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離婚時にオーバーローンの住宅はどうなる?財産分与とそのポイント

作成日:更新日:
kiriu_sakura

「オーバーローン」とは、住宅の時価よりもローン残高の方が高くなっていることをいいます。

例えば、都内のタワーマンションなどでもない限り、不動産価格は使用すればするほど下がっていきますので、「オーバーローン」になっていることはよくあることといえます。

オーバーローンの場合、住宅を売っても負債が残ってしまうため、どのように財産分与をすればよいのか難しいところがあります。

オーバーローンの住宅を財産分与する場合は、住宅にこれからも住み続けたいのか、処分してもよいのかをしっかりと話し合う必要があります。

この記事を読むことで、オーバーローンの住宅の財産分与の方法について知ることができます。

この記事では、

  • 離婚の際の財産分与とは
  • 住宅ローンのオーバーローンとは
  • 離婚でオーバーローンの家の財産分与する方法
  • 住宅ローンが残る家を財産分与する際のポイント

について、弁護士が詳しく説明します。

この記事の監修弁護士
弁護士 林 頼信

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。2016年弁護士登録。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。現在、東京弁護士会所属。

離婚の際の財産分与とは

財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産を、離婚に伴って分与する制度のことをいいます(民法768条1項)。

財産分与制度により、夫婦の一方が他方に対して財産の分与を請求することができますので、財産分与請求権といったりもします。

(1)財産分与の性質

財産分与には、3つの性質があるといわれています。

財産分与をしっかり理解したうえで、損をしない財産分与をするためには、3つの性格について知っておくとよいでしょう。

「清算的財産分与」「扶養的財産分与」「慰謝料的財産分与」という財産分与の3つの性質について解説します。

清算的財産分与清算的財産分与とは、夫婦での共同生活中に形成された、夫婦の共有財産の清算を目的とする財産分与のことです。
当事者の主張が異なり、争いが生じるのも、この清算的財産分与が問題となる場面であることが多いといえます。
扶養的財産分与扶養的財産分与とは、離婚をした際に夫婦の片方が生活に困窮してしまうなどの事情がある場合に、その生計を補助するという扶養目的の財産分与のことをいいます。
離婚後からある程度の収入を得る時点まで、収入を保障する目的で、定期的に支払うという内容で合意される場合が多いようです。
扶養的財産分与は補充的になされますので、すべてのケースで認められるものではありません。
慰謝料的財産分与慰謝料的財産分与とは、相手方の不貞行為などが原因で、離婚によって精神的苦痛を被る場合に、その精神的苦痛に対する慰謝料としての性質の財産分与のことをいいます。
慰謝料は、財産分与とは別に請求して別途合意することもできますが、財産分与の中に慰謝料的性質も含めて請求することもできます。

(2)財産分与の対象となる財産

清算的財産分与の対象となる財産は、婚姻中に夫婦が協力して形成した財産(共有財産)です。婚姻前に取得した個人所有の財産(特有財産)は財産分与の対象にはあたりません。

共有財産は、共有名義の財産に限られるわけではありません。
夫婦一方の単独名義の財産であっても、夫婦が協力して形成した財産という実質があれば、財産分与の対象となると考えられています。

名義別財産考え方
共有名義の財産共有財産として、原則分与対象
どちらに属するか不明な財産共有財産と推定される(民法762条2項)
単独名義の財産夫婦が協力して形成した財産という実質があれば分与対象となる

なお、扶養的・慰謝料的財産分与の対象は、婚姻中に協力して形成した財産には限られず、夫婦一方が婚姻前に取得して得た個人所有の財産であっても構いません。

(3)財産分与の割合

清算的財産分与については、どれくらいの割合の分与を受けられるのでしょうか。
夫婦が共有財産を形成するにあたって、夫婦がそれぞれどれほど貢献したのか、その貢献度によって、分与割合を計算することになります。

通常の夫婦であれば、仕事の有無にかかわらず基本的に貢献度は平等とされますので、2分の1ずつ分けることになります(2分の1ルール)。
具体的には、夫婦それぞれにプラスの財産とマイナスの財産がある場合、すべて合算・控除した額の2分の1が、財産分与の結果手元に残る金額ということになります。

