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交通事故は略式起訴で終わる可能性が高い?手続きの流れや裁判との違いを解説

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リーガライフラボ

※アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

交通事故を起こしたとしても、たいていの場合は略式起訴となる可能性が高いと考えられます。
しかし、重大な交通事故であるなど、場合によっては正式裁判となり、懲役などの刑事罰を科されるおそれがあります。

今回の記事では、次のことについて弁護士が解説します。

  • 略式起訴とは
  • 交通事故を起こした加害者の刑事責任
この記事の監修弁護士
弁護士 中西 博亮

岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。

反則金制度は重大な交通事故では整備されていない

交通違反をすると、違反切符を切られるというイメージが強いのではないでしょうか。
交通違反は、他の犯罪に比べて件数が多いため、軽微な交通違反を迅速に処理するために反則金制度が用意されています(交通反則通告制度)。一定期間内に反則金を支払えば、刑事罰は科されません。
しかし、6点以上の重大な交通違反に対しては、反則金の制度はありません。

物損事故は通報すれば刑事責任を負わないのが原則

過失で他人の車やガードレールなどの物を傷つけても、通常は刑事事件にはなりません。
うっかり物を壊したり傷つけたりすることは誰にでもあり、弁償すればよいということです(もちろん、原則犯罪にはならないというだけですので、弁償だけでなく、ちゃんと謝ってください)。

ただし、交通事故の物損の場合は、道路交通法上の危険防止措置義務と報告義務(道交法72条)があります。逃走してそれらを怠った場合には、危険防止措置義務違反は「1年以下の懲役または10万円以下の罰金」(道路交通法第117条の5)、報告義務違反は「3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金」(同法第119条1項17号)が定められています。

※2022年6月に刑法が改正され「懲役刑」「禁錮刑」は廃止されて「拘禁刑」に統一されました。改正刑法は2025年頃までに施行される予定です。

刑事事件の流れ

交通事故で逮捕された場合の流れについてみてみましょう。
逮捕されると、48時間以内に検察庁に身柄が送られ、そこから24時間以内に検察官は勾留請求をするかどうかを決めます。勾留請求がされた場合には、裁判官の判断次第で、まず10日間勾留され、やむを得ない事由があれば、さらに10日間勾留が延長されます。そのため、逮捕されると最長で23日間身柄を拘束される可能性があります。
さらに、起訴されてしまうと保釈されない限り、裁判が終わるまで身柄拘束が続くことになります。
ただし、逮捕されたからといって勾留請求されるとは限りませんし、検察官が勾留請求したからといって裁判官が勾留を認めるとも限りません。

(1)どういう場合に逮捕されるの?

交通事故では、ひき逃げ、飲酒運転、無免許運転、あおり運転などの悪質な場合や、被害者が死亡した場合などの重大な事故でない限りは、逮捕されることは極めてまれです。

警察官としては通報を受けた現場で加害者を逮捕することはできるのですが、交通事故事件の加害者に逃亡のおそれがあることは少ないですし、現場検証・実況見分をしてしまえば罪証隠滅も考えにくいためです。
また、加害者を逮捕してしまうと、先に述べた23日間の期間制限で警察官と検察官が忙しくなりますし、被害者と加害者が連絡先を交換して保険会社が対応しているのであれば、検察官は、通常その進捗の様子をみてから刑事処分を決めようと考えます。さらに、刑事処分を急がずに保留することで、被害者に対する真摯な謝罪や賠償を加害者側に促す効果もあります(残念なことですが、刑事処分が終わると、交通事故のことは保険会社に任せきってしまう加害者は少なくありません)。

(2)不起訴処分になることも

捜査を進めた結果、検察官は起訴するまでもないと考えることがあります。
不起訴となる主な理由は、次の3つです。

  • 嫌疑なし
  • 嫌疑不十分
  • 起訴猶予

不起訴となれば、刑事罰が科されることもなく、前科もつきません。
骨折がなくむち打ち症状を生じる程度の追突事故や出会いがしら事故は、通常は「起訴猶予」となります。

加害者の過失のために人が傷ついたけれど、幸いケガが軽く、治療も賠償も終わり(または加害者と保険会社がきちんと誠意をもって対応中で)、被害者としても加害者の処罰を望んでいない…という場合が典型的です。
被害者が死亡していたり、重大な後遺症が残っていたりするような場合には、その程度や過失割合、運転状況の危険性によって、後に説明しますように、加害者は略式起訴や正式起訴(いわゆる「公判請求」)されることとなります。

交通事故の場合には、「嫌疑なし」や「嫌疑不十分」はめったにないでしょう。たとえば、被害者の飛び出し行為があり加害車両が回避困難だった場合や、信号機の色の争いで目撃者がなく真偽不明の場合であれば、「嫌疑なし」や「嫌疑不十分」に該当する可能性があります。

非常に難しいのが、加害者側の運転手に過失がなかったわけではないが、危険な飛び出しや立ち止まりなど被害者側の過失が大きいと考えられ、さらに被害者死亡したり、重傷を負ったりした場合など、結果が重大な場合です。このような場合には、起訴猶予となることが少なくありませんが、被害者や被害者の遺族は非常にやり切れない思いをされることとなってしまいます。

略式起訴とは

起訴には、略式起訴と正式起訴の2種類があります。
いずれにしても起訴されて有罪になると、前科がついてしまいます。

(1)略式起訴とは裁判を簡素化した刑事上の手続き

すべての交通事故について裁判を開くと裁判所の負担が大きくなりますので、比較的軽い交通事故については、正式裁判ではなく、書類だけで簡易迅速に加害者の処分を決めます。
これを「略式手続き」と呼び、略式起訴から始まり、略式命令で終わります。

