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民法709条とは?損害賠償請求について具体的事例でくわしく解説

作成日:更新日:
リーガライフラボ

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

「民法709条について分かりやすく教えて!」

民法709条は、不法行為に基づく損害賠償請求権を定めています。
社会にはさまざまな人がおり、私たちは悪意であれ不注意であれ時に傷つけ合います。
いじめ、浮気・不倫、DV・暴言、交通事故――。
被ってしまった損害を金銭で賠償してほしい。
加害者に対して損害賠償請求をするための法的根拠となるのが、民法709条、不法行為に基づく損害賠償請求権なのです。

本記事では、

  • 民法709条の内容
  • 不法行為に基づく損害賠償請求権の5つの条件
  • 不法行為によって賠償請求できる事例

について、弁護士が解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 池田 貴之

法政大学、及び学習院大学法科大学院卒。アディーレ法律事務所では、家事事件ドメイン(現:慰謝料請求部)にて、不貞の慰謝料請求、離婚、貞操権侵害その他の男女トラブルを一貫して担当。その後、慰謝料請求部門の統括者として広く男女問題に携わっており、日々ご依頼者様のお気持ちに寄り添えるよう心掛けている。第一東京弁護士会所属。

民法709条の内容

民法709条では、不法行為について、次のように規定されています。

民法709条(不法行為による損害賠償請求)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

損害を生じさせた者を罰するのではなく、被害者を救済し、損害を公平に分担するというのが民法709条の趣旨です。
この条文の内容について、くわしくみていきましょう。

(1)不法行為における故意又は過失とは?

民法709条で損害賠償を請求できるのは、相手に故意または過失がある場合に限られます。

  • 故意…自分の行いによって他人に損害を与えると知りながらその行いをすること
  • 過失…損害が発生すると予想しそれを回避することができたのに避けなかったこと

刑法と異なり、民法では故意と過失は明確に区分されていません。
いずれにしても相手の何らかの落ち度で損害を被った場合には、損害賠償を請求することができます。
逆にいえば、損害が不可抗力によって発生してしまった場合には損害賠償を求めることはできません(過失責任の原則)。
ただし、土地工作物責任(民法717条)における工作物の所有者など過失がなくても責任が生じることはあります。

(2)他人の権利又は法律上保護される利益とは?

不法行為による損害賠償請求権が発生するのは、財産権やプライバシー権のように法律上明確な権利を侵害された場合に限られません。
騒音に悩まされずに平穏に生活できる利益など、法律上保護に値する利益を侵害された場合にも不法行為は成立します。
実務においては、「他人の権利又は法律上保護される利益」かどうかではなく、主にその行為が「違法」かどうかが争われています。
具体的には侵害された利益の重大性と侵害行為の悪質さを考慮して違法かどうかを判断します。
命を奪われたときには些細な不注意であっても違法と判断される可能性が高くなります。

不法行為に基づく損害賠償請求権が発生する5つの条件

不法行為に基づく損害賠償請求権が発生する条件は、次の5つです。

  1. 加害者に責任能力があること
  2. 加害者に故意・過失があること
  3. 加害行為に違法性があること
  4. 被害者に損害が発生すること
  5. 加害行為に損害発生との間に因果関係があること

では、これらの要件をくわしくみていきましょう。

(1)加害者に責任能力があること

民法712条では、責任能力に関して、次のように規定されています。

民法712条(責任能力)
未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。

幼い子どもたちは、自分たちの行動が悪いかどうかを判断することができません。
保育園で他の子どもが遊んでいる道具を無理に奪ってしまう子どももいるでしょう。
そんなとき相手に精神的苦痛を負わせたからといって、子どもが慰謝料を払う話にはなりません。
一般的に12歳にもなれば良い・悪いの判断がつくので、責任能力があるとされます。
なお、子どもに責任がない場合には、子どもの親など子どもを監督する人に損害賠償を請求できることがあります(民法714条)。

(2)加害者に故意・過失があること

これまでにご説明したように、損害賠償請求をするには加害者の故意・過失が必要です。
民法709条では、被害者が加害者の故意・過失を証明しなければなりません。

(3)加害行為に違法性があること

損害賠償請求が認められるためには、加害行為が違法でなければなりません。
正当行為、正当防衛、緊急避難といった違法性阻却(そきゃく)事由がないことも必要です。
たとえば、相手の体を何の理由もなく刃物で切り付けることは違法です。
しかし、手術中に医師がメスで切ることは、正当行為として適法です。