「離婚原因は不貞行為を行った相手にあるのだから、2分の1では納得がいかない、財産は多めに欲しい」と思われる方もいるかもしれません。

もちろん、夫婦間の話し合いにおいて、分与する側が自主的に多めに支払うことに同意することもあります。
しかし、話し合いがうまくいかなかった場合には、清算的財産分与においては、どちらに離婚原因があるかどうか、という点は考慮されませんので、法的に2分の1以上請求することは困難です。

離婚原因のために離婚で精神的苦痛を被る点については、慰謝料的財産分与で考慮されるか、別途慰謝料請求で考慮されることになります。

(4)財産分与は離婚後2年以内に行う

財産分与については、離婚の際に話し合って決着をつけ、離婚と同時に解決する方も少なくありません。

一方で、まず離婚してしまって、その後に財産分与の話し合いをするケースもあります。
離婚を先行させる場合、財産分与請求は離婚してから2年以内に行う必要がありますので注意が必要です。

夫婦間で財産分与について協議しても解決できない場合、家庭裁判所に対して「協議に代わる処分」(審判)を請求することができるのですが、2年経過してしまうと、この請求ができなくなってしまうためです(民法768条2項但し書き)。

当事者で話し合ったり、調停を申立てて調停の場で話し合ったりするのは、このような期間制限はありません。

しかし、話し合いや調停で取り決めができない場合には、裁判所に審判してもらわなければ財産分与はなされないのですが、調停の申立て時までに2年が経過していると、審判をすることができません。
話し合いがうまくいくとは限りませんので、審判が可能な2年以内に財産分与の調停を申立てるべきといえるでしょう。

離婚後は生活が目まぐるしく変わることも多く、忙しく過ごしている間に、あっという間に2年が経過してしまうこともありますので、早め早めに行動するようにしましょう。

住宅ローンのオーバーローンとは

住宅ローンが残っている場合、住宅の現在価値(※)よりも住宅ローンの残額、負の財産(借金)の方が大きいということがあります(不動産の時価<ローン残高の場合)。

そのことを住宅ローンの「オーバーローン」といいます。

購入時に住宅価格に加えて諸費用(例えば、仲介手数料など)込みの額で借入した場合や住宅の資産価値が低下した場合に、住宅ローンの残債が住宅の時価を下回ってしまう「オーバーローン」という状態になります。

このような場合、売却しても売却代金でローンの残債を一括返済できないため、売却自体が困難であるケースも多いといえます。

残債について、ローンの貸し付けを受けている金融機関と話し合って分割弁済としてもらえることもあるようですが、話し合いの結果ですので、分割弁済が認められるとは限りません。

住宅ローンがアンダーローンの場合の財産分与
不動産の時価>ローン残高(アンダーローン)の場合には、次のような財産分与の方法が考えられます。
(A)離婚の際に不動産を売却するときは、売却代金でローンを完済し、残額を財産分与する。
(B)離婚後、不動産を一方が所有して住宅ローンも引き受けるときは、時価からローン残高を引いた額を基本に、現金で清算する(住宅の所有者となる側が、他方に支払う)。

夫名義の住宅を妻が譲り受ける場合の財産分与

夫単独名義のマイホームであっても、婚姻(同居)期間中に保有したもので、夫婦共有で形成した財産という実質があれば、共有財産として財産分与の対象となります。

したがって、話し合いにより夫名義のマイホームの財産分与を受けることは可能です。

(1)夫がローンの残債を返済する場合(ローン名義人は夫のまま)

例えば、離婚を考える妻の中には、夫個人名義の住宅で、夫がローンの残債を返済する形で、そのまま継続して居住したいと考える方もいます。

子どもがおり、離婚によって急に生活を変えることが難しいようなケースで、このような希望は少なくありません。

しかしながら、このような状態が一旦実現したとしても、継続して居住できるかどうかは不明で、立ち退かなければならないリスクがありますので説明します。

(1-1)住宅ローンを夫名義のままにして家に住み続けることは可能

離婚後も、話し合ったうえで、以前居住していた、元夫所有の家に住み続けることは可能です。

法律上は、元夫と賃貸借契約を締結し、賃貸借契約に基づいて住むか、使用貸借(無償で借りる、その代わり養育費を減額するなど)により住むかということになります。

しかし、元夫が住居の所有者ですので、居住している自分の許可なく、夫が第三者に住居を売却されてしまうことがあります。

(1-2)元夫が住宅ローンを支払わなければ強制執行されてしまう可能性がある

元夫が住宅ローンの支払いを滞らせた場合、夫が任意に売却しないかぎり、ローンを貸し付けた金融機関などに強制執行され、住居は競売にかけられてしまうでしょう。

強制執行の手続きが始まっても、すぐに立ち退く必要はありませんが、住居が競売にかけられ新所有者が決まってしまうと、最終的には立ち退かなければならない可能性があります。

