交通事故が原因でうつ病になってしまった。
または、PTSDになってしまった。
そのような交通事故の被害者は少なくありません。
しかし、交通事故で手足にケガをしてしまった場合と異なり、目に見えにくい病気であるため、精神疾患で賠償金を請求できるのか、不安な気持ちを持つ人もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、交通事故で精神疾患になった場合であっても、手足のケガと同様に賠償金を請求することができます。
もっとも、手足のケガと違って、外から見えづらいため、本当に事故が原因なのかなど、賠償金を得るためには様々なハードルがあるのも実情です。
この記事を読むことで、賠償金を得るためのハードルを乗り越えるポイント、さらに後遺障害等級を得た場合の慰謝料の相場について知ることができます。
この記事では、
- 交通事故を原因とした精神疾患(うつ病、PTSDなど)
- 精神疾患(うつ病、PTSDなど)と後遺障害等級
- 精神疾患(うつ病、PTSDなど)と後遺障害等級の認定基準
- 精神疾患(うつ病、PTSDなど)によって認定される後遺障害等級
- 後遺障害等級が認められた場合の後遺症慰謝料の相場
- 精神疾患(うつ病、PTSDなど)と後遺障害の認定ポイント
- 交通事故の賠償金請求を弁護士に依頼するメリット
について、弁護士が詳しく説明します。
愛知大学、及び愛知大学法科大学院卒。2010年弁護士登録。アディーレに入所後、岡﨑支店長、家事部門の統括者を経て、2018年より交通部門の統括者。また同年より、アディーレの全部門を統括する弁護士部の部長を兼任。アディーレが真の意味において市民にとって身近な存在となり、依頼者の方に水準の高いリーガルサービスを提供できるよう、各部門の統括者らと連携・協力しながら日々奮闘している。現在、愛知県弁護士会所属。
交通事故を原因とした精神疾患(うつ病、PTSDなど)

交通事故による身体的障害、たとえば、頸椎捻挫(むち打ち症)などの障害による首の慢性的な痛みなどに悩まされ、うつ病を発症することがあります。
また、交通事故の恐怖体験が引き金となり、いわゆるPTSDを発症することがあります。
このような精神的な障害は「非器質性精神障害」といいます。
器質性の障害とは、交通事故による外部から物理的な力が加わった受傷により、身体組織に異常な事態が発生するものを指します。
一方、非器質性の精神障害とは、脳組織の器質的損害を伴わない、つまり脳組織に物理的な損傷がない精神障害として、高次脳機能障害や身体性機能障害と区別されます。
非器質性精神障害にあたる病名としては、うつ病やPTSDのほか、外傷性神経症、不安神経症、強迫神経症、恐怖症、心気神経症、神経性無食症などの神経症(ノイローゼ)や統合失調症など、さまざまです。
精神疾患(うつ病、PTSDなど)と後遺障害等級
後遺障害等級とは、後遺障害の慰謝料や賠償金の算定の目安となるものです。
後遺障害の内容に応じて、重いものから順に1~14級が認定されます。
後遺症について慰謝料や賠償金を受け取るためには、後遺症について後遺障害等級認定を受けることが必要となります。
交通事故を原因とした精神疾患も「後遺障害等級」が認められる場合があります。
交通事故を原因とした精神疾患も「後遺障害等級」が認められた場合、精神疾患を患ったことに対する慰謝料や治療費などが支払われることになります。
交通事故を原因とした精神疾患についても、その他の身体性機能障害(たとえば、手足が動かないなどの後遺障害)と同様に、被害者にとっては今度の生活に大きく影響を与える可能性もありますので、きちんと慰謝料や治療費を受け取るべきといえるでしょう。
そのためには、交通事故を原因とした精神疾患についても、精神疾患だからと諦めることなく、「後遺障害等級」の認定を得ることを検討すべきでしょう。

※「後遺障害等級」の認定を得るためには、申請が必要となります(なお、加害者側保険会社が申請手続を代行してくれる場合もあります。)
精神疾患(うつ病、PTSDなど)と後遺障害等級の認定基準
交通事故を原因とした精神疾患に「後遺障害等級」が認められるには、厚生労働省が通達した労災の障害等級認定基準(※)にあてはまる必要があります。
労災の認定基準ではあるのですが、交通事故による後遺障害等級の認定も同じ基準が用いられているのです。
(※)平成15年8月8日付厚生労働省労働基準局通達『神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について』
認定基準 |
具体的には、 (ア)の精神症状のうち、一つ以上認められることが必要であり、 かつ、 (イ)の能力に関する判断項目のうち、一つ以上の能力について能力の欠如や低下が認められること が必要となります。 |
