一般社団法人全国銀行協会が2020年に実施した調査によると、借入れをしている人の借入残高は50万円以下であることが多く、200万円以上の借金を抱えている人は約15~20%にとどまります。
自己破産を含めた債務整理が視野に入ってくる200万円の借金の整理の仕方について、弁護士が解説します。
参照:銀行カードローンに関する消費者意識調査<調査結果>|一般社団法人 全国銀行協会
早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。
【債務整理しない場合】借金200万円の返済シミュレーション
200万円を借りた場合、返すのは200万円で足りるかというと、そうではありません。
消費者金融や銀行などからお金を借りた場合、「利息」を支払わなければなりません。
利息の一般的な計算方法は、以下のとおりです。
利息=元本額×金利(利率)×借入期間
金利は、一般的に年利(元本に対する1年間の利息を割合で示したもの)が採用されています。たとえば、200万円を年利10%で1年間借りた場合の利息は、200万×10%×1年で20万円となります。200万円を年利10%で1月間(30日間)借りた場合の利息は、200万×10%÷365(閏年ではない年)×30で1万6438円となります(1円未満は切り捨て)。
利息制限法では、元本に応じて、上限金利が次のように定められており(利息制限法1条1項)、多くの消費者金融では、上限金利ギリギリの利率に設定されています。
元本 | 上限利率 |
---|---|
10万円未満 | 20% |
10万~100万円未満 | 18% |
100万円以上 | 15% |
消費者金融などのホームページには、利息のシミュレーションページがあることが多いです。
実際にお金を借りるときには、どの程度利息を払う必要があるのかあらかじめ計算してみてください。
利息がいくらになるのかを含めて、どのような返済計画になるのかをシミュレーションしてみましょう。なお、このシミュレーションは約束どおりに支払い終えた場合なので、借金の返済を滞納してしまった場合には、遅延損害金が発生して、さらに多くのお金を支払わなければならない可能性があります。
(1)年利15%で月々5万円ずつ返済していく
年利15%で200万円を借りた場合、月々約5万円ずつ返済して、5年2ヶ月で返済し終えることになります。このとき、利息として107万7200円を支払わなければなりません。
借りたお金の半額以上を利息として支払う必要があることに驚くのではないでしょうか。
(2)年利15%で月々7万円ずつ返済していく
年利15%で200万円を借りた場合、月々約7万円ずつ返済して、3年で返済し終えることになります。このとき、利息として48万9779円を支払わなければなりません。
(3)年利15%で月々10万円ずつ返済していく
年利15%で200万円を借りた場合、月々約10万円ずつ返済して、2年で返済し終えることになります。このとき、利息として31万5885円を支払わなければなりません。
(4)複数の消費者金融から90万円ずつ借りて1社あたり5万円ずつ返していく
X社から90万円、Y社から90万円ずつ借りた場合、年利が18%に設定されることがあります。そうなると、1社あたり月々5万円ずつ返済した場合、1年10ヶ月で完済します。
返済総額は、1社あたり105万6916円なので、利息は合計で31万3832円です。
1社で180万円を年利15%で借りた場合の利息は25万2000円なので、2社で借り入れると借り入れた金額が同じでも利息が約6万円多くなる可能性が高いのです。
200万円の借金を完済する方法とポイント
200万円の完済を目指す場合には、以下の2つがポイントとなります。
- 引っ越しや保険の解約等の検討を含めて月々の支出を見直す
- 自動車など高価だが現状不要な(あるいは代替手段のある物等の)財産を売却する
(1)引っ越しや保険の解約を含めて月々の支出を見直す
200万円の借金を完済するなら、それまでの生活スタイルを大きく改善する必要があります。たとえば、家賃が安いところに引っ越す、保険を解約する、携帯料金のプランを見直すなど固定費を下げる努力をしたいところです。
引っ越しをするとしても、引っ越し代や敷金など元手となるお金が必要です。返済に追われ、元手となるお金を用意できないなら、弁護士に債務整理を依頼した後で、生活を立て直すために引っ越しを検討せざるを得ません。
(2)自動車など高価な財産を売却する
公共交通機関の発達した都心であれば、たとえば自動車を売却するのも1つの手でしょう。
自動車を売却することで、売却代金を借金の返済に充てることができますし、維持費を削ることができるはずです。ただし、自動車を売却するなら2社以上で査定をしてもらったうえで、高い価格で買い取ってもらいましょう。後々、自己破産や個人再生をするときに、自己の財産を不当に減少させたとして問題視されかねませんので、決して無償で譲ることのないようにしてください。
そのほか、宝石や時計など何かしら高価な財産を売却して、借金の返済に充てるのも有用です。
【任意整理する場合】借金200万円の返済シミュレーション
住宅ローンや自動車ローンのように、まとまったお金を借り入れたのではなく、生活費として借り入れたお金が200万円まで膨れ上がってしまった場合、身の丈に合った生活ができておらず、借金のない生活を送るためには抜本的な解決策が必要です。
そうなると、誰かから援助を受けられない限り、自力での完済はなかなか難しいでしょう。任意整理だけでなく、法的整理(自己破産や個人再生)も1つの選択肢として考えたほうがいい状況といえます。
(1)任意整理とは?
