「育児休業中に支給される育児休業給付金というものがあると聞いたけれど、具体的にはどんなときにもらえるんだろう?」
育児休業中の、パパ・ママの家計を助けてくれる育児休業給付金ですが、育児のため休業すれば必ずもらえるわけではありません。
育児休業給付金の受給には、雇用保険被保険者であることが必要であるなど、様々な条件があります。
また、いつまで支給されるのか、支給額はいくらになるのか、についても決まりがあります。
あらかじめ、これらの条件や決まりについて知っておくと、育児休業期間中のお金のやり繰りをしやすくなります。
この記事では、次のことについて弁護士が解説します。
- 育児休業給付金の申請の条件
- 育児休業給付金の支給期間
- 育児休業給付金の支給額の計算方法
- 育児休業給付金の支給の流れ
中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。
育児休業給付金とは
「育児休業給付金」とは、育児をするために仕事を休むなど、育児休業中の方に、国が一定のお金を給付するという制度です。
育児休業給付金の支給条件
育児休業給付金を利用するには、申請前と給付中において、一定の条件を満たす必要があります。
(1)申請前に満たすべき条件
申請前に満たすべき条件としては、次のものがあります。
- 雇用保険の被保険者であること
- 育児休業前の2年間に被保険者である期間が12ヶ月以上あること
- 育児休業後に職場復帰する意思があること
これらについてご説明します。
(1-1)雇用保険の被保険者であること
育児休業給付は、雇用保険の被保険者に給付される制度です。
給付時点において、雇用保険の被保険者でない方には給付されません。
そのため、自営業者や経営者などは、育児休業給付の対象とはなりません。
(1-2)育児休業前の2年間に被保険者である期間が12ヶ月以上あること
1.原則
育児休業を始める日前の2年間に、原則として、雇用保険の被保険者である期間が12ヶ月以上あることが必要となります。
この「被保険者である期間」とは、賃金の支払いの基礎となった日数(※1)が、11日以上ある完全月(※2)のみを指します。
※1 賃金支払いの基礎となった日数
簡単にいえば、賃金が発生する労働を行った日数です。
原則として、日給者は各月の出勤日数、月給者は各月の暦の日数でカウントします。
※2 完全月
育児休業開始日の前日から、過去にさかのぼって、1ヶ月ごとに区切った被保険者期間をいいます。
なお、基本手当の受給資格や高年齢受給資格の決定を受けたことがある場合は、その決定後の期間のみが、被保険者期間としてカウントされます。
出産した女性の育児休業開始日は、産後休業終了の翌日となります(出産日から数えて、58日目)。
男性の場合は、配偶者の出産当日から、育児休業給付金をもらうことができます。
【チェック】被保険者期間12ヶ月の数え方
ステップ1.育児休業開始日を確認
出産日が、2020年9月2日であったとします。
その場合、育児休業開始日は出産日から数えて58日目の、2020年10月28日です(出産した女性の場合)。
ステップ2.完全月に区切る
この育児休業開始日の前日2020年10月27日から1ヶ月ずつさかのぼって、2年間の被保険者期間が12ヶ月あるか重要となります。
まずは、完全月ごとに区切ってみましょう。
2020年9月28日~2020年10月27日
2020年8月28日~2020年9月27日
2020年7月28日~2020年8月27日
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・
・
2018年10月28日~2018年11月27日
このように、2年間さかのぼって区切ります。
「12月中(12月1日~12月31日)」という数え方ではないため気を付けましょう。
完全月は、育児休業開始日の前日から起算して、1ヶ月ごとに区切られます。
ステップ3.賃金支払いの基礎となった日を確認
このようにして、区切れたら、賃金の支払いの基礎となった日が11日以上ある完全月が12ヶ月以上あるか確認しましょう。
つわりがひどかったりして、無給(例えば国などから給付金だけをもらっている期間は無給です)で休んだ日が多いと、賃金の支払いの基礎となった日が11日未満となることがあるので注意が必要です。
また、産前産後休暇は、まるまる無給となる会社が多いので同じく注意しましょう。
このようにして確認すると賃金の支払の基礎となった日が「11日未満」の月が多い気がして不安です。
もう給付金をもらえないのでしょうか?
