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リーガライフラボ

精神的苦痛で慰謝料請求が成立するケースについて解説

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リーガライフラボ

物が壊れるように、身体が傷つくように、心もまた傷を負います。
心の傷は目には見えませんが、傷を負って泣き寝入りしてしまうのでは、その傷が癒えるまでに長い時間がかかります。

法は、この心の傷に対して慰謝料の請求を認めています。
どのような場面で、精神的苦痛を理由に慰謝料請求が成立するか確認してみましょう。

精神的苦痛とは

さて、実は民法典を見ても『慰謝料』という言葉はありません。
慰謝料というのは精神的苦痛に対する損害賠償請求のことなのです。

民法709条は故意または過失により他人の権利利益を侵害した場合に、その賠償を求めることを認めています。
そして民法710条は、財産以外の損害、つまり精神的損害に対しても損害賠償を認める旨を規定しています。
これを一般的に『慰謝料』と呼んでいるのです。

(1)精神面での苦痛や損害のこと

精神的苦痛というのは、精神面での苦痛や損害のことです。
一言でそう言っても、人には個性があり、他人のどのような行動で精神が傷つくかは全く同じではありません。そして精神に形がない以上は、その傷ついた精神を形にして見せることは容易なことではありません。
そこで法は『精神面での損害』が発生する場面をある程度一般化し、『このような場合であれば、精神が傷ついたものと評価し損害賠償を認める』という考え方をとっています。
つまり傷ついた精神そのものではなく、その『行為』を見て慰謝料の成否を判断しようするのです。

(2)精神的苦痛の具体例

ではどのような『行為』に対して精神的苦痛が認められるでしょうか。
慰謝料が認められるにはいろいろな場面がありますが、以下の場合は裁判上も慰謝料が請求できることが多いと言えます。

  1. 精神的なDV
    DV(ドメスティック・バイオレンス)。
    これは、配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者から振るわれる暴力です。
    暴力の形態が傷害など身体に対する外傷を伴うものであれば、そこで生じた治療費などの損害を賠償請求できます。
    しかし例えケガに繋がるような行為がなくとも、心無い言動や態度によって相手を傷つけることがあります。
    そのような場合には『精神的傷害』として慰謝料請求の対象になるのです。
    精神的DVの例としては次のようなものがあります。
    • 嫌がっているのに性行為を強要する
    • 見たくないのにポルノビデオや雑誌を見せる
    • 避妊に協力しない
    また、精神的DVの中でも、特に相手の金銭的な自由を奪い、精神的負担を与えることを経済的DVと呼ぶこともあります。
    例えば以下のような行為がそれにあたります。
    • 生活費を渡さない。渡す際に過剰にへりくだることを要求する。
    • 自由に使えるお金を認めない。
    • 借金を作る、借金をすることを強制する。
  2. 配偶者の不倫によるもの
    法律上、婚姻は一種の契約であって、その契約内容として夫婦は互いに「貞操義務」を負います。夫婦は互いに配偶者以外の者と性的関係をもつべきではないとされているのです。
    そのため、このような貞操義務に違反し不倫行為に及んだ場合、不倫を行った側の配偶者や不倫の相手は、不倫の被害者側である配偶者に対して『精神的苦痛』を与えたものと評価されます。
  3. モラハラによるもの
    モラハラ(モラル・ハラスメント)とは、倫理や道徳に反した嫌がらせという意味です。
    これは幅広く『大人のいじめ』をイメージすると分かりやすいでしょう。
    夫婦や家庭内だけではなく、職場や社会的なコミュニティにも見られます。
    例えば、相手を無視したり暴言を吐いたり、にらみつけたり、嫌みを言ったり、バカにするなど相手を貶めたり、不機嫌に振舞ったりするようなことを指します。
  4. 職場でのハラスメントによるもの
    職場内には、上記のようなモラハラの他、パワハラやセクハラもあります。職場内でのこのような行為もまた、精神的苦痛となりうるものです。
  5. 多様な精神的苦痛の態様
    その他、ストーカー被害や名誉棄損など、精神的苦痛はいろいろな態様があるため、ここでの例示に当てはまらなくても精神的苦痛と評価される可能性があります。
    精神的苦痛とされるかについて迷った場合には、一度弁護士に相談すると良いでしょう。

精神的苦痛を理由に離婚することは認められている

精神的苦痛は慰謝料発生の理由ともなりますが、これが継続して苦痛を与えられた場合には慰謝料請求のほか、「婚姻の継続が困難な重大な事由がある」とし、法的に離婚原因として成立します。
特に夫婦間のDVといったものであれば、金銭的な賠償が得られればそれで済む問題ではありません。
今後も継続した関係が続くことを念頭に、離婚も選択肢として考える必要があるでしょう。

