「残業代請求を専門家に依頼しようと考えている。検索したら弁護士と司法書士が出てきたけれど、どちらに頼むのがいいのかな?」
残業代請求を司法書士に依頼することは、できないわけではありません。
しかし、残業代請求を司法書士に依頼することには、さまざまな制約やデメリットもあります。残業代請求は、そのような制約やデメリットの少ない弁護士に依頼するべきです。
この記事では、次のことについて弁護士が解説します。
- 司法書士に残業代請求を頼むことは可能か
- 残業代請求で司法書士にはできない3つのこと
- 司法書士の費用面のリスク
- 初めから弁護士に依頼するメリット
中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。
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司法書士に残業代請求を頼むことは可能?
司法書士に残業代請求を頼むことはできるのかな?
司法書士のほうが安く頼めるみたいだから、できれば安い司法書士に頼みたいという気持ちもあるけれど……?
司法書士に残業代請求を依頼するにあたっては、さまざまな制約があります。
依頼する前にそのことを知っておきましょう。
司法書士の中でも残業代請求を扱えるのは、「認定司法書士」という限られた司法書士だけです。
また、たとえ認定司法書士であったとしても、扱うことができるのは請求額が140万円以下の場合に限られます。
このことについてご説明します。
(1)残業代請求を扱えるのは認定司法書士のみ
残業代請求を扱えるのは、 「認定司法書士」という限られた司法書士だけです。「認定司法書士」とは、特別な研修や試験を経て、一定の紛争に限って当事者の代理人となることができる特別な司法書士のことです。
そもそも、認定司法書士ではない一般の司法書士は一般的には紛争について当事者の代理人となることができません。
司法書士は、不動産などの登記手続きの代行を行うことをメインの職責とする資格です。通常の司法書士は、紛争について当事者の代理人として活動するための資格もなく、経験も積んでいないのが一般的です。
司法書士は、特別な研修や試験を経て認定司法書士とならなければ、一定の紛争について当事者の代理人となることはできないのです。
(2)認定司法書士でも扱えるのは請求額140万円以下の場合のみ
依頼を検討している司法書士は、どうやら認定司法書士みたいだ。
認定司法書士だから、どんな残業代請求でも扱ってくれるってことだよね?
いいえ、認定司法書士だからといって、どんな残業代請求でも扱ってくれるわけではありません。
認定司法書士には、「ここまでのトラブルしか扱うことができない」という限界があります。
認定司法書士であったとしても、扱えるのは請求額が140万円以下のトラブルに限られます。つまり、残業代請求事件の場合には、請求する残業代の額が140万円を超えるのであれば、認定司法書士はあなたの代理人となって請求することができないということです。
請求額が140万円を超える残業代請求について、あなたの代理人となることができるのは、弁護士だけです。
残業代請求で司法書士にはできない3つのこと
140万円を超える残業代請求は認定司法書士でもできないということはよく分かった。
司法書士には、できないことが結構あるんですね。
ほかにも司法書士にはできないことがありますよ。
司法書士にはできないことを確認しておきましょう。
司法書士にはできないこととして、次の3つのものがあります。
- 140万円を超える請求ができない
- 労働審判の代理人になれない
- 不当解雇を争う場合に対応できない
これらについてご説明します。
(1)140万円を超える請求ができない
司法書士(認定司法書士)は、先ほどもご説明したとおり、140万円を超える請求ができません。
請求額が140万円を超える場合には、弁護士だけがあなたの代理人となれます。
裁判の代理人となるのはできないとしても、会社との交渉くらいはできないの?
裁判外で会社と交渉することもできません!
残業代請求をする場合、請求額が140万円を超えることは決して珍しいことではありません。また、残業代を計算してみなければ、請求額が140万円を超えるかは分かりません。
残業代計算を自分ですることは、なかなか難しいことです。司法書士に残業代計算を依頼して、結果的に請求額が140万円を超えるから司法書士には頼めないとなると、手間と時間を浪費してしまうことになりますよね。
残業代計算も含めて、最初から弁護士に依頼すれば、不要な手間が省けるかもしれませんよ。
請求できる残業代の額をご自身である程度把握しておきたいということもあるかもしれません。そんなあなたのために、「残業代メーター」という残業代の概算を計算できるウェブサイトがあります。
※「残業代メーター」はあくまでも簡易的な計算サイトなので、実際の請求額と異なる可能性があります。
(2)労働審判の代理人になれない
どうやら自分が請求できる残業代の額は、数十万円程度みたいだ。
140万円を超えることはなさそう。
それなら、認定司法書士に依頼してもかまわないよね?
たしかに、数十万円という請求額であれば、認定司法書士もあなたの代理人となって請求をすることができます。
しかし、認定司法書士は「労働審判の代理人になれない」という欠点があります。
認定司法書士は、請求額が140万円以下の簡易裁判所の管轄となる訴訟事件の代理人になることはできますが、労働審判手続は地方裁判所の管轄となるため、労働審判の代理人にはなれないのです。
労働審判の代理人になれないことは大きなデメリットであるため、その点の注意が必要です。
労働審判とは、労働トラブルに関する裁判所での手続きです。裁判官などが関与して、残業代請求を含めた労働トラブルについて審理を行います。原則3回以内の期日で審理を終えることとされており、迅速なトラブルの解決を目指した手続きです。
労働審判では、裁判所に直接出頭して、裁判官などから事情を聴かれます。このとき、弁護士を代理人に選任することができ、弁護士を代理人に選任していれば適宜アドバイスを受けながら裁判官からの質問や労働審判の手続きに対応することができます。
司法書士(認定司法書士)は、労働審判の代理人になれません。
そのため、労働審判の手続きなどについて、全て自分ひとりで対応しなければなりません。
(3)不当解雇を争う場合に対応できない
残業代請求だけでなく、解雇されたことが不当であるということについても争いたいけど、司法書士は対応できる?
