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離婚時に知っておきたい財産分与とは?大切な財産を失わないための基本を解説

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リーガライフラボ

「離婚の際に財産分与ができると聞いたけど、財産分与って何?」
「財産分与では何を気を付ければいいの?」

財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産を、離婚に伴って分与する制度のことをいいます。
財産分与の対象となるのは、夫婦の共有財産ですが、住宅ローンが残っている不動産など、どのような取り扱いをすればよいか難しい財産もあります。
また、財産分与にあたっては、離婚から2年以内に請求すること、なるべく離婚時に財産分与の合意をすること、共有財産の確定時期は別居時であること、などに気を付ける必要があります。

この記事の監修弁護士
弁護士 林 頼信

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。

財産分与とは

財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産を、離婚に伴って分与する制度のことをいいます(民法768条1項)。
財産分与制度により、夫婦の一方が他方に対して財産の分与を請求することができますので、財産分与請求権といったりもします。

財産分与の3つの性質

財産分与には、3つの性質があるといわれています。
財産分与をしっかり理解したうえで、損をしない財産分与をするためには、3つの性格について知っておくとよいでしょう。
「清算的財産分与」「扶養的財産分与」「慰謝料的財産分与」という財産分与の3つの性質について解説します。

(1)清算的財産分与

清算的財産分与とは、夫婦での共同生活中に形成された、夫婦の共有財産の清算を目的とする財産分与のことです。
これが、財産分与の中心となる性質になります。
当事者の主張が異なり、争いが生じるのも、この清算的財産分与が問題となる場面であることが多いです。

(2)扶養的財産分与

夫婦共有財産がない場合には、清算的財産分与の対象となる財産がありません。
そのような場合に離婚すると、経済力の乏しい配偶者は、離婚後の生活に困ってしまいます。
扶養的財産分与とは、離婚をした際に夫婦の片方が生活に困窮してしまうなどの事情がある場合に、その生計を補助するという扶養目的の財産分与のことをいいます。

離婚後からある程度の収入を得る時点まで、収入を保障する目的で、定期的に支払うという内容で合意される場合が多いようです。
扶養的財産分与は補充的になされますので、すべてのケースで認められるものではありません。
ですので、仕事をしており離婚後も経済的な問題がなかったり、清算的財産分与で財産が分与されて離婚後もそれにより生計を維持することができたりするのであれば、基本的に扶養的財産分与は行われません。

(3)慰謝料的財産分与

慰謝料的財産分与とは、相手方の不貞行為などが原因で、離婚によって精神的苦痛を被る場合に、その精神的苦痛に対する慰謝料としての性質の財産分与のことをいいます。
離婚原因によっては(たとえばよくある「性格の不一致」)、相手方の行いにより精神的苦痛を被るとまではいえず、慰謝料は発生しません。

慰謝料は、財産分与とは別に請求して別途合意することもできますが、財産分与の中に慰謝料的性質も含めて請求することもできます。

財産分与の割合は2分の1が基本

清算的財産分与については、どれくらいの割合の分与を受けられるのでしょうか。
夫婦が共有財産を形成するにあたって、夫婦がそれぞれどれほど貢献したのか、その貢献度によって、分与割合を計算することになります。

通常の夫婦であれば、基本的に貢献度は平等とされますので、2分の1ずつ分けることになります(2分の1ルール)。具体的には、夫婦それぞれにプラスの財産とマイナスの財産がある場合、すべて合算・控除した額の2分の1が、財産分与の結果手元に残る金額ということになります。

例外的に、スポーツ選手など、個人的に特殊な技能等で高額な資産形成をおこなっていた場合には、2分の1のルールは適用されず、分与割合は異なってくるでしょう。
「離婚原因は不貞行為を行った相手にあるのだから、2分の1では納得がいかない、財産は多めに欲しい」と思われる方もいるかもしれません。
もちろん、夫婦間の話し合いにおいて、分与する側が自主的に多めに支払うことに同意することもあります。

しかし、話し合いがうまくいかなかった場合には、清算的財産分与においては、どちらに離婚原因があるかどうか、という点は考慮されません。
離婚原因のために離婚で精神的苦痛を被る点については、慰謝料的財産分与で考慮されるか、別途慰謝料請求で考慮されることになります。

