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交通事故は略式起訴で終わる可能性が高い?手続きの流れや裁判との違いを解説

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道路交通法違反は、免許停止処分や免許取消処分といった行政上の処分をされるおそれがあることに加え、懲役や罰金など刑事罰を科されるおそれがあります。
今回は、「交通事故を起こした加害者の刑事責任」について弁護士が解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 村松 優子

愛知大学、及び愛知大学法科大学院卒。2010年弁護士登録。岡﨑支店長、家事部門の統括者を経て、2018年より交通部門の統括者。同年よりアディーレの全部門を統括する弁護士部の部長を兼任。アディーレが身近な存在となり、依頼者の方に、水準の高いリーガルサービスを提供できるよう、日々奮闘している。現在、愛知県弁護士会所属。

反則金制度は重大な交通事故では整備されていない

交通違反をすると、違反切符を切られるというイメージが強いのではないでしょうか。
ほかの犯罪に比べると交通事故違反の件数が多いため、軽微な違反を迅速に処理するために反則金制度が用意されています(交通反則通告制度)。一定期間内に反則金を支払えば、刑事罰は科されません。
しかし、6点以上の重大な交通違反に対して、反則金の制度はありません。

物件事故は通報すれば刑事責任を負わない

交通事故は過失による「偶然の事故」ですが、過失で他人の車やガードレールなどの物を傷つけても、「過失器物損壊罪」はなく、通常は刑事事件にはなりません。
うっかり物を壊したり傷つけたりすることは誰にでもあり、弁償すればよいということです(もちろん、弁償だけでなく、ちゃんと謝ってください)。

ただし、交通事故の物損の場合は、道路交通法上の危険防止措置義務と報告義務(道交法72条)があり、逃走してそれらを怠ると、危険防止措置義務違反は「1年以下の懲役または10万円以下の罰金」(道路交通法第117条の5)、報告義務違反は「3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金」(同法第119条1項10号)となります。

刑事事件の流れ

交通事故で逮捕された場合の流れについてみてみましょう。
逮捕されると、48時間以内に検察庁に身柄が送られ、その24時間以内に検察官は勾留請求をするかどうかを決めます。勾留請求がされた場合には、裁判所の判断次第で、まず10日間勾留され、やむを得ない事由があれば、さらに10日間勾留が延長されます。このため、逮捕されると、最長23日間は身柄を拘束されます(起訴されると保釈されない限り、裁判まで身柄拘束が続きます)。
もっとも、逮捕されたからといって勾留請求されるとも限りませんし、検察官が勾留請求したからといって裁判所が勾留を認めるとは限りません。勾留がされない場合には、被疑者が「在宅」のまま捜査が進められることになります。

(1)どういう場合に逮捕されるの?

交通事故では、ひき逃げ、飲酒運転、無免許運転、煽り運転などの悪質な場合や、被害者が死亡した場合や複数人が死傷した場合などの重大な事故でない限りは、逮捕されることは極めてまれです。
2019年4月19日に池袋で起きた交通事故は、死傷者複数の大変いたましい事故でしたが、加害者の負傷入院等もあり逮捕されませんでした。

警察官としては通報を受けた現場で加害者を逮捕することはできるのですが、交通事故事件の加害者に逃亡の恐れがあることは少ないですし、現場検証・実況見分をしてしまえば罪証隠滅も考えにくいです。
加害者を逮捕してしまいますと、先に述べた23日間の期間制限で警察官と検察官が忙しくなりますし、何より、被害者と加害者が連絡先を交換して保険会社が対応しているのであれば、その進捗の様子をみてから刑事処分を決めようと考えるのが普通です。刑事処分を急がずに保留することで、被害者に対する真摯な謝罪や賠償の対応を加害者側に促す効果もあります(残念なことですが、刑事処分が終わると、交通事故のことは保険会社に任せきってしまう加害者は少なくありません)。

ほとんどの人身事故は、逮捕されずに「在宅事件」として処理され、その地域の検察官事情にもよりますが、半年程度経過した後に、被害者の治療状況や示談状況を確認して、加害者に対する検察での処分を決めることとなります。

