「仕事をやめたいけれど、やめさせてもらえなかったらどうしよう。」
近年、終身雇用は崩壊したといわれ、若者の転職への意識も変化し、年々、転職する方の増加傾向は続いています。
総務省の発表によると、2019年の転職者数は351万人と過去最多でした。
また、転職者の前職の離職理由の1位は、「より良い条件の仕事を探すため」です。
仕事内容に不満があり、転職する方は今や珍しくありません。
「仕事をやめる」ことは労働者の権利です。
ですから、労働者に退職の意向があり、法律上も退職できる状態であるにも関わらず、退職させないというのは違法です。
もしも今、退職したいと伝えているにも関わらず、強引な引き留めにあっているという方は、まずは、ご自身の雇用契約では、最短でいつ退職できるのか確認してください。
今回の記事では、弁護士が次のことなどについてご説明します。
- 仕事をやめたいと思った具体的な理由
- 退職したいのに、退職させてもらえない場合の対処法
参照:増加傾向が続く転職者の状況 ~2019年の転職者数は過去最多~|総務省統計局
中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。
仕事をやめたい理由上位5つを紹介
仕事をやめたいと思う理由は人それぞれですが、次の5つが主な理由として挙げられます。
- 給与面
- 労働条件
- 人間関係
- 会社の方針
- 成績評価
厚生労働省の調査によると、2020年における転職者等の前職をやめた具体的理由は、多い順に見ると次のとおりでした。
- 労働条件(賃金以外)がよくなかったから
- 満足のいく仕事内容でなかったから
- 賃金が低かったから
このことから、会社や仕事に対する不満から転職する人が多いことがうかがえます。
このほかにも、会社を辞めたい理由には、次のようなものがあります。
- 人間関係が好ましくない
- 会社の将来が不安
- 能力・個性・資格を活かせない
退職させてくれない場合の対処法
会社が仕事をやめさせてくれない場合でも、退職の申し出をしてから法律上定められた一定の期間を経過すれば、仕事をやめることができます。
この「一定の期間」は、雇用契約に期間の定めがあるのか、ないのかで、異なります。
(1)期間の定めのない雇用契約の場合
「期間の定めがない雇用契約」とは、会社で働く期間があらかじめ決まっていない雇用契約のことです。
サラリーマンの場合、期間の定めがない雇用契約であることが多いです。
2週間前に退職したいと言えばOK
期間の定めがない雇用契約の場合は、2週間前までに会社に退職したいと伝えれば、退職できます(民法627条1項後段)。
就業規則に、「1ヶ月前までに退職を申し出ること」と記載されていても、議論のあるところですが、2週間前までに会社に退職したいと伝えれば退職できるとも考えられています。
就業規則よりも、この民法627条1項後段の規定の方が、優先するともいえるためです。
2週間というのは、営業日基準ですか?
いいえ、営業日基準ではなく、単なる日数を基準とします(土日祝日も含みます)。
退職を申し入れた日を含んで2週間ですか?
