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暴行罪と傷害罪って何が違う?成立条件や刑罰について解りやすく解説

作成日:更新日:
kiriu_sakura

「暴行罪」と「傷害罪」で逮捕されるニュースを聞いたことがあるかもしれません。
暴行罪と傷害罪は、イメージとして人が他人を殴ったり、蹴ったりというイメージがあるかもしれませんが、どのような違いがあるのでしょうか。

簡単に言いますと、暴行罪と傷害罪は、刑罰の重さや成立条件が違います。
例えば、人を殴ったり、蹴ったりして人がケガした場合には「傷害罪」、人を殴ったり、蹴ったりしても人がケガしなかった場合には「暴行罪」という違いがあります。

暴行罪か傷害罪のいずれが成立するかによって、被告人が最終的に受ける刑罰が大きく異なり、被告人や被害者にとって、暴行罪か傷害罪かは重要なポイントになります。
暴行罪と傷害罪の違いについて知っておきましょう。

この記事では、

  • 暴行罪と傷害罪の成立条件の違い
  • 暴行罪と傷害罪の刑罰
  • 暴行罪と傷害罪の裁判例

について弁護士が詳しく解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

【暴行罪と傷害罪】成立条件の違いは?

まず、暴行罪と傷害罪の成立の条件の違いについて見ていきましょう。

(1)暴行罪

暴行罪は、相手方に対し「暴行」を加えることを内容とする犯罪です(刑法208条)。

暴行に加えた者が人に傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に課す

引用:刑法208条

暴行罪における「暴行」とは、人の身体に対する有形力の行使をいいます。
例えば、殴る、蹴るなどの行為が典型例ですが、直接人に触って攻撃する行為以外にも人に向かって石を投げる、髪の毛を引っ張るといった行為なども、暴行罪における「暴行」として処罰の対象となります。

なお、殴る、蹴るなどの結果、人にケガをさせた場合には、後で説明する「傷害罪」が成立し、「暴行罪」は成立しません。

<コラム> たまたま体が当たってしまったなど「故意」がない場合にはどうなる?

一般的に、犯罪には「故意」が必要とされています。
「故意」とは、その犯罪行為について認識して行っていること、簡単に言うと、わざと行っていることが必要になります。

暴行罪や傷害罪にも、もちろん、「故意」が必要となり、故意がない場合、つまり、たまたま体が当たってしまった場合などには暴行罪や傷害罪は成立しません。

もっとも、不注意で人にケガをさせてしまった場合には「過失傷害罪(刑法209条)」が成立する可能性がありますが、一方、不注意で暴行をしてしまった場合(ケガはしなかった)場合には過失暴行は成立しません(過失暴行という犯罪は法律上定められていません)。

(2)傷害罪

傷害罪は、人の身体に対する傷害行為を処罰する犯罪です(刑法204条)。

人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する

引用:刑法204条

たとえば、人をナイフで切りつけてケガを負わせるというのが、傷害罪の典型例です。

もっとも、裁判例は「傷害」を「人の生理的機能を害すること」としているため、ケガをさせる行為だけでなく、病気をうつす行為や相手方に精神的なショックを与え、PTSDなどを発症させる行為でも、傷害罪が成立します。

暴行罪と傷害罪の違いは、暴行の結果、傷害が生じているかどうかです。
例えば、人を殴った場合にケガを負わせた場合には「傷害罪」、人を殴った場合であってもケガを負わせるまでには至らなかった場合には「暴行罪」となります。

<コラム> 暴行の結果、死亡した場合はどうなる?

暴行の結果、死亡した場合は「傷害致死罪」という罪になります(なお、殺そうとして暴行し、殺害した場合は殺人罪になります)。

【暴行罪と傷害罪】刑罰の重さの違いは?

ここで、暴行罪と傷害罪の刑罰の重さの違いについて見ていきましょう。

(1)暴行罪

暴行罪の刑罰は、「2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留若しくは科料」(刑法208条)と定められています。

もっとも、実務上、懲役もしくは罰金を科されることが多く、拘留や科料が課されることはあまりありません。

※「科料」とは、1000円以上1万円未満と定められています(刑法17条)。
「拘留」とは、1日以上30日未満の間、刑事施設に拘置することです(刑法16条)。

(2)傷害罪

傷害罪の刑罰は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金(刑法204条)と定められています。

傷害罪は、暴行罪と違い、人にケガなどを負わせていますので、暴行罪よりも罪が重くなります。

暴行罪が成立した裁判例

ここで、暴行罪が成立した裁判例についていくつか紹介します。

(1)裁判例1(大審院判決昭和8年4月15日)

