ウルフクリニックという脱毛クリニックが突然、全店の営業を停止しました。
これにより、費用を支払済みなのに施術を受けられず、返金にも応じてもらえない状態が続いているようです。
今回の記事では、脱毛クリニックの返金被害等に遭った場合の対処法についてアディーレ弁護士が解説します。
※本記事は2023年4月26日時点の情報に基づいて執筆しております。
この記事を読んでわかること
- ウルフクリニックの騒動の概要
- 脱毛クリニックで返金被害等に遭った場合の対処法
アディーレ法律事務所
同志社大学、及び、同志社大学法科大学院卒。2009年弁護士登録。アディーレに入所後、福岡支店長、大阪なんば支店長を経て、2022年4月より商品開発部門の統括者。アディーレがより「身近な法律事務所」となれるよう、新たなリーガルサービスを開発すべく、日々奮闘している。現在、神奈川県弁護士会所属
事件の概要と被害状況の紹介
ウルフクリニックはメンズ専用の「医療脱毛クリニック」です。
医療脱毛って何?
医療脱毛とは、医療資格を持つ者しか扱えない脱毛方法で、発毛組織自体を
破壊し、永久脱毛が可能になります。
これに対し、美容脱毛は、生えてくる毛を減らしたり、抑制するにとどまります。
このウルフクリニックが、突然次々と全店の営業を停止しました。
そして「費用をすべて払っていたのに、未施術分の施術を受けらない」「返金もしてもらえない」といった状況が続いており、SNSでは800人以上もの方が被害を訴えています。
「5月中旬頃に営業再開するための準備を進めている」というウルフクリニック側からの連絡があったという報道もあるようですが、現時点では営業再開の正確な目途は不明な状況です。
参考:テレ朝ニュース|テレビ朝日
脱毛クリニックで返金トラブルに遭った場合の対処法5つ
今回のウルフクリニックに限らず、脱毛クリニックに対し、中途解約をして返金を求めたのに、返金してもらえないというトラブルは昨今増えています。
このような場合の対処法についてご説明します(個別のケースにより対処法は異なります)。
【1】 脱毛クリニックに返金の請求をする
【2】 クレジットカード会社に支払いの停止を求める
【3】 クレジットカード会社に返金を求める
【4】 法律相談をする
【5】 他の脱毛クリニックで施術を受ける
対処法1:脱毛クリニックに返金の請求をする
脱毛クリニック側が費用を受け取っておきながら、脱毛の施術をしてくれない場合は、契約を解除して費用の返金を請求することが考えられます。
返金を拒否されることもある!?
ところが、返金を求めても拒否されることがあります。
例えば、「総施術回数が20回の場合、10回目までは返金対象だが、11回目以降は返金できない」といった場合です。
ところで、脱毛クリニックの契約は「特定商取引法」という法律で規制されています。この特定商取引法においては、“有償の期間・回数を超えた後の中途解約(返金)はできない”というような内容になっています。
先ほどの例では、脱毛クリニック側は「10回目までは有償契約」「11回目からは無償契約(無料のサービス)」と主張しているというわけです。
しかし、脱毛クリニック側が返金できないと主張していても、実はその主張は「法的には認められないもの」であることも少なくありません(脱毛クリニック側が主張する無償契約の内容が、法的にみると、有償契約の内容と実質が変わりなく、消費者側にもそのように認識させるような契約である場合など)。
返金を巡ってトラブルになった場合は、後述する法律相談をお勧めします。
参考:脱毛エステの通い放題コースなどでの中途解約・精算トラブルに注意!「途中でやめたら返金なし!?」「解約したのに支払いは続く…」|独立行政法人国民生活センター
脱毛クリニックに返金請求をしたら、自己負担額以外は全額返ってくるものなの?
