「民法改正で利率が変わると聞いたけど、私の借金にも影響があるかな……?」
遅延損害金について、こんな疑問を持った人もいるのではないでしょうか。
2020年4月1日以降、利率について改正された民法が施行されましたが、実は金融機関からの借金の遅延損害金にはあまり影響がありません。
この記事では、次のことについて弁護士が解説します。
- 遅延損害金の利率の決まり方
- 民法改正での「法定利率の引下げ」の概要
- 民法改正による借金の利率への影響
- 借金の遅延損害金の上限
- 借金返済が不安な場合の対処法
について弁護士が解説します。
早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。
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遅延損害金の利率はどのように決まる?
遅延損害金とは、お金を支払う義務が期限を過ぎてしまった場合に、遅れた日数分発生するペナルティーです(民法415条1項、419条1項)。
借金の場合、遅延損害金は返済期日を過ぎてしまった場合に発生します。
遅延損害金は、次の計算式で金額を求められます。
期限に支払われるべきだった金額×遅延損害金の年率÷365(うるう年なら366)×遅れた日数
利率には、法律上「法定利率」と「約定(やくじょう)利率」の2つがあり、詳しくは後述します。
また、遅れた日数は返済期日の翌日からカウントします。
例えば、4月25日が返済期日で、4月29日に返済をした場合には、遅れた日数は4日ということになります。
(1)法定利率とは
法定利率とは、法律で定められた利率のことです。
当事者どうしであらかじめ遅延損害金の利率について合意していなかった場合には、法定利率が用いられます(民法419条1項)。
例えば、次のように、あらかじめ利率を定めておくことが考えにくい場面で法定利率が使われます。
- 不法行為の被害に遭ってしまった場合の損害賠償金
- (元)勤務先に対して未払賃金を請求する場合
金融機関からの借金の場合、借入れの際の契約で遅延損害金の利率が定められていることがほとんどです。
そのため、遅延損害金が法定利率によって決まることはあまりないと言えます。
(2)約定利率とは

約定利率とは、当事者間の合意で決まった利率のことです。
法定利率より約定利率が高くても、原則として約定利率が優先されます(民法419条ただし書)。
しかし、約束さえすればいくらでも高い利率を取ることができるわけではありません。
遅延損害金の場合には、利息制限法4条1項や消費者契約法9条2項等で上限が定められています。
約定利率によって遅延損害金が算出される場面は、次のようなケースです。
- 金融機関からのキャッシングやカードローン
- 住宅ローンや自動車ローン など
2020年4月に施行された改正民法の「法定利率の引下げ」とは?
2020年4月1日から施行された改正民法では、法定利率の見直しが行われました。
見直しが図られたのは、昨今の低金利に対して、もともとの民法における法定利率が高めだったこと等によります。
この項目では、民法の改正によって法定利率がどのように変化したのかを説明します。
(1)法定利率の一本化
これまでは、法定利率はさらに次の2つに分かれていました。
- 民事法定利率
- 商事法定利率
民事法定利率は民法上のもので、商事法定利率は商法上のものです。
商事法定利率は主に商業の場面で用いられるもので、商取引はそれ以外の取引より利潤を挙げやすい等の理由で、民事法定利率より高めに設定されていました。
しかし、改正民法によって商事法定利率は撤廃され、法定利率は一本化されました。
(2)法定利率は当面3%
これまでは民事法定利率が5%、商事法定利率が6%でした。
改正民法においては、法定利率は3%(改正民法404条2項)とされました。
また、経済の情勢の反映のため、3年に一度、法定利率を見直すこととされました(改正民法404条3項)。
(3)改正前の法定利率と改正後の法定利率、どちらが適用される?
当事者どうしで別に取決めをしていなければ、遅延損害金が最初に発生した時点の法定利率が用いられます。
適用される法定利率は、次のようになります。
- 2020年3月31日まで……………………………改正前の法定利率
- 2020年4月1日から2023年3月31日まで……年3%
- 2023年4月1日以降………………………………未定
民法改正による法定利率の変化と借金の遅延損害金
2020年4月1日から施行された改正民法には、借金の遅延損害金への影響がほとんどないと言えます。
改正民法で見直されたのは、「法定利率」です。
繰り返しになりますが、金融機関から借入れをする際には契約で遅延損害金の利率が定められていることがほとんどです。
法定利率よりも優先される「約定利率」があるということになるため、改正民法で借金の遅延損害金が変動することはほぼないと言えます。
借金の遅延損害金の利率の上限は
借金の遅延損害金について、約定利率の上限は原則として次の表のとおりです(利息制限法4条1項、1条)
借入総額 | 上限利率 |
10万円未満 | 29.2% |
10万円以上100万円未満 | 26.28% |
100万円以上 | 21.9% |
しかし、利息制限法7条1項では、次のように定めています。
第四条第一項の規定にかかわらず、営業的金銭消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が年二割を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
引用:利息制限法7条1項
つまり、金融機関からの借金の場合、遅延損害金の約定利率の上限は、借りた金額によらず一律に年20%となります。
借金の返済が不安なときの対処法
金融機関からの借金で発生する遅延損害金には、年20%の上限があります。
しかし、年20%というのは決して低いものではありません。
例えば、50万円の返済が1年間遅れた場合、遅延損害金は10万円になってしまいます。