- (ア)の精神症状
(ア)の精神症状 | どういう状態か |
(1)抑うつ状態 | ・うつの気分(悲しい、寂しい、憂うつ、希望がない、絶望的であるなど)が続く ・何をするにもおっくうになる ・それまで楽しかったことに対して楽しいという感情がなくなる ・気が進まない など |
(2)不安の状態 | ・全般的に不安や恐怖、強い不安が続き、強い苦悩をもっている |
(3)意欲低下の状態 | ・すべてのことに対して関心がわかず、自ら積極的に行動しない ・行動を起こしても長続きしない ・口数も少なくなる ・日常生活上の身の回りのことにもやりたくなくなる |
(4)慢性化した幻覚・妄想性の障害 | ・自分に対するうわさや悪口あるいは命令が聞こえるなど実際には存在しないものを体験すること(幻覚)が続く ・自分が他者から害を加えられている、食べ物や薬に毒が入っている、自分は特別の能力を持っているなど確信が異常に強く、その人個人だけ限定された意味付け(妄想)などの幻覚が続く |
(5)記憶または知的能力の障害 | ・自分がだれであり、どんな生活史を持っているのかをすっかり忘れてしまう全生活史健忘や生活史の中の一定の時期や出来事を思い出せない状態(解離性(心因性)健忘) ・日常身辺生活は普通にしているのに改めて質問すると、自分の名前を答えられない、年齢は3つ、1+1は3のように的外れな回答をするような状態(解離性(心因性)傷害、ガンザー症候群、仮性認知症) |
(6)その他の障害(衝動性の障害、不安を訴えるなど) | (1)~(5)に分類できない症状 ・落ち着きがない(他動) ・衝動行動 ・徘徊 ・不安を訴える |
・(イ)の能力の判断項目
(イ)の能力の判断項目 | どういう能力か |
(1)身辺日常生活 | 入浴することができるか更衣をすることなど清潔保持を適切にすることができるか、規則的に十分な食事をすることができるか |
(2)仕事・生活に積極性・関心を持つこと | 仕事の内容、職場での生活や働くことそのもの、世の中の出来事、テレビ、娯楽などの日常生活などに対する意欲や関心があるか否か |
(3)通勤・勤務時間の遵守 | 規則的な通勤や出勤時間など約束時間の遵守ができるかどうか |
(4)普通に作業を持続すること | 就業規則にのっとった就労が可能かどうか、普通の集中力・持続力をもって業務を遂行できるかどうか |
(5)他人との意思伝達 | 職場において上司・同僚などに対して発言を自主的にできるか |
(6)対人関係・協調性 | 職場において上司・同僚と円滑な共同作業、社会的行動ができるかどうか |
(7)身辺の安全保持・危機の回避 | 職場における危機などから適切に身を守れるかどうか |
(8)困難・失敗への対応 | 職場において新たな業務上のストレスを受けたとき、ひどく緊張したり、混乱することなく対処できるか |
参考:脳の器質的損傷を伴わない精神障害(非器質性精神障害)について|厚生労働省
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精神疾患(うつ病、PTSDなど)によって認定される後遺障害等級

非器質性精神障害によって認定される可能性がある後遺障害等級は次のとおりです。
後遺障害等級 | 後遺障害の内容 |
9級10号 | 通常の労務に服することができるが非器質性精神障害のため、就労可能な職種に相当な程度に制限されるもの |
⇒具体的には ・ 就労しているまたは就労の意欲はあるものの就労していない場合 (イ)の(2)~(8)のいずれかひとつの能力が失われているもの または、(イ)の4つ以上についてしばしばアドバイスや援助が必要と判断される障害を残しているもの ・ 就労意欲の低下または欠落により就労していない場合 (イ)の(1)について、ときにアドバイスや援助を必要とする程度の障害を残しているもの | |
12級相当 | 通常の労務に服することができるが、非器質性精神障害のため、多少の障害を残すもの |
⇒具体的には ・ 就労しているまたは就労の意欲はあるものの就労はしていない場合 (イ)の4つ以上について、ときにアドバイスや援助が必要と判断される障害を残しているもの ・ 就労意欲の低下または欠落により就労していない場合 (イ)の(1)について、適切または概ねできるもの | |
14級相当 | 通常の労務に服することができるが、非器質性精神障害のため、軽微な障害を残すもの |
⇒具体的には (イ)の1つ以上について、ときにアドバイスや援助が必要と判断される障害を残しているもの |
後遺障害等級が認められた場合の後遺症慰謝料

後遺症が残った場合、後遺症が残ったことにより受けた精神的ショックを償うために「後遺症慰謝料」が支払われることになります。
