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発信者情報開示とは?匿名の投稿者を特定する手続と要件を解説

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s.miyagaki

※アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

「インターネットの匿名掲示板で誹謗中傷されている…。書き込んでいる相手を特定する方法は?」

インターネットの掲示板などは「匿名」で書き込みができますが、実は完全に「匿名」なわけではありません。

掲示板を管理するサイト管理者などに発信者情報開示請求をすることにより、匿名で書き込みをした投稿者を特定できることもあります。

インターネット上で誹謗中傷の書き込みをされてお悩みの方は、どのように匿名の投稿者を特定できるのか、「発信者情報開示」の方法について知っておくとよいでしょう。

この記事を読んでわかること
  • 投稿者を特定するための『発信者情報開示請求』の流れ
  • 発信者情報開示請求の5つの要件          
この記事の監修弁護士
弁護士 重光 勇次

同志社大学、及び同志社大学法科大学院卒。福岡支店長、大阪なんば支店長を経て、2020年4月より退職代行部門の統括者。勤務先から不当な退職引きとめをされる等、退職問題についてお悩みの方々が安心して退職され、次のステップに踏み出していただけるよう、日々ご依頼者様のため奮闘している。神奈川県弁護士会所属

匿名の投稿者を特定する『発信者情報開示請求』の流れ

インターネット上の掲示板などに匿名で誹謗中傷の書き込みをした投稿者を特定するためには、いわゆる「プロバイダ責任制限法」(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)に規定された『発信者情報開示請求』をする必要があります。

発信者情報開示請求の流れは、概ね次のとおりです。

【サイト管理者】から、投稿時のIPアドレスや投稿日時等(ここからは、あわせて「IPアドレス等」といいます。)を開示してもらう(第1段階)
※基本的にはサイト管理者を相手としますが、サイト管理者が不明な場合などはサイトの情報を保存している【サーバー管理者】に請求をする場合もあります。

開示されたIPアドレスを使用する【接続プロバイダ】を特定する

【接続プロバイダ】から、投稿時に当該IPアドレスを使用した契約者の情報を開示してもらう(第2段階)

IPアドレスとは、インターネットに接続する全ての端末(スマホやPCなど)に割り振られている識別符号のことで、「インターネット上の住所」と言われています。

ある特定の時点で、インターネットに接続している端末のIPアドレスは重複しません(※日時が変わると同じIPアドレスを別の端末が利用することもあります)。
ですから、投稿時のIPアドレスを調べると、その時点でどの端末がそのIPアドレスを使用していたのか分かるのです。

そこで、まずは、書き込みがなされた匿名掲示板などを管理する「サイト管理者」などから、問題となっている書き込みがなされた時点の投稿者のIPアドレスとその投稿日時の情報等を取得します(第1段階)。

IPアドレスは日時が変わると重複しますので、サイト管理者に対してIPアドレス等の開示を請求する際は、必ず、投稿の時刻を秒単位まで特定する必要があります。

投稿者のIPアドレスが分かれば、そのIPアドレスを使用している接続プロバイダが分かります。
そして、接続プロバイダが分かれば、その接続プロバイダに対して、発信者情報開示請求により、「当該書き込みがなされた時点で、当該IPアドレスを利用していたのはどの契約者なのか」を開示してもらうのです(第2段階。※インターネットカフェや公共のWi-Fiを利用した場合など、投稿者が特定できないケースもあります)。

発信者情報開示請求の方法は?

匿名掲示板のサイト管理者からIPアドレス等の情報を開示してもらうためには、「発信者情報開示請求書」などを用いて、任意に開示を依頼する方法もありますが、基本的には応じてもらえません。
そこで、通常は裁判所を通じた手続をとることになります。

裁判所を通じた匿名掲示板の投稿者の特定方法として、通常は次の2つの手続があります。

(1)サイト管理者等に対して「発信者情報開示の仮処分命令」を申立てた上、接続プロバイダに対して「発信者情報開示訴訟」を提起するか、「発信者情報開示命令」を申立てる

(2)サイト管理者等と接続プロバイダに対して「発信者情報開示命令」を申立てる

(1)は、第1段階と第2段階の手続をそれぞれ別の手続で行う方法、(2)は、第1段階と第2段階の手続を同一の手続内で行う方法です。

それぞれご説明します。

(1)「発信者情報開示の仮処分➡「発信者情報開示訴訟」or「発信者情報開示命令」の手続による場合

『仮処分』とはどんな手続ですか?