返済が遅れた場合のデメリットは、遅延損害金が上乗せされることだけにとどまりません。
滞納が長期化すると、信用情報機関に延滞の情報を登録され(いわゆる事故情報です)、他社を含めて借入れやローン等が困難になります。
事故情報が登録された場合のデメリットについて詳しくはこちらをご覧ください。
さらに、返済が遅れれば遅れるほど、給与や預金等の財産に差押えを受けるリスクが高まってしまいます。
どのような財産が差押えの対象となるのかについて、詳しくはこちらをご覧ください。
差押えのリスクを下げ、返済の負担を軽くするための方法として「債務整理」があります。
債務整理には、主に次の3種類があります。
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産

この項目では、それぞれの債務整理の概要やメリットを説明します。
(1)任意整理
任意整理とは、支払い過ぎた利息がないか、利息制限法で定められた上限利率に基づいて正確な負債を算出し、残った負債について、将来利息のカットや数年間での分割払等によって返済の負担を総合的に減らすことを目指し、個々の債権者と交渉する手続きです。
任意整理の大きな特徴の一つに、それぞれの債権者について手続き対象とするかどうかを選べるというものがあります。
支払の見込みがあるのであれば、迷惑をかけたくない保証人がついている借金や車のローン等は手続きの対象とせずに、その他の借金について負担減を図る等の柔軟な対応が可能となります。
また、遅延損害金をカットできる可能性もあります。
東京都に3つある弁護士会(東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会)では、「クレジット・サラ金処理の東京三弁護士会統一基準」という任意整理事件の処理基準を定めています。
この基準の中には、「和解案の提示にあたっては、それまでの遅延損害金、並びに将来の利息は付けないこと」というものがあります。
弁護士が、上記基準に従って債権者と和解交渉を行い、その結果、遅延損害金は支払わずに済む可能性があります。

任意整理の手続きについて、詳しくはこちらをご覧ください。
(2)個人再生と自己破産
任意整理が厳しい場合の選択肢として、個人再生や自己破産があります。
個人再生とは、負債の返済ができないおそれがあることを裁判所に認めてもらい、法律に基づき決まった額を原則3年間で分割払する手続きです。
個人再生で支払うことになる額は、負債の額や財産価額等から決まりますが、高額な財産がなければ返済額を大幅に減らせる可能性があります。
また、条件を満たしていれば住宅ローンの残っている家を手放さずに済む可能性があります(詳しくはこちらをご覧ください)。

個人再生の手続きについて、詳しくはこちらをご覧ください。
一方、より大きな負担減につながる可能性があるのが自己破産です。
自己破産とは、債務者の収入や財産からは、負債の返済が不可能であることを裁判所に認めてもらい、原則として全ての負債の返済を免除してもらう手続きです。
(3)債務整理の選択について
「債務整理をしたら、事故情報が登録されちゃうんでしょ?」と思われる方もいるかもしれません。
ですが、返済が滞ってしまえば、債務整理をするしないにかかわらず事故情報は登録されます。
それだけでなく、差押えのリスクも高まってしまうことを考えれば、債務整理を行うことには意味があるといえます。
また、借入れの期間が長い場合には、払い過ぎた利息である「過払い金」によって返済額を減らせる可能性もあります(過払い金について詳しくはこちらをご覧ください)。
返済に不安を感じた場合、早めに債務整理を検討することをおすすめします。
また、どの債務整理が自分に一番適しているかは、収入や負債の総額等によって変わってきます。
弁護士と相談の上、最適な方法をお選びください。
【まとめ】民法改正で法定利率は下がったが、借金の遅延損害金への影響はほぼない
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 支払が遅れたことへのペナルティーである遅延損害金の利率には、法定利率と約定利率の2種類がある。
- 民法の改正で、法定利率が引き下げられた。
- 一方、金融機関からの借金の遅延損害金については、法定利率より高い約定利率が定められていることがほとんどなので、民法改正によって遅延損害金が変動することはほぼない。
- 約定利率は法律で上限が定められているとはいえ、遅延損害金が膨らむと返済の負担が重くのしかかってしまう。返済に不安を感じたら、早期に債務整理を検討することがおすすめ。
アディーレ法律事務所では、任意整理、個人再生、自己破産の債務整理手続きを取り扱っており、ご相談は何度でも無料です。
アディーレ法律事務所では、ご依頼いただいた所定の債務整理手続きにつき、所定の成果を得られなかった場合、原則として、当該手続きに関してお支払いただいた弁護士費用を全額ご返金しております。
また、完済した過払金返還請求の手続きの場合は、原則として過払金を回収できた場合のみ、成果に応じた弁護士費用をいただいておりますので、費用をあらかじめご用意いただく必要はありません(2022年4月時点)。
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