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発信者情報開示請求は自分でできる?6つの要件と手続の流れを解説

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LA_Ishii

※アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

「インターネットの掲示板に私のことだと分かる悪口を書かれている…。誰が書きこんでいるのか知りたいけれど、発信者情報開示請求は自分でもできるのかな?」
インターネット上に悪口などを書き込まれた場合、『発信者情報開示請求』により、書き込みをした人(発信者)を特定できる可能性があります。

発信者情報開示請求は、サイト管理者などに任意の開示を求める方法と、裁判所を通じて開示を求める方法がありますが、いずれも自分で行うことが可能です。

ただ、発信者の情報が任意で開示されることはまれです。
多くは裁判所の手続を経る必要がありますが、手続には法的知識が必要な上、時間的な制約もあるため、全てを自分で行うことはなかなか大変でしょう。

今回の記事では、発信者情報開示請求の要件や手続の流れについて弁護士がご説明します。

この記事を読んでわかること
  • 発信者情報開示に必要な条件
  • 発信者情報開示の手続の流れ  
  • 発信者情報開示請求をする時の注意点
この記事の監修弁護士
弁護士 重光 勇次

弁護士 重光 勇次

アディーレ法律事務所

同志社大学、及び、同志社大学法科大学院卒。2009年弁護士登録。アディーレに入所後、福岡支店長、大阪なんば支店長を経て、2022年4月より商品開発部門の統括者。アディーレがより「身近な法律事務所」となれるよう、新たなリーガルサービスを開発すべく、日々奮闘している。現在、神奈川県弁護士会所属

発信者情報開示請求のために必要な6つの要件

まず、発信者情報開示請求のためには、次の6つの要件を満たす必要があります。(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(いわゆる「プロバイダ責任制限法」)5条1項)。

(1)「特定電気通信による情報の流通」であること
(2)情報開示の請求者が「自己の権利を侵害されたとする者」自身であること
(3)権利を侵害されたことが明らかであること
(4)情報開示を求める正当な理由があること
(5)開示を求める相手が「発信者情報」を保有していること
(6)開示を求める内容が「発信者情報」に該当すること

それぞれご説明します。

(1)「特定電気通信による情報の流通」であること

特定電気通信とは、インターネット上のウェブページや掲示板など、「不特定の者により受信されることを目的」とするような電気通信の送信のことです。
インターネットの掲示板やブログ、SNS、動画のコメント欄などに書き込むことなどが該当します。

これに対し、個別のメールやメッセンジャー、DM(ダイレクトメッセージ)などはインターネットを利用していますが、「受信するのは特定の個人」ですので、「特定電気通信による情報の流通」には該当しません。

ですから、個別のメールなどで誹謗中傷をされても、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求はできません

また、次のような場合も「情報の流通」そのものによる被害ではないので、やはり発信者情報開示請求はできません。

  • 不正アクセスをされた場合
  • ハッキングをされた場合
  • ネットで詐欺の被害にあった場合  など

(2)情報開示の請求者が「自己の権利を侵害されたとする者」自身であること

発信者情報開示請求ができるのは、プライバシーなどの権利侵害を受けた本人だけです(ただし、本人が未成年などの場合に法定代理人による請求は可能です)。

ネットの誹謗中傷対策サービスを謳う業者などもいますが、弁護士ではない削除代行業者などが本人に代わって発信者情報開示請求をするのは、「非弁行為」と言って違法である可能性が高いです。
発信者情報開示を自分でせずに第三者に依頼する場合には、必ず弁護士に依頼してくださいね!

なお、発信者情報開示請求をするには、 「同定可能性」といって、権利を侵害されたのが誰なのか、という対象者を特定できる可能性が必要です。

SNSなどインターネット上で権利侵害をされた場合、発信者情報開示請求をするためには必ず実名で被害を受ける必要はありません。

ハンドルネームや源氏名などであっても、写真や投稿の内容などから、権利を侵害された本人との同定可能性があれば発信者情報開示請求は可能です。

他方、前後の流れや他の情報などから、権利を侵害された本人と全く結びつかない場合には、同定可能性がないので、本人の権利が侵害されたとはいえず、発信者情報開示請求はできません。

発信者情報開示請求をする場合には、まず、問題となっている投稿や書き込みが、なぜ自分のことを指していると思ったのかご確認ください。
名前が書いてあるというだけでは、必ずしも「あなたの」権利が侵害されているとは言えないケースもありますので、注意が必要です。