精神的苦痛で慰謝料請求できるケースとできないケース

慰謝料請求ができるためには、相手方に不法行為が成立していることが必要です。
まず、違法に他人に損害を与えることが必要で、相手の行為が適法で許されるものであれば慰謝料請求はできません。
また、相手方に有責性が必要です。

このような不法行為に該当するか否かは法的な評価が必要です。
以下、具体的な行為について、違法・有責なものとして慰謝料が請求ができる場合とできない場合について見ていきましょう。

(1)不倫行為

配偶者が不倫した場合、配偶者や不倫相手に慰謝料請求できます。
ただ、不倫や浮気で慰謝料請求するには、配偶者と相手に「肉体関係」があることが必要です。
単にデートしているだけなどの軽い浮気であれば、慰謝料請求できません。

(2)離婚

離婚するときにも、離婚自体が精神的苦痛を発生させるものとして、相手に慰謝料請求できると考えられています。
ただし離婚したからといって常に慰謝料が認められるわけではありません。
離婚で慰謝料請求するには、相手に「有責性」があることが必要です。

たとえば不倫やDV、モラハラや生活費不払いなどの事情があれば、慰謝料請求できる可能性が高くなります。
しかし、婚姻破綻原因が双方にある場合や、性格の不一致を理由にする離婚の場合には精神的苦痛で慰謝料請求することはできないのです。

(3)不当解雇

会社から不当解雇された場合にも、慰謝料請求できる可能性があります。
ただし不当解雇の場合にも、必ず慰謝料が発生するとは限りません。
パワハラやセクハラを受けて不当な取扱いを受けた末に解雇されたケースなど、会社の対応が非常に悪質な事案で慰謝料が認められると考えましょう。

(4)交通事故

交通事故が「人身事故」であった場合、つまり、被害者が死傷した場合、死傷してしまったことによる精神的苦痛に対して慰謝料請求が可能です。

しかし「物損事故」では被害者が精神的苦痛を感じたとしても原則として慰謝料請求できません。

慰謝料請求を増額できるケース

精神的損害についての道義的な非難を強める事情が存在し、被害者側の精神的苦痛が通常のケースより大きいと裁判所が認めるような場合に慰謝料が高額化する可能性があるといえます。
つまり、行為が悪質であったり、繰り返し行われていたり、一旦被害者との間で結ばれた約束に違反したといった事情のある場合です。

例えば、これを不倫を理由とした慰謝料請求の場合に照らして見てみましょう。

  1. 不倫の態様
    配偶者か不倫相手のいずれかが不貞を主導した場合、その主導した側の慰謝料は高額となる傾向があります。
    また、不倫の期間が長く続いた場合や、不倫相手が妊娠・出産した場合などもいずれも慰謝料増額の根拠となりえます。
  2. 婚姻生活の状況
    婚姻期間が長い場合や、婚姻生活が円満であった場合、夫婦間に子どもがいる場合などは、不倫前の配偶者との関係が良好であったことと対比し、不倫により大幅に破綻したと評価できることから、慰謝料が高額となる可能性があります。
  3. 不倫判明後の状況
    不倫当事者が反省せず謝罪の意を示さなかった場合や、夫婦が離婚した場合などは、不倫により精神的損害の生じる結果が大きいため、いずれも慰謝料が増額され得ます。
    一方、離婚・別居しない場合は、不貞で夫婦関係が破綻するほどの被害はなかったと考えられるため慰謝料の額が少なくなるようです。
  4. 被害者の状況(心身の不調の有無など)
    不倫された側が、うつ病などの精神病になった場合、それにより通院治療を余儀なくされた場合などには、慰謝料が高額となり得ます。