(4)被害者に損害が発生すること

損害とは、本来の状況から不法行為によって生じた状況の金銭的差額です。
損害は、財産的損害と精神的損害の2種類に分類されます。
たとえば、次のようなケースを想定してみましょう。
飼い犬の散歩中リードを離したら、犬に追いかけられた通行者が手に持っていたカメラを落とした。その結果、カメラのレンズが壊れ、10万円で修理せざるを得なくなった。
もし飼い主がリードを離さなければ、カメラが壊れることはありませんでした。
その状態と実際に生じた状態を比較すると、通行人に10万円の財産的損害が生じています。

(5)加害行為に損害発生との間に因果関係があること

損害賠償が認められるのは、加害行為と因果関係のある損害だけです。
社会ではさまざまなことが起きており、当然ながらそのすべてに自分の行為が影響を及ぼすわけではありません。
損害の公平な分担という不法行為の趣旨からして、言いがかりとしかいえないような損害賠償請求を排除するため、因果関係が必要になっています。
因果関係が認められるためには、少なくとも「あれなければこれなし」といえることが必要です。
その上で、損害の公平な分担、被害者の救済という観点から、因果関係を認めることが社会的にみて相当と言える場合に限り、因果関係が認められます。

不法行為によって賠償請求できる事例

不法行為をよりイメージしやすくなるように、具体的なケースを想定してみましょう。

(1)浮気や不倫による被害

結婚5年目。仲睦まじく暮らしていた夫婦の隣の家に美しい女性が引っ越してきました。それからまもなく夫は、隣の家の女性と肉体関係を持つようになり、やがて夫婦は離婚しました。
不倫をした女性は男性が既婚者であること、また、浮気をするまで夫婦の婚姻生活に亀裂が生じていないこと(婚姻生活が破綻していないこと)を知っていました。
それにもかかわらず、肉体関係を持ち夫婦を離婚させ、妻である女性に精神的苦痛という損害を生じさせました。
この場合、夫と不倫相手は、妻に対して共同で不法行為をしたといえます。
そのため、妻は、夫と不倫相手に対して、損害賠償請求をすることができます。

(2)配偶者暴力(DV)による被害

妻が洗濯物を畳んでいると、夫が「畳み方が汚い」と怒鳴り声をあげ、傍にあった椅子で妻を頭上から殴りつけました。その後、妻はその怪我の治療のため3週間通院しました。
「家庭に法は入らず」ということわざがあるとはいえ、これはれっきとした犯罪です。
夫は、故意で、妻の身体を傷つけ、3週間の通院費などの損害を生じさせましたので、損害賠償請求は認められます。
出来る限り証拠を集めたうえで、警察に相談するのが良いでしょう。

(3)交通事故による被害

横断歩道を歩いていたところ、自動車に衝突され、1ヶ月入院した。
交通事故の被害者は、加害者に対して、生じた損害を損害賠償請求できます。

【まとめ】不法行為による損害賠償請求をするためには加害者の故意過失など複数の条件がある

本記事をまとめると次のようになります。

  • 民法709条は、不法行為に基づく損害賠償請求権について規定している
  • 不法行為に基づく損害賠償請求権が発生する条件は次の5つ
    • 加害者に責任能力があること
    • 加害者に故意・過失があること
    • 加害行為に違法性があること
    • 被害者に損害が発生すること
    • 加害行為に損害発生との間に因果関係があること

他人の不法行為によって損害を被った場合には、弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士に相談すれば、必要な証拠の収集・精査をして、相手方に損害賠償を請求すべきかどうか必要なアドバイスをしてくれるでしょう。

この記事の監修弁護士
弁護士 池田 貴之

法政大学、及び学習院大学法科大学院卒。アディーレ法律事務所では、家事事件ドメイン(現:慰謝料請求部)にて、不貞の慰謝料請求、離婚、貞操権侵害その他の男女トラブルを一貫して担当。その後、慰謝料請求部門の統括者として広く男女問題に携わっており、日々ご依頼者様のお気持ちに寄り添えるよう心掛けている。第一東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

※¹:2024年7月時点。

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