(3)情報開示の請求者が「権利を侵害されたこと」が明らかであること

発信者情報開示請求が認められるためには、何らかの権利が侵害されたことが必要です。
ここでいう権利とは、名誉権やプライバシー権、営業権などです。

例えば、インターネットの掲示板に自分の氏名と電話番号などがさらされている場合などは、プライバシー権が侵害されたと言えます。

ただし、他者の権利を侵害する違法な投稿がなされた場合であっても、違法性が阻却される(違法と評価されなくなること)場合があります。
発信者情報開示請求をする際は、このような違法性阻却事由をうかがわせるような事情がないことも、自分で主張・立証しなければいけません。

(4)情報開示を求める「正当な理由」が存在すること

発信者情報開示請求が認められるためには、被害者に情報開示請求をする正当な理由がなければいけません。
正当な理由とは、例えば、次のようなものです。

  • 投稿者を特定して損害賠償請求する
  • 投稿者に謝罪を求める
  • 投稿者を刑事告訴する  など

正当な理由がない場合とは、既に損害賠償金が支払われている場合や、私的に報復するために発信者情報開示請求をするといった場合です。
投稿者を特定して損害賠償を予定しているという方などは、あまり気にする必要ありません。

(5)開示を求める相手が「発信者情報」を保有していること

発信者情報開示請求の相手方は、具体的には、主に次のとおりです。

  • 発信者がインターネットを利用するために契約している【接続プロバイダ】
  • 発信者が投稿などをしたサイトを管理している【サイト管理者】
  • 投稿などをしたサイトのデータを蔵置している【サーバー管理者】 など

発信者情報開示請求の流れは後ほど詳しくご説明しますが、発信者情報開示請求は、入手したい情報を保有している事業者に請求しなければ意味がありません。
誰にどのような請求をすれば良いかは、事案によって異なります。
自分では難しいという方は、インターネットの誹謗中傷問題を取り扱っている弁護士に相談されることをお勧めします。

(6)開示を求める内容が「発信者情報」に該当すること

発信者情報開示請求によって開示を求めることができる情報とは、例えば、次のようなものです。

  • 発信者その他侵害情報の送信に係る者の 氏名又は名称
  • 発信者その他侵害情報の送信に係る者の 住所
  • 発信者の電話番号
  • 発信者の 電子メールアドレス
  • 侵害情報に係る IPアドレス及びポート番号
  • 侵害情報が 送信された年月日及び時刻       など

プロバイダ責任制限法により開示を請求できる情報は総務省令で定められています。
規定されていない事項については開示を請求することはできません。

以上が、発信者情報開示請求をする際に満たすべき主な要件です。

発信者情報開示請求の手続の流れ

それでは、具体的に発信者情報開示請求の手続の流れをご説明します。
発信者情報請求のための流れは、大まかにご説明すると次のとおりです。

権利を侵害している投稿等を証拠として確保する

【サイト管理者】に対して投稿に関するIPアドレスや投稿日時などの情報開示を請求する

開示されたIPアドレスからユーザーの【接続プロバイダ】を特定する

特定した【接続プロバイダ】に対し、当該投稿日時に当該IPアドレスを利用していた契約者の氏名と住所等の開示を請求する

それぞれの流れにおける注意点などについてご説明します。

(1)権利を侵害している投稿を証拠として確保する際の注意点

まずは、ご自身の権利を侵害すると考える発信(投稿)を証拠として残しておく必要があります。
発信者情報開示請求は、通常、裁判所を通じた手続でなされます。
裁判所に請求を認めてもらうためには証拠が必要なのです。

自分で証拠を確保する際は、投稿内容と共に必ず URLが表示されているか、確認してください。
発信者情報開示請求のためには、問題となっている投稿が、誰でも見られる状況にあったこと(=インターネット上に公開されていたこと)が必要だからです。

自分で証拠化する際は、URLが全て表示されている状態でスクリーンショットを撮った上で、PDF化しておくなどすると良いでしょう。
また、ツイッターなどで個別のツイートだけみても、第三者には何が権利侵害に当たるかよく分からないという場合には、前提となるツイートも含めて一連の流れ全てを証拠化しておく必要があります。

動画サイトなどの場合は、録画してデータを保存するなどしても良いですね。

(2)【サイト管理者】+【接続プロバイダ】に対する発信者情報開示請求の注意点

投稿者を特定するためには、まずは、【サイト管理者】に対して、問題となっている投稿に関してIPアドレスと投稿日時などの開示を求めます
(※【サイト管理者】が分からない場合などは、【サーバー管理者】に対して情報開示請求をすることもあります)。