(2)略式起訴の流れ

略式起訴をしようとした検察官は、被疑者に対して略式手続きで進めることの同意を得ます。
もし被疑者が検察官の起訴する事実が真実でないと考え、略式起訴に同意しないのであれば、略式起訴をすることはできません。
略式起訴をする場合には、検察官は簡易裁判所に書類を提出します。そして、裁判官が内容を審議(略式裁判)し、「100万円以下の罰金刑」(略式命令)を下します。略式命令は、郵送または手渡しによって被告人(※)に渡されることになります。
※起訴される前は「被疑者」、起訴された後は「被告人」と呼ばれます。

(3)略式手続きと正式裁判との違い

裁判というと、裁判官、検察官、弁護人、被告人が法廷にいる図をイメージするかもしれません。これは「正式裁判」の図です。一方、略式手続きであれば、被告人が検察官や弁護人から尋問されることもなく、裁判官から直接判決を言い渡されることもありません。
被告人には罰金刑が書面で通知され、その金額を納付すれば刑事手続きが終了し、交通事故における刑事責任を果たしたことになります。

略式命令の内容に対する不服申立ても可能

略式請求に一度同意していても、略式命令から14日以内であれば、略式命令の内容に対して不服申立てをすることができます。不服申立てをすれば、略式命令の効力は失われ、正式な刑事裁判が行われることになります。

(4)罰金を支払えない場合には労役場で働く

原則として、罰金を分割払いで支払うことはできません。そのため、略式命令で下された罰金を支払えないときには、全国の刑務所や拘置所に併設された労役場で働くことになります。通常1日あたり5000円として、罰金額に満つるまで働かされてしまうので、お金があるならば多少無理をしてでも支払ったほうが負担は少なくなるでしょう。

重大でない交通事故は略式起訴となりやすい

交通事故を起こすと加害者に重い刑事罰が与えられるというイメージがあるかもしれませんが、必ずしも重い処罰を受けるとは限りません。また、刑事罰を受けるとしても、正式裁判になるケースと略式手続きとなるケースがあり、処罰に至る過程はさまざまです。

(1)交通事故は略式起訴で終わるケースがほとんど

起訴された刑事事件は正式裁判もしくは略式手続きで裁かれますが、軽微な交通事故は略式手続きで終わるケースが多いといえます。しかし、懲役刑や禁錮刑になる可能性が高いものは、正式裁判になると考えられます。

(2)略式起訴では済まされない場合の交通事故

重大な交通事故を起こしたときには、正式裁判が行われる可能性が高いと考えられます。正式裁判に至りやすい主な交通事故には次のようなものがあります。

(2-1)危険運転致死

最も重大な交通違反は、危険運転致死です(違反点数62点)。
「危険運転致死」は、わざと危険な運転をした結果、事故を起こして人を死傷させるという悪質なものであるため、重く処罰されます。
危険運転致死罪は、次の行為により人を死亡させた場合に成立します(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条)。

1.アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
2.その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
3.その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
4.人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
5.車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為
6.高速自動車国道又は自動車専用道路において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行をさせる行為
7.赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
8.通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

引用:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条

危険運転致死の場合、法定刑は1年以上20年以下の懲役となっています。

(2-2)酒酔い運転

酒酔い運転とは、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれのある状態で運転することを指します(違反点数35点)。

正常な運転ができるかどうかは次のような基準で判断されます。

  • 直立できるか
  • まっすぐに歩行できるかどうか
  • ろれつが回っているか、支離滅裂な内容になっていないか
  • 会話を正しく聞き取ることができるか

酒酔い運転をすると、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられるおそれがあります。

(2-3)その他:悪質で重大な事故

現代の車は安全装備がしっかりしていますので、よほど重大な交通違反がなければ死亡事故とならない場合が多いと考えられます。
したがって、車対車の死亡事故は、どちらかに速度超過や一時停止無視などの複合的な交通違反があることが多く、それが加害者側の交通違反だった場合には正式裁判になることが多い傾向にあります。
過失の赤信号無視やセンターオーバーの結果、歩行者である被害者が死亡したり、重傷を負ったりした場合も同様です。
歩行者は、道路交通法上強く保護されているため、歩行者に対する重大事故は軽微な処分で済ませず、加害者を厳しく処罰すべきと考えられているのでしょう。

【まとめ】交通事故は略式起訴で終わるケースが多いが、重大な事故であれば正式裁判となる可能性が高い

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 過失で物損事故を起こしても原則として犯罪にはならないが、通報しなければ刑事罰を科されるおそれがある
  • 交通事故で逮捕されることは極めてまれなケースである
  • 交通事故の場合、「不起訴」となることも多い
  • 検察官が略式起訴をするには、被疑者の同意が必要
  • 略式起訴から始まり、略式命令で終わる手続きのことを「略式手続き」と呼ぶ
  • 正式裁判と違い、略式手続きでは書類だけで処分を決める
  • 14日以内であれば略式命令の内容に対して不服申立てをすることができ、不服申立てをすれば、略式命令の効力は失われ、正式な裁判が行われる
  • 略式命令で下された罰金を支払えないときには、労役場で働くことになる

交通事故は略式起訴で終わるケースが多いが、次のような場合には正式裁判となる可能性が高い

  • 危険運転致死
  • 酒酔い運転
  • その他悪質で重大な事故

もし逮捕・勾留されてしまった場合には、刑事事件を取り扱っている弁護士に相談することをおすすめします。逮捕・勾留されている人に代わって、家族などが弁護士に依頼することもできます。

この記事の監修弁護士
弁護士 中西 博亮

岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

※¹:2024年4月時点。拠点数は、弁護士法人アディーレ法律事務所と弁護士法人AdIre法律事務所の合計です。

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