バラクルードは、B型肝炎ウイルスの増殖を抑えるための薬ですが、いつまでも服用をしなければならない方も少なくありません。
そのため治療費の負担が問題となってきますが、バラクルードは基本的には医療費助成の対象になりますし、一定の要件を満たした方は、国からB型肝炎給付金を受けることができる場合があります。
バラクルードや医療助成金等について解説いたします。
バラクルードとは
B型肝炎ウイルス(HBV)によって慢性肝炎を発症すると、肝硬変や肝がんへと重症化する可能性があります。
現在の治療薬では、B型肝炎ウイルスを完全に排除することは困難ですが、B型肝炎ウイルスの増殖を抑えることはできます。
B型肝炎ウイルスの増殖を抑える治療法として、以下のものがあります。
- インターフェロン(IFN)治療:注射薬
自身の免疫に働きかけ、B型肝炎ウイルスの増殖を抑制などする治療 - 核酸アナログ製剤治療:内服薬
B型肝炎ウイルスの増殖を直接抑える薬を服用する治療
この核酸アナログ製剤治療の薬として有名なのが「バラクルード」(エンテカビル水和物)です。
以下、バラクルードについてご紹介いたします。
参考:肝炎に効果的なインターフェロン治療や核酸アナログ製剤治療利用しやすくするための医療費助成制度をご存じですか|政府広報オンライン
参考:B型肝炎|肝炎情報センター
(1)B型肝炎ウイルスに効く抗ウイルス薬の一種
バラクルード(エンテカビル)は、B型肝炎ウイルス(HBV)による肝炎を鎮静化させる核酸アナログ製剤の薬ひとつです。
バラクルードを内服することにより、B型肝炎ウイルスの増殖に必要な酵素(DNAポリメラーゼ)の働きを抑える効果があります。
参考:B型肝炎|肝炎情報センター
参考:当社のおくすり一覧|ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社
(2)バラクルードは副作用が出にくい
バラクルードは、副作用が出にくい、出ても比較的軽いことが通常です。
ただし、人によっては、下痢や吐き気といった胃腸症状や頭痛などを感じることもある他、まれに肝機能障害など重篤な症状を引き起こすことがあるため、注意が必要です。また、バラクルードを服用すると赤ちゃんに奇形が生じてしまう危険性があるとされており、妊婦や妊娠希望者などへの使用は避けるのが一般的です。
(3)バラクルードを処方されるケース
B型肝炎ウイルスに感染していても、軽度のうちは経過観察となることも多いですが、慢性肝炎や肝硬変の場合は、バラクルードの処方が検討されるケースとなります。
特に、インターフェロンによる初回治療で十分な効果が得られない場合や、インターフェロンの副作用のため、使用がためらわれる場合には、バラクルードが処方される傾向にあります。
参考:エンテカビル|おくすり110番
参考:当社のおくすり一覧|ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社
バラクルードの特徴
薬を使い続けるうちにウイルスが薬に対する抵抗力を持ってしまって、ウイルスに薬が効かなくなることがあります(耐性化)。
バラクルードは、核酸アナログ製剤治療ではよく処方される薬ですが、バラクルードが処方されやすいのは、耐性化しにくく、その上、ウイルス増殖抑制の効果が高いという特徴があるからです。
バラクルードのような核酸アナログ製剤は数種類あり
バラクルードの他にも、次のような核酸アナログ製剤があります。
- ゼフィックス(ラミブジン)
- ヘプセラ(アデホビルピボキシル)
- テノゼット(テノホビルジソプロキシルフマル酸塩)
- ベムリディ(テノホビルアラフェナミドフマル酸塩)
いずれも、B型肝炎ウイルスの増殖を抑制するための薬ですが、ゼフィックスは耐性ウイルスを発現しやすいという特徴があります。
ヘプセラは、ウイルス増殖抑制の効果が中程度に留まります。
これに比べ、バラクルード、テノゼット、ベムリディは、耐性ウイルスが発現しにくく、ウイルス増殖抑制の効果も高いため、治療で第一に選択する薬として用いられています。なお、最近では、ベムリディが選択されることが特に多くなっています。
参考:B型肝炎治療ガイドライン(第3版・簡易版)|日本肝臓学会
肝炎診療ガイドライン作成委員会編
バラクルードの服用期間は医師の判断に委ねられている
では、バラクルードはいつまで服用すればいいのでしょうか。
バラクルードの服用期間について解説いたします。
(1)長く飲み続けることが前提
バラクルードの服用期間は長期にわたり、いつまでも飲み続けなければならない人も多いのが現状です。
というのも、バラクルードを服用することで、ウイルスの増殖を抑えて病気の進行を止めることができても、B型肝炎ウイルスを完全に排除するのは困難です。
そのため、バラクルードの服用を長期間続けて、B型肝炎ウイルスが増殖しないようにコントロールし続ける必要があるのです。
