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交通事故加害者が負うべき3つの法的責任をわかりやすく弁護士が解説

作成日:
リーガライフラボ

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

交通事故は、気のゆるみや運転への慣れなどが原因で起こることもありますので、どれだけ安全運転をこころがけていても誰でも交通事故加害者になってしまうおそれがあります。

交通事故の加害者となってしまった場合には、次の3つの責任を負わなければならない可能性があります。

  • 民事責任:被害者が被った人的及び物的損害について賠償すること(被害者に対し損害賠償金を支払うこと)
  • 行政責任:交通ルール違反の点数が加算されて、一定の点数以上となると免許停止又は免許取消処分を受けたりすること
  • 刑事責任:懲役刑や禁錮刑、罰金刑などの刑罰を受けること

交通事故を起こしてしまった直後の交通事故の加害者は慌ててしまい、冷静にはなれないこともあるでしょう。

ここは一度、冷静に交通事故の加害者がどのような責任を負うのかについて3つの責任(民事責任・刑事責任・行政責任)を知っておきましょう。

今回の記事では、次のことについて弁護士が詳しく解説します。

  • 交通事故加害者が負うべきこの3つの責任
この記事の監修弁護士
弁護士 中西 博亮

岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。

交通事故加害者が負うべき3つの責任

交通事故を起こした加害者は民事、刑事及び行政上の3つの責任を負うことになります。

※2022年6月の刑法の改正により、「懲役」と「禁錮」を一本化して「拘禁刑」とすることが決まりました。この点について改正刑法が施行されれば、今後は懲役と禁錮の違いはなくなります(拘禁刑に関する改正刑法は、2025年頃までに施行される予定です)。

加害者が負うべき民事、刑事及び行政上の責任は、別個に課せられる責任です。例えば、刑事罰を受けたから民事上の責任を負わないという関係にはありません。

民事責任

加害者は、民事上、被害者が被った人的及び物的損害を賠償する責任を負います。

具体的には、加害者が被害者に対して、被害者がケガをした場合の治療費や慰謝料などを支払うことをいいます。

加害者が被害者に対して支払うお金としては、例えば、次のようなものがあります。

  1. 積極損害…治療費、付添費用、入院雑費、通院交通費、葬儀関係費用等
  2. 消極損害…休業損害、後遺症による逸失利益、死亡による逸失利益
  3. 精神的な損害…慰謝料(死亡・傷害・後遺症)
  4. 物的な損害…破損した車や物の修理費用、代車使用料等

被害者が、加害者に対して上記のような損害について損害賠償請求をする際の法律上の根拠は主に次の3つとなります。

運行供用者責任(自動車損害賠償保障法3条)

自動車損害賠償保障法3条では、「自己のために自動車を運行の用に供する者」(運行供用者)は、その運行によって他人の生命または身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負うと定めています。

「自己のために自動車を運行の用に供する者」(運行供用者)とは、自動車の使用について支配権を有し、かつ、その使用により享受する利益が自己に帰属する者をいうと考えられています(最高裁判所判決昭和43年9月24日裁判集民92号369頁)。

例えば、自動車の「保有者」(所有者及び使用する権利を有する者で、自己のために運行の用に供するもの)は、運行供用者とされますので(自賠法2条3項)、他人所有の自動車を借りて交通事故を起こしたケースでは、自動車を貸した所有者も運行供用者責任を負うことがあります。

不法行為責任(民法709条)

民法上、故意・過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害する行為は「不法行為」といいます。加害者は、不法行為により被害者に生じた損害を賠償する責任を負い、この責任を「不法行為責任」といいます。

使用者責任(民法715条)

使用者責任とは、企業や事業主が他人を使用しており、その被使用者が業務中に第三者に損害を与えた場合には、使用者がその損害を賠償する責任を負うこといいます。

例えば、企業に雇用されている営業担当者が業務で外回りをしている最中に、交通事故を起こして被害が生じた場合には、運転者を雇用している企業も、損害を賠償する責任を負います。

