コロナ感染予防のために、マスクをして外出する日々を送っています。
スーパーに行っても、マスク着用をお願いされているのに、マスクをしていない客がいます。
感染予防のために、マスクを着けていない客は入店拒否してほしいです。
そもそも店側はマスクを着けていない客の入店を拒否することができるのでしょうか。
今回は、コロナ禍の中で、マスクを着けていない客の入店を拒否することができるのかどうか、というご質問に回答します。
早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。
マスクをしていない客を入店拒否できるのか
マスクが新型コロナウィルス対策に有効か無意味かという議論もありました。
しかし、現在は、多くの国が有効であることを前提に、国民に対して外出時のマスクの使用を義務化したり推奨したりしています。
日本では、マスクの着用は個人の判断にゆだねられており、多くの国民が自主的に着用しています。
しかし、一部マスクを着けずに外出する人々がいます。
では、不特定多数の客が訪れる店は、感染を予防するために、法律上、マスクを着けていない客の入店拒否をすることができるのでしょうか。
基本的に、入店拒否できる
結論としては、法律上、マスクを着けていない客の入店拒否をすることはできます。
なぜなら、その店の所有者や管理者は、営業の自由があり、基本的に、その店にどのような客の入店を許すかどうか、誰と契約するかどうかについて決める権限を有しているからです。
入店拒否できない場合もある
ただし、どんな場合でも入店拒否ができるわけではありません。
例えば、マスクを着けていない日本人には入店を許しているにもかかわらず、マスクを着けていない外国人だけを一律に入店拒否することは、外国人に対する不合理な差別として、不法行為にあたり違法となる可能性があります。
外国人を一律入店拒否にした銭湯が、不法行為だとして慰謝料の支払いを求められた裁判がありました。
裁判所は、外国人の一律入浴拒否は、不合理な差別であって、社会的に容認しうる限度を超えているから、違法であり不法行為にあたると判断しています(札幌地裁判決平成14年11月11日)。
緊急事態宣言が発令されたコロナ禍の中で、感染予防のためにマスクを着用していない客の入店を拒否することは、合理的な理由があると考えられますので、不法行為とはいえないでしょう。
おわりに
マスクを着けていない客にも様々な理由があります。
皮膚疾患のため、マスクをすると肌がかぶれるという体質の客もいるでしょう。
また、小さなこどもの場合、マスクをすると、窒息のリスクや心臓に過度の負担がかかるリスクがありますし、こどもが自分でマスクを取ってしまうなどの事情があるでしょう。
このような様々な理由があってマスクを着けていない客がいるにもかかわらず、マスクを着けていない客の入店を拒否する店が、ネットで批判されたりしています。
これは、マスクを着けていない、ひいては着けられない客への配慮を求めるものでしょう。
コロナ禍の最中、相手を思いやる気持ちがより大切になっています。
入店拒否する場合でも、店頭でマスクをバラ売りするとか、ハンカチやスカーフ等で口元を覆えばよいとするとか、マスクを着けていない客への配慮もあるとよいですね。