財産分与の注意点

財産分与にあたり、何点か注意しなければならない点があります。
ここでは、財産分与の注意点について解説します。

(1)財産分与は離婚後2年以内に行う

最大の注意点は、財産分与の請求は離婚してから2年以内に行う必要があるという点です。
夫婦間で財産分与について協議しても解決できない場合、家庭裁判所に対して「協議に代わる処分」(審判)を請求することができるのですが、離婚から2年経過してしまうと、この請求ができなくなってしまいます(民法768条2項ただし書き)。

離婚後は生活が目まぐるしく変わることも多く、忙しく過ごしている間に、あっという間に2年が経過してしまうこともありますので、早め早めに行動するようにしましょう。

(2)なるべく離婚の際に財産分与の合意をする

財産分与の合意は離婚の際に同時にするとよいでしょう。
離婚後だと、相手方と連絡が取れなくなる可能性があります。
また、相手方が強く離婚を希望している場合には、財産分与の合意が成立する前に離婚に合意してしまうと、相手方は自分の希望通り離婚できたことに満足してしまい、財産分与について真摯に交渉に応じないことがあります。

財産分与よりも離婚を先行させると上記のリスクがありますので、財産分与の合意と離婚は、同時に行うとよいでしょう。

(3)財産分与の対象を確定するのは別居時

清算的財産分与では、夫婦の共有財産が対象となりますので、共有財産を確定する必要があります。
どの時点で確定するのかというと、別居時と解されています。
別居により、夫婦の協力関係は失われており、その後に形成された財産は夫婦の共有財産とはいえないと考えられるためです。ただし、公平の見地から、別居後の事情が考慮される可能性もあります。

共有財産の確定時期は、長期間別居した後に離婚となるケースで、一方が別居後に財産を形成している場合に問題になることがあります。別居(確定時期)がいつとされるかで、分与対象となる財産の範囲が異なり、分与額に大きな違いが生ずることがあるためです。
下図のように、婚姻期間は同じであっても別居期間が長いケースと短いケースでは、基本的に財産分与の対象となる財産の範囲が異なってくるので注意が必要です。

結婚後、離婚までの財産形成の時系列
1.別居から離婚までの期間が長い場合 → 同居期間が短く分与対象の財産が少ない

2.別居から離婚までの期間が短い場合 → 同居期間が長く分与対象の財産が多い

財産分与の対象となる財産:共有財産

清算的財産分与の対象となる財産は、婚姻中に夫婦が協力して形成した財産(共有財産)です。

名義別財産考え方
共有名義の財産共有財産として原則分与対象
どちらに属するか不明な財産共有財産と推定される(民法762条2項)
単独名義の財産夫婦が協力して形成した財産という実質があれば分与対象となる

なお、扶養的・慰謝料的財産分与の対象は、婚姻中に協力して形成した財産には限られず、夫婦一方が婚姻前に取得して得た個人所有の財産であっても構いません。
ここでは、清算的財産分与の対象となる財産について説明します。

(1)現金・預貯金・車両・有価証券など

婚姻中に形成されたものであれば、共有財産として当然財産分与の対象になります。

(2)退職金

【支給済みのケース】
すでに支給されている退職金については、夫婦としての共同生活を営んでいた際の貢献が反映されているものとして、清算的財産分与の対象となると考えられています。
退職金全額が対象にはならないことに注意が必要です。
退職金算定の対象となっている勤務期間のうち、夫婦の婚姻期間に対応する分を算出して、その婚姻期間対応分の退職金額が、財産分与の対象となります。

【支給されていないケース】
まだ退職金が支給されていない場合には、将来支払われる退職金が財産分与の対象となるのか、という問題があります。
ですが、このような場合でも、将来退職金を受領できる可能性、退職時期などを考慮して、清算的財産分与の対象とする裁判例があります。

【支払い方法・時期】
退職金の財産分与の方法としては、一括の支払いが多いようです。
ですが、まだ退職金が支払われていない場合には、退職金を受け取ることを条件として、退職金の支給後にその一部を支払う形で財産分与することもあり、離婚時に受領できない場合があります。
離婚時に受領できる場合であっても、本来であれば、将来実際に支給されたあとに受け取れるものを、現時点で一括で受領できることは有利であるので、公平のために、現在の額に引き直したうえで(減額されたうえで)、分与されることが多いようです。