(1-3)住宅ローン控除が使えない

住宅ローンは、自分がその住宅に住むことを条件として、低利・長期の返済が認められていることが多いようです。
したがって、夫名義の住宅ローンで、夫がその住宅から退去するとなると、その住宅ローンの契約に違反することになります。

また、住宅ローンは控除(減税)制度がありますが、この控除制度も、住宅ローンのかかる住居に居住していることが条件の一つとなっていますので、退去すると控除制度を受けることはできなくなります。
したがって、事前に夫及び金融機関とよく話し合う必要があります。

(2)妻がローンの残債を返済する場合

妻が住宅に住むことを希望していて、妻がローンの返済を行う場合には、住居の名義人とローン名義人を妻に変更するということも可能です。

この場合、妻が新たにローンを借り換えるということになりますが、妻に経済力が十分にない場合、ローン審査が通らないこともあるので注意が必要です。

なお、ローン名義人を夫のままにして、妻が代わりに支払う問うことも可能です。

夫名義の家に夫が住む場合の財産分与

住宅の名義人かつローン名義人夫がそのまま住宅に住むことになるので、何か手続きを必要とすることはありません。

もっとも、妻や妻の親族が住宅ローンの保証人になっていないかどうかを確認する必要があります。

離婚したとしても、住宅ローンの保証人の地位は変わりませんので、もし保証人となっていれば、金融機関と話し合って保証人を外してもらったり、別の保証人を準備したりする必要があります。

金融機関は、保証人の変更に応じる義務はなく、一般的に簡単に保証人の変更を認めることはないと言われていますが、早めに話し合うようにしましょう。

共有名義の場合の財産分与とペアローン

夫婦共有名義のマイホームがある場合、夫婦一方が離婚後も継続して居住することを希望するときには、退去する側から居住継続する側に対して、マイホームの持ち分を移転して単独所有とすることが望ましいです。
共有名義のままだと、退去した側が自分の持ち分を第三者に売却したりすることもできるためです。

また、夫婦共有名義の家の住宅ローンは、夫婦で連帯債務(ペアローン)としていることも多いので、退去する側の住宅ローンについても、居住継続する側が引き取るような形で住宅ローンを借り換えたりする必要があります。

ただし、居住継続する側が残債全額について住宅ローンを組めるかどうかは、単独での収入額や信用情報等によって異なりますので、住宅ローンの借り換えが可能かどうかは、金融機関と話し合ってみないとわかりません。

一方の持ち分を譲り受けたい場合には、早めに金融機関に相談するとよいでしょう。

※リースバック
例えば、共有名義である住宅に妻が居住を希望しているが、金融機関に相談した結果、妻では住宅ローンの単独名義に借り換えすることができないといわれた場合、「リースバック」という方法を利用できる場合があります。
これは、住宅に居住したまま、不動産会社に当該住宅を売却し、買主の不動産会社と居住している妻が賃貸契約を締結するという方法です。

住宅を売却して、住宅ローンの一部を弁済する

自宅を売却した上で、住宅ローンを一部弁済し、残りの残債を返済するという方法もあります。
夫婦双方に住宅に住み続けたいという希望がない場合には、住宅を売却して、少しでもローンを返済するという方法があります(※)。
そうすることで、離婚時に共有財産をすべてさっぱり処分することができます。

もっとも、負債は財産分与に対象とならないため、残ったローンは名義人が負うことになるという点に注意が必要でしょう。

なお、金融機関との関係では、残ったローンの債務者は名義人ということになりますが、夫婦間で残ったローンを分担することは可能ですので、夫婦間で話し合って分担割合を決めることもできます。

※ 住宅を売るにも、ローンを借入れている銀行の承諾が必要となりますので、事前に銀行との相談が必要となります。

住宅ローンが残る家を財産分与する際のポイント

住宅ローンが残る家を財産分与する際のポイントは3つです。

  1. 住宅ローンが残る家を財産分与するか売却するか話し合う
  2. 住宅ローンの契約内容や残額は必ず金融機関に確認する
  3. 財産分与に伴う住宅ローンの名義人や保証人変更は早めに相談する

