「交通事故により、左手の指を2本(薬指と小指)根元から失いました。利き腕ではありませんが、生活全般に影響があります。慰謝料はどれくらいもらえますか。」
交通事故により手指を失って後遺障害が認定されると、後遺障害の等級によって額は異なりますが、交通事故の相手方(加害者)に対して後遺症慰謝料などを請求できるようになります。
手指2本(薬指と小指)を根元から失うと、後遺障害等級9級12号として、690万円(弁護士の基準)の後遺症慰謝料を受け取れる可能性があります。
今後の生活のためにも、適切な額の慰謝料を受け取るようにしましょう。
この記事を読んでわかること
- 後遺障害とは
- 交通事故で手指を失ったことによる後遺障害の種類
- 手指を失ったことによる後遺障害等級
- 手指の後遺障害で請求できる慰謝料
東京大学法学部卒。アディーレ法律事務所では北千住支店の支店長として、交通事故、債務整理など、累計数千件の法律相談を対応した後、2024年より交通部門の統括者。法律を文字通りに使いこなすだけでなく、お客様ひとりひとりにベストな方法を提示することがモットー。第一東京弁護士会所属。
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後遺障害とは
交通事故でケガを負った場合、治療してもこれ以上回復できない状態で症状が残ることがあります。これを「後遺症」といいます。このように交通事故で後遺症を負った場合、所定の機関(損害保険料率算出機構など)により後遺障害として認定を受ける必要があります。
後遺障害が認定されると、被害者は加害者に対し、治療費などに加え、後遺症慰謝料や後遺障害逸失利益(=後遺障害により得られなくなった・または減少した将来の収入)も請求できるようになるからです。
交通事故被害で請求できる損害(ケガ・傷害)について詳しくはこちらをご覧ください。
交通事故で手指を失ったことによる後遺障害
交通事故で手指を失った場合に認定される可能性のある後遺障害等級は、次のとおりです。
等級 | 認定基準 |
---|---|
3級5号 | 両手の手指の全部を失ったもの |
6級8号 | 1手の5の手指又はおや指を含み4の手指を失ったもの |
7級6号 | 1手のおや指を含み3の手指を失ったもの又はおや指以外の4の手指を失ったもの |
8級3号 | 1手のおや指を含み2の手指を失ったもの又はおや指以外の3の手指を失ったもの |
9級12号 | 1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの |
11級8号 | 1手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの |
12級9号 | 1手のこ指を失ったもの |
13級7号 | 1手のおや指の指骨の一部を失ったもの |
14級6号 | 1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの |
このように、手指を失った場合の後遺障害等級認定では、親指とそれ以外の指とで区別されます。
手指を失ったのが、利き腕かどうかは、後遺障害等級認定では関係ありません。
冒頭のご相談のケースでは、薬指と小指を根元から失っていますので、「2の手指を失ったもの」として、9級12号が認定されることになります。
手指の後遺障害について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
交通事故により指を失う後遺障害で請求できる後遺症慰謝料

交通事故で指を失い、後遺障害が認定された場合、交通事故の相手方(加害者)に対しては、治療費などに加えて、後遺症慰謝料や後遺障害逸失利益も請求できるようになります。
(1)後遺症慰謝料の算定基準
交通事故の被害に遭い、後遺障害が残ってしまったことの精神的苦痛に対する慰謝料を後遺症慰謝料といいます。
後遺障害等級が決まれば、等級に従って後遺症慰謝料も決まってくるんですか?
はい。後遺障害等級が重ければ重いほど、後遺症慰謝料額も高くなります。しかし、同じ等級であっても、何の基準で算定するかによって、かなり金額が異なってきます。したがって、保険会社と話をする際には、何の基準で算定されているのかについて意識する必要があります。算定する基準を変えれば、慰謝料が増額する可能性があるからです。
後遺症慰謝料を算定する基準には次の3つがあります。
自賠責の基準 | 自動車損害賠償保障法(自賠法)施行令で定められた、必要最低限の賠償基準で基本的に一番低額。 ただし、自賠責保険金額は交通事故の70%未満の過失については減額対象にしないため、自身の過失割合が大きい場合などは、自賠責の基準がもっとも高額となることもある。 |
任意保険の基準 | 各保険会社が独自に定めた賠償基準で基本的には公表されていないが、一般的に自賠責の基準と同程度かそれより高い。 |
弁護士の基準 | 過去の裁判所の判断の積み重ねにより認められてきた賠償額を目安として慰謝料を基準化したもの。 通常、弁護士が交渉や裁判をするときに使う基準で基本的に最も高額となる(裁判所基準ともいわれる)。 |
基準による後遺症慰謝料額の差は、次の図でみると分かりやすいです。

