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会社から損害賠償請求を受ける場合とは?

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会社から損害賠償請求を受ければ、誰もが驚き、身構えることでしょう。

労働者が退職する場合などに起こるケースが多いですが、会社側による威嚇の手段として使われることもあります。

もしそのような状況となった場合でも、自分の言い分をしっかり主張し、冷静に対処することが重要です。

自分の身を守るためにも、会社から損害賠償請求を受けるのはどのような場合か、どう対処すべきか等について、学んでおきましょう。

この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、2006年弁護士登録。アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。現在、東京弁護士会所属。

労働者は会社から損害賠償請求を受けることがある

労働者が、会社から損害賠償請求を受けるいくつかの場面について、重要な判例となった事案を中心に、解説していきます。

(1)不法行為・債務不履行に基づく損害賠償責任

例えば、運送会社に勤めるトラックドライバーが交通事故を起こし、事故の相手方に損害を与えてしまったような場合を考えてみましょう。

この場合、ドライバーは、事故の相手方に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負います(民法709条)。

その上で、会社は、事業のために労働者を使用する者としての使用者責任(同法715条1項)を負い、事故の相手方に対する損害を賠償した上で、労働者に対して求償権を行使することになります(同条3項)。

直感的には、会社のために働く労働者が会社から損害賠償を請求されるなんて、と思う方がいるかもしれません。
しかし、労働者が仕事を行うにあたって必要な注意を怠り、会社に損害を与えた以上は、これによって生じた損害を賠償する責任を負うのです。

もっとも、労働者が使用者の指揮命令下で働いている分使用者も危険発生について責任を負っているとする危険責任の原理、及びそこで生じるリスクはそうした労働者の活動により利益を得ている使用者が負担すべきとの報償責任の原理からして、労働者にすべての責任を負わせるべきではないと考えられています。

判例は、タンクローリー車で追突事故を起こした労働者が、使用者である会社に損害を負わせた事案について、こう述べています。

「使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を被り又は使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被った場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償又は求償の請求をすることができるものと解すべきである。」
(茨城石炭商事事件:最高裁第一小法廷判決昭和51年7月4日・民集30巻7号689頁)
その上で、使用者から労働者への求償は賠償額の4分の1を限度とすべきであるとの判決を下しました。

なお、労働者が職務遂行上の義務違反によって使用者に損害を与えた場合は、債務不履行の一般原則に基づいて損害賠償責任を負うことになります(民法415条)が、この場合にも、上記のような労働者の損害賠償責任を限定する理論があてはまることとされます。

労働者と使用者は、雇用契約の当事者同士ではありますが、その力関係の違いなどから、使用者に損害を生じさせた場合に労働者が負う損害賠償責任には制限がかけられる傾向となっているのです。

(2)転職・引き抜き

労働者の転職は、職業選択の自由の一内容として憲法によって保障されています。
もっとも、転職によって損害を与えた場合には、在籍していた企業に対する損害賠償責任を負う可能性があります。

ある企業が競争企業の従業員に自社への転職を勧誘する場合、単なる転職の勧誘を超えて社会的相当性を逸脱した方法で従業員を引き抜いた場合には、その企業は雇用契約上の債権を侵害したものとして、不法行為として右引き抜き行為によって競争企業が受けた損害を賠償する責任があるとされています。

裁判例には、英会話学校で20人を超える引き抜きが旧会社の取締役兼営業本部長によって行われた事案について、以下のように判示したものがあります。
「会社の従業員は、使用者に対して、雇用契約に付随する信義則上の義務として、就業規則を遵守するなど労働契約上の債務を忠実に履行し、使用者の正当な利益を不当に侵害してはならない義務(以下「雇用契約上の誠実義務」という。」)を負い、従業員が右義務に違反した結果使用者に損害を与えた場合は、右損害を賠償すべき責任を負うというべきである。」

「個人の転職の自由は最大限に保障されなければならないから、従業員の引抜行為のうち単なる転職の勧誘に留まるものは違法とはいえず、したがって、右転職の勧誘が引き抜かれる側の会社の幹部従業員によって行われたとしても、右行為を直ちに雇用契約上の誠実義務に違反した行為と評価することはできない。」

「しかしながら、その場合でも、退職時期を考慮し、あるいは事前の予告を行う等、会社の正当な利益を侵害しないよう配慮すべきであり……、これをしないばかりか会社に内密に移籍の計画を立て一斉、かつ、大量に従業員を引き抜く等、その引き抜きが単なる転職の勧誘の域を超え、社会的相当性を逸脱し極めて背信的方法で行われた場合には、それを実行した会社の幹部従業員は雇用契約上の誠実義務に違反したものとして、債務不履行あるいは不法行為責任を負うというべきである。」

