『後続車に追突されて、むち打ち症になってしまった…。』
車を運転中に後続車から追突された場合のけがで、もっとも多いのがむち打ち症です。
むち打ち症というと、なんだか軽症のように聞こえますよね。
ですが、実は症状が改善しなければ後遺障害等級認定を受けることもあるような傷害なんです。
交通事故の被害にあいむち打ち症になってしまったという方は、しっかり治療を継続して後遺症が残るようであれば後遺障害等級認定を受けて、加害者に適正な損害賠償を請求されることをお勧めします。
今回の記事では、
- むち打ち症の症状
- むち打ちで認定される後遺障害等級
- 後遺障害等級を受ける際のポイント
について解説します。

東京大学法学部卒。アディーレ法律事務所では北千住支店の支店長として、交通事故、債務整理など、累計数千件の法律相談を対応した後、2024年より交通部門の統括者。法律を文字通りに使いこなすだけでなく、お客様ひとりひとりにベストな方法を提示することがモットー。第一東京弁護士会所属。
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むち打ち症とは

むち打ち症(むち打ち損傷)とは、外部からの衝撃により、日常生活では起こりえない不自然な力を受けて、頸部(首)が大きく「しなる」結果、頸部の筋肉、靭帯、椎間板等の軟部組織や骨組織などが損傷することをいいます。
「むち打ち症」とは医学的な傷病名ではなく、医学的には「外傷性頸部症候群」や「神経根症」や「頸部捻挫」などの名称で診断されます。
治療方法は薬物治療や神経ブロック治療などがあり、治療期間は、1~6ヶ月程度で完治することがほとんどです。
むち打ち症の症状
むち打ち症は、大きく分けると、次の5つに分類されます。

それぞれの症状は、次のとおりです。
むち打ち症の類型 | 主な症状 |
---|---|
頸椎捻挫型 |
|
神経根症状型 |
|
バレー・リュー症候群 |
|
脊髄症状型 |
|
脳脊髄液減少症 |
|
むち打ち症と後遺障害
むち打ち症は、6ヶ月以内の治療で完治することが多いです。
最高裁判所の判例でも、事故の衝撃が軽微で、損傷が頸部の軟部組織にとどまっている場合には、適切な治療を施すことにより、長くても2~3ヶ月以内に通常の生活に戻ることができると判断されています。
ですが、中には、治療を続けても痛みやしびれがのこってしまう場合があります。
これ以上治療を継続しても症状が改善されない段階のことを「症状固定」と言いますが、症状固定後も後遺症が残るようであれば、後遺障害等級認定を受ける必要があります。
症状固定と後遺障害等級認定について詳しくはこちらをご覧ください。
むち打ち症で認定される後遺障害等級は、次のとおりです。
等級 | 後遺障害 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
後遺障害等級12級13号と14級9号の違いは、次のとおりです。

むち打ち症での12級13号は、基本的にはレントゲン検査、CT検査、MRI検査などの画像診断から、
- 脊髄の損傷を示す髄内輝度変化
- 椎間板ヘルニアによる脊髄の圧迫
- 椎間板ヘルニアによる神経根の圧迫
- 脊髄液漏出の画像所見(低髄液圧症候群)
- 頸椎や腰椎の突起の偽関節や変形癒合(※椎体変形は11級7号)
などが確認でき、それが、医学的見地から被害者の永久残存する症状の原因になると考えられる場合です。
画像診断による他覚的所見がない場合に12級13号の後遺障害等級が認定されることはほぼありません。
画像診断による他覚的所見がないけれど、交通事故で負ったけがの状態や治療経過などからそのような症状が残ってもおかしくない、という場合には14級9号の後遺障害等級に認定されることが多いです。
追突事故の被害にあってむち打ち症になってしまい、治療を継続しても症状が良くならないという場合には、医師と相談の上、後遺障害等級認定を受けることをご検討ください。
後遺障害等級認定を受けると、基本的には加害者に「後遺症慰謝料」と「逸失利益」を請求できるようになります。
追突事故によるむち打ち症で後遺障害等級認定を受ける場合のポイント
それでは、追突事故によるむち打ち症で後遺障害等級認定を受けるためのポイントについてご説明します。
(1)後遺障害診断書の記載について
まず、むち打ち症について後遺障害等級認定を受けるには、医師に「後遺障害診断書」を作成してもらわなくてはいけません。
後遺障害診断書について詳しくはこちらをご覧ください。
その後、後遺障害診断書を加害者の加入する自賠責保険の保険会社に提出して、後遺障害等級認定の申請をします。
後遺障害等級認定について詳しくはこちらをご覧ください。
後遺障害等級認定の申請は、被害者自身が申請する場合と、相手方の任意保険会社を通じて申請する場合があります(これを「事前認定」といいます)。