(2)不起訴処分になることも

捜査を進めた結果、検察官は起訴するまでもないと考えることが多々あります。
不起訴となる主な理由は、次の3つです。

  • 嫌疑なし
  • 嫌疑不十分
  • 起訴猶予

不起訴となれば、懲役刑や罰金刑が科されることもなく、前科もつきません。

骨折がなくむち打ち症状を生じる程度の追突事故や出会いがしら事故は、通常は「起訴猶予」となります。加害者の運転の過失のために人が傷ついて、検察官としては運転手を処罰しようと思えばできるのだけれど、幸いケガが軽く、治療も賠償も終わり(または加害者と保険会社がきちんと誠意をもって対応中で)、被害者としても加害者の処罰を望んでいない……という場合が典型的です。

被害者が死亡していたり、重大な後遺症が残っていたりするような場合には、その程度や過失割合、運転状況の危険性によって、後に説明しますように、加害者は略式起訴や正式起訴(いわゆる「公判請求」)されることとなります。

交通事故の場合には、「嫌疑なし」や「嫌疑不十分」はめったにないでしょう。たとえば、被害者の直前飛び出しがあり加害車両が回避困難だった場合や、信号機の色の争いで目撃者がなく真偽不明の場合であれば、「嫌疑なし」や「嫌疑不十分」に該当する可能性があります。

非常に難しいのが、加害者側の運転手に過失がなかったわけではないが、危険な飛び出しや立ち止まりなど被害者側の過失が大きいとみられ、さらに被害者の死傷結果が重大な場合です。このような場合には、起訴猶予となることが少なくありませんが、被害者や被害者の遺族は非常にやり切れない思いをされることとなってしまいます。

略式起訴とは

道路交通法違反を犯すと、起訴される可能性があります。
起訴には、略式起訴と正式起訴の2種類があります。
いずれにしても起訴され、有罪となると、前科がついてしまうので、注意してください。

(1)略式起訴とは裁判を簡素化した刑事上の手続き

すべての交通事故について裁判を開くと裁判所の負担が大きくなりますので、比較的軽い交通事故案件については、通常の裁判ではなく、書類だけで加害者の処分を決めます。
これを「略式手続き」と呼び、略式起訴から始まり、略式命令で終わります。

(2)略式起訴の流れ

略式起訴をしようとした検察官は、被疑者に対して略式請求で進めることの同意を得ます。
もし被疑者が検察官の起訴する事実が真実でないと考え、略式起訴に同意しないのであれば、略式起訴をすることはできません。

略式起訴をする場合には、検察官は簡易裁判所に書類を提出します。そして、裁判官が内容を審議(略式裁判)し、「100万円以下の罰金刑」(略式命令)を下します。略式命令は、郵送または手渡しによって被告人に渡されることになります。

もっとも迅速な手続きは「待命略式(在庁略式)」

一般的な略式命令であれば、略式請求の約2週間後に罰金額などが記された「略式命令書」が被告人のもとに届きます。これに対して、待命略式であれば、裁判所に出頭した被告人に対して略式命令書を手渡し、被告人はその日のうちに略式命令書を持参して検察庁を訪れ、検察庁で罰金の支払い手続きを終えます。

(3)略式起訴と通常の裁判との違い

裁判というと、裁判官、検察官、弁護人、被告人が法廷にいる図をイメージするかもしれません。これは「正式裁判」の図です。一方、略式裁判であれば、被告人が検察官や弁護人から尋問されることもなく、裁判官から直接判決を言い渡されることもありません。
被告人には罰金刑が書面で通知され、その金額を納付すれば刑事手続きが終了し、交通事故における刑事責任を果たしたことになります。その後、同じ犯罪事実で刑事裁判にかけられることはありません。

略式命令の内容に対する不服申立ても可能

略式請求に一度同意していても、略式命令から14日以内であれば、略式命令の内容に対して不服申立てをすることができます。不服申立てをすれば、略式命令の効力は失われ、正式な刑事裁判が開かれることになります。弁護士に刑事弁護を依頼する経済的な余裕がなければ、国選弁護人がつきます。

(4)罰金を支払えない場合には労役場で働く

罰金を分割払いで支払うことはできません。そのため、略式命令で下された罰金を支払えないときには、全国の刑務所や拘置所に併設された労役場で働くことになります。1日あたり5000円として、罰金額に満つるまで働かされてしまうので、お金があるならば多少無理をしてでも支払ったほうが負担は少なくなるでしょう。

