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個人再生で支払う「弁済額」が決まる3つの基準

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今回採り上げる法律相談はこちら(相談者は40代の男性)―――。

恥ずかしながら、私にはパチンコで作った借金が1500万円ほどあります。先日、その借金が家内にバレまして、……泣かれてしまいましたので、私としてもなんとかしなければと思い、こうしてご相談に伺った次第です。インターネットで調べてみると私のような状況だと自己破産は難しいみたいなのですが、私はどうしたらいいのでしょうか。

収入によるとはいえ、1500万円もの借金をすべてギャンブルで作ってしまった以上、自己破産を申立てたとしても、免責不許可の決定が下される可能性がかなり高いでしょう(破産法252条1項4号)。そこで、自己破産のほかに個人再生が選択肢として浮かんできます。
今回は、個人再生を選択したとして、弁済額がどのように決まるかを弁護士が解説します。

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民事再生(個人再生)

「個人再生」とは、一定の条件を満たした場合に住宅等の財産を維持したまま、大幅に減額された借金を(減額の程度は、借金の額、保有している財産などによって異なります)、原則として3年間で分割して返済していくという手続です。減額後の借金を完済すれば、再生計画の対象となった借金については、原則として法律上返済する義務が免除されます。

(1)個人再生のメリット

個人再生は、任意整理と自己破産の中間に位置する手続きだとイメージすると分かりやすいと思います。基本的に任意整理よりも大きく借金を減額してもらえますし(最大借金総額の10分の1)、自己破産と異なり不動産などの財産でも手放さずに済む可能性が高いといえます。また自己破産のように、個人再生には手続き期間中就くことのできない職種もありません。

(2)個人再生のデメリット

再生手続開始決定日から5~10年間、信用情報機関に事故情報を登録されてしまうといわれています。
加えて、国が定期的に刊行している機関紙「官報」にも氏名・住所が掲載されてしまいます。

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個人再生をしたらブラックリストに載る?個人再生のメリットは?

個人再生には2種類ある!

そもそも個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類があります。
このうち小規模個人再生で進めるためには、再生計画案の決議の段階で、債権者(例:お金を貸した人、貸金業者)の数の2分の1以上の反対がなく、かつ反対した債権者の債権額の合計が全債権額の2分の1を超えていないことが必要です。もしここで反対されてしまうと手続きが廃止となり、それ以上手続きを進めることは出来なくなります。そのため、借入れの経緯や債権者の顔ぶれから過半数の債権者が再生手続きに不同意の意見(反対意見)を出すと強く予想される場合、小規模個人再生は採れません。
もっとも、多くのケースでは、そもそも過半数債権者がいないか、あらかじめ再生手続きに反対しないことがある程度わかるため、小規模個人再生で進めることができるのが通常です。小規模個人再生では、1.法律で定められた最低弁済額か、2.(清算価値として計上される)保有している財産の合計金額のいずれか多い方の金額を支払わなければなりません。
他方、給与所得者等再生の場合には、債権者数の過半数及び債権額の2分の1以上の反対がないこと、という認可の前提となるための要件はありませんが、1.最低弁済額と2.保有財産の合計額の他、3.可処分所得(収入から所得税等を控除し、さらに政令で定められた生活費を差し引いた金額)の2年分のうち、いずれか多いほうの金額を最低限支払う必要があり、一般的には小規模個人再生の場合よりも返済額が高額になります。
早い話が「個人再生には2種類あるけど、多くの人が小規模個人再生で進められる。その場合には、1.減額した借金の額か2.保有している財産の合計金額のいずれか高いほうを支払う」ということです。

個人再生手続きでは、原則3年支払いを続けることになる

個人再生は、自己破産と異なり、減額された借金を返済する手続きです。
では、どの程度借金が減額されるのかをくわしくみていきましょう。

個人再生で支払う金額は、それぞれの基準で導き出された金額のうち高いものです。

手続きの種類用いる基準
小規模個人再生1と2の基準
※3は使わない
給与所得者等再生1~3の基準すべて

(1)民事再生法上の最低弁済額

民事再生法上、借金の総額によって最低弁済額が定められています(民事再生法231条2項、241条2項5号)。

借金総額最低弁済額
100万円未満借金総額
100万円以上500万円以下100万円
500万円超1500万円以下借金総額の5分の1
1500万円超3000万円以下300万円
3000万円超5000万円未満借金総額の10分の1

なお、住宅ローン特則を利用する場合、個人再生をしても住宅ローン(債権)には原則影響がないため、住宅ローンについては当初の約束どおり支払いを続けていくことになります。