(3)生命保険や学資保険など

解約返戻金がある生命保険や学資保険は、別居時の返戻金相当額が分与の対象となります。

  1. 実際に解約したのであれば、受領した解約返戻金の2分の1を分与する
  2. 解約しないのであれば、契約名義人が他方に返戻金相当額の2分の1を分与する

ということになるでしょう。
学資保険についても、基本的には、夫婦が共有で形成した財産(貯蓄)という実質を有するので、財産分与の対象となります。

しかし、夫婦で、学資保険はこどもの教育費のために利用するものであって財産分与の対象としないと合意することもできますので、夫婦で話し合うとよいでしょう。
また、離婚後も学資保険を継続する場合には、契約名義人と親権者を一致させておいた方がよいので、一致しない場合には、離婚前に、保険会社に契約名義人の変更手続きについて問い合わせたうえで手続きを行うとよいでしょう。

(4)不動産

婚姻期間中に不動産を購入したのであれば、基本的に、名義にかかわらず、共有財産となります。

(4-1)住宅ローンが残っていない場合

住宅ローンが残っていない場合には、不動産の時価が分与の対象となる財産となります。
夫婦がそれぞれ不動産業者に査定を依頼し、その査定額の平均を基準とすることが多いです。
別居後に不動産を売却した場合には、売却額が基準となります。

(4-2)住宅ローンが残っていて、「不動産の時価>ローン残高」の場合

住宅ローンが残っていて、不動産の時価>ローン残高(アンダーローン)の場合には、次のような方法があります。
A.離婚の際に不動産を売却するときは、売却代金でローンを完済し、残額を分割する。
B.離婚後、不動産を一方が所有して住宅ローンも引き受けるときは、時価からローン残高を引いた額を基本に、現金で清算する(住宅の所有者となる側が、他方に支払う)。

売却してお釣りを分割する、というAの方法がシンプルで分かりやすい方法です。
ですが夫婦によっては、一方が不動産に住み続けたいという希望があることもあります。
そのような場合には、Bのように、不動産を維持することのできる方法もあります。
ローンが単独名義の場合は、通常、所有も単独名義です。

離婚後も、同じ名義人がそのまま不動産を所有して支払い続けるのであれば、財産分与は、現金で清算すればよいだけです。
しかし、離婚の際に、所有者と住宅ローンの名義人を変更したい場合には注意が必要です。不動産の所有者の変更や、ローン名義人(債務者)の変更が必要になる場合には、ローンを組んでいる金融機関の承諾を得ることが不可欠です。
住宅ローンを引き受ける側が、一人で支払える収入があると判断されれば、名義変更について承諾が得られる可能性があるでしょう。

事前に、金融機関との間で、不動産の所有者とローン名義人の名義変更が可能かどうか、ローン名義人の変更が可能な場合に必要となる書類などについて、よく話し合うようにしましょう。
また、不動産の所有者の変更には不動産登記が必要です。登記手続きには登録免許税や司法書士の費用が必要となりますので、この点も話し合いましょう。
通常、登記に要する費用は、新たに不動産の所有者となる側が負担します。

(4-3)住宅ローンが残っていて、「不動産の時価<ローン残高」の場合

住宅ローンは一般的に多額であり、オーバーローンの場合は、プラスの財産を考慮しても、全体として、財産が債務超過となることが多いでしょう。
この場合は、売却すると、残債が残ってしまいますので、この負担をどうするのかという問題があります。
具体的には、住宅ローンの名義人である夫が、残債の2分の1について、妻に対して負担させることができるか、という場面で問題になります。
結論として、裁判所や実務の考え方は、妻に負担させることについては消極的です。
ですが、妻が連帯保証人となっているケースも少なくありません。
連帯保証人となったままだと、離婚したとはいえ、金融機関に対する責任は以前のまま変わることはありません。

連帯保証人としての責任を免れるためには、金融機関と話し合って、連帯保証人から外れることについて同意してもらう必要がありますが、一般的に難しいとされています。

(5)年金

婚姻期間中に、夫婦の一方が納付した年金保険料に対応して将来受領できる年金については、夫婦で折半すべきと考えられています。
年金法には年金分割制度が定められており、婚姻期間に対応する厚生年金・共済年金の保険料納付記録の最大2分の1までを分割することができます。

分割制度には、3号分割と合意分割という二つの種類があります。
3号分割は、専業主婦(夫)や年収の少ない第3号被保険者に限り、2008年4月から離婚までの保険料納付記録について、配偶者との合意がなくても、2分の1を分割することができる制度です(3号分割)。
3号分割ができない場合(2008年3月以前も婚姻関係にある場合はその期間、夫婦とも会社員で収入がある場合など)には、当事者で話し合って合意割合を決めるか、調停の話し合いの中で割合を決めていくことになります。

