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時効援用は失敗するとリスクが大きい!弁護士が時効の更新事由等を解説

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何ら前触れなくいきなり届く、1通の通知―――「催告書」。
「〇〇万円を〇年〇月〇日までにお支払いいただかなければ、法的措置を採らざるを得ない」旨書かれています。通知を送ってきた金融機関から、遠い昔にお金を借りた記憶がありますが、途中で返せなくなってしまい、そのまま忘れてしまっていました。今更支払わなければならないのか、法的措置って何をするのか、悩んでしまう方もいらっしゃるかもしれません。
場合によっては、時効を援用することで支払義務を免れることができるかもしれませんので、弁護士等に相談することをおすすめします。
今回は、弁護士が「時効援用を自ら行った場合のリスク」などについて解説します。

本来払わなければならないお金を支払わなくてよくなる?消滅時効制度の概略

消滅時効とは、債権者が権利を行使できる状態だったのに権利を行使しなかった結果、権利を失うことを定めた制度です(民法166条)。

簡単なケースを想定してみましょう。

Aさんから1ヶ月後に返す約束で1万円を借りたBさん。それからまもなくAさんとBさんは疎遠になってしまったので、AさんはBさんからお金を返してもらわないまま、15年の月日が流れました。

AさんがBさんに「あのときの1万円を返して」と請求したとき、Bさんは1万円を返すのか「もう時効だから払わないよ」と請求を拒むのかを選ぶことができます。

債務者(Bさん)の側からみると、消滅時効制度によって不意打ち的な請求から保護されることになります。

民法改正で債権の消滅時効期間はどう変わった?

従来、債権の消滅時効期間は原則10年でした(改正前民法167条1項)。ただし、消費者金融から借り入れた場合など商事債権にあたる場合には、5年とされていました(旧商法522条)。

改正後民法においては、権利を行使することができる時から10年という規定に加えて(民法166条1項2号)、権利者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないときにも時効消滅することになりました(民法166条1項1号)。「権利を行使することができることを知った」というためには、「権利の発生原因」のほか、「権利行使の相手である債務者」を認識することが必要だとされています(参考:筒井健夫・村松秀樹『一問一答 民法(債権関係)改正』株式会社商事法務 57頁)。

お金の貸し借りにおいて、改正前の民法と改正後の民法のいずれが適用されるかは、消費貸借契約の締結時期によります。2020年3月31日以前に借り入れた場合には旧民法が、2020年4月1日以降に借り入れた場合には新民法が適用されます。もっとも、消費者金融等の金融機関は、返済期限が到来すれば権利を行使することができることを認識するはずであり、民法改正後も、消費者金融等からの借金は返済期日から5年で消滅時効期間が満了すると考えられるため、実際上は法律改正による影響はないでしょう。一方、奨学金の返済義務や個人間の貸し借りにおける返済義務は、民法改正前は消滅時効期間が10年でしたから、民法改正によって、消滅時効期間が早く満了するようになったといえます。

借りた覚えがあっても「返さない!」と言うのが時効援用

消滅時効は、消滅時効期間が過ぎれば自動的にお金を支払わなくてもよくなるわけではなく、「時効の援用」をして初めて義務を免れることになります(民法145条)。
「時効の援用」とは、時効による利益を享受する旨の意思表示のことです。

意思表示といっても、口頭で「時効を援用する」と伝えるだけだと、言った・言わないの水掛け論になりかねません。
また、債権者に電話をすると、債権者とのやり取りの中で支払約束とも取れる発言をしてしまい、それによって時効の援用権を喪失してしまう場合がありますので、せっかく消滅時効期間が経過していたのに、時効を援用できなくなってしまう危険性もあります。
そこで、時効を援用する場合には、内容証明郵便にて「時効援用通知書」を発送します。
時効援用通知書とは、成立した時効を援用する旨の通知書のことです。

寝た子を起こすことになりかねませんので「そろそろ時効が完成したかな」と債務者から債権者に連絡を取る意味はあまりないでしょう。基本的には、債権者から請求されたときに支払いを拒む理由として、消滅時効を主張するものです。