IPアドレスとは、インターネットに接続する全ての端末(スマホやPCなど)に割り振られている識別符号のことで、「インターネット上の住所」と言われています。

IPアドレスは同時に別の端末に割り当てられることはありませんが、時間がずれていると、重複する可能性があります。
ですから、自分で発信者情報開示請求をする場合にも、最低限、IPアドレスに加えて 投稿日時の特定(秒単位まで)が必要なので注意してください。

その他、【サイト管理者】が投稿者の電話番号やメールアドレスなどを把握している場合には、メールアドレスや電話番号などの開示を求めることもあります。
弁護士に依頼すると、「弁護士会照会」といって、電話番号の契約者を調べることができる可能性があります。

なお、【サイト管理者】に対する発信者情報開示は、サイトに設置してある問い合わせフォームや「発信者情報開示請求書」などによって請求する方法もありますが、あくまでも開示するかどうかは相手方の任意であり、実際に任意で開示されることはあまりありません。

【サイト管理者】に対する発信者情報開示請求は、基本的には 裁判所に対する「仮処分命令」の申立ての方法によって行います。

「仮処分命令」とは、裁判所が相手方に対して何らかの処分を「仮に」命じるという暫定的な措置ですが、サイト管理者等は、発信者情報の開示を認める裁判所の仮処分命令があれば、基本的には(IPアドレス等の)開示に応じています。
ですので、仮処分が認められれば、通常は改めて訴訟などをする必要はありません。

【サイト管理者】から投稿に関するIPアドレスと投稿日時が開示されると、そのIPアドレスが割り当てられていた【接続プロバイダ】を特定します。これにより、投稿者がどの【接続プロバイダ】を利用していたのか分かります
(※自分で特定する際は「WHOIS(フーイズ)」と検索すれば、特定できるサイトがいくつか探し出せます)。

【接続プロバイダ】が判明すれば、次は 【接続プロバイダ】に対して発信者情報開示請求をして、当該投稿日時に、当該IPアドレスを割り当てていた契約者の氏名や住所を開示してもらうのです。自分で発信者情報開示請求をする場合に、最も気を付けていただきたいのは、時間的制約です。

【サイト管理者】や【接続プロバイダ】が保有する、投稿者のアクセスログの保存期間は、一般的には3~6ヶ月です。

【サイト管理者】に対する発信者情報開示請求をしている間に【接続プロバイダ】にある投稿者のログの保存期間が経過してしまうと、せっかく【サイト管理者】からIPアドレス等を開示してもらっても、もはや【接続プロバイダ】から投稿者の情報を得ることはできません

自分で発信者情報開示請求をする際は、常にアクセスログの保存期間を念頭において、アクセスログの保存期間内に開示請求を間に合わせなければいけないことに注意が必要です。

【サイト管理者】からIPアドレス等を開示してもらい、【接続プロバイダ】に発信者情報開示請求をしている間に【接続プロバイダ】のアクセスログの保存期間が経過してしまうようだったら、アクセスログの保存を依頼したり、アクセスログ保存の仮処分命令を申立てる必要があります!

なお、【接続プロバイダ】に対する発信者情報(具体的には契約者の住所や氏名等)についても、任意で開示を求めることもできます。
この時、【接続プロバイダ】が契約者に開示の可否を確認し、契約者が承諾すれば開示されることもありますが、契約者が拒否した場合【接続プロバイダ】が任意に情報を開示することは期待できません。

ですから、その場合には 【接続プロバイダ】に対する訴訟を提起した上で、訴訟手続において発信者情報を開示してもらうことになります。

【プロバイダ責任制限法の改正】

このように、発信者情報開示を請求して投稿者を特定するためには、基本的には、次の2つの別々の手続が必要です。

1. 【サイト管理者】から情報開示を求める仮処分命令の申立て
2. 【接続プロバイダ】から情報開示を求める訴訟

ですが、このような2段階の開示請求について、それぞれ別個の手続を経なければいけないのは、被害者にとってとても煩雑で手間も時間もかかってしまいます。

そこで、2021年にプロバイダ責任制限法が改正され、2022年10月からは、発信者情報の開示をひとつ手続で行うことを可能とする 「新たな裁判手続」(非訟手続)を利用することができるようになりました。

これは裁判所を利用した手続により、サイト管理者と接続プロバイダの両方から情報を取得しなければいけないという点は従来と同じですが、全てが1つの手続でできるようになります。