「11日未満」の月が多かったとしても、ご説明するような例外があるので、まだもらえる可能性は残っています。
あきらめずに確認してみてください。
例外1
育児休業を開始した日前の2年間に、本人の病気などのために、30日以上賃金の支払いを受けることができなかった期間(上限4年)がある場合は、受給要件が緩和されます。
すなわち、
「育児休業開始前の2年間+上記理由で30日以上賃金の支払いを受けることができなかった期間」
まで、さかのぼって、被保険者である完全月が12ヶ月以上あればよいことになります。
例外2
2020年8月1日以降に育児休業開始日となる方が、上記各要件を満たさなくとも、次の条件を満たせば受給要件を満たします。
すなわち、育児休業を始める日前の2年間に、賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上ある完全月が、12ヶ月以上あれば、受給要件を満たすことになります。
「11日未満」の月が多くて原則を満たさず、また、これらの例外にもあてはまらないようでした。
もう給付金をもらうことはできませんか?
残念ながら要件を満たさないため、給付金はもらえません。
給付金をもらえないのはとても心苦しいことですが、後から「働いた日かどうか」を動かすことはできません。
育児休業給付金をもらおうと考えている方は、「11日未満」の月が多いために対象外となることのないように、できるだけ「11日未満」の月を減らすように注意しましょう。
参考:Q&A~育児休業給付|厚生労働省
参考:雇用継続給付|ハローワークインターネットサービス
(1-3)育児休業後に職場復帰する意思があること
育児休業給付金は育児休業が終了した後に、職場復帰することを前提とした給付金です。
このため、育児休業をする当初から退職を予定している方は申請できません。
参考:育児休業給付に関するQ&A|東京労働局 東京ハローワーク
(2)給付中に満たすべき条件
これまで、育児休業給付金の申請前に満たすべき条件について、ご説明してきましたが、給付中に満たすべき条件もあります。
給付中に満たすべき条件は、次のとおりです。
このいずれも満たす必要があります。
- 育児休業前の賃金の8割以上にあたる金額が支払われていないこと
- 育児休業給付の給付中に働いた日数が月あたり10日以下であること
これらの条件は自身で管理するとともに、会社の人事課等とあらかじめ相談・調整しておくとスムーズに給付が受けられます。
(2-1)育児休業前の賃金の8割以上にあたる金額が支払われていないこと
育児休業期間中の1ヶ月ごとに、「休業開始前の賃金(月)の8割以上の賃金」が支払われていないことが必要です。
(2-2)育児休業給付の給付中に働いた日数が月あたり10日以下であること
働いた日数が、各支給単位期間(※育児休業開始日から1ヶ月ごとに区切った期間)ごとに10日以下であることが必要です。
10日を超える場合でも、働いた時間が80時間以下であれば、給付の条件を満たします。
ただし、育児休業が終了する最終の支給単位月は、上記条件に加えて、休業日が1日以上あることが必要です。
※支給単位期間の例
育児休業開始日が2020年10月28日であれば、支給単位期間は、次のようになります。
2020年10月28日~2020年11月27日
2020年11月28日~2020年12月27日
2020年12月28日~2021年1月27日
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・
このように、育児休業開始日から1ヶ月ごとに区切ったものが支給単位期間となります。
(3)契約社員など雇用期間に定めがあるときは注意
雇用期間に定めがある場合、上記の各条件のほか、次の条件も満たす必要があります。
- 子どもが1歳6ヶ月になる日までに、雇用契約(契約が更新される場合は更新後の契約)が満了する予定がないこと
なお、育児・介護休業法の改正により、2022年月4月1日より、育児休業開始の時点で1年以上同じ会社で継続して働いていることは、条件から撤廃され、労使協定によって対象外することができるものとされました。
育児休業給付金の支給期間
育児休業給付金が、いつからいつまでもらえるのか、支給期間を解説いたします。
(1)基本は子どもの1歳の誕生日の前々日まで