刑事責任

刑事上の責任は、交通事故を起こした加害者が、法令上定められた犯罪行為を行ったものとして、公訴提起され、有罪との判断を受けて懲役刑や禁錮刑、罰金刑などの刑罰を受けることをいいます。

基本的に、車で交通事故を起こした場合には、次のような罪に問われる可能性があります。

  • 過失運転致死傷罪:自動車を運転中に必要な注意を怠ったために人を負傷または死亡させた行為について問題となる犯罪
  • 危険運転致死傷罪:危険なものとして法律が定める行為を行った結果、人を負傷又は死亡させた行為について問題となる犯罪
  • 過失建造物損壊罪:運転者が業務上必要な注意を怠り、又は重大な過失により他人の建造物を損壊した行為について問題となる犯罪

被害者の負傷の有無や死亡事故かどうか、運転時の状態(飲酒をしていた、無免許運転だったなど)、事故直後の対応(警察に報告し、被害者を救護したかどうか)などにより、受ける刑事罰は異なります。

(1)過失運転致死傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条)

過失運転致死傷罪は、自動車を運転中に必要な注意を怠ったために人を負傷または死亡させた行為について問題となる犯罪です。

必要な注意を怠った運転とは、前方不注意やわき見運転、一時停止無視、ハンドルの操作ミス等です。

罰則は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金ですが、傷害が軽い場合には情状により刑が免除されることがあります。

(2)危険運転致死傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条)

危険運転致死傷罪は、危険なものとして法律が定める行為を行った結果、人を負傷又は死亡させた行為について問題となる犯罪です。

法律では次の8つの行為が危険行為として定められています。
5及び6は、あおり運転が社会問題化し、危険なあおり運転を適切に処罰するために法改正により新しく追加された犯罪です(2020年7月2日施行)。

【危険運転致死傷罪で定められている危険行為】

  1. アルコールや薬物の影響で正常な運転が困難な状態にもかかわらず運転する
  2. 制御困難な高速度で運転する
  3. 進行を制御する技能がないのに運転する
  4. 人や車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入したりする
  5. 車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行している車に限る)の前方で停止し、その他これに著しく接近する方法で運転する
  6. 高速自動車国道又は自動車専用道路において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で運転して、走行中の自動車に停止又は徐行させる
  7. 赤色信号や赤色信号に相当する信号を殊更に無視し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で運転する
  8. 通行禁止道路を進行し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で運転する

罰則は、懲役刑のみで、人を負傷させた場合は15年以下の懲役死亡させた場合1年以上20年以下の懲役で非常に重くなっています。

(3)過失建造物損壊罪(道路交通法116条)

過失建造物損壊罪は、運転者が業務上必要な注意を怠り、又は重大な過失により他人の建造物を損壊した行為について問題となる犯罪です。

罰則は、6ヶ月以下の禁錮又は10万円以下の罰金です。

行政責任

行政上の責任とは、交通ルールに反したり、交通事故を起こした者が、反則金を納付したり、運転免許の取消しや停止といった処分を受けることをいいます。

日本では、運転免許証には点数制度が採用されています。交通ルール違反や人身事故は一定の点数が加算され、過去3年の累積された点数が一定の基準に達すると行政処分を受けます。

ここでは、点数制度と反則金について説明します。

(1)点数制度

点数制度では、過去3年間の累積点数が一定の点数を超えると、一定期間、免許停止や免許取消とすること等で、道路の安全を確保することを目的としています。

一度違反点数が加算されても、次のように一定期間無事故無違反で過ごしたあとであれば、違反行為があっても優遇措置として加算されず、0点からの再スタートとなります。

  • 前の違反と後の違反の間が1年以上無事故・無違反
  • 2年以上無事故・無違反で、かつ1~3点の違反行為をし、その後3ヶ月以上無事故無違反で過ごしたとき

点数制度の主な内容は、次の2種類の点数からなっています。

基礎点数

交通違反の種類によって、付けられている基礎点数。一般違反行為が1~25点(道路交通法施行令別表第二の一)、特定違反行為が35~62点(道路交通法施行令別表第二の二)です。