いいえ。不当解雇についての争いの代理人になることができるのは、弁護士だけです。
司法書士(認定司法書士)は、不当解雇についての争いの代理人となることはできません。
先ほどもご説明したように、認定司法書士が取り扱うことのできるトラブルは、140万円以下の請求にかぎられます。
不当解雇の場合、解雇の適法性が問題となることから、トラブルの額を金銭に見積もることができません。このため、140万円を超える請求と同じものとみなされるのです。
したがって、認定司法書士であっても、不当解雇についての争いの代理人になることはできません。
司法書士には費用面のリスクもある
認定司法書士に残業代請求を頼んだ場合のリスクや制限については分かった。
でも、認定司法書士は弁護士より安いから魅力的だな。
たしかに、認定司法書士は弁護士よりも報酬を安く設定していることが多いです。
しかし、報酬の価格だけで決めてしまうのはリスクがあります!
認定司法書士は、一見弁護士よりも安く見えます。
しかし、認定司法書士にはここまでにご説明したようにさまざまな「できないこと」があります。もしも残業代請求の手続きを進めていく中で、請求額が140万円を超えたり労働審判の必要が出てきたりした場合には、依頼していた認定司法書士との契約を解約して弁護士とあらためて契約しなければならなくなるというリスクもあります。
弁護士とあらためて契約することになった場合、先に認定司法書士に依頼していたからと言って弁護士費用がその分安くなるわけではありません。弁護士費用は、通常通り、最初から弁護士に依頼していたのと同じだけ満額支払わなければならないのが一般的です。
このことから、認定司法書士に残業代請求を頼むと、後から弁護士に依頼しなければなったときに司法書士・弁護士への報酬を二重に支払わなければならないおそれがあるという費用面のリスクがあるのです。
もしも費用を二重に支払わなければならないとなると、たとえ残業代請求に成功しても、あなたの手元に最終的に残るお金がその分だけ少なくなってしまいますよ!
初めから弁護士に依頼するメリット
認定司法書士なら残業代請求を扱ってくれると思っていたけれど、どうやら認定司法書士にはさまざまな制限があるらしい。
本当に認定司法書士に残業代請求を頼むのがいいのか考えてしまうな。
認定司法書士に頼むよりも、初めから弁護士に依頼するほうがメリットがありますよ。
初めから弁護士に依頼するメリットには、次のようなものがあります。
- 弁護士であれば請求額が140万円を超える場合であっても、しっかりと代理人として対応してくれる。
- 弁護士であれば労働審判などの裁判手続きについてもあなたの代理人となることができ、労働審判であればあなたと一緒に裁判所に出廷して適切なアドバイスをしてくれる。
訴訟手続であれば、あなたの代理人として裁判所に出廷してくれるので、あなたが裁判所に行かなければならないことは、尋問などを除いて基本的にない。 - 弁護士であれば、不当解雇を争いたい場合でも代理人となって対応してくれる。
そのほか、あらゆる労働トラブルについて、あなたの代理人となって対応してくれる。 - 初めから弁護士に依頼しておけば、司法書士・弁護士費用の二重払いのリスクを避けることができ、結果的に経済面で安く済ませられる可能性が高まる。
このように、初めから残業代請求を弁護士に依頼しておくことには、さまざまなメリットがあります。
認定司法書士も一部の残業代請求を取り扱っていることがありますが、残業代請求は認定司法書士ではなく弁護士に依頼するようにするのがおすすめです。
【まとめ】最初から弁護士に依頼することがおすすめ
この記事のまとめは次のとおりです。
- 司法書士の中でも残業代請求を扱えるのは、「認定司法書士」という限られた司法書士だけ。
また、たとえ認定司法書士であったとしても、扱うことができるのは請求額が140万円以下の場合に限られる。 - 残業代請求で司法書士にできないこととして、労働審判の代理人になれないことや不当解雇を争う場合に対応できないことなどがある。
- 当初残業代請求を司法書士に依頼して、その後司法書士が扱えなくなってくると、あらためて弁護士に依頼し直さなければならなくなり、司法書士・弁護士費用を二重に支払わなければならないという費用面のリスクがある。
- 残業代請求は、初めから弁護士に依頼するのがおすすめ。
初めから弁護士に依頼するメリットには、弁護士であれば請求額が140万円を超える場合であってもしっかりと代理人として対応してくれることや、労働審判などの裁判手続きについても代理人として対応してくれること、司法書士・弁護士費用の二重払いのリスクを避けることができることなどがある。
認定司法書士が安く残業代請求を請け負ってくれるというのを見ると、ついついそちらに依頼してしまいたくなってしまいますよね。
ですが、なにごとも「安いから」という理由だけで決めてしまうのは考え物です。とくに、残業代請求などの労働トラブルの場合には、認定司法書士ではできないことがたくさんあります。
弁護士に依頼すれば、あらゆる残業代請求などの労働トラブルについてあなたの代理人となって対応してくれます。結果的に、最初から弁護士に依頼しておいたほうがあなたのメリットになる可能性が高まります。
残業代請求は、残業代請求を積極的に取り扱っている弁護士に依頼するようにしましょう。
アディーレ法律事務所は、残業代請求に関し、相談料、着手金ともにいただかず、原則として成果があった場合のみを報酬をいただくという成功報酬制です。
そして、原則として、この報酬は獲得した残業代からお支払いとなり、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。
※以上につき、2022年11月時点
残業代請求でお悩みの方は、残業代請求を得意とするアディーレ法律事務所へご相談ください。