後遺症慰謝料の金額は次のように定められています。
等級 | 自賠責の基準 | 弁護士の基準 |
9級10号 | 249万円 (245万円) | 690万円 |
12級相当 | 94万円 (93万円) | 290万円 |
14級相当 | 32万円 (32万円) | 110万円 |
※自賠責の基準は、2020年4月1日に改定されており、2020年4月1日以降に発生した事故に適用されます。かっこ書き内の金額は、2020年3月31日までに発生した事故に適用されます。
自賠責の基準と弁護士の基準とは、慰謝料の算定基準のことをいいます。
慰謝料の算定基準については、次の項目で説明します。
(1)3つの算定基準

慰謝料には、次にあげる3つの算定基準があります。
- 自賠責の基準
- 任意保険の基準
- 弁護士の基準(裁判所の基準)
慰謝料の3つの算定基準について説明します。
(1-1)自賠責の基準
自賠責の基準は、自動車損害賠償法(自賠法)によって定められている損害賠償金の支払い基準です。
自賠責保険は、自動車やバイクを保有する人が加入を義務付けられている保険で、「強制保険」とも呼ばれます。
事故の加害者が任意保険に加入していなくても、通常は自賠責保険からの損害賠償金を受け取ることになります。
もっとも、自賠責保険は被害者への最低限の補償を目的として設けられたものであるため、3つの算定基準の中では最も金額が低くなります。
(1-2)任意保険の基準
任意保険基準は、各保険会社が独自に定める慰謝料算定基準です。
一般に公開はされていませんが、金額は自賠責基準よりも高く、弁護士基準よりも低い程度です。
事故後、被害者が加害者側の保険会社と賠償金について示談交渉する際は、保険会社は通常この任意保険基準を用いて金額を提示してくることになります。
(1-3)弁護士の基準(裁判所の基準)
弁護士基準は、過去の交通事故裁判における支払い判決に基づく基準です。「裁判所基準」と呼ばれることもあります。
弁護士会が編纂している『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(通称「赤い本」)や『交通事故損害額算定基準』(通称「青本」)に記載されている計算方法や金額を用います。
3つの算定基準を金額の大きい順に並べると、
弁護士の基準(裁判所の基準)>任意保険の基準>自賠責保険の基準
となることが一般的です。
弁護士に示談交渉を依頼すると、弁護士の基準を用いて示談交渉をスタートすることになります。そのため、自賠責の基準や任意保険の基準に基づいて算定された金額よりも増額できる可能性が出てきます。
慰謝料の算定基準についてさらに詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
(2)後遺症慰謝料以外に請求できる可能性がる賠償金
交通事故により精神疾患(うつ病、PTSDなど)になった場合に、後遺症慰謝料以外に請求できる可能性がある賠償金は次のとおりになります。
- 慰謝料(賠償金の一種)
慰謝料の項目 | 内容 |
入通院慰謝料(傷害慰謝料) | 傷害を受けたこと(入通院したこと)により生じた精神的ショックを償う慰謝料 |
- 賠償金
賠償金の項目 | 内容 |
治療関係費 | 手術、治療、入院、薬などにかかった費用 |
付添看護費 | 入院に家族の看護や付添を必要としたことに対する費用 |
通院交通費 | 病院へ通院するために必要となった交通費 |
休業損害 | 仕事を休んだことで発生した損害の賠償 |
逸失利益 | 将来得られるはずだった利益(収入など)に対する賠償 |
精神疾患(うつ病、PTSDなど)と後遺障害等級の認定ポイント
精神疾患(うつ病、PTSDなど)に後遺障害等級として認定されるための基準はこれまで説明したとおりです。
しかし、この認定基準にあてはまる場合でも、後遺障害等級の認定を受けるためには、いくつかのポイントがあります。
- 交通事故との因果関係の証明
- 医師による早期の治療
- 症状固定の判断時期
詳しく説明します。
(1)交通事故との因果関係の証明
精神疾患(うつ病、PTSDなど)の場合は、交通事故が原因で発症したといえるのか、つまり因果関係の認定が難しいという問題があります。
例えば、手足のケガなどであれば、交通事故が原因でケガをしたということは明らかです。
一方、精神疾患(うつ病、PTSDなど)は、外から見えづらいものであるため、交通事故が原因であるかはわかりにくい部分があります。心の問題は、交通事故に限らず、家庭環境や職場環境の影響による場合もあるのです。
因果関係が認定されるためには、発症時期や精神障害の症状、さらに、ほかの原因がないか、などを総合的に考慮して判断します。