育児休業給付金は、基本的には、「育児休業開始日(産後休業終了の翌日)~子どもが1歳の誕生日の前々日まで」が支給期間です。
例えば、2019年9月2日が誕生日の子を養育する女性の場合は、「2019年10月28日(育児休業開始日)~2020年8月31日(1歳の誕生日の前々日)まで」が、基本の支給期間となります。
(2)両親ともに育児休業をとると、「出産日の1年2ヶ月後となる日の前々日まで」受給可能
両親ともに育児休業を取得する場合は、「出産日の1年2ヶ月後となる日の前々日」まで、1年間(※)、育児休業給付金の受給が可能となります。
これは、母親と父親の育児休業を推進する「パパ・ママ育休プラス」制度によるものです。
※育児休業給付金の受給が可能な1年間
「出産日~出産日の1歳2ヶ月後になる日の前々日まで」の期間の内、1年間です。
男性の場合は、女性とは異なり、出産日から育児休業給付金を受給できますが、「出産日から計1年2ヶ月間、育児休業給付金をもらえるわけではない」、ということです。
「パパ・ママ育休プラス」の支給条件
「パパ・ママ育休プラス」の支給条件は、以下のいずれも満たすことです。
- 子の1歳の誕生日以降に、本人が育児休業を開始
- 子の1歳の誕生日の前日以前に、配偶者が育児休業を取得
- 配偶者の育児休業の初日以降に、本人が、育児休業を開始
参考:両親で育児休業を取得しましょう!|厚生労働省
(3)保育園の空きがない場合は、出産日から1年6ヶ月後の前々日まで延長可能
保育園の空きがないなどの理由がある場合、出産日から1年6ヶ月後の前々日まで支給期間を延長できます(パパ・ママ育休プラスの制度を利用している場合も同様)。
具体的には、次のいずれかの場合に該当すると、育児休業給付期間の延長ができます。
延長を必要とする理由ごとに、一定の書類の提出が必要となることに注意しましょう。
1.保育園(無認可施設を除く)などにあらかじめ申込んでいるが、育児休業の申し出の対象となっている子どもが、1歳の誕生日の前日を迎えた後(※)も、当面利用できない場合
※「パパ・ママ育休プラス制度」の利用をしている方
→育児休業終了予定日が子の1歳の誕生日の前日以降である場合は、休業終了予定日以降
【必要書類】
・市町村が発行した保育所等の入所保留の通知書など
(当面、保育所等において子どもを預けることができない事実を証明することができる書類)
※市町村からの発行が困難な場合は、別の書類で代替できる場合もあります。
2.育児休業の申し出の対象となっている子の養育を日頃から行っており、当該子が1歳以降も同様に養育を行う予定であった配偶者が、以下のいずれかの理由で、1歳以降の養育が困難となったり、養育できなくなった場合
<1>死亡
【必要書類】
・世帯全員について記載された住民票の写し
・母子健康手帳
<2>ケガ、病気
【必要書類】
当該症状が記載された医師の診断書等
<3>離婚等の事情により、当該配偶者が、育児休業の申し出の対象となっている子と別居
【必要書類】
・世帯全員について記載された住民票の写し
・母子健康手帳
<4>配偶者が出産間近もしくは出産直後(産前産後休業が可能な期間に該当)
【必要書類】
・母子健康手帳
(4)2017年10月からは子どもの2歳の誕生日の前々日まで延長可能に
2017年10月1日より、1歳6ヶ月後の前日以降も、保育園に空きがないなどの理由があれば、最長2歳の誕生日の前々日まで、育児休業給付金の支給期間を延長できます。
ただし、期間延長には、延長理由に応じた確認書類の提出が必要となります。
雇用期間に定めがある方の場合は、出産から1年6ヶ月後の時点において、「子どもが2歳までの間に、雇用契約(契約が更新される場合は更新後の契約)が満了する予定がない」という条件も満たす必要があります。
参考:平成29年10月より育児休業給付金の支給期間が2歳まで延長されます|厚生労働省
(5)2022年10月1日からは、「育児休業を2回に分割して取得すること」「延長して育児休業を取得する場合、その開始日を延長期間中とすること」も可能に
これまでは子が1歳になるまでの育児休業を分割して取得することは原則として認められておりませんでしたが、育児・介護休業法の法改正により、2回に分割して取得することができるようになりました。