精神的苦痛による慰謝料請求の方法とは

(1)慰謝料請求の流れ

慰謝料請求は大まかに以下のような流れで進みます。

  1. まずは話し合いで解決を試みる
    どのような事実関係があったのか、どのような被害が生じたのかをお互いで確認し、慰謝料の支払い意思があるかを確認します。
    また、不倫やハラスメントが行われている状況であれば、それをやめるよう求めることになります。
    ただし、ハラスメントを受けている場合など、自分で直接相手と話し合いを持つことが難しい場合や、直接自分で話しても相手は聞く耳を持たないと思われる場合には、弁護士から内容証明郵便で通知書を送ってもらうと良いでしょう。
  2. 離婚調停などを利用
    話合いが上手くいかない場合には、裁判所を仲介者にして話し合う調停という手続きが利用できます。
    調停は裁判所を通してする手続きで、裁判官と調停委員が選任され、当事者の話を交互に聞いて、打倒な案を示してくれるシステムです。
    その際に慰謝料についても話し合うことが出来ます。
    ここで事案を整理し、調停案にお互い納得できれば、合意内容をまとめた調停調書が作られ、手続は終了します。
    調停案が出たからといって、かならずその通りにしなければならないわけではなく、納得がいかない場合には裁判手続きに移行することも可能です。
  3. 裁判
    話合いや調停で納得できる結論が出ない場合には裁判をすることになります。裁判では、訴状や証拠書面を作成するなど、知識と手間が必要です。
    精神的苦痛の立証は、専門知識がない場合は難しくなることが予想されます。
    裁判が確定すると、その判断は基本的には覆らなくなるので、裁判手続きは慎重に行う必要性があることをご注意ください。
    裁判の可能性があれば、出来る限り早い段階で弁護士に相談に行くことをお勧めします。

(2)精神的苦痛を受けた証拠を集めることが大切

精神的苦痛それ自体は目には見えないものです。そのため、精神的苦痛を理由として慰謝料を請求するためには、それが裁判官や相手方にも分かるよう、精神的苦痛を受けた証拠を集めることが大切です。

例えば、

  • 録音・録画、診断書
    DVやモラハラの場合は、録音や録画、診療内科で治療をした場合は診断書をとっておくと良いでしょう。
    特に診断書は比較的容易に入手が可能な上、精神的苦痛の立証として強いものです。
  • 写真・メール、通話履歴など
    相手の浮気の場合は、写真、メールなど。探偵を利用してこれらを集めることも考えられます。
    電話の履歴や通話記録、その他、LINEやSNSで不倫の事実が推測できる記載が見つかるのであれば、集めておきましょう。
    日付けを入れた状態で画面を撮影した写真を撮るといった工夫が必要になります。
  • 通帳のコピーや家計簿、レシート
    生活費を入れてもらえない場合の証拠としては、通帳のコピーや家計簿、レシートなどをとっておくことが大切です。
    家計簿をつけていない人も多いですが、気が付く限り早めにつけ始めた方が良いでしょう。
  • 相手の言動の日時と内容を詳細にメモする
    相手方がどのような暴言を放ったか、それを逐一メモしておいたものが証拠として価値が認められる可能性があります。
    継続的で詳細なものほど証拠としての信用性が高まります。

これらの証拠が集まったら、裁判所に理解してもらえるような主張の組み立てが重要になります。
これらの証拠から何が推測されるか、その推測された事実が最終的には精神的苦痛の発生にどう繋がるものであるかを裁判所に分かってもらわなければなりません。

このような主張の組み立てを自分ひとりで考えるのは負担が大きく限界があるため、しっかり請求するために弁護士に相談することが望ましいと言えます。

【まとめ】精神的苦痛で悩んでいる方は専門家へ

以上、慰謝料請求できる場合について見てきました。
一旦慰謝料の支払いを受けても、例えば不倫が再開するなど、その後また精神的苦痛の生じることが再開した場合や、モラハラ行為を「やめる」という約束をしたのにそれが守られず更に繰り返した場合もあるかも知れません。
その場合にさらに精神的苦痛を負わされたのであれば、再度慰謝料を請求できることがあります。

とはいえ、慰謝料というのは言葉の通り、慰謝するための賠償、つまり慰めるためのお金ということです。
本当の意味では慰謝料では傷ついた心を完全に回復させることは困難です。

精神的な苦痛が長期間に渡った場合、精神は蝕まれ、うつ病などを発症するなど、大変なダメージを受けることにもなりかねません。
ですから、精神的苦痛が長期に渡るような場合には、根本的にその状況から脱することを考える必要があります。

例えば婚姻関係からくるDVや配偶者の不倫、これらが止む様子がないようでしたら離婚も念頭に置く必要もあるのではないでしょうか。
また、会社内でモラハラやパワハラやセクハラがあり、待遇改善が期待出来ないのでしたらそのような環境から脱することも選択肢として考慮することも考えてみて下さい。

また、精神的苦痛は、誰かに相談すること、助けを求めることが大事です。
信頼のおける人に相談することをおすすめします。

もっとも、知り合いには言いづらいこともあるでしょう。
その場合には、弁護士などの専門家に相談することにより、解決への方向が見つかるかも知れません。
そして、精神的苦痛による慰謝料請求が不安な場合は特に、弁護士など専門家に相談すると良いでしょう。