(2)服用をやめると症状が再燃する恐れも
バラクルードを含む核酸アナログ製剤治療の中止に関する指針が厚生労働省により作成されており、この指針では、核酸アナログ製剤治療の中止には、以下の諸条件を満たすことが必要とされています。
- 核酸アナログ製剤治療開始から2年が経過していること
- 核酸アナログ製剤治療中止時に、血液中のHBV-DNAが検出感度以下であること
- 核酸アナログ製剤治療中止時に、血液中のHBe抗原が陰性であること
- 核酸アナログ製剤治療中止後のリスクを主治医と患者が共に理解していること
- 核酸アナログ製剤治療中止後の経過観察・肝炎再燃時の適切な対処が可能であること
- 肝炎が再燃しても重症化しにくい症例であること
しかし、これらの条件を満たしていたとしても、HBs抗原量やHBコア関連抗原量が多いと、肝炎再燃のリスクが高く、ときには重症化することもあるため、バラクルードの投与を中止したときには、厳重な経過観察が必要になりますし、肝炎再燃リスクが特に高いと判断される症例では、核酸アナログ治療の継続が望ましいとされています。
参考:B型肝炎治療ガイドライン(第3版・簡易版)|日本肝臓学会
肝炎診療ガイドライン作成委員会編
バラクルードの服用は医療費助成の対象になる
人によっては一生飲み続けることにもなるバラクルードについて、服用にかかる費用や助成金の情報をご紹介します。
バラクルードの投与にかかる費用は患者の負担になりますが、医療費助成を受けることができます。
(1)医療費助成で自己負担を減らせる
バラクルードの服用は基本的には医療費助成の対象となっており、下記の自己負担額を超える金額については、国と都道府県から助成を受けることができます。
- 世帯の市町村民税(所得割)課税年額が23万5000円以上のとき
→自己負担上限 月2万円 - 世帯の市町村民税(所得割)課税年額が23万5000円未満
→自己負担上限 月1万円 - 世帯の区市町村民税(所得割・均等割とも)非課税
→自己負担0円
※世帯とは患者の属する住民票上の世帯全員のことをいいます。
原則として、上記医療費助成を受けることができるのは1年間ですが、医師が必要と認めた場合は、期間を更新することができます。
更新の際には、原則として再度申請書類の提出が必要です。
なお、2020年10月30日時点では、新型コロナウイルスの流行に伴い、以下の特例の措置がとられています(2020年3月1日~2021年2月28日までの間に受給者証の有効期間が満了する方に限る)。
- B型ウイルス肝炎核酸アナログ製剤治療(バラクルードの服用などの治療)に対する医療費助成の更新については、更新する際の申請書類の提出が不要
- 有効期間も1年延長
最新の情報にご注意ください。
参考:肝炎に効果的なインターフェロン治療や核酸アナログ製剤治療利用しやすくするための医療費助成制度をご存じですか|政府広報オンライン
参考:東京都保健福祉局「B型・C型ウイルス肝炎治療医療費助成制度」
(2)医療費の助成を受けるには手続きが必要
バラクルード服用の医療費の助成を受けるためには、必要書類を提出して申請する必要があります。
申請書、医師の診断書、保険証の写しや住民票、課税証明書といった書類の準備が必要です。
必要書類や提出先は都道府県によって異なります。
感染経路によってはB型肝炎給付金の対象となることも
幼少期に受けた集団予防接種等が原因でB型肝炎ウイルスに感染した人は、国からB型肝炎給付金が受け取ることができる場合があります。
これらの一次感染者から母子感染、父子感染によって二次感染、三次感染となった方も、B型肝炎給付金の対象となることがあります。
自分がB型肝炎給付金の対象であることに気づいていない方も多くいます。
B型肝炎給付金をもらうことで治療の負担をさらに減らすことができますので、「もしかして対象かも?」と少しでも思う方は、一度弁護士に相談することをお勧めします。
【まとめ】バラクルードの服用期間は医師に相談 医療費助成の活用を
1.長期間の服用が必要とあるバラクルード
バラクルードは、B型肝炎ウイルスの増殖を抑えるために処方される核酸アナログ製剤です。
「バラクルードの服用はいつまで?」と気になる方も多いですが、バラクルードの服用を中止すると、肝炎が再燃したり、時には重症化することもあるため、服用期間は医師の判断に従うことが大切です。
2.医療費助成やB形肝炎給付金の活用を
いつまでも服用が続くことがあるバラクルードですが、基本的には、医療費助成の対象となっていますので、一定の負担額だけでの治療をすることができます。
また、B型肝炎給付金の対象となっている方は、これを受け取ることによって、治療の経済的負担を減らすこともできます。
B型肝炎給付金に関しては、アディーレ法律事務所へご相談ください。