仮処分とは、裁判所から「仮に」何らかの処分をしてもらう手続です。『仮処分』の手続では、まずは裁判所から「(サイト管理者等に対して)投稿時のIPアドレス等の情報を仮に開示せよ」という命令をもらいます。

書き込みをした時のIPアドレス等、投稿者のアクセスログの記録は(会社によって異なりますが)一般的に3~6ヶ月で保存期間が切れてしまいます。

投稿者を特定するための第1段階(サイト管理者からの情報開示)に時間がかかってしまうと、せっかくサイト管理者から投稿者のIPアドレス等が開示されても、その間に接続プロバイダのアクセスログの保存期間が切れてしまい第2段階の請求をしても投稿者の情報は取得できなくなってしまいます。
ですから、第1段階のサイト管理者へのIPアドレス等の開示は急ぐ必要があるので、『仮処分』での開示が認められているのです。

なお、「仮処分命令」は、あくまでも裁判所から「仮に」開示を命令する処分ですが、通常は、サイト管理者は裁判所の仮処分命令があれば投稿時のIPアドレス等の開示をしますので、訴訟をする必要はないことが多いです。

サイト管理者から投稿時のIPアドレス等が開示されたら、次は「接続プロバイダ」に対し、投稿時に当該IPアドレスを使用した契約者の情報の開示を請求します(第2段階)。
接続プロバイダに対する情報開示請求は、仮処分ではなく、訴訟もしくは開示命令の手続で行う必要があります。

接続プロバイダが持っている投稿者のアクセスログにも保存期間があるんですよね?
訴訟をしている間に、ログの記録が消えたりしないのですか?

訴訟をしている間にログの保存期間が過ぎてしまうという場合には、接続プロバイダに対してアクセスログを消去しないように求めておきます(※もしも応じない場合にはログ保存の仮処分命令を申立てる必要があります)。

(2)「発信者情報開示命令」手続による場合

「発信者情報開示命令」手続とは、2022年10月から施行された手続です。
この制度では、次のことを1つの手続ですることができます。

(1)サイト管理者に対する「開示命令」の申立て
※サイト管理者から、投稿時のIPアドレス等の情報を取得するものです。

(2)サイト管理者に対する「提供命令」の申立て
※サイト管理者に対し、接続プロバイダの名称等を提供するよう命じるものです。

(3)提供命令によって判明した接続プロバイダに対する「発信者情報開示命令」の申立て
※接続プロバイダから、投稿時のIPアドレスを利用していた契約者の氏名等の情報を取得するものです。

また、接続プロバイダにあるアクセスログの保存期間が過ぎてしまいそうな場合には、同じ手続の中で「消去禁止命令」を申立てることもできます。

1つの手続でいろいろできるなんて便利ですね!全ての情報開示を発信者情報開示命令手続ですれば良いのではないですか?

確かに、スムーズに進めば発信者情報開示命令手続の方が時間も手間もかからない可能性が高いです。ですが、現時点では、業者によって、開示のスピードが異なります。手間がかかっても、従来の方式による発信者情報開示請求の方が開示が早まるというケースもあります。

匿名の掲示板などの投稿に対し、投稿者の特定を検討されている方は、手続に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。

発信者情報開示命令手続について詳しくはこちらの記事をご確認ください。

プロバイダ責任制限法の改正で開示請求がスムーズに!ポイントを解説

匿名の投稿者を特定するための『発信者情報開示請求』の要件とは

匿名の投稿者を特定する方法として有効な発信者情報開示請求ですが、請求のためには、次の5つの要件を満たす必要があります。

(1)特定電気通信による情報の流通であること
(2)権利を侵害されたことが明らかであること
(3)「自己の権利」を侵害されていること
(4)情報開示を求める正当な理由があること
(5)開示を求める相手が「発信者情報」を保有していること