ケースにより異なります。
健全な経営をしている脱毛クリニック等の場合、自己負担額以外は全額返ってくるケースも多くあります。
しかし、気を付けなければならないのが、脱毛クリニックが破産をしてしまうことがあるということです。
例えば、「脱毛ラボ」という脱毛サロンの運営会社が破産手続を開始したというニュースは、記憶に新しいところです。
破産してしまうと、その時点で残っている財産を、原則として債権額に応じて全債権者に平等に分配することになります。
ケースによって異なるものの、残念ながら、脱毛クリニックが破産すると、戻ってくるお金はないか、あってもごくわずかになってしまうことが多いです。
また、脱毛クリニック側が任意に返金せず、かつ、脱毛クリニック側の財産の在処も分からない、または財産がないという場合、裁判をしても返金してもらうのが困難となることがあります。
脱毛クリニック側が財産を隠しているという場合もあるため、弁護士へ相談するとよいでしょう。
解約しても自己負担額が発生することがある!?
解約しても、特定商取引法上、自己負担しなければならない額(脱毛クリニック側に払わなければならないお金)が発生することがあります。
「解約を申し出したのがいつか」によって、自己負担額が変わってきます。
脱毛クリニックとの契約期間が1ヵ月を超え、かつ、契約金額が5万円を超える場合、解約した場合の自己負担額は次の通りとなります。
解約の申し出をした時期 | 自己負担額 | |
契約書面を受け取ってから8日以内(クーリングオフ) | なし | |
契約書面を受け取ってから8日経過後ではあるが、有償の期間・範囲内 | 役務の提供を受ける前(例)脱毛施術を受ける前 | 2万円 |
役務の提供を受けた後 | 既に提供された役務分の代金+5万円(※1)または 契約残額(※2)×20%(※3) のいずれか低い金額 | |
有償の期間・範囲を超えた場合 | 全額(解約できません) |
※1・3:脱毛の方法がレーザー脱毛や針脱毛等である場合
※2:契約残額とは「契約に関する役務の対価の総額―既に提供された役務の対価」で計算される額のことです
参考:脱毛エステの通い放題コースなどでの中途解約・精算トラブルに注意!「途中でやめたら返金なし!?」「解約したのに支払いは続く…」|独立行政法人国民生活センター
参考 :特定商取引法ガイド|消費者庁
対処法2:クレジットカード会社に支払いの停止を求める
クレジットカードで支払っているにもかかわらず、脱毛クリニック側が途中で施術をしてくれなくなってしまった場合、クレジットカード会社側に支払いの停止を求めると、一定の条件を満たせば(※)クレジットカードの支払いを止めてくれる可能性があります(支払い停止等の抗弁)。
※主に次の場合には、クレジットカードの支払いを停止することはできません。
【1】 割賦販売法の適用がされない場合(例:翌月1回払い)
【2】 リボ払いの場合で、かつ、1回のカードの利用金額(リボ払いの分割手数料を含む)が3万8000円未満である場合
【3】 【2】以外の場合で、1回のカード利用に係る支払総額(分割払いの手数料を含む)が4万円未満である場合
【4】 契約(例:脱毛クリニックとの施術契約)が、クレジットカード利用者にとって営業のため、または営業として締結したものである場合(業務提供誘引販売個人契約・連鎖販売個人契約に関するものを除く)
クレジットカードの支払いを止めたい場合は、まずは、脱毛クリニックの費用の支払いに利用したクレジットカード会社に電話連絡しましょう。
その後、所定の書面(支払停止等のお申出の内容に関する書面)に記入の上、クレジットカード会社の指定する場所に送付して、支払の停止を求めることになります。
支払停止等のお申出の内容に関する書面に記入したら、送付する前にコピーをとって、そのコピーを手元に保管しておくとよいでしょう。
この書面を提出してもクレジットカード会社が支払いを止めてくれない場合は、その理由を聞き出しましょう。そして、弁護士などの専門家に今後の対応方法を相談するとよいでしょう。
クレジットカードの支払いが停止しても、脱毛クリニックとの契約が残っていると、トラブルは根本からは解決しません。
というのも脱毛クリニック側が、残っていた施術の提供を開始すると、クレジットカードの支払も再開してしまうのです。
「もうこの脱毛クリニックは信用できない・施術を受けたくない」という場合は、脱毛クリニックとの契約も併せて解除するようにしましょう。