また、これまでは育児休業を延長する場合、その開始日が子の1歳の時点と1歳半の時点に固定されておりましたが、育児・介護休業法の改正により、延長期間の途中を開始日とすることができるようになりました。
これらの法改正により、子が1歳になるまでの育児休業を両親とも2回に分割して育児休業を取得したり、延長期間中には父親と母親が入れ替わりに育児休業を取得することが可能となり、各家庭の事情に応じ、より柔軟に育児休業を利用することができるようになりました。
参考:育児・介護休業法 改正ポイントのご案内 令和4年4月1日から3段階で施行|厚生労働省
(6)2022年10月1日からは「産後パパ育休」をした場合も対象に
2022年10月1日からは、「産後パパ育休」をした場合も、一定の要件を満たすと出生時育児休業給付金を受け取ることができます。
「産後パパ育休」とは、2022年10月1日から作られた制度であり、通常の育児休業とは別の制度で、原則休業の2週間前までに申し出れば出生後8週間以内に最大4週間までの休暇を取得できるものです。分割して2回取得することが可能とされます。
また、労使協定を締結していれば、日数に上限はありますが、労働者が合意した範囲で休業中でも出勤して就労することも可能とされ、柔軟に父親が産後育休を取得できるようにしております。
給付金を受け取るための要件は、次のとおりです。
- 休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が原則11日以上ある月が12ヶ月以上あること
- 休業期間中の就業日数が、最大10日(10日を超える場合は就業している時間数が80時間)以下であること
支給額は、「休業開始時賃金日額(原則、育児休業開始前6ヶ月間の賃金を180で除した額)×支給日数×67%」です(※)。
※支給された日数は、育児休業給付の支給率67%の上限日数である180日に通算されます。
申請期間は、「出生日の8週間後の翌日から起算して2ヶ月後の月末まで」です。
参考:育児休業、産後パパ育休や介護休業をする方を経済的に支援します|厚生労働省
育児休業給付金の必要書類と申請方法

育児休業給付金の申請方法や必要書類を紹介します。
参考:育児休業給付の内容及び支給申請手続について|ハローワークインターネットサービス
(1)育児休業給付金の初回申請の必要書類
育児休業給付金の初回の申請に必要な書類は以下のとおりです。
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書
- 賃金額やその支払い状況を確認できる書類(賃金台帳、出勤簿、タイムカードなど)
- 育児を行っている事実が確認できる書類(母子手帳の写しなど)
(1-1)2ヶ月に1度の再申請では必要書類が変わる
育児休業給付金を受給するためには、初回の申請のほか、育児休業の期間に応じて2ヶ月ごとの追加申請が必要になります。
育児休業給付金の2回目以降の申請では、以下の書類を提出します。
- 「育児休業給付支給申請書」(初回申請時にハローワークから交付される)
- 「賃金の額やその支払い状況、休業日数や働いた日数を確認できる書類」
(1-2)パパ・ママ育休プラス制度利用者の育児休業給付金申請の必要書類
パパ・ママ育休プラス制度を利用している方の場合、次の書類も追加で提出する必要があります。
「子の1歳の誕生部の前々日までの、育児休業給付金の申請時」(※)に、下記書類を提出する必要があります。
(※厳密には、「子の1歳の誕生日の前々日を含む支給対象期間までの、育児休業給付金の申請時」という意味です)
【必要書類】
- 住民票の写し等……支給対象者の配偶者であることを確認できる書類
- (配偶者が雇用保険の育児休業給付金を受給していない場合、または支給申請書に配偶者の雇用保険被保険者番号の記載がない場合は)
配偶者の育児休業取扱通知書の写し(会社から交付される)または配偶者の疎明書……配偶者が育児休業を取得したことを確認できる書類
(2)申請の流れ
原則として、会社を通じて、育児休業給付金の申請をします(追加申請も含む)。
ただし、希望すれば、個人での申請も可能です。
会社を通じて育児休業給付金の申請をする場合は、普通は、会社の人事部などから、本人に対して、本人が記入すべき書類が交付されます。
また、通常は、母子手帳の写しなど、本人が提出すべき書類がどれか、会社から教えてもらえます。