これにより、今後は、【サイト管理者】及び【接続プロバイダ】に対する発信者情報開示請求が一体的に審理され、より迅速に情報を開示してもらえるようになることが期待されています。

プロバイダ責任制限法の改正について詳しくはこちらの記事をご確認ください。

プロバイダ責任制限法の改正で開示請求がスムーズに!ポイントを解説

現在、新たな裁判手続による発信者情報開示請求がなされていますが、業者によって開示のスピードなどが異なります。従来の方式による発信者情報開示請求の方が開示が早まるというケースもありますので、新たな手続による方が良いのか、従来の方式によるのが良いのかなどは、弁護士に相談することをお勧めします。

以上のとおり、基本的には【サイト管理者】と【接続プロバイダ】に対する発信者情報開示請求によって投稿者は特定できます。
ですが、投稿者が格安スマホなどを利用している場合、【接続プロバイダ】に対する請求をしても「回線を他社に貸しているだけなので、顧客の情報はない」などと回答されるケースがあります。

そうすると、【接続プロバイダ】から回線を借りている会社を特定して、同社に対して発信者情報開示請求をする必要があります(さらに他社に貸し出されているケースもあります)。

その場合にも、アクセスログの保存期間の問題があり、それぞれの会社の保存期間内に投稿者の情報を保有している会社にたどりつく必要があります。

結構、短期間にいろいろ手続が必要なのですね…。
ここまでしても、投稿者が特定できないこともありますか?

残念ながら、あり得ます。
典型的なケースはネットカフェやホテルのWi-Fiなどを利用して書き込みがなされた場合などは、書き込みをした個人までたどり着けない可能性が高いです。

投稿者を特定するための「発信者情報開示請求」は、自分ですることもできます。
ですが、実際には、時間的制約がある中で、自分で適切な証拠を収集した上で適切な法的主張をするというのはなかなか困難です。
インターネット上での誹謗中傷に悩み、投稿者を特定したいとお考えの方は、まずは弁護士に相談することをお勧めします。

【まとめ】 発信者情報開示請求は自分でもできるが、基本的には裁判所の手続が必要になるため、全てに自分で対応するのは難しい。

今回の記事のまとめは、次のとおりです。

• インターネットの匿名の掲示板などであっても、「発信者情報開示請求」によって、投稿者を特定できる可能性がある。
• 発信者情報開示請求をするには、次の要件を満たさなければならない。
(1)「特定電気通信による情報の流通」であること
(2)情報開示の請求者が「自己の権利を侵害されたとする者」自身であること
(3)権利を侵害されたことが明らかであること
(4)情報開示を求める正当な理由があること
(5)開示を求める相手が「発信者情報」を保有していること
(6)開示を求める内容が「発信者情報」に該当すること
• 発信者を特定するための発信者情報開示請求とは、次の流れのとおり。
(1)権利を侵害している投稿を証拠として確保する
(2)【サイト管理者】に対して投稿に関するIPアドレスや投稿日時などの発信者情報開示を請求する
(3)開示されたIPアドレスからユーザーの【接続プロバイダ】を特定する
(4)特定した【接続プロバイダ】に対し、当該投稿日時に当該IPアドレスを利用していた契約者の氏名と住所の開示を請求する
• 発信者情報開示請求をするには、アクセスログの保存期間内にサイト管理者や接続プロバイダに対して証拠によって法的権利を主張する必要がある。自分でもできるが、弁護士に依頼する方が適切な対応が可能となる。

インターネット上の書き込み自体は「匿名」であっても、それは、必ずしも投稿者が特定できないということではありません。
誹謗中傷の書き込みは、時として犯罪に当たりうる卑劣な行為です。
インターネット上で誹謗中傷の被害にあいお悩みの方は、相手が匿名だからと言って泣き寝入りをせず、投稿者を特定して損害賠償や謝罪を請求することもご検討ください。

アディーレ法律事務所では、自分を誹謗中傷する投稿に関し、
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投稿記事や検索結果が削除できなかったり、発信者情報が開示されなかったりした場合、弁護士費用は、原則として全額返金しております。

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この記事の監修弁護士
弁護士 重光 勇次

弁護士 重光 勇次

アディーレ法律事務所

同志社大学、及び、同志社大学法科大学院卒。2009年弁護士登録。アディーレに入所後、福岡支店長、大阪なんば支店長を経て、2022年4月より商品開発部門の統括者。アディーレがより「身近な法律事務所」となれるよう、新たなリーガルサービスを開発すべく、日々奮闘している。現在、神奈川県弁護士会所属

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

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