それぞれご説明します。

(1) 特定電気通信による情報の流通であること

発信者情報開示請求をするためには、「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信」でなければいけません。
例えば、インターネット上の掲示板やブログ、SNSへの書き込みなどです。他方、個別のメールやメッセンジャー、DM(ダイレクトメッセージ)など、受信するのが「不特定の者」ではない場合には、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求はできません。

また、不正アクセスやハッキングをされた場合や、ネットで詐欺の被害にあったという場合に犯人を特定したいケースなどは、「情報の流通」そのものによる被害ではないので、やはり発信者情報開示請求はできません。

(2)権利を侵害されたことが明らかであること

発信者情報開示請求をするには、まずは、投稿によってご自身のプライバシー権や名誉権などの権利が侵害されていることが必要です。
さらに、それが「明らか」、すなわち、権利を侵害されたことが明白であり、不法行為等の成立を阻却する事由の存在をうかがわせるような事情が存在しないことが必要です。

不法行為等の成立を阻却する事由というのは、どういう場合ですか?

例えば、被害者の名誉権を侵害するような書き込みがなされたとしても、それが真実であるような場合などには、違法性が阻却される可能性があります。

例えば「●バスの△という運転手が飲酒しながらバスを運転していた」という書き込みは、△の社会的評価を低下させるものですので△に対する名誉権侵害に当たります。
ですが、本当に飲酒をしながらバスを運転していたようなケースでは違法性が阻却されて、そのような書き込みは違法ではないと評価され、発信者情報の開示が認められない可能性があります。

(3)「自己の権利」を侵害されていること

発信者情報開示請求をすることができるのは、権利を侵害された本人だけです。第三者の権利が侵害されたからと言って、本人以外の者が発信者情報開示請求をすることはできません。

また、(弁護士ではない)削除代行業者などが本人に代わって発信者情報開示請求をするのは「非弁行為」と言って違法な可能性が高いです。
ご自身では発信者情報開示請求をできず、誰かに依頼をする場合には弁護士に依頼する必要があります。

さらに、発信者情報開示請求をするには、「同定可能性」といって、誹謗中傷をされているのが本人と特定できる可能性が必要です。
例えば、「●市に住む20代のイニシャルA」と特定して誹謗中傷の書き込みがなされた場合、●市に住んでいる20代のイニシャルAが1人しかいない場合には本人との同定可能性がありますが、複数人が該当する場合には同定可能性がありません。

インターネット上で誹謗中傷を受けているという場合、「その書き込みがなぜあなたを指していると思ったの」か確認してください。書き込みの内容が、あなた以外の人にも当てはまる場合には、基本的には発信者情報開示請求は認められません。

(4)情報開示を求める正当な理由があること

発信者情報開示請求が認められるためには、被害者に情報開示請求をする正当な理由がなければいけません。正当な理由とは、例えば、投稿者を特定して損害賠償を要求することを予定しているなどです。

正当な理由がない場合とは、「既に損害賠償金が支払われている場合」や「開示される情報を公開するなどして私的な制裁を加える目的がある場合」など、イレギュラーなケースですので、投稿者を特定して損害賠償を予定しているという方は、あまり気にする必要はありません。

(5)開示を求める相手が「発信者情報」を保有していること

発信者情報開示請求によって開示を求めることができる情報とは、例えば、次のような情報を指します。

  • 発信者その他侵害情報の送信に係る者の氏名又は名称
  • 発信者その他侵害情報の送信に係る者の住所
  • 発信者の電話番号
  • 発信者の電子メールアドレス
  • 侵害情報に係るIPアドレス及びポート番号
  • 侵害情報が送信された年月日及び時刻       など

プロバイダ責任制限法により開示を請求できる情報は総務省令で定められています。
規定されていない事項については開示の対象となりません。

なお、開示請求の相手方は、サイト管理者、サーバー管理者、接続プロバイダなどがあります。開設する際に実名を登録するブログなど、サイト管理者が投稿者の氏名や住所などを把握している場合には、サイト管理者に対する発信者情報開示請求だけで投稿者を特定できるケースもあります。
誰にどのような請求をすべきかは事案によって異なりますので、詳しくは弁護士に相談されることをお勧めします。

発信者情報開示請求は自分でできる?