内容証明を使って証拠が残るように解除するとよいでしょう。
参考:契約中のエステサロンが破産した!|独立行政法人国民生活センター
参考:契約中の脱毛エステ店が倒産してしまった~長期・高額な契約に気をつけて~|川崎市
対処法3:クレジット会社に返金を求める
脱毛クリニックの費用をクレジット会社に支払い済みであるのに、脱毛クリニック側の事情でいつまで経っても施術してもらえないと言った場合、支払い済みの代金をクレジット会社から返金してもらえる場合があります(チャージバック)。
脱毛クリニック側と連絡が取れない等、返金してもらうことが難しい場合は、クレジットカード会社からの返金が重要となってきます。
※なお、二重に返金してもらうことはできないため、脱毛クリニックと連絡が取れる場合は、脱毛クリニックとクレジットカード会社、あなたとの3者で協議を進めていくとよいでしょう。
チャージバックするかどうかは、各クレジット会社の判断次第となりますので、クレジットカード会社によって対応が異なる可能性があります。
そのためまずは、先ほどご説明したクレジットカード会社への支払を止める手続き(支払い停止の抗弁)をいかに早くするか、ということが重要になってきます。
以下クレジットカード会社の関連ページや問い合わせ先です。ご参照ください。
- 三井住友VISAカード|支払い異議申し立て
- JCBカード|お問い合わせ
- Diners Club International|お問い合わせ
- イオンカード| お問い合わせ
- セゾンカード|お問い合わせ
- エポスカード|お問い合わせ
- オリコ|お問い合わせ
対処法4:法律相談をする
「自分ではどうしたらいいかよく分からない」「自分で対応をしてみたけどうまくいかない」という場合は、専門家に法律相談をしましょう。
相談窓口1:消費者ホットライン(局番なし 188)
都道府県の消費生活センター等につながる消費者ホットライン(局番なし188)は、脱毛クリニックに対する苦情など、消費者からの相談を受け付けています。相談は無料です(ただし通話料金は自己負担となります)。
参考:全国の消費生活センター等|独立行政法人国民生活センター
相談窓口2:弁護士に相談する
弁護士に相談するという方法もあります。
弁護士に依頼すると、弁護士はアドバイスだけにとどまらず、あなたの代理人となって返金交渉などをしてくれます。
自分に合う弁護士をホームページ等から探してみると良いでしょう。
アディーレ法律事務所では、ウルフクリニックの契約者で未消化分の施術があり、返金を求める方につき、現在、次の相談・ご依頼を受けております(ただし、対応可能な人数には限りがあり、当該相談・ご依頼の受付の終了時期は未定です)。
- ウルフクリニックからの返金に向けたアドバイス、返金手続の代理
- ウルフクリニック・運営会社・管理医師等への責任追及手続の代理
- その他本件に関する一切の法的手続の相談(状況に応じます)
上記事件のご依頼を受けた場合、回収できた金額の10%(税込)の弁護士費用を頂戴しております。
相談費用・裁判手続費用は無料です。
回収できなかった場合は、弁護士費用は頂戴しません。そのため、費用倒れの心配なくご依頼いただけます。
対処法5:別の脱毛クリニックの施術を受ける
受けていた脱毛の施術が途中で止まってしまった場合、困るのはお金のことだけでなく、脱毛そのものも途中で止まってしまうということです。
そのため、脱毛の施術を続けたい場合、別の脱毛クリニックの施術を受けることになります。
【まとめ】ウルフクリニックから返金がされずお困りの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。
今回の記事をまとめると次の通りとなります。
脱毛クリニックで返金トラブルに遭った際、被害者が取れる対処法は次の5つ
- 脱毛クリニックに返金の請求をする
- クレジットカード会社に支払いの停止を求める
- クレジットカード会社に返金を求める
- 法律相談をする
アディーレ法律事務所では、ウルフクリニックの契約者で未消化分の施術があり、返金を求める方につき、ウルフクリニックからの返金等に関する相談・依頼を受け付けている。 - 他の脱毛クリニックで施術を受ける
ウルフクリニックと突然連絡がとれなくなり、施術にも返金にも応じてもらえず、お困りの方もいらっしゃることでしょう。
自分ひとりで返金交渉をするのは大変です。
ぜひとも、アディーレ法律事務所にご相談ください。