詳しく説明します。

(1)住宅ローンが残る家を財産分与するか売却するか話し合う

住宅ローンが残る家については、売却するのか一方が所有するのかを話し合います。

売却するのか一方が所有するかで財産分与の方法が大きく変わってきます。
どちらにしろ、金融機関への確認が必要となりますので、早めに方針を決める必要があります。

事前によく話し合うようにしましょう。

(2)住宅ローンの契約内容や残額は必ず金融機関に確認する

正確に財産分与額を計算するためにも、住宅ローンの残額については金融機関に確認するようにします。

一方が住宅を所有し、自分が住宅から退去する場合には、自分の持ち分がないこと、ローン名義人や保証人となっていないことも、ローンの契約書を見て確認するようにしましょう。

(3)財産分与に伴う住宅ローンの名義人や保証人変更は早めに相談する

財産分与に伴い、住宅ローンの名義人変更(借り換え)や保証人の変更などを希望する場合には、早めに金融機関に相談するようにしましょう。

借り換えや保証人の変更が可能だとしても、必要な書類の準備や手続き自体に時間がかかることがあります。

【まとめ】オーバーローンの財産分与は、売却するのか一方が所有するかで大きく変わる!どちらにしても金融機関への確認が必要!

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産を、離婚に伴って分与する制度のこと。
  • 清算的財産分与の対象となる財産は、婚姻中に夫婦が協力して形成した財産(実質的共有財産)。
  • 財産分与は、通常の夫婦であれば、2分の1ずつ分ける。
  • 離婚を先行させる場合、財産分与の調停の申立ては離婚してから2年以内に行う必要。
  • 不動産の時価<ローン残高の状態を「オーバーローン」という。
  • 財産分与の方法まとめ
夫名義の住宅を妻が譲り受ける場合の財産分与夫がローンの残債を返済する場合(ローン名義人は夫のまま)継続して居住できるかどうかは不明で、立ち退かなければならないリスクがある
妻がローンの残債を返済する場合妻が新たにローンを借り換えるということになりますが、妻に経済力が十分にない場合、ローン審査が通らないこともあるので注意が必要(なお、ローン名義人を夫のままにして、妻が代わりに支払うということも可能)
夫名義の家に夫が住む場合の財産分与住宅の名義人かつローン名義人夫がそのまま住宅に住むことになるので、何か手続きを必要とすることはありません。もっとも、妻や妻の親族が住宅ローンの保証人になっていないかどうかを確認する必要がある。
共有名義の場合の財産分与退去する側から居住継続する側に対して、マイホームの持ち分を移転して単独所有とすることが望ましい。
夫婦共有名義の家の住宅ローンは、夫婦で連帯債務(ペアローン)としていることも多いので、退去する側の住宅ローンについても、居住継続する側が引き取るような形で住宅ローンを借り換えたりする必要がある。
住宅を売却して、住宅ローンの一部を弁済する負債は財産分与に対象とならないため、残ったローンは名義人が負うことになるという点に注意。金融機関との関係では、残ったローンの債務者は名義人ということになりますが、夫婦間で残ったローンを分担することは可能ですので、夫婦間で話し合って分担割合を決めることもできる。
住宅を売るにも、ローンを借入れている銀行の承諾が必要となりますので、事前に銀行との相談が必要。
  • 住宅ローンが残る家を財産分与する際のポイント
  1. 住宅ローンが残る家を財産分与するか売却するか話し合う
  2. 住宅ローンの契約内容や残額は必ず金融機関に確認する
  3. 財産分与に伴う住宅ローンの名義人や保証人変更は早めに相談する

住宅ローンの残る不動産の処理は金融機関との契約関係に縛られる部分があることを理解する必要があります。

夫婦間及び金融機関との話し合いで解決できるのが一番いいのですが、夫婦間で離婚や財産分与などの話し合いがうまくいかない、直接話し合うこと自体がストレスで難しいなどという場合には、離婚を扱う弁護士などの専門家に相談してみることをおすすめします。

この記事の監修弁護士
弁護士 林 頼信

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。2016年弁護士登録。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。現在、東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

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