任意整理とは、取引開始時にさかのぼって利息制限法の上限金利(15~20%)に金利を引き下げて再計算すること(引き直し計算)により借金を減額した上で、原則として将来利息をカットし、元本のみを3年程度の分割で返済する内容の和解契約を債権者と結び、以後この和解内容に従って返済を続けることで、借金を整理する手続きです。
また、適法な上限金利に合わせた引き直し計算の結果、借金の元本を減らせる可能性があります。
任意整理の特徴として、弁護士に依頼する債権者を選ぶことができます。そのため、場合によっては、保証人のいる債権者、自動車や住宅のローンに関する債権者を対象から外すことも可能です。
また、自己破産や個人再生と異なり、官報(国が定期的に発行する機関誌)に氏名や住所が掲載されないので、周囲に借金の存在が発覚する可能性も相対的に低いといえます。
(2)任意整理のメリット
年利15%で月々5万円ずつ返済していく予定だったとしましょう。
5年2ヶ月にわたって返済を続け、107万7200円の利息を支払う必要があります。
これに対して、任意整理が成功して、将来利息カット・60回の長期分割の話し合いがまとまったならば、将来利息を支払う必要がなく、月々の支払額は約3万4000円になります。
通常、月々の返済額を下げると支払期間が延び、その分だけ利息の金額も高くなります。
しかし、任意整理であれば月々の返済額を下げ、かつ、利息をカットできる可能性があるのです。
(3)任意整理で借金が減額した実際のケースをご紹介!
実際に法律事務所に任意整理を依頼して、借金返済の負担が軽減されたケースをご紹介します。
Aさん(30代・女性)は、6社から約440万円を借り入れていました。結婚を機に、借金問題を解決したいと考え、任意整理を弁護士に依頼したところ、過払い金により借金を約200万円まで減額することに成功し、月々17万円弱だった返済も、月々2万円まで減らすことができたのです。
2010年6月17日以前に借入れを開始した方であれば、過払い金が発生している可能性があるため、大幅に借金を減額できる可能性があります。
200万円の借金返済に任意整理が向く人・向かない人
任意整理は、裁判外での交渉であるため、自己破産や個人再生のような制約がありません。
そのため、たとえば制限職種であって自己破産をすることができないなど法的整理を選択できない人は、任意整理をするのがいいでしょう。
また、収入や資産の状況では、自己破産や個人再生の要件を満たさない可能性があります。
要件を満たさない以上、債務整理をするなら任意整理をするほかありません。
逆に、任意整理に向いていないのは、次のような人です。
- 借金を完済するまで安定した収入があるかどうかわからない
- 信用情報機関に事故情報が登録されると支障がある
(1)借金を完済するまで安定した収入があるかどうかわからない
任意整理をする場合、過払い金が発生している場合を除き、借金の元本が減ることはありません。そのため、200万円を借りたならば、200万円を返さなければなりません。
何回払いで200万円を返せばよいのかはケースバイケースですが、長くても5年以内(60回)で完済できるように返済計画を立てます。そのため、月々3万4000円程度返済できなければ、任意整理ではなく、自己破産や個人再生をすべきといえます。
(2)信用情報機関に事故情報が登録されると支障がある
詳しくはこちらの記事もご確認ください。
任意整理をすると、信用情報機関に事故情報が登録されることがあります。
任意整理で事故情報が登録される期間は、次のとおりです。