年金分割の対象とならない公的年金や、個人型確定型拠出年金などの私的年金を分割するためには、上記のような年金分割制度が存在しないので、財産分与請求のなかで、分割を求めていくことになります。
ただし、請求期限は、原則離婚等した日の翌日から起算して2年以内ですので、早めに行うようにしましょう。

財産分与の対象とならない財産

財産分与の対象とならない財産について解説します。

(1)特有財産

財産分与の対象となる財産は、婚姻して共同生活をしていた期間に夫婦で形成した財産です。
したがって、婚姻前から有していた財産、婚姻中であっても夫婦の協力とは無関係に取得した財産は、財産分与の対象にはなりません(民法762条第1項)。
具体的には、家族・親族からの贈与や相続によって得た財産、別居後にそれぞれが取得した財産などは、特有財産とされ、財産分与の対象とはなりません。

婚姻期間中に不動産を購入した場合で、頭金を両親に出してもらった、というケースでは、その頭金は「贈与」として特有財産となりますので、注意しましょう。
4000万円の不動産を購入し、400万円を両親から贈与を受けて頭金とし、残額3600万円を住宅ローンで完済し、不動産の時価が3000万円に下がってしまったケースで説明します。
購入時の不動産の価格4000万円から、贈与分400万円を差し引いた3600万円が、夫婦が形成した財産です。

割合で考えると、90%が夫婦形成財産、10%が贈与で形成された財産です。
ですから、夫婦が財産形成に貢献した割合は、それぞれ、55%(贈与分含む)と45%になります。
現在の不動産の時価3000万円で計算すると、55%(1650万円)、45%(1350万円)が、財産分与の結果、それぞれが取得しうる財産となります。

(2)第三者名義の財産

子ども名義の財産が問題になることが多いようです。
子ども名義の預金については、子ども自身が働いて給与を貯金したり、お小遣いを貯金したりした場合には、子どもの財産として、財産分与の対象とはなりません。
しかし、親が出捐して、子どもの将来の教育資金などのためにした預金は、共有財産として財産分与の対象となると考えられます。

借金は財産分与の対象になる?

財産分与では、夫婦が婚姻して共同生活をしていた間に形成された財産が対象になりますので、夫婦生活を維持するために生じた債務も、当然考慮されます。
具体的には、生活費不足のための借り入れ、教育ローンや住宅ローンなどです。
ギャンブルや個人の遊興費のための借金は、夫婦生活を維持するために生じた債務とは言えませんので、考慮することはできません。

プラスの財産からマイナスの財産(借金)を差し引いて、計算します。
このように、財産分与の中で借金は考慮されますが、借金を考慮した結果、債務超過となる場合はどうなるのでしょうか。
裁判所や実務では、差し引いた結果として債務だけが残る場合、その債務を財産分与の対象とはしない扱いとなっています。

財産分与の決め方(手続き)

財産分与は、当事者間での話し合う方法か、家庭裁判所での調停・審判、離婚訴訟といった裁判所の手続きを利用する方法があります。

参考:財産分与|法務省

(1)当事者間の話し合いで決める

夫婦で話し合うことによって、財産分与について取り決めることができます。
夫婦で話し合うという方法は、費用が抑えられ、財産分与の方法も自由度が高いというメリットがあります。

例えば、夫個人名義の住宅があり、夫個人名義の住宅ローンの支払いは残っているが、時価が住宅ローンの残高以上ある場合(アンダーローンの場合)、妻としては、住宅は不要で売却後の残金を清算してほしい、と希望することがあります。
話し合いで、そのように財産分与の方法と金額を取り決めることはできますが、裁判所の調停や審判では、そのような方法を請求することはできません。

また、不動産について住宅ローンの名義変更を伴う場合、裁判所は住宅ローンの名義変更を命じることはできないため、夫婦で話し合って処理することが前提となります。
なお、話し合いで財産分与を取り決めた場合には、公正証書を作成するとよいでしょう。
公正証書は、取り決めの客観的な証拠となりますので、後々分与の割合や方法についての争いが再燃することを予防することができます。

公証役場に連絡し、こういう内容の公正証書を作成したいと話すと、公証人が、基本となる文面を作成してくれます。しかし、公証人は、中立な立場で法的に有効な書面を作成するのが職務ですので、どちらか一方に有利な条項をアドバイスしたりする立場にはありません。
特に、財産分与において不動産についての取り決めが必要であるなど、高額で複雑な処理が予定されている場合には、弁護士などの専門家に一度相談してみるとよいでしょう。