会社に必要書類を提出すれば、あとは会社が手続きを進めてくれます。
個人で育児休業給付金の申請を行う場合は、必要書類を自分で全て準備し、自分でハローワークに提出する必要があります。
書類の提出先は「勤務先(事業所)の所在地を管轄する」ハローワークである点に注意しましょう。
個人でおこなう場合も会社との連携が大切
育児休業給付金の初回申請を含め、申請には賃金台帳や出席簿、タイムカードといった会社が所持している書類が必要になるため、個人で申請する場合にも会社との連携が大切になります。
育児休業給付金の給付中も、後の職場復帰をみすえて、会社との「報告・連絡・相談」をきちんと取り続けることを、おすすめします。
(3)申請期限
育児休業給付金の初回の申請期限は、育児休業開始日から起算して4ヶ月を経過する日が属する月末です。
例えば、5月3日に育児休業を開始した場合は、9月末(9月30日)が初回の申請期限となります。
育児休業給付金の2回目以降の申請期限は、ハローワークが指定します。
この2回目以降の申請期限は、「育児休業給付次回支給申請日指定通知書」(ハローワークが交付)に記載されています。
育児休業給付金の計算方法
育児休業給付金は、いくらもらえるのか、計算する方法を解説いたします。
参考:平成26年4月1日以降に開始する育児休業から 育児休業給付金の支給率を引き上げます|厚生労働省
参考:令和2年8月1日から支給限度額等が変更になります。 皆さまへの給付額が変わる場合があります。|厚生労働省
(1)育児休業給付金の計算
育児休業開始から6ヶ月までは休業開始前賃金の67%相当額、それ以降は50%相当額の育児休業給付金が支給されます。
具体的には、1ヶ月あたりの支給額は、次のような計算式で求められます。
ただし、後でご説明するとおり、下限額、上限額があります。
【育児休業開始から180日まで】
休業開始時の賃金日額×支給日数(※)×67%
【育児休業開始から181日以降】
休業開始時の賃金日額×支給日数(※)×50%
※支給日数は30日
ただし、育児休業終了日の属する支給対象期間は、当該支給対象期間の日数が支給日数
休業開始時の賃金日額とは
「休業開始時の賃金日額」は申請時に提出する「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」をもとに、育児休業を開始する前6ヶ月間の賃金を180で割った金額のことです。
この場合の賃金とは、いわゆる「総支給額」のことで、手取り金額ではありません。
すなわち、保険料などが控除される前の金額のことで、残業手当などの諸手当を含む金額です。
また、ここでいう賃金には賞与は含まれません。
(2)育児休業給付金の金額・支給時期・税金の上で気をつけたいポイント
育児休業給付金に関して気をつけたいポイントは、次のとおりです。
- 育児休業給付金は原則2ヶ月ごとに決められた金額が支給される
- 支給上限額がある
- 減額・不支給となる場合がある
- 支給期間のカウントに注意が必要
- 育児休業給付金は非課税
- 育児休業給付金は所得にならない
これらについてご説明します。
(2-1)育児休業給付金は原則2ヶ月ごとに決められた金額が支給される
育児休業給付金は原則2ヶ月ごとに決められた金額が支給されます。
そして、初回の育児休業給付金の振り込み時期は、出産4ヶ月目以降です。
申請時期やハローワークの混雑の程度によっては、初回の振り込み時期がさらに遅れることもあります。
そのため、すぐに育児休業給付金が振り込まれると思って、お金の計画を立てていると、家計が回らなくなることがありますので、注意が必要です。
あまりにも育児休業給付金の給付が遅い場合は、ハローワークか会社に確認しましょう。
(2-2)支給上限額がある
支給単位期間の1ヶ月あたりの支給上限額は次の通りです(毎年8月に改定)。
- 180日までが30万5319円
- 181日目以降が22万7850円(2022年8月1日~2023年7月31日)
また、育児休業給付金の金額を算出する際に用いられる「休業開始時の賃金月額」(=休業開始時の賃金日額×30)の下限額は、7万9710円となっております(2022年8月1日~2023年7月31日)。
(2-3)減額・不支給となる場合がある
育児休業期間中に賃金を得ると、育児休業給付金が減額されたり、不支給となる場合があります。