詳しくはこちらの記事もご確認ください。

時効援用通知の書き方は?必要な情報と注意点を解説【例文付き】

「時効援用」成功のカギは、消滅時効が更新(中断)されないこと

時効が援用できるのは、消滅時効期間が満了しているときです。
法律上、債権者には、消滅時効の完成を防ぐために採りうる手段が定められています。
代表的なものは次の4つです。

  1. 催告
  2. 裁判上の請求、支払督促
  3. 強制執行
  4. 債務者の承認

このうち、債務者の行為によって時効が中断するのは債務があることを認めてしまう、つまり「承認」をしたときです。たとえば、債務者が次の行為をしたときには消滅時効期間の進行がリセットされてしまいます。

  • 全額または一部の金額を返済してしまう
  • 「返済する」と連絡あるいは約束してしまう

消滅時効期間が満了していても、債務の承認をしてしまうと、信義則上、時効を主張することができなくなってしまいますので、注意してください。

自ら債権者に接触することでかえって債務を承認してしまわないか不安な場合には、あらかじめ弁護士に時効援用を依頼することをおすすめします。

借金の「時効援用」は、失敗したときのリスクが高い

時効援用をするのであれば、内容証明郵便で時効援用書面を送ることをおすすめします。出来れば、あらかじめ弁護士に時効援用書面をチェックしてもらうことも検討した方が良いかもしれません。
手っ取り早いからといって、債権者に電話をして時効援用することにはリスクがありますので、おすすめできません。

借金の返済義務を免れるつもりで電話をしたのに、なぜか支払うと約束してしまう(債務の承認をしてしまう)というケースは実際に起こりえます。そうなると、消滅時効を援用することはできないため、支払義務を負っている金額を支払わざるをえなくなってしまいます。
借りたお金を返さなければならないだけなら、それほどリスクではないと思うかもしれません。しかし、当初の約束どおりにお金を支払わなかった場合には、遅延損害金を請求されることがあります。遅延損害金について何ら約束していない場合でも、債権者は法定の利率に基づいて遅延損害金を請求することができます(2021年4月1以降に借りたお金なら3%、それ以前なら5%)。
たとえば、1万円の返済が遅れた場合には1年間で300円の遅延損害金が発生し、15年間で遅延損害金は4500円にもなります(利率3%で計算)。支払っていなかったお金が高額であった場合や遅延損害金の利率を高く設定していた場合には、遅延損害金はさらに高額になります。たとえば、遅延損害金の利率を14.6%として100万円を3年間返せずにいた場合、遅延損害金は43万8000円にもなります(100×14.6%×3)。

詳しくはこちらの記事もご確認ください。

遅延損害金とは?遅延損害金の計算方法や支払いが難しいときの対処法を解説

借金の「時効援用」に失敗したら、どうすれば良い?

時効援用に失敗してしまったら、他に支払いを免れられる理由のない限り、そのお金を支払わなければなりません。
一括で請求されている場合、自分で債権者と交渉して分割払いにできる可能性があります。しかし、自ら債権者と交渉しても債権者が分割払いに応じてくれるとは限りません。請求金額を支払えない場合には、弁護士に債務整理を依頼することを検討することをおすすめします。
債務整理には、基本的に1.任意整理、2.民事再生(個人再生)、3.自己破産の3種類があります。弁護士に相談する前に自分に適した方法を考える必要は必ずしもなく、自身の借金について申告していただいた上で「借金の負担を減らしたい」などと相談していただくだけでも問題ありません。

時効援用に失敗してから弁護士に相談されても有効なアドバイスを受けることができないかもしれませんので、債権者から催告書が届いた段階で弁護士に相談することをおすすめします。最終的に自分で時効援用をしてみる場合でも、あらかじめ弁護士に相談しておくことで有益な情報を得られることもあるはずです。

【まとめ】時効援用についてはアディーレ法律事務所にご相談ください

一定期間請求されていなかったのに、ある日突然借金を返済するよう請求された場合、消滅時効を援用して、その支払いを免れられることがあります。消滅時効を援用する場合には、内容証明郵便で時効援用書面を送るのが通常です。自分で債権者に連絡すると、債務の承認をしてしまい、消滅時効を主張できなくなってしまうこともありえますので、ご注意ください。
時効援用を検討されている方は、アディーレ法律事務所にお気軽にご相談ください。