むち打ちに関する後遺障害等級認定は、原則として書面による調査ですから、後遺障害診断書に正確な記載をしてもらうのはとても重要です。
そして、そのためには、治療中から治療終了までの間、定期的な通院をすること、加えて医師に自覚症状をきちんと伝えることが重要です。
後遺障害診断書は、後遺障害認定の審査のために提出した後に修正することはできません。しかし、提出前であれば、書いてもらった後遺障害診断書を書き直してもらうこともできます。
提出前には自覚症状と一致しているかを確認し、違いがあれば医師に相談してみましょう。
適正な後遺障害等級認定を受けるためには、後遺障害診断書に正確な記載をしてもらうのが第1のポイントです。

(2)むち打ち症に関する適正な検査を受けること
先ほどご説明したとおり、むち打ち症に関する後遺障害12級13号と14級9号の違いは、画像診断による他覚的所見があるかどうかという点です。
ですから、むち打ち症になってしまったという場合、適切な検査を受けることも重要なポイントです。
むち打ち症に関する検査は、主に次のとおりです。

どの検査にも長所と短所がありますので、専門医と相談し、適切な検査を受けましょう。
特に、むち打ち症は、「椎間板」(骨と骨の間のクッションの役割を果たす部分です)が変形して神経を圧迫することが多いのですが、このようなケースではレントゲンやCT検査だけでは異常が確認できず、必ずMRI検査を受ける必要があります。
MRI検査はどこの病院でもできるという検査ではありませんから、追突事故の被害にあい、むち打ち症の症状がみられる場合には、できるだけ早めにMRI検査ができる病院に行き検査を受けることが重要です。
(3)その他のポイントについて
その他、追突事故によりむち打ち症になった場合に後遺障害等級認定を受ける際、ポイントとなるのは次のとおりです。

(3-1)ポイント1|「事故状況」について
「事故状況」とは、どのような事故だったのかということです。
要は、バンパーを交換する程度の事故か、車両が全損するような事故かでは、被害者が受ける衝撃度合いが違います。
特に、14級は他覚的所見がない場合ですので、事故状況から被害者にそのような症状が出てもおかしくないと言える状況が必要です。
(3-2)ポイント2|「治療経過」について
後遺障害等級が認定されるためには、ある程度の期間、定期的に通院治療を受けていることが必要です。
ある程度の期間、適切な治療を受けたにも関わらず、症状が良くなる見込みがない場合に初めて、将来にわたっても回復が困難と認定されます。
ある程度の期間については、症状によって異なりますが、『6ヶ月』が一つの目安になると思われます。
病院に行ったり行かなかったりする場合や、定期的に通院していても、間隔があいている場合には、後遺障害等級認定には不利になりますので、注意が必要です。
(3-3)ポイント3|「症状の一貫性」について
事故直後から症状を訴えていることは非常に重要です。
一般的に、けがによる症状は、けがをした後48時間をピークにして、それ以降は良くなっていくとされています。
被害者の訴える症状が交通事故から数日以内に発症し、症状固定まで一貫して同じ症状が続いていることが、後遺障害等級認定にあたり重要になります。
- 事故後、時間が経ってから症状が現れた
- いったん症状が良くなった後、また悪くなった
などの場合には、事故との因果関係が否定されてしまう傾向があるので、注意が必要です。
(3-4)ポイント4|「被害者の自覚症状」について
当然ですが、被害者には、症状からしておかしくないと思われる自覚症状があることが必要です。
他方、明らかに誇張して大げさに症状を主張している場合などは後遺障害等級認定には不利に働きます。
自覚している症状を、ありのまま正確に医師に伝えることが大切です。
弁護士に依頼するメリットについて