(2)家庭裁判所の調停・審判などで決める

当事者間で話し合いをしても財産分与について取り決めができない場合には、離婚調停、離婚審判、離婚訴訟など裁判所の手続きを利用することを検討します。
裁判所を利用した手続きでは、法律や実務の専門知識が必要となりますので、弁護士に相談したり、依頼したりすることを検討するといいかもしれません。

デメリットとしては、手続き利用の費用(裁判所費用、弁護士費用)がかかりますが、自分で対応するのであれば裁判所に対する費用だけなので、低額に抑えられるでしょう。
また、相手方が財産の開示に協力的でないなどの場合(預金口座の情報を隠したり、退職金額を明らかにしなかったりなど)には、調停・審判を申立てて、裁判所に間に入ってもらった方が、話し合いが進むケースがあります。

裁判所が、相手方に財産を開示するよう説得してくれますし、説得に応じないような場合には、調査嘱託の申立を行い、裁判所から金融機関や相手方の勤務先に対して、必要な情報を開示するよう調査してもらうこともできるからです。

参考:財産分与請求調停|裁判所 – Courts in Japan
参考:「財産分与請求調停・審判」の手続|裁判所 – Courts in Japan

実際に財産分与ではどのくらいの額がもらえるの?

では実際に、財産分与はどれくらいの金額になるのでしょうか。
『平成30年度:「離婚」の調停成立又は調停に代わる審判事件数-財産分与の支払額別婚姻期間別-全家庭裁判所』を参照して、一般的に、どの程度の財産分与が受けられるのかを紹介します。

財産分与の取り決めのあった調停・審判の総数7187件のうち、400万円以下の取り決めがあったのは3477件で全体の約48%です。約半数の財産分与の額は、400万円以下となっていることが分かります。
婚姻期間も考慮すると、半年以内の婚姻期間では、算定不能を除くと約76%が200万円以下です。
婚姻期間が長期になるほど、財産分与額は高額になる傾向があるようです。

参考:平成30年度:「離婚」の調停成立又は調停に代わる審判事件数-財産分与の支払額別婚姻期間別-全家庭裁判所|裁判所 – Courts in Japan

財産分与で得た財産は課税対象になるの?

原則として、財産分与を受ける方に贈与税はかかりません。
ただし、分与された財産の額が、夫婦の協力によって得た資産の額及びその他の事情を考慮しても、多過ぎるような場合には、贈与税がかかります。
そのほか、不動産の分与を受けた場合には、登録免許税、固定資産税等がかかります。

【まとめ】財産分与に個人で対応することが難しいと感じたら弁護士にご相談を

本記事をまとめると次のようになります。

  • 財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産を、離婚に伴って分与する制度のこと
  • 財産分与には、「清算的財産分与」「扶養的財産分与」「慰謝料的財産分与」の3つの性質がある。財産分与の主な性質は、「清算的財産分与」
  • 清算的財産分与の場合、財産分与の割合は、夫婦の共有財産の2分の1が原則
  • 財産分与にあたっては、離婚から2年以内に請求すること、なるべく離婚時に財産分与の合意をすること、共有財産の確定時期は別居時であること、の3点に注意をする
  • 清算的財産分与の対象となる財産は、婚姻中に夫婦が協力して形成した財産(共有財産)となる
  • 夫婦の共同生活により生じた借金(債務)も財産分与の対象となる。ただし、現在の裁判所では、債務超過となる場合には、債務は財産分与の対象とはしない取り扱いをしている

財産分与とは、婚姻生活中に夫婦で協力して築き上げた財産を、離婚の際にそれぞれの貢献度に応じて分配する制度です。
財産分与の割合は2分の1が基本ですが(2分の1ルール)、離婚の際に、夫婦でしっかりと話し合って、対象となる財産を確定し、どのように分与するか、現金で清算するのであればいつまでに支払うかなど、具体的な事項について取り決めを行うようにしましょう。
財産分与の話し合いができたとしても、公正証書を作成する際にはある程度の法的知識が必要となります。

また、話し合いが決裂して、調停や審判、訴訟の手続きをとる場合には、実務の運用や法的知識が必要となりますし、複数ある法的手段のうち、どの手段をとるべきかの判断も専門家でなければ難しいことがあります。
自分では対応が難しいな、と感じたら、離婚を取り扱う弁護士に相談するとよいかもしれません。

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弁護士 林 頼信

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

※¹:2024年3月時点。拠点数は、弁護士法人アディーレ法律事務所と弁護士法人AdIre法律事務所の合計です。

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