「スーパーの駐車場でバックしたら、隣に停車していた車にぶつかってしまった」
さて、こんなとき、警察に届け出るべきなのでしょうか。
車がへこんだけだし、警察に連絡しなくてもいいだろう、と思っていたらそれは大間違いです。
駐車場での事故も警察に届け出なければなりません。
駐車場での事故について弁護士が解説します。
愛知大学、及び愛知大学法科大学院卒。2010年弁護士登録。アディーレに入所後、岡﨑支店長、家事部門の統括者を経て、2018年より交通部門の統括者。また同年より、アディーレの全部門を統括する弁護士部の部長を兼任。アディーレが真の意味において市民にとって身近な存在となり、依頼者の方に水準の高いリーガルサービスを提供できるよう、各部門の統括者らと連携・協力しながら日々奮闘している。現在、愛知県弁護士会所属。
駐車場での事故は警察に届け出るべき?
結論からいいますと、どのような駐車場でも事故を起こしたら、警察に届け出るべきです。
というのも、駐車場は公道ではなく私有地ですが、高速道路や店舗の駐車場は、不特定多数の人が自由に行き来できるため、道路交通法の対象です。
そのため、不特定多数の人が出入りできる駐車場での事故の場合、道路交通法上、警察への通報義務を負います(道路交通法第72条1項後段)。
他方で、不特定多数の人が自由に行き来できない自宅の駐車場や月極駐車場、その他通行が制限されている駐車場は、道路交通法の対象とはなりません。
そのため、不特定多数の人が自由に行き来できない駐車場での事故の場合、道路交通法上の警察への通報義務は負いませんが、道路交通法の対象外となる駐車場かどうかは判断が難しい場合も多いです(大分地裁判決平成23年1月17日など)。
また、特定の人しか行き来できない駐車場での事故であっても、人身事故(死傷事故)の場合は自動車運転過失致死傷などの刑罰が適用されたり、民事上の損害賠償責任を負う可能性もあります。
警察に通報せず逃げてしまうとこれらの刑罰や損害賠償責任が重くなることがあります。
そのため、道路交通法が適用されるか否かにかかわらず、駐車場で事故を起こしたら、警察に届け出るべきです。
駐車場で多い事故の種類
では、駐車場ではどのような事故が多いのでしょうか。
駐車場で多い事故の種類についてご紹介します。
(1)接触事故
駐車場内では、車と車や、車と施設(フェンスなど)、車と人での接触事故が起きやすいです。
車が駐車場区画に入るときや出るときに、他の駐車中の車や、フェンスなどの施設にぶつかる接触事故が多く起きています。
また、駐車場には死角が多く、飛び出してきた歩行者や、柱の陰などにいた歩行者に気づかないで、車と人への接触事故が発生しやすい場所です。
駐車場の出口などにいる警備員に気づかず加速してしまう接触事故も発生しています。
参考:平成29年度提案公募型研究 駐車場の交通事故減少に向けた安全性向上のための施設運用に関する研究|公益財団法人 東京都道路整備保全公社
(2)警察へ届け出しない当て逃げ事故
駐車場に駐車している車にはドライバーが不在のことも多いため、警察に届け出をしない当て逃げ事故も発生しやすくなっています。
単に車に当てただけだと物損事故ですが、道路交通法が適用される駐車場(行き来が自由な駐車場)で当て逃げをすると、
- 免許の点数が合計7点加算されることにより、一発で免停になったり、
- 危険防止措置義務違反に問われたり(1年以下の懲役又は10万円以下の罰金)、
- 警察への通報義務違反に問わたり(3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金)
することもあるので注意が必要です。
(3)機械式立体駐車場での事故
機械式立体駐車場では、人が機械に挟まれてケガをしたり亡くなったりしている事故が近年増えていますので注意が必要です。
2007~2013年度までの7年間で、機械式立体駐車場に関する事故は207件起きています。
内、死亡事故が10件、重傷者が発生した事故は16件上っています。