発信者情報開示請求は、もちろんご自身で行うことも可能です。
ただ、これまでご説明したとおり、匿名の投稿者を特定するためにはログの保存期間内に適切な手続をとる必要がありますが、これはなかなか時間的にタイトです。

決して長いとは言えない期間内に、誹謗中傷の書き込みを証拠化した上、どのような投稿によっていかなる権利が侵害されたのか適切に主張しなければいけません。

また、例えば、投稿者が格安スマホを使用している場合などは、接続プロバイダに情報開示請求をしても「顧客情報はない」などと回答されるケースなどもあります。
この場合には、さらに請求先を変えて投稿者を特定できる可能性がありますが、このようなイレギュラーなケースに迅速に対応するには、発信者情報開示請求に慣れた弁護士に依頼する方が良いでしょう(※ネットカフェやホテルからの投稿など、どうしても投稿者を特定できないケースもあります)。

【まとめ】 匿名の掲示板などの書き込みであっても、発信者情報開示請求により投稿者を特定できる可能性がある

今回の記事のまとめは、次のとおりです。

  • 投稿者を特定するための「発信者情報開示請求」とは、次の流れのとおり。
    (1)サイト管理者やサーバー管理者から、投稿時のIPアドレスや投稿日時等を開示してもらう
    (2)開示されたIPアドレスを使用する接続プロバイダを特定する
    (3)接続プロバイダから、投稿時のIPアドレスを使用した契約者の情報を開示してもらう
  • 裁判所を通じた匿名の投稿者の特定方法は、次の2つ。
    (1)サイト管理者に対する「発信者情報開示の仮処分」+接続プロバイダ対する「発信者情報開示訴訟」or「発信者情報開示命令」
    (2)サイト管理者+接続プロバイダに対する「発信者情報開示命令」
  • 発信者情報開示請求は、次の要件を満たさなければならない。
    (1)特定電気通信による情報の流通であること
    (2)権利を侵害されたことが明らかであること
    (3)「自己の権利」を侵害されていること
    (4)情報開示を求める正当な理由があること
    (5)開示を求める相手が「発信者情報」を保有していること
  • 発信者情報開示請求をするには、アクセスログの保存期間内にサイト管理者や接続プロバイダに対して証拠によって法的権利を主張する必要がある。自分でもできるが、弁護士に依頼する方が適切な対応が可能となる。

インターネット上の匿名掲示板などに誹謗中傷の書き込みをする人の中には、「匿名」という理由から、軽い気持ちで書き込みをしている人も少なくありません。
ですが、インターネット上の「匿名」は必ずしも投稿者が特定できないということではありません。
誹謗中傷の書き込みは、時として犯罪に当たりうる卑劣な行為です。

インターネット上で誹謗中傷の被害に遭い悩んでいる方は、相手が匿名だからと言って泣き寝入りをせず、投稿者を特定して損害賠償を請求することをご検討ください。

アディーレ法律事務所では、インターネット上のサイトで誹謗中傷され、苦痛を感じている方の力になりたいと考えており、自分を誹謗中傷する投稿に関し「投稿者を特定したい」といったご相談を何度でも無料で承っています。

投稿者の情報が開示されなかった場合、弁護士費用は、原則として全額返金しております(2023年6月時点)。

「インターネット上で誹謗中傷され、その誹謗中傷の投稿者を特定したい」という方は、お気軽にアディーレ法律事務所にご相談ください。
フリーコール「0120-406-848」にてご予約の電話を承っています。

この記事の監修弁護士
弁護士 重光 勇次

同志社大学、及び同志社大学法科大学院卒。福岡支店長、大阪なんば支店長を経て、2020年4月より退職代行部門の統括者。勤務先から不当な退職引きとめをされる等、退職問題についてお悩みの方々が安心して退職され、次のステップに踏み出していただけるよう、日々ご依頼者様のため奮闘している。神奈川県弁護士会所属

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

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