押えは(上申などにより)停止または失効し、新規の差押えもできなくなります。

そのため、滞りなく申立ての準備が進んでいれば、ごく一部を除き債権者は裁判を起こさないことが多いです。

もっとも、債務整理の手続の進行が遅れていると、債権者もしびれを切らすため、裁判を起こされるリスクは高まります。
繰返しになりますが、債務整理を進めるための準備は迅速に進めましょう。

そして、家計や借金の現状に即した最適な債務整理を選択することは、借金の負担で苦しい状況から脱却し、家計を立て直すことにつながります。
返済で家計が苦しい場合は、無理をせずまずは弁護士に相談しましょう。

それぞれの債務整理の概要や、選び方の目安について詳しくはこちらをご覧ください。

借金完済までの道のりを50万円・100万円・200万円のケース別に解説

(2)税金や養育費は、債務整理を行っても支払いを免れることはできない

まず、任意整理とは金融業者との交渉を想定した手続であり、役所と税金について交渉したり、元配偶者と養育費の減額のために交渉をしたりするものではありません。

また、個人再生や自己破産という、原則として全ての債務が手続対象となるものをもってしても、税金と養育費の支払義務は減免されません。

個人再生の場合、税金などの公租公課は「一般優先債権」であり、そもそも個人再生手続の対象とはならず支払い義務もそのまま残るほか、裁判所での手続中であっても滞納による差押えなどを受ける可能性があります。

また、未払いの養育費は「非減免債権」となり、未払い分の支払い義務は減免されません。
ですので、未払いとなっている部分については、法律に基づき決まった最低弁済額を支払う「再生計画」の認可を受け、計画に基づく支払い中は、一部を分割払いしていればよいことになります。しかし、弁済期間が終了したら、未払いとなっている残額を支払わなければならなくなります。

個人再生の申立て後、将来発生する養育費については「共益債権」となると考えられており、これもその都度支払い義務が生じ、手続中でも支払わなければなりません。

自己破産の場合、公租公課や養育費は「非免責債権(破産法第253条1項1号、4号ハ)」に該当します。
非免責債権とは、裁判所が借金返済の免除を認めるという「免責許可決定」を出しても支払い義務がなくならず、請求を受けた場合には支払わねばならないものです。

そのため、自己破産をしても公租公課と養育費の支払義務はなくなりません。

借金返済のみならず、養育費・税金もあって支払いが苦しい場合、支払い義務をなくすことのできないこれらの存在を前提とした支払い計画を目指す必要があります。

【まとめ】借金を原因とした給料の差押えは、原則として手取り給料額の4分の1まで

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 税金や借金、養育費などの支払いが滞っていると、給料への差押えを受けるリスクがある
  • 給料の差押えはいくらという金額が決まっているわけではない。借金などを原因とした差押えは原則として手取り給料額の4分の1まで。養育費を原因とした差押えは原則として手取り給料額の2分の1まで
  • 給料の差押えがあると、勤務先は差し押さえられた分を債権者に対して支払い、差し押さえ分を差し引いた分を労働者(債務者)に支払う
  • 債務者の生活のため、差し押さえてはいけない範囲が決まっているものの、未払い金額が解消されるまで差押えは将来にわたり続く
  • 債務整理では、税金や養育費の減額はできないものの、借金返済の負担の減免につながり、家計の立直しができる。お金のやり繰りが苦しい場合には弁護士に相談をすべき

給料を差し押さえられると、借金などを滞納していたことが勤務先に知られてしまいますので、勤務先でのあなたの信用が低下してしまうおそれがあります。
また、勤務先は債権者と連絡を取って差押え分を支払わなければいけませんので、勤務先に迷惑をかけてしまうことになります。

給料の差押えを受ける際、事前に債権者や裁判所からの連絡はありません。
ただ、差押えの前に、債務名義を取得するために、債権者から訴訟を起こされたり支払督促を申立てられたりしているはずです。
遅くともその時点で、借金などの返済が難しければ、債権者に連絡をして分割などで払えないか話し合ってください。
ご自身で話し合うことができなければ、弁護士に相談して、債務整理などの根本的な解決手段を取ることをお勧めします。

アディーレ法律事務所では、所定の債務整理手続につき、所定の成果を得られなかった場合、原則として、当該手続に関してお支払いただいた弁護士費用を全額ご返金しております。
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