追突事故によりむち打ち症になってしまった場合に、弁護士に依頼するメリットについてご説明します。
(1)弁護士によるサポートが期待できる
まだ治療中で症状固定に至っていない方については、後遺障害等級認定の申請にあたって、弁護士によるサポートは非常に重要です。
というのは、各検査によって画像診断ができる12級相当の場合はともかく、むち打ちに関して後遺障害等級の認定を受けるのに最も大事なのは『後遺障害診断書』の記載内容です。
先ほどご説明したとおり、後遺障害等級認定のための調査は、この診断書の記載をもとに行われますので、診断書の提出前に、診断書の記載と自覚症状ときちんと一致しているかを確認し、違いがあれば医師に訂正してもらわなくてはいけません。
弁護士に依頼した場合には、後遺障害診断書の訂正の必要性の判断や医師への依頼について任せることができます。
(2)最終的に受け取れる金額が増額される可能性があること
後遺障害等級認定を受けると、相手方に後遺症慰謝料を請求できます。
ただし、後遺症慰謝料の金額は、絶対的な基準が1つあるわけではありません。

まず、後遺障害等級12級と14級に関する自賠責の基準と弁護士の基準は次のとおりです。

(※2020年4月1日以降に発生した事故で被害者に過失がない場合)
いずれも、差は3倍以上ですよね。
自賠責保険は、必要最低限度の被害者の救済を目的としているので、3つの基準の中では一番低額です(※ただし、自賠責保険金額は交通事故の70%未満の過失については減額対象にしませんので、ご自身の過失割合が大きい場合(加害者側になってしまった場合など)には、自賠責の基準がもっとも高額となることもあります)。
任意保険会社の基準は、各会社によって異なりますし、基準は公表されていませんので正確な金額は出せませんが、一般的には自賠責の基準に近い金額になります。
任意保険会社は、自賠責保険ではカバーしきれない分を補填することが目的ですから、必ずしも高額な慰謝料を支払うことに積極的ではありません。
今、まさに相手方の任意保険会社と示談交渉中という方で、保険会社から提案された金額に納得できない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
弁護士に依頼した場合、基本的には弁護士の基準に基づいた交渉を行いますので、当初提案された金額から、増額した賠償金を得られる可能性があります。
他方、弁護士に依頼せずご自身で交渉しても、なかなか弁護士の基準では示談できないことが多いです。
そのため、弁護士に依頼することで、もらえる賠償額が増額する可能性があります。
弁護士に依頼するメリットについて詳しくはこちらをご覧ください。
【まとめ】むち打ち症による後遺障害等級認定を受ける場合には、画像診断による他覚所見の有無により等級が変わる
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 追突事故の被害にあいむち打ち症になり、症状固定後も症状が残る場合には後遺障害等級認定を受けるべきである。
- むち打ち症に関する後遺障害等級は、次のとおり。
- 12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
- 14級9号 局部に神経症状を残すもの
- 検査による画像診断がなければ、12級13号の認定はほとんど認められない。
- むち打ち症に関して後遺障害等級認定を受けるためには、次のポイントが大事である。
- 医師に正確な後遺障害診断書を記載してもらうこと
- 適正な検査を受けること
- 事故の状況、治療経過、症状の一貫性、被害者の自覚症状から事故との因果関係が認められること
- 後遺症慰謝料については、自賠責基準と弁護士基準は異なっており、任意保険会社の基準は自賠責基準に近い。
- 弁護士に依頼した場合には、最終的に受け取れる金額が増額される可能性がある。
交通事故の被害による賠償金請求をアディーレ法律事務所にご相談・ご依頼いただいた場合、原則として手出しする弁護士費用はありません。
すなわち、弁護士費用特約が利用できない方の場合、相談料0円、着手金0円、報酬は、獲得できた賠償金からいただくという成功報酬制です(途中解約の場合など一部例外はあります)。
また、弁護士費用特約を利用する方の場合、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので、やはりご相談者様・ご依頼者様に手出しいただく弁護士費用は原則ありません。
※なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです。
実際のケースでは、弁護士費用は、この上限内に収まることが多いため、ご相談者様、ご依頼者様は実質無料で弁護士に相談・依頼できることが多いです。弁護士費用が、この上限額を超えた場合の取り扱いについては、各弁護士事務所へご確認ください。
(以上につき、2022年6月時点)
交通事故の被害にあって賠償金請求のことでお悩みの場合は、交通事故の賠償金請求を得意とするアディーレ法律事務所にご相談ください。