仮に、因果関係が認められたとしても、ほかの原因の影響や本人の性格などを考慮して、ある程度、賠償金が減額されてしまうこともあります(交通事故以外にも原因があると判断された場合、治療費や慰謝料が全額支払われないことがあります。)。
交通事故を原因として精神疾患(うつ病、PTSDなど)となった場合、交通事故で発症したことを明らかにしつつ、ほかの原因は考えられないことも明らかにすることが重要なポイントになります。
(2)医師による早期の治療
精神疾患(うつ病、PTSDなど)に後遺障害等級が認定されるためには、精神疾患(うつ病、PTSDなど)が長期にわたって治りにくい後遺症となっていることを医学的に証明する必要があります。
精神疾患(うつ病、PTSDなど)の場合、脳や神経組織をケガしているわけではないため、精神疾患(うつ病、PTSDなど)であって、かつ、適切な治療を受けてもなお症状が改善しないということを医師に診断してもらう必要があります。
さらに、精神疾患が発症した場合は、速やかに、精神科医などの専門医による適切な治療を受けることもポイントです。
交通事故から時間が経ってから治療を受けると、交通事故から時間が経っていることから、他の原因もあるのではないかと疑われたり、もっと早く治療を受けていれば精神疾患は回復したとして、後遺障害等級が認められないこともあるのです。

(3)症状固定の判断基準
後遺障害等級はそもそも症状固定(治療をしても症状の改善がないと医師が判断した時期)にのこっている後遺症に応じて認定されるものです。
そのため、後遺障害等級が認められるためには、症状固定(治療をしても症状の改善がないと医師が判断する)ことが必要なのです。
精神疾患(うつ病、PTSDなど)における後遺障害等級の認定の問題点としては、精神疾患は、ある程度長期に症状が続くことがあっても、その後に治癒する可能性があるということです。
治療による改善の可能性がある場合、後遺障害等級は認められません。
精神疾患について後遺障害等級の認定をしてもらうためには、精神科医などの専門医の診療を受け、治療と投薬がなされ、十分な治療期間があったにもかかわらず、症状が残っていることが医師に診断してもらう必要があるのです。
交通事故で精神疾患を患った場合の後遺障害等級認定に強い弁護士に依頼するメリット

精神疾患は、外から見えづらいため、後遺障害等級が認められにくいため、加害者側との交渉が難航する可能性が高いといえます。
弁護士に依頼することで得られるメリットは次のとおりです。
- 適正な後遺障害等級の認定を受けられる可能性が高めることができる
- 不利な過失割合が割り当てられるリスクを回避する
- 不利な条件で加害者と和解するリスクを回避する
- 弁護士費用特約に加入していれば、弁護士費用の心配ないことも
詳しく説明します。
(1)適正な後遺障害等級の認定を受けられる可能性が高めることができる
これまで説明したとおり、精神疾患について後遺障害等級の認定を受けるのは難しいことといえます。
そして、適正な後遺障害等級の認定を受けるためには、どのような資料を提出するのか、資料にどのような記載をするかが重要です。
もっとも、後遺障害等級認定の申請を何度も行う人はそういません。後遺障害等級認定の申請におさえておくポイントやコツを知っている人はそうそういないのです。
しかし、交通事故問題に精通した弁護士は、後遺障害等級認定の申請のポイントやコツを知っています。弁護士が医師と相談して、診断書や資料の記載内容を決めることもあります。
弁護士に依頼することで、適正な後遺障害等級の認定を受けられる可能性が高めることができます。
(2)不利な過失割合が割り当てられるリスクを回避する
弁護士に依頼するメリットとしては、加害者からの話を鵜呑みにして、不当な過失割合が認定されてしまうことを回避することができるということが挙げられます。
交通事故において加害者・被害者双方に不注意があった場合、どちらの不注意が交通事故の原因となったかを割合(「過失割合」)を定めて、賠償金額を減額することがあります。
例えば、過失割合が被害者:加害者=3:7であるとすると、被害者の過失の分3割が全体の賠償金額より減額されることになります。
通常は、加害者被害者双方から話を聞いて、事故状況を明らかにし、過失割合を認定するのですが、被害者が精神疾患によって、事故状況を説明することができないことがあります。
そのため、加害者側の話のみで過失割合が認定されてしまう可能性があるのです。
そこで、弁護士に交渉を依頼することで、弁護士が専門的な知識やノウハウを駆使し、
加害者側の主張が一方的に鵜呑みにされ、不当な過失割合が認定されないように防ぐことができます。
(3)不利な条件で加害者と和解するリスクを回避する