付加点数

人を死傷させた交通事故を起こした場合、建造物損壊事故を起こした場合には、基礎点数に加えて、付加点数が加算されます(道路交通法施行令別表第二の三)。

例えば、信号待ちで停車している車に前方不注意により後続車が追突した交通事故で被害者に傷害(治療期間2ヶ月)を負わせた場合を考えてみましょう。

この場合、交通事故の責任はもっぱら加害者にあるものとしてその責任は重くなります。そうすると、一般的には基礎点数として安全運転義務違反の2点と、付加点数として9点が加算され、合計11点となります。

参考:交通事故の付加点数|警視庁

(1-1)免許停止

免許停止とは、一定期間運転することができなくなる行政処分です。

免許停止処分には過去の行政処分歴の回数も考慮されますので、1回1回の違反点数が少なくても、処分歴の回数に注意する必要があります。

免許停止期間は、30~180日間の間(30日、60日、90日、120日、150日、180日)となっており、違反点数や過去の行政処分歴によって、期間は異なってきます。

過去3年の行政処分歴が0回の人が免停になる点数は、6~14点の範囲であり、その点数に対応する免許停止期間は次の表のとおりです。

違反点数免許停止期間
6~8点30日
9~11点60日
12~14点90日

過去3年に行政処分歴が1回ある人は、次のように、0回の人に比べて点数の低い4~9点の範囲で免許停止処分を受け、免許停止期間も長くなります。

違反点数免許停止期間
4点60日
5点60日
6点90日
7点90日
8点120日
9点120日

過去3年に行政処分歴が2回以上ある人は、次の警視庁の行政処分基準点数のサイトを参照してみてください。

参考:行政処分基準点数|警視庁

(1-2)免許取り消し

免許取り消しは、免許の効力が失われる行政処分です。

免許の効力が失われますので、再び車を運転するためには、再度免許を取り直す必要があります。

ただし、処分を受けてから一定期間は免許の再取得が許されない欠格期間を課されますので、すぐに再取得することはできません。

過去3年の行政処分歴が0回の人が免許取り消しになる点数は、15点です。処分歴が1回だと10点、2回だと5点、3回以上だと4点とだんだん低くなりますので、過去に処分歴がある人は注意が必要です。

(2)反則金制度

交通違反は非常に数が多く、すべてを刑事手続きに乗せると裁判所や検察の処理上困難な事態が予想されますし、また軽微な違反について、犯罪として前科がついてしまうのも妥当ではありません。

そこで、道路交通法では特に交通違反通告制度が設けられ、比較的軽微な違反であれば反則金を収めて行政処分を受けることで、刑事処分(公訴提起)を回避することができるものとされています(道路交通法125条以下)。

しかしながら、交通事故を起こして人を負傷させたとなると軽微な違反とは言えませんので、反則金制度の対象となることはほとんどないでしょう。

【まとめ】交通事故の加害者となった場合には、民事・刑事・行政の3つの責任を負う

交通事故の加害者は、民事、刑事及び行政上の責任を、別個に負います。
任意保険に加入している場合には、被害者に対する民事上の責任については基本的に任意保険会社が対応してくれることになりますが、別途刑事及び行政上の責任を負わなければなりません。

自分の行為の責任は果たす必要がありますが、事故の状況や過失割合に争いがある場合には、しっかりと保険会社に自分の意見を伝えるとよいでしょう。
また、刑事事件では、懲役刑など重い刑罰の対象になることもありますので、弁護士に依頼し、犯罪の成否や、情状など争える部分がないかについてしっかりと話し合い、弁護してもらうようにしましょう。

この記事の監修弁護士
弁護士 中西 博亮

岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

※¹:2024年10月時点。

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