「社会的相当性を逸脱した引抜行為であるか否かは、(a)転職する従業員その会社に占める地位、(b)会社内部における待遇及び人数、(c)転職の勧誘に用いた方法等諸般の事情を総合考慮して判断すべきである。」

この事案では、取締役という幹部従業員が中心となった引き抜きであること、業務上でも重要な企画を任されていたこと、従前から周到に準備をしており計画的で背信的であったことなどから、転職の勧誘にとどまらない社会的相当性を逸脱した違法な引抜行為であり、不法行為に該当すると判断されています。

参考:東京地裁判決平成3年2月25日・労判588号74頁

留学や研修費用の返還請求

会社からの損害賠償請求に関連して、留学や研修費用の返還請求についても見ておきましょう。

(1)賠償予定の禁止

労働基準法16条は、労使間での賠償予定を禁止する規定を置いています。

使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め。又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

引用:労働基準法16条

これは、労働者が一定の期間に満たないうちに退職する場合には「使用者に違約金や損害賠償を支払うこととする」という決まりを会社が作ることで足止めを図るという、いわば労働者の引き留め策を防止するための規定です。

注意したいのは、損害賠償額等の定めをあらかじめ置くことを禁止しているのであって、実際発生した損害の賠償を労働者に請求することは何ら禁止していないという点です。

(2)留学・研修費用が実際に問題となった例

企業が労働者の留学・研修等の制度を設け、その費用を支出する場合に、終了後一定期間内に退職した場合には費用の返還を義務付けるという旨の定めを置いておくことが多くみられます。

海外で暮らすような場合には費用も高額となるため、すぐに辞められて費用が無駄になることを防ぐための規定といえます。
この規定が、労働基準法16条にいう「違約金・損害賠償額の予定」にあたらないかが問題とされるのです。

裁判例では、違約金等として違法なのか貸付けとして合法なのかは、「労基法16条の趣旨を踏まえて当該海外留学の実態等を考慮し、当該海外留学が業務性を有しその費用を会社が負担すべきものか、当該合意が労働者の自由意思を不当に拘束し労働関係の継続を強要するものかを判断すべきである」とされています。

合法とされるかどうかは、留学や研修の「業務性」の有無、逆にいえば、個人の利益性の強弱が基準となるということです。すなわち、業務性が強く個人の利益性が弱ければ、留学等に要した費用は本来会社が負担すべきものであり、それを労働者に負わせる点で「違約金・損害賠償額の予定」に該当するといえます。

逆に、業務性が薄く個人の利益性が強い場合には、本来労働者が負担すべき費用を、労働契約とは別個の消費貸借契約で貸し付けたものであって「違約金・損害賠償額の予定」にはあたらないということになるのです。

参考:東京地裁判決平成9年5月26日・労判717号14頁

会社から損害賠償請求されたら

会社から損害賠償請求を受けるような事態になった場合には、弁護士などの専門家に対応を依頼するのがお勧めです。

労働者に対する損害賠償は制限的な傾向があるとはいえ、裁判では、損害賠償額が多額になることもあります。一方で労働者の責任が一切認められないようなケースもあります。
会社との交渉の場面も含めて、適切な証拠に基づいた十分な法的主張を行えるかどうかで結論は大きく変わります。

急に退職したような場合に、会社に生じた損害について賠償請求を受けることも考えられます。
しかし、従業員の出入りは通常ありうることであって、それに備えた体制を準備するのは使用者の役目であるということをきっちり主張すれば、前向きな結論を得られる可能性は十分にあります。

まずは、弁護士に相談してみましょう。

【まとめ】会社から損害賠償請求を受けるのは、不法行為・債務不履行などにより会社に損害を与えた場合です

今回の記事のまとめは以下のとおりです。

  • 労働者が損害賠償請求を受けることがあります。業務に関連して交通事故などの不法行為をした場合や、ミスを犯して会社に損害を与えた場合などです。
  • 転職・引き抜きの場合は、態様や人数などからみた社会的相当性の有無が問題となります。
  • 留学や研修費用の返還制度は、当該留学等の実態が業務性の強いものであれば、制度自体が労基法違反の可能性があります。
  • 会社から損害賠償を受けた、あるいは受けそうという場合には、弁護士に相談するのがお勧めです。

会社からの損害賠償請求については、弁護士などの専門家にご相談ください。

この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、2006年弁護士登録。アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。現在、東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

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