(2)清算価値保障基準

通常、債権者からみると自己破産よりは個人再生のほうが通常はメリットが大きくなりますし、そうなるべきだとも考えるでしょう。自己破産で配当を受けるよりも少ない金額の弁済しか個人再生で受けられないとすれば、債権者としては納得できません。
そこで、債権者の利益が個人再生によって害されないように、清算価値保障原則が定められています(民事再生法174条2項4号)。そして、清算価値算定の基準時は、東京地裁では、原則として再生計画認可時としています。
簡単に言うと、自己破産で支払わなければならない金額があるとすれば、個人再生ではその金額以上の支払いを求められる可能性があるというわけです(ほかの基準によって弁済額が算定されて決まる場合を除きます)。

清算価値に計上される資産は、個人再生を申立てる裁判所によって異なります。
たとえば東京地裁では、次の財産に該当しないものが清算価値として計上されます。

  1. 99万円未満の現金
  2. 残高が20万円以下の預貯金(保有口座の合計が基準です)
  3. 見込額が20万円以下の保険解約返戻金
  4. 処分見込価額が20万円以下の自動車
  5. 居住用家屋の敷金債権
  6. 電話加入権
  7. 支給見込額の8分の1相当額が20万円以下である退職金債権
  8. 支給見込額の8分の1相当額が20万円を超える退職金債権の8分の7
  9. 家財道具
  10. 差押禁止動産または差押禁止債権

※ただし、退職金債権は退職間際であれば、4分の1で計上されることがあります。

詳しくはこちらの記事もご確認ください。

差押禁止財産とは?差し押さえられない物をわかりやすく解説!

冒頭の事例で、相談者に次の財産があったと仮定しましょう。なお、対象となる財産はあくまでも申立人名義の財産なので、同居していても家族名義の財産は考慮されません。

  • 50万円の預貯金
  • 見込額が15万円の保険解約返戻金
  • 支給見込額が500万円の退職金債権
  • 市場価値が60万円の自動車

預貯金は20万円を超えると全額清算価値に計上されてしまうため、50万円の預貯金は全額が計上されます。保険解約返戻金は、その見込額が20万円以下であるため、清算価値に計上されません。退職金債権は、その8分の1相当額が62万5000円なので、この金額が計上されます。最後に、自動車は処分見込額が20万円を超えるため、60万円が全額計上されます。そうすると、合計額は172万5000円です。
先ほどの最低弁済額と比べると、最低弁済額のほうが高いため、相談者の方が原則3年で支払う金額は260万円となります。

(3)可処分所得基準

可処分所得とは、民事再生をする人の収入から、所得税・住民税および社会保険料を控除し、さらに政令で定められた生活費の金額を差し引いた後の所得の余剰分をいいます。
可処分所得を算出する際、収入から控除される生活費は生活保護を基準にした金額を参考にしていますので、扶養者が少なく年収が多い方は可処分所得が高額になってしまうことが通常です。

個人再生手続き後に「最低弁済額」の支払いが困難になったときの対処法

再生計画どおりに返済ができなくなった場合、債権者からの申立により再生計画が取り消されることがあります。再生計画が取り消されると、減額された借金は元に戻ってしまいます。ただし、勤務先の業績不振で給与が減額された等のやむを得ない事情により再生計画の遂行が著しく困難な状況に陥り、弁済する期間を延長すれば当初の再生計画に定められた返済が可能であると認められる場合には、再生計画を変更して、返済期間を延長することができます。また、既に再生計画に定められた返済金額のうち、4分の3以上の金額を支払い終わっている場合、一定の厳しい条件を満たす必要がありますが、残りの借金の返済について免除を受けることも可能です(これを「ハードシップ免責」といいます)。

【まとめ】個人再生を含む債務整理についてはアディーレ法律事務所にご相談ください

個人再生は、債務整理の中でももっとも複雑な手続きでしょう。インターネットで調べながら個人再生を進めることはなかなか難しいため、最初から弁護士による法的なアドバイスの下、手続きを進めることをおすすめします。
初回の法律相談の場では、清算価値に計上される金額を正確に特定できないため、実際の弁済額を知ることはできないかもしれませんが、おおよその目安がわかることも多いはずです。ご自身のケースで適切な債務整理の方針を含め、一度アドバイスを受けると安心できるのではないでしょうか。借金問題でお困りならば、アディーレ法律事務所にお気軽にご相談ください。