(2)後遺症慰謝料の目安は?
次の表は、指を失い、後遺障害が認定された場合の後遺症慰謝料の目安について、自賠責の基準と弁護士の基準を比較したものです。
任意保険の基準は基本的に非公表のため、ここでは掲載しておりません。
【手指の後遺障害による慰謝料】
等級 | 自賠責基準(※) | 弁護士基準 |
---|---|---|
3級5号 | 861万円 | 1990万円 |
6級8号 | 512万円 | 1180万円 |
7級6号 | 419万円 | 1000万円 |
8級3号 | 331万円 | 830万円 |
9級12号 | 249万円 | 690万円 |
11級8号 | 136万円 | 420万円 |
12級9号 | 94万円 | 290万円 |
13級7号 | 57万円 | 180万円 |
14級6号 | 32万円 | 110万円 |
冒頭のご相談のケースで9級12号の後遺障害認定がなされたとすると、自賠責の基準と弁護士の基準の差額は、441万円(690万円-249万円)にもなります。
後遺症慰謝料増額のためには、弁護士に依頼して、弁護士の基準で交渉してもらうのがよいでしょう。
増額のポイントは後遺症慰謝料だけではありません。入通院した場合に受け取ることができる慰謝料額にも、基準による差が出ることがあります。また、後遺症により将来の収入を失った場合に受け取ることができる逸失利益も、交渉により増額できることがあります。
保険会社から提案された額も、それなりに多額なのでこんなものかな、と思っていましたが、本当に増額できるのでしょうか。
実際に増額できるかどうか、できるとしてどれくらい増額できるかは、ケースバイケースの判断になります。あなたのケースで増額できるかどうかを正確に把握するためには、示談の前に、交通事故に強い弁護士に相談しましょう。
入通院慰謝料(傷害慰謝料)について、詳しくはこちらをご覧ください。
(3)弁護士への相談
交通事故で手指を失った場合、早めに弁護士に相談・依頼することを検討しましょう。弁護士は、適切な後遺障害等級認定を得るための具体的なアドバイスを行ったり、後遺症慰謝料額の増額交渉を行ったり、あなたの不安に寄り添って、あなたの利益を最大限にするために必要な業務を行います。
でも、弁護士に依頼したら弁護士費用がかかりますよね。せっかく増額できても、その分弁護士費用がかかるのであれば、結局あまり変わらないのではないですか。
弁護士費用特約を利用できれば、弁護士費用は保険がまかなってくれます(金額の上限あり)ので、基本的には弁護士費用の心配なく弁護士に依頼することができます。
被害者ご自身もしくは一定のご親族等が自動車(任意)保険に加入している場合は、この弁護士費用を「弁護士費用特約」でまかなえる場合があります。
「弁護士費用特約」とは、弁護士への相談・依頼の費用を一定限度額まで保険会社が補償する仕組みです。この弁護士費用特約を利用すると、実質的に無料で弁護士に相談・依頼できることが多いのです。
ここでポイントなのが、「弁護士費用特約」が利用できるのは被害者ご自身が任意保険に加入している場合だけではない、という点です。
すなわち、
- 配偶者
- 同居の親族
- ご自身が未婚の場合、別居の両親
- 被害事故にあった車両の所有者
のいずれかが任意保険に弁護士費用特約を付けていれば、被害者ご自身も弁護士費用特約の利用が可能であることが通常です。
また、弁護士費用特約を使っても、自動車保険の等級が下がる(保険料が上がる)ことはありません。

ご自身が弁護士費用特約を利用できるのか、利用できる条件などを保険会社に確認してみましょう。
残念ながら使える弁護士費用特約はありませんでした。けれど、余裕がなくて弁護士費用が払えません。このような場合には、弁護士への依頼をあきらめるしかありませんか。
弁護士費用特約が使えなくても、弁護士依頼はあきらめないでください。弁護士費用以上に増額可能性があるのであれば、弁護士に依頼するメリットがあるからです。
事務所によっては、成功報酬制を採用していて、弁護士費用をあなたが受け取る賠償金から支払えばよい、というところもあるので、そのような事務所を探すとよいでしょう。
【まとめ】交通事故により手指を失った場合には後遺症慰謝料などを受け取れるが、示談前に弁護士に相談を
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 交通事故により手指を失った場合には、後遺障害認定を受けることで、後遺症慰謝料などを受け取ることができる。
- 後遺障害等級は後遺障害の重さによって異なり、等級別に損害賠償の金額は異なる。
- 同じ等級であっても、どの基準で算定するのかにより、後遺症慰謝料額は異なるので、保険会社と話し合う時にはどの基準で算定されているのか意識することが重要。
- 加害者側の保険会社との示談交渉は、弁護士への依頼を検討すると良い。
交通事故で手指を失った場合、後々の生活のためにも、受け取れる賠償金を最大限にする努力をすることは、大切なことです。しかし、弁護士に依頼するとなると、弁護士費用の不安があります。
アディーレ法律事務所は、相談者の不安を取り除くような費用体系を採用しています。
交通事故の被害による賠償金請求をアディーレ法律事務所にご相談・ご依頼いただいた場合、弁護士費用をあらかじめご用意いただく必要はありません。
すなわち、弁護士費用特約が利用できない方の場合、相談料0円、着手金0円、報酬は、獲得できた賠償金からいただくという成功報酬制です(途中解約の場合など一部例外はあります)。
また、弁護士費用特約を利用する方の場合、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので、やはりご相談者様・ご依頼者様にあらかじめご用意いただく弁護士費用は原則ありません。
※なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです。
実際のケースでは、弁護士費用は、この上限内に収まることが多いため、ご相談者様、ご依頼者様は実質無料で弁護士に相談・依頼できることが多いです。
弁護士費用が、この上限額を超えた場合の取り扱いについては、各法律事務所へご確認ください。
(以上につき、2023年8月時点)
交通事故の被害で手指を失い、賠償金請求のことでお悩みの場合は、交通事故の賠償金請求を得意とするアディーレ法律事務所にご相談ください。