着衣をつかみ引っ張るなどの身体に触れていない行為であったとしても、「暴行」にあたると判断しました。

暴行とは、人の身体に対する不法な攻撃方法の一切をいい、その性質上傷害の結果を惹起すべきものであることは要せず、着衣をつかみ引っ張る行為などは暴行に当たる。

引用:大審院判決昭和8年4月15日

(2)裁判例2(福岡高裁判決昭和46年10月11日)

他人の頭・顔に、お清めとして食塩を振りかける行為も「暴行」に当たると判断しました。
他人の頭や顔に食塩を振りかける行為自体にはケガをさせてしまうような危険なものではありませんが、相手に不快な気持ちにさせるような行為であっても「暴行」にあたると判断しました。

刑法第二〇八条の暴行は、人の身体に対する不法な有形力の行使をいうものであるが、右の有形力の行使は、所論のように、必ずしもその性質上傷害の結果発生に至ることを要するものではなく、相手方において受任すべきいわれのない、単に不快嫌悪の情を催させる行為といえどもこれに該当するものと解すべきである。

引用:福岡高裁判決昭和46年10月11日

傷害罪が成立した裁判例

一方、傷害罪が成立要した裁判例についていくつか紹介します。

(1)裁判例1(最高裁判決昭和27年6月6日)

殴る・蹴るなどで人をケガさせる行為だけが「傷害罪」に当たるのではないかと問題になりましたが、性病をわざと感染させる行為も「傷害罪」にあたると判断しました。

傷害とは、他人の身体の生理的機能を毀損するものである以上手段を問わず、暴行によらず病毒を他人に感染させる場合も含まれる。

引用:最高裁判決昭和27年6月6日

(2)裁判例2(最高裁決定平成24年1月30日)

睡眠薬などを摂取させ、約6時間または約2時間にわたる意識障害や筋弛緩作用を伴う急性薬物中毒の症状を生じさせた行為についても、「傷害罪」に当たると判断しました。

被告人は、病院で勤務中ないし研究中であった被害者に対し、睡眠薬等を摂取させたことによって、約6時間又は約2時間にわたり意識障害及び筋弛緩作用を伴う急性薬物中毒の症状を生じさせ、もって、被害者の健康状態を不良に変更し、その生活機能の障害を惹起したものであるから、いずれの事件についても傷害罪が成立すると解するのが相当である。

引用:最高裁決定平成24年1月30日

殴ったり蹴ったりしなくとも傷害罪が成立することも

殴ったり、蹴ったりといった行為がない場合であっても、例えば無言電話や嫌がらせでPTSDが発症したといった場合には傷害罪が成立するケースがあります。

殴ったり蹴ったりしなくても傷害罪の成立を認めた裁判例(最高裁判決平成17年3月29日)

被告人は、…ラジオの音声及び目覚まし時計のアラーム音を大音量で鳴らし続けるなどして、同人に精神的ストレスを与え、よって、同人に全治不詳の慢性頭痛症、睡眠障害、耳鳴り症の傷害を負わせた…。被告人の行為が傷害罪の実行行為に当たる…。

引用:最高裁判決平成17年3月29日

自宅から被害者宅である隣家に対して、約1年半にわたって、連日朝から深夜未明までラジオの音声や複数の目覚まし時計のアラーム音を大音量で鳴らし続けるなどし、被害者に精神的ストレスを与えて、慢性頭痛症、睡眠障害、耳鳴りといった症状を与えた行為につき、「傷害罪」に当たると判断しました。

【まとめ】基本的に、殴ってケガをしなければ暴行罪、ケガをさせれば傷害罪

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 暴行罪と傷害罪の違い
  • 暴行罪とは、簡単に言うと、人に対する暴行のことを言い、例えば、殴る、蹴るなどの行為が典型例(殴る、蹴るなどしてケガをした場合は傷害罪となる)。
  • 傷害罪とは、人の身体に対する傷害行為のことをいい、例えば、人をナイフで切りつけ、ケガをした場合が典型例。
  • 暴行罪と傷害罪の刑罰の違い
  • 暴行罪…2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留若しくは科料
  • 傷害罪…15年以下の懲役または50万円以下の罰金
  • 暴行罪については殴る、蹴る以外にも、服を引っ張る行為や人に向けて石を投げつける行為も含まれる。

  • 傷害罪については、殴る、蹴るなどによりケガをした場合のみならず、無言電話や嫌がらせ行為などで精神的ストレスを与え、頭痛や睡眠障害などを生じさせる行為も含まれる。

知人やご家族が暴行罪や傷害罪で逮捕された、暴行罪や障害罪の被害者となったなど、暴行罪や障害罪に関してお悩みの方は、刑事事件を扱う弁護士への相談をおすすめします。

この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

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