債務整理に関する基礎知識

特定調停と任意整理との違い

任意整理は、弁護士が債務者の代理人となって各債権者と和解交渉を行う私的な整理方法であるのに対し、特定調停は、裁判所が仲介役となって債務者と各債権者との和解の成立を支援する公的な手続です。そのため、特定調停と任意整理では、以下の表のような違いがありますが、大きな違いは、取立が止まる時期と、債務名義の有無です。

特定調停も任意整理も、債権者からの取立は止まりますが、任意整理の場合は弁護士に依頼すれば直ちに取立が止まるのに対し、特定調停の場合、実際に裁判所に申立をしない限り、取立は止まりません。特定調停の申立には、特定調停申立書のほか、関係権利者一覧表や財産の状況を示す明細書が必要になるので、取立が止まるまでに相当の期間がかかることも少なくありません。

特定調停の場合、合意が成立すると調停調書という書面を裁判所が作成します。この調停調書は裁判の判決と同じ効力があるので(これを債務名義といいます)、債権者との合意どおりに支払うことができなかった場合、債権者は給料差押え等の強制執行をすることができます。これに対し、任意整理の場合も、債権者と合意ができたら和解書という書面を作成しますが、これには判決と同じ効力はありません。

また、もう一つ大きな違いとしては、解決するまでに本人が費やす時間です。任意整理の場合、弁護士が代理人としてすべての交渉・手続を行いますので、時間や手間をとられることなく、安心して仕事等に専念することができます。これに対し、特定調停の場合、調停委員が仲介するとはいえ、基本的には本人が各債権者と交渉する必要があります。しかも、債権者ごとに交渉をしなければならないため、1社あたり30分~1時間ほどかかることもあり、1回の調停に数時間を費やすこともあります。裁判所は土日祝祭日には開廷しておらず、行われるのも1ヵ月に1回程度なので、合意が成立するまで数ヵ月かかり、何回か仕事を休んで調停に行かなければならないことが多いのが実状です。

特定調停 任意整理
代理関係 原則として本人が行う(弁護士が代理人となることは可)。 弁護士が代理人として行う。
費用 1社あたり500円。 弁護士との契約により決まるが、通常は特定調停より高額。
借金の減額幅 利息制限法の上限金利による引き直し計算により減額される。将来の金利もカットされることがある。
※調停成立までの遅延損害金が加算される場合がある。
利息制限法の上限金利による引き直し計算により減額される。原則として将来の金利もカットできる。
和解成立までの遅延損害金は原則として加算されない。
※事情により、ごく稀に将来利息、遅延損害金が加算される場合がある。
債権者からの取立 申立後は取立がストップする。 弁護士に依頼後、直ちに取立がストップする。
和解・調停の成立 債権者が同意しなければ調停不成立となり、他の手続を選択しなければならない。 和解の成立には債権者の同意が必要。ただし、ほとんどのケースで和解が成立する。
過払い金 過払い金の取り戻しは行われないため、過払い金を考慮した調停をすることが困難。 過払い金の取り戻しもできるため、返還された過払い金を踏まえた返済計画を立てることができる。
債務名義 調停調書は裁判の判決と同じ効力を持つため、返済ができなくなった場合には直ちに給料差押え等の強制執行をされてしまう可能性がある。 通常債務名義は作成されないため、返済ができなくなった場合でも直ちに強制執行されることはない。

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このページの監修弁護士

弁護士 谷崎 翔 アディーレ法律事務所

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2010年弁護士登録。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。