次に、弁護士に依頼するメリットとしては、本来であればもっと高額な慰謝料や賠償金が受け取れるはずであるにもかかわらず、加害者側の保険会社が提示する示談額が不利なものだとも知らずに、示談に応じてしまうことを防ぐことができます。
被害者が精神疾患になった場合、被害者も被害者の家族は、精神的・金銭的にも過大な負担を負うこともあります。
そして、加害者側の保険会社との慰謝料や賠償金の交渉まで手が回らなくなってしまって、保険会社が言うなら間違いないだろうなどと思い込み、提示された示談額で示談に応じてしまうことは少なくありません。
しかし、これまで説明したとおり、自賠責保険会社・任意保険会社の基準と弁護士の基準では賠償金額に大きな違いがあります。
また、賠償金を支払うのは加害者側となりますので、少しでも支払う金額を減額しようとあれやこれやと不利な条件を付ける場合も少なくないのです。
そのため、少しでも高額な慰謝料や賠償金を受け取るためには、交通事故に詳しい弁護士に交渉を任せてしまうのがよいといえるでしょう。
(4)弁護士費用特約に加入していれば、弁護士費用の心配ないことも
弁護士に依頼すると弁護士費用がかかってしまいます。
しかし、弁護士費用特約に加入していれば、費用を気にする心配がなくなることがあります。
そもそも「弁護士費用特約」とは、あなたやあなたの家族が入っている自動車保険や火災保険のオプションとして設けられている制度です。自動車事故の賠償請求を行う際に発生する弁護士費用を保険会社が支払ってくれるのです。
また、弁護士費用特約を使用しても保険料を値上がりする心配や保険の等級が下がるということはありませんので安心してください。
【まとめ】交通事故による精神疾患は、早期の治療と医学的証明が重要!
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 交通事故による身体的障害、たとえば、頸椎捻挫(むち打ち症)などの障害による首の慢性的な痛みなどに悩まされ、うつ病を発症したり、交通事故の恐怖体験が引き金となり、いわゆるPTSDを発症したりすることがある⇒「非器質性精神障害」という。
- 後遺症について慰謝料や賠償金を受け取るためには、後遺症について後遺障害等級認定を受けることが必要。
- 精神疾患(うつ病、PTSDなど)と後遺障害等級の認定基準
(ア)抑うつ状態、不安の状態、意欲の低下の状態、慢性化した幻覚・妄想性の障害、記憶または知的能力の障害、その他の障害(衝動性の障害、不安を訴えるなど)
(イ)身辺日常生活、仕事・生活に積極性・関心を持つこと、通勤・勤務時間の遵守、普通に作業を持続すること、他人との意思伝達、対人関係・協調性、身辺の安全保持・危機の回避、困難・失敗への対応
⇒(ア)の精神症状のうち、一つ以上認められることが必要であり、かつ、(イ)の能力に関する判断項目のうち、一つ以上の能力について能力の欠如や低下が認められること
が必要
- 後遺障害等級が認められた場合の後遺症慰謝料
等級 | 自賠責の基準 | 弁護士の基準 |
9級10号 | 249万円 (245万円) | 690万円 |
12級相当 | 94万円 (93万円) | 290万円 |
14級相当 | 32万円 (32万円) | 110万円 |
- 精神疾患(うつ病、PTSDなど)と後遺障害の認定ポイント
- 交通事故との因果関係の証明
- 医師による早期の治療
- 症状固定の判断時期
- 交通事故で精神疾患を患った場合の後遺障害等級認定に強い弁護士に依頼するメリット
- 適正な後遺障害等級の認定を受けられる可能性が高めることができる
- 不利な過失割合が割り当てられるリスクを回避する
- 不利な条件で加害者と和解するリスクを回避する
- 弁護士費用特約に加入していれば、弁護士費用の心配ないことも
ご加入中の自動車保険や損害保険に「弁護士費用特約」が付いている場合、原則的に弁護士費用は保険会社が負担することになります(一定の限度額、利用条件あり)。
また、弁護士費用特約を利用できない場合でも、アディーレ法律事務所では、原則として、交通事故被害の賠償請求につき、相談料、着手金はいただかず、成果があった場合のみ報酬をいただくという成功報酬制です。
原則として、この報酬は獲得した賠償金等からのお支払いとなりますので、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要がありません。
当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配もありません。
※以上につき、2021年6月時点
交通事故で精神疾患になり、賠償金を請求を検討している場合には、アディーレ法律事務所にご相談ください。