すなわち、賃金の額が、「休業開始時の賃金日額×支給日数」の13%(30%)を超えて80%未満の場合は、育児休業給付金は次の計算式のとおり、減額されます(()内は、育児休業開始から180日以降の場合。以下同じ)。
育児休業給付金=休業開始時の賃金日額×支給日数の80%相当額-賃金
また、賃金の額が、「休業開始時の賃金日額×支給日数」の80%以上の場合は、育児休業給付金は支給されません。
他方で、賃金の額が、「休業開始時の賃金日額×支給日数」の13%(30%)以下の場合には、育児休業給付金は満額支給されます。
参考:育児休業給付の内容及び支給申請手続について|ハローワークインターネットサービス
少しでも収入を増やそうと、赤ちゃんが寝ている間にテレワークで働いたりする方もいらっしゃるかと思います。
しかし、得た賃金の額によっては、育児休業給付金が減ったり、支給されなかったりする場合がありますので、注意しましょう。
(2-4)支給期間のカウントに注意が必要
支給期間をカウントするときは、「産後休業期間を除くこと」と、「支給対象期間が育児休業終了日の前日までであること」に注意が必要です。
例えば、育児休業終了日が1歳の誕生日の前日であった場合、育児休業給付金の終了日は、1歳の誕生日の前々日となります。
(2-5)育児休業給付金は非課税
育児休業給付金は非課税です。
ここで、育児休業給付金を受給している年に、ふるさと納税をする場合に注意が必要です。
というのも、ふるさと納税をするにあたり、「税金がいくらまで控除されるのか(控除上限額)」、という点を重視される方も多いかと思います。
この点、そもそも税金のかからない育児休業給付金は、税金を控除する対象とはなりません。
そのため、育児休業給付金を受給している年は、控除上限額が変わる(通常は控除上限額が引き下がったり、控除額0円となる)ことになりますので注意しましょう。
(2-6)育児休業給付金は所得にならない
育児休業給付金は所得にはなりません(雇用保険法61条の6、同法12条)。
そのため、育児休業を取得した年は、これまで配偶者(特別)控除の対象とならなかった方も、対象になる(=税金で得する)ことがありますので、配偶者の年末調整や確定申告の際に注意が必要です。
なお、出産育児一時金や出産手当金も所得にあたりません(健康保険法62条)。
参考:No.1191 配偶者控除|国税庁
参考:No.1191 配偶者控除|国税庁
参考:No.1195 配偶者特別控除|国税庁
【まとめ】育児休業給付金の受給には雇用保険被保険者であることなどが必要
この記事のまとめは次のとおりです。
- 「育児休業給付金」とは、育児をするために仕事を休むなど、育児休業中の方に対して国が一定のお金を給付する制度。
- 育児休業給付金には、申請前に満たすべき条件と給付中に満たすべき条件がある。
- 申請前に満たすべき条件は次のとおり。
- 雇用保険の被保険者であること
- 育児休業前の2年間に被保険者である期間が12ヶ月以上あること
- 育児休業後に職場復帰する意思があること
- 給付中に満たすべき条件は次のとおり。
- 育児休業前の賃金の8割以上にあたる金額が支払われていないこと
- 育児休業給付の給付中に働いた日数が月あたり10日以下であること
- 育児休業給付金の支給期間は、原則、子どもの1歳の誕生日の前々日まで。
- 育児休業給付金は、原則として、会社を通して申請する。
通常は会社から本人が記入するべき書類が交付され、提出するべき書類がどれか教えてもらえる。
会社に必要書類を提出すれば、あとは会社が手続きを進めてくれる。 - 育児休業給付金の申請期限は、育児休業開始日から起算して4ヶ月を経過する日が属する月末。
- 育児休業給付金の計算は、育児休業開始から180日までは「休業開始時の賃金日額×支給日数×67%」、181日以降は「休業開始時の賃金日額×支給日数×50%」の計算式で求められる。
- 育児休業給付金は原則2ヶ月ごとに支給されること、支給上限額があること、非課税であることなどのポイントがある。
経済的な面でも安心しながら、子育てをしたいものですよね。
そのためにも、育児休業給付金についてのしっかりとした知識は欠かせません。
育児休業給付金についてご不明な点があれば、最寄りのハローワークに相談しましょう。
全国のハローワークの所在地については、次のページをご覧ください。