信用情報機関 | 任意整理に関し登録される主な情報 | いつまで載るか |
---|---|---|
CIC | 任意整理をしたという事実の登録はない | ― |
JICC 【キャッシングの契約】 | ・債務整理 | 【契約日または貸付日が2019年9月30日以前】 ⇒発生日から5年以内 【契約日または貸付日が2019年10月1日以降】 ⇒契約継続中+契約終了後(完済後など)から5年以内 |
JICC 【クレジットや金融機関等の契約】 | ・返済条件変更 (※本人が払えなくなった等の事情により、弁済期間を延ばすなど返済条件が変更された情報 ・返済総額変更 (契約上の返済総額等が変更された情報) | 【契約日または貸付日が2019年9月30日以前】 ⇒発生日から5年以内 【契約日または貸付日が2019年10月1日以降】 ⇒契約継続中+契約終了後(完済後など)から5年以内 |
KSC (全国銀行協会) | 任意整理をしたという事実の登録はない | ― |
※任意整理に伴い、代位弁済・保証債務履行などがされ、当該事故情報が信用情報に登録されることはあります(信用情報機関によって取扱いが異なりますが、長いと完済などしてから5年経過しないと登録が削除されません)。
また、代位弁済などの一部の事故情報は、CRIN(クリン)という制度により、上記3つの信用情報機関及びその加盟会員(貸金業者)において共有されていることがあります。
例えば、JICCで代位弁済の情報が消えても、KSCに代位弁済の情報が登録されている場合はJICCに加盟する貸金業者も代位弁済の情報を知ることができますので、依然として、いわゆるブラックリストに載っている状態となります。
また、過去に任意整理をしたのと同じ業者やそのグループ会社から借り入れる場合には、社内に任意整理をした情報が残っていて、当該業者やそのグループ会社からの借入れを拒まれる可能性があります。
参考:「信用情報開示報告書」表示項目の説明|割賦販売法・貸金業法指定信用情報機(CIC)
参考:CICが保有する信用情報|割賦販売法・貸金業法指定信用情報機(CIC)
参考:<詳細版>『信用情報記録開示書』項目説明書|信用情報機関 株式会社 日本信用情報機構(JICC)
参考:登録情報開示報告書の見方について|一般社団法人 全国銀行協会
信用情報機関に事故情報が登録されると、次のような制約があります。
- 現在使用しているクレジットカードが使えなくなる
- クレジットカードを新規作成できない
- ローンやキャッシングなど一切の借金ができない
- 分割払いで買い物ができない
- 子どもの奨学金を含め、他者の借金の保証人になれない
- 賃貸住宅の審査が下りない場合がある
たとえば自分で借入れをして事業をしている自営業者にとって、新たに借入れができなくなる事態は死活問題かもしれません。任意整理に限らず、自己破産や個人再生であっても事故情報が登録されてしまうため、この場合には債務整理はできないことになります。
【まとめ】借金の任意整理はアディーレ法律事務所にご相談ください
一つの目安として、借金総額が200万円を超えると、自力での借金完済はなかなか難しいといえます。また、任意整理で将来利息をカットできると、利息払いの割合や金額が大きければ大きいほど、弁護士費用を大きく上回る経済的な利益が得られるでしょう。借主が自ら債権者に交渉を持ち掛けても相手にしてもらえないことも多く、専門知識が不十分であるがゆえに、不利な交渉結果を強いられることも少なくないため、任意整理は専門家である弁護士に任せることをおすすめします。
借金の返済についてお困りならば、アディーレ法律事務所にご相談ください。