いいえ、退職を申し出た日は含みません(民法の「初日不算入のルール」と言います)。
例えば、9月1日に申し出た場合には、9月2日からカウントしますから、退職日(最後の勤務日)は9月15日です。
ただし、年俸制で働いている場合には、3ヶ月前に退職を申し入れる必要がありますので、注意が必要です(民法627条3項)。
(2)期間の定めのある雇用契約の場合
「3年契約」など、会社で働く期間をあらかじめ会社と取り決めしている場合が、期間の定めのある雇用契約です。
期間の定めがある場合の退職時期は、次の表のとおりです。
(2-1)原則:雇用期間満了まで退職NG
期間の定めがある雇用契約の場合、原則として、期間が満了しないと退職できません(民法628条)。
なお、
- 一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの
- 一定の高度の専門的知識を有する労働者
- 満60歳以上の労働者
を除いて、契約期間が1年を超え、かつ契約期間の初日から1年を経過した後はいつでも退職できます(労働基準法137条。あくまでも執筆時点の法律に従った場合です。今後改正が予定されているので、退職時の法律をご確認ください)。
(2-2)例外1.雇用期間更新後は、予告期間を置けばいつでも退職OK
期間の定めがある雇用契約であっても、当初の雇用期間が満了し、そのまま会社も労働者も異議を述べることなく黙示に雇用期間が更新された後は、期間の定めがない場合と同じルールで退職できます(民法629条)。
すなわち、原則2週間前に退職すると会社に伝えれば退職できます。
(2-3)例外2.やむを得ない事由がある場合は直ちに退職OK
期間の定めのある雇用契約であっても、「やむを得ない事由」があるときは、会社に退職したいと伝えたら、直ちに退職できます(民法628条前段)。
病気のため長期的に仕事ができる状況にない場合には、「やむを得ない事由」にあたることが多いでしょう。
ただし、やむを得ない事由が、労働者の過失によって生じたときは、会社に対して損害賠償の責任を負ってしまいますので注意しましょう(民法628条後段)。
(3)入社時に明示された労働条件と実際の労働条件が異なる場合
会社と労働契約する際に明示された労働条件と、実際の労働条件が異なる場合は、直ちに退職できます(労働基準法15条第2項)。
例えば、入社する際には、試用期間3ヶ月と言われていたのに、実際には試用期間が6ヶ月だった場合には、「明示された労働条件と異なる場合」として、直ちに退職できることが多いでしょう。
(4)会社と合意がある場合
法律上必要な期間が経過していなくとも、会社と合意すれば、その合意に従って退職できます。
法律の規定よりも早くやめることに合意してもらうわけですから、高い交渉能力が必要になるでしょう。
第三者に間に入ってもらうなどして、もはや在職する気がないことを毅然と伝える必要があります。
(5)退職の申し出は口頭でもOK
退職の申し出は、法律上は口頭でも有効です。
必ずしも退職願いを出す必要はありません。
ただし、口頭で申し出ても、なかったように扱われる場合には、退職申し出をした証拠を残すために、退職願いを内容証明郵便で出すことをおすすめします。
(6)なるべく揉めたくない場合は、就業規則に従って退職申し出
法律の規定に従えば退職できるものの、就業規則上は1ヶ月以上前に退職したいと伝えなければならない、と定められている場合があります。
また、退職届も出すように定められている場合が多いです。
なるべく会社と揉めずに退職したい場合には、就業規則で定められた時期・様式に従って退職手続きをするとよいでしょう。
在職強要をしてくる場合はどうしたら良い?
退職申し出をしたところ、懲戒解雇にする、損害賠償請求するといった脅しをしてくる会社もあります。
このような脅しは違法である可能性があります。
また、このような極端な事例でなくとも、強引な退職引き止めは違法となる可能性があります。
退職の申し出をしているのに退職させてくれない場合は、総合労働相談コーナーや弁護士に相談しましょう。
総合労働相談センターに相談すると、アドバイスをくれたりします。
とはいえ、総合労働相談コーナーは、あくまで公的機関であり、労働者の代理人となってくれるわけではありません。
他方、弁護士に依頼すれば、アドバイスだけではなく、弁護士が労働者の代理人として会社と退職の交渉をしてくれますし(退職代行)、退職の他にも有給消化、残業代未払いなどその他の問題も対応してもらえます。
退職届が受理されない場合について詳しくはこちらをご覧ください。
【まとめ】労働者の退職を認めない行為は違法の可能性がある
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 転職者の転職理由のうち、「より良い条件の仕事を探す」という理由が大きな割合を占める。
- 期間の定めのない仕事の場合には、基本的には退職の申入れから2週間が経過すると退職することができる。
- 期間の定めのある仕事の場合は、基本的には期間満了まで退職できないが、やむを得ない事情がある場合などは、期間満了前に退職できる。
- 退職の意向を伝えているのに辞めさせてもらえない時は、総合労働相談コーナーや弁護士に相談するのが良い。
自分の人生ですから、「この仕事を続けていていいのだろうか」と考え、その結果「より良い条件の仕事を探したい」と思うのは当然のことです。
自分で退職の意思を伝えにくい場合や、どうやって辞めたらいいのか相談したい場合には、退職代行の利用を検討ください。
アディーレ法律事務所では退職代行に関する相談料は何度でも無料です(2024年8月時点)。
仕事をやめたいのに、やめさせてもらえない場合は、退職代行を得意とするアディーレ法律事務所へご相談ください。