交通事故は重大でないときは略式起訴となりやすい

交通事故を起こすと加害者に重い刑事罰が与えられるというイメージがあるかもしれませんが、必ずしも重い処罰を受けるとは限りません。また、刑事罰を受けるとしても、通常の裁判になるケースと略式起訴となるケースがあり、処罰に至る過程はさまざまです。

(1)交通事故は略式起訴で終わるケースがほとんど

起訴された刑事事件は正式裁判もしくは略式裁判で裁かれますが、軽微な交通事故は略式起訴で終わるケースが多いといえます。略式起訴は簡易裁判所の管轄でなければできないため、懲役刑や禁錮刑になる可能性が高いものは、正式裁判になる可能性が高いでしょう。

(2)略式起訴では済まされないとされる交通事故

重篤な死傷結果を招いた交通事故を起こしたときには、正式裁判が行われることになります。通常の裁判に至りやすい主な交通事故には次のようなものがあります。

(3)危険運転致死

最も重大な違反は、危険運転致死です(違反点数62点)。
「危険運転致死罪」は、わざと危険な運転をした結果、事故を起こして人を死傷させるという、「故意」+「過失」の複合類型になっており、危険な運転をした故意の部分は「暴行罪」に近く、その結果の人の死は「傷害致死罪」に近いものとして、重く処罰されています。

危険運転致死罪は、次の行為により人を死亡させた場合に成立します(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条)。

1.アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
2.その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
3.その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
4.人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
5.車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為
6.高速自動車国道又は自動車専用道路において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行をさせる行為
7.赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
8.通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

引用:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条

危険運転致死を犯すまで違反行為がなくても、1年以上20年以下の懲役刑となります。

(4)酒酔い運転

酒酔い運転とは、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれのある状態のことを指します(違反点数35点)。蛇行運転や逆走など冷静な判断力を欠いた人は何をするかわからないため、非常に危険な行為とされています。
正常な運転ができるかどうかは次のような基準で判断されます。

  • 直立できるか
  • まっすぐに歩行できるかどうか
  • ろれつが回っているか、支離滅裂な内容になっていないか
  • 会話を正しく聞き取ることができるか

酒酔い運転をすると、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられるおそれがあります。

(5)その他:悪質で重大な事故

故意の赤信号無視や無謀運転は危険運転致死罪で捕捉されていますが、その他の類型としては、以下のようなものがあります。

現代の車は安全装備がしっかりしていますので、よほど重大な事故でないと死亡事故となりません。車対車の死亡事故は、どちらかに速度超過や一時停止無視などの複合的な違反があることが多く、加害者側の違反だった場合には正式裁判になることが多い傾向にあります。過失の赤信号無視やセンターオーバーの結果、被害者が重傷を負った場合も同様です。

横断歩道上の歩行者は、道路交通法上強く保護されており、横断歩道上の歩行者に対する重大事故を軽微な処分で済ませてしまうと、歩行者が安心して横断歩道を渡ることができなくなるおそれがありますので、厳しく処罰すべきと考えられているのでしょう。

【まとめ】交通事故に関するご相談は弁護士へ

交通事故は、件数が多いため、反則金制度が設けられており、反則金制度がないものでも略式起訴となるケースが多いといえます。略式起訴とは書面だけで加害者の刑罰を決めるもので、加害者の同意がなければ略式起訴で手続きを進めることはできません。いったん同意した場合であっても、略式裁判がされた後14日以内であれば不服申立てをすることができます。
もしいわれのない事実で逮捕・勾留されてしまった場合や検察官の処分が重いと考える場合には、弁護士に相談することをおすすめします。逮捕・勾留されている人に代わって、家族や友人が弁護士に依頼することもできます。

この記事の監修弁護士
弁護士 村松 優子

愛知大学、及び愛知大学法科大学院卒。2010年弁護士登録。岡﨑支店長、家事部門の統括者を経て、2018年より交通部門の統括者。同年よりアディーレの全部門を統括する弁護士部の部長を兼任。アディーレが身近な存在となり、依頼者の方に、水準の高いリーガルサービスを提供できるよう、日々奮闘している。現在、愛知県弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

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