運転者連れている子どもが死傷するケースも多く発生していますので、機械式立体駐車場では、子供が機械に挟まれないように十分に気を付ける必要があります。
参考:「いつも使っているから大丈夫」――本当ですか?機械式立体駐車場に潜む危険にご注意を!|政府広報オンライン
駐車場事故が起こったらすぐやるべきこと
駐車場で事故を起こした場合、すぐにやるべき手順をご紹介します。
(1)被害者の救護(人身事故の場合)
何より大切なのが、被害者の救護です。
被害者のけがの状況を確認し、速やかに安全な場所に誘導するなど、危険防止措置を取り
ましょう。
そして、速やかに救急車を呼びましょう。
(2)道路上の危険を取り除き二次被害を防ぐ
交通量の多い場所では、後続車両による二次被害が発生することもあるので、道路上の危険を取り除いておく必要があります。
例えば、自動車は動かせるのであれば、通行の妨げにならないところまで移動させるとよいでしょう。
自動車が動かせない状況ならば、ハザードランプ点灯、発煙筒の使用などで、周囲に事故を知らせましょう。
これらの処置が終わったら、車内には残らず、少し離れた安全な場所に避難しましょう。
(3)警察に事故の届け出をする
事故を速やかに警察に報告しましょう。
警察への報告する内容は、
- 事故発生の日時と場所
- 死傷者・負傷者の数
- 壊れた物やその状況
- 車両に積んでいる物
- 事故への対応の内容
などです。
(4)お互いの連絡先を確認し合う
今後の対応のため、被害者の氏名・住所・連絡先・車のナンバーなどの情報を確認し、こちらの情報も伝えましょう。
(5)目撃者を確保し、現場の証拠写真を保存する
刑事責任における刑罰や、民事責任における損害賠償の金額を決める際に、どのような事故状況だったのかということが重要となってきます。
その際、目撃者の証言が貴重な証拠になります。
加害者や被害者と利害関係のない第三者の証言は特に信用性が高く有用です。
目撃者をみつけたら、目撃者の氏名や住所、連絡先などの情報を控えておくとよいでしょ
う。
また、事故の様子を画像や動画に記録しておくと、被害者と意見が食い違ったときに主張
を裏づけてくれる可能性があります。
(6)保険会社への連絡をする
次に、自身が加入している任意保険会社に連絡しましょう。
加害者と被害者の双方が任意保険に加入しているなら、当事者同士よりも保険会社を通じてのやり取りのほうが、事故後の処理がスムーズに進みやすいです。保険会社への連絡が遅れると、被害者への対応も遅れ、心証を悪くするリスクがあります。保険会社に連絡しても、保険金を使用しなければ、等級は下がりません。
駐車場の事故における過失割合
自己がきちんと駐車スペースに停車していて、そこに相手車両がぶつかってきた場合には、停車していた側の過失はありません。
相手の過失が100%となります。
しかし、どちらも動いている途中の事故であったりすると、過失割合の算定が難しくなることがあります。
また、駐車場の事故は目撃者も少なく証拠がない場合も多いです。
そのため、保険会社同士の話し合いにより、裁判をしたら認定されるであろう過失割合よりも不利な過失割合で示談すると言ったこともあり得ます。
保険会社に任せるのではなく弁護士に相談すると納得がいく過失割合になる可能性があります。
【まとめ】駐車場での事故については弁護士へご相談することをおすすめします
駐車場での事故は警察に報告義務があります。
特に、不特定多数の人が出入りできる駐車場において事故を起こしたのに、逃げたりすると、免許の加点、刑罰などを受けるおそれがあります。
特定の人しか出入りできない場所でも、警察に報告せずに逃げると、刑罰や民事上の賠償責任が重くなる可能性があります。
駐車場の事故は、過失割合の判断が難しい場合もあり、話し合いや裁判でうまく交渉・立証ができないと、もらえるはずの賠償金額が大幅に減ってしまうこともあります。
駐車場内の事故でお困りの方は弁護士に相談することをおすすめします。