「職場で受けている言動はセクハラかもしれない……セクハラって具体的にはどんなもの?」
実は、どのような言動がセクハラ(セクシャルハラスメント)にあたるのかについての定義があります。
簡単に言えば、職場における性的な言動によって労働者に嫌な思いをさせることがセクハラにあたる可能性があります。
このことを知っていると、職場でセクハラにあたる言動を受けた場合に、それがセクハラであると判断し、適切な対処をすることができます。
この記事では、次のことについて弁護士が解説します。
- セクハラの定義
- セクハラになるケース
- 職場でセクハラをされたときの対処法

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。
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セクハラとは?どんなことがセクハラにあたるのか?
セクハラ(セクシャルハラスメント)は、ハラスメント(嫌がらせ)の一種で人権侵害にあたります。セクハラは、男性から女性へというパターンだけでなく、女性から男性へ、同性から同性へも起こり得ます。性的少数者やLGBTの方が不快に思うような言動もセクハラになり得ます。
セクハラの定義
セクハラとはどのようなものであるかについては、男女雇用機会均等法(正式名称は「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」)11条1項に規定されています。
セクハラの定義は、次のとおり解釈されています。
職場において労働者に対して行われる性的な言動であって、それに対する労働者の拒否や抵抗などの対応により労働者が労働条件について解雇、降格、減給などの不利益を受けたり、性的な言動により労働者の就業環境が害されて不快なものとなること
簡単にいえば、職場における性的な言動によって、労働者に嫌な思いをさせると、セクハラに該当する可能性があるということです。

この定義の中に、「職場」「労働者」「性的な言動」という言葉が出てきます。この3つの言葉については、次のような意味に解釈されています(令和2年厚生労働省告示第6号)。
参考:事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針等の一部を改正する告示(令和2年厚生労働省告示第6号)|厚生労働省
(1-1)「職場」とは
「職場」とは、会社の中という意味ではなく、業務上関係する場所という意味です。例えば、次のような場所が「職場」にあたります。
- 通常仕事している場所(オフィスなど)
- 業務のため訪れた取引先や出張先
- 業務のため使用する車中
- 業務の延長と考えられるような宴会
(1-2)「労働者」とは
「労働者」とは、事業主が雇用する労働者の全てという意味です。具体的には次のような労働者です。
- 正社員
- パート
- アルバイト
- 契約社員
- 派遣社員
派遣労働者は派遣元の事業主に雇用されていますが、派遣先事業主も派遣労働者について、セクハラに関し男女雇用機会均等法上の義務を負います。
(1-3)「性的な言動」とは
「性的な言動」とは、性的な内容を含む発言と、性的な行動を意味します。
性的な内容を含む発言には、次のようなものがあります。
- 性的な事実関係を尋ねること
- 性的な内容の情報(噂)を流すこと
- 性的な冗談やからかい
- 個人的な性的体験談を話すこと
また、性的な行動には、次のようなものがあります。
- 性的な関係を強要すること、
- 腰や胸等を触ること
- わいせつ図画(ヌード写真など)を配布・掲示すること
このうち、性的な関係強要や、腰や胸等を触ることは、セクハラということだけでは済まされず、強制わいせつ罪、強制性交等罪(きょうせいせいこうとう)といった犯罪にあたることもあります。

セクハラになるケース
具体的には、次のようなケースでは、セクハラになる可能性があります。
- 性的な事実関係の確認
「スリーサイズはいくつ?」
「子作りしないの?」 - 性的な関係について噂を流す
「〇〇と〇〇は不倫しているらしいよ」 - 性的な冗談やからかい
「お尻が大きい」
「スカートをもっと履いて脚を見せたほうがいい」 - わいせつ図画の提示
他の職員もいる職場で、パソコンでわいせつ画像を見る。
「昔はそのようなことを言う人は会社によくいたし、この程度なら別に大丈夫だよ」と言われてしまいました……。そうなのでしょうか?
常識や社会通念は、時代によって変わるものです。
昔は受け入れられていた言動であっても、今の時代では決して許されないというものも多くあります。
ですから、あなたがつらい思いをしているのであれば、「この程度なら別に大丈夫」などということはありません。
セクハラ関連の裁判例について、詳しくは次のページをご覧ください。

セクハラの種類
厚生労働省の指針ではセクハラを「対価型セクハラ」と「環境型セクハラ」の2つに分類しています(平成18年厚生労働省告示第615号)。
(1)対価型セクハラとは
「対価型セクハラ」とは、労働者が、セクハラを拒否したりすると、当該労働者が解雇、降格、減給等、労働条件上の不利益を受けるものをいいます。例えば、次のようなものが「対価型セクハラ」にあたります。
- 事業主が性的な関係を要求したが拒否されたので解雇する行為
- 人事考課などを条件に性的な関係を求める行為
- 職場内での性的な発言に対し抗議した者を、降格する行為
- 性的好みで、人事上の待遇に差をつける行為
(2)環境型セクハラとは
「環境型セクハラ」とは、職場において行われる性的な言動により、職場の環境を不快にし、労働者が働く上で重大な支障を生じさせるものをいいます。例えば、次のようなものが「環境型セクハラ」にあたります。
- 職場で上司が性的な話題をしばしば口にするため、労働者が苦痛に感じて仕事が手につかないこと
- 宴会で男性に裸踊りを強要するため、労働者が苦痛に感じて仕事の意欲がわかないこと
- 職場で、同僚が、性的な噂などを意図的に流すため、労働者が苦痛に感じて仕事に集中できないこと
- 職場にセクシーなポスターや雑誌などをみんなが見えるところに置かれているため、労働者が苦痛に感じて、仕事中に気分が悪くなること
- 仕事の打ち上げで、上司が、カラオケでのデュエットを強制し、腰を触ったりするため、労働者が苦痛に感じて、仕事へのやる気がわかないこと
職場でセクハラされたときにできること
次に、職場でセクハラをされたときの対処法を紹介します。
(1)嫌であることをはっきりと伝える
まずは嫌だということを、はっきりと伝えましょう。加害者はセクハラをしている自覚がないこともあります。あなたが嫌がっていることすら自覚がないこともあります。それはセクハラであり、あなたが嫌がっているということに気づかせましょう。

(2)会社や加害者の上司に相談する
加害者本人に言いづらい場合や、言ってもやめてくれない場合は、加害者より上の立場の人に相談しましょう。
立場が上の人から注意されることで、セクハラが止まる可能性があります。

(3)相談窓口へ相談する
社内の相談窓口を利用しましょう。社内の相談窓口が事実上機能していない場合には、労働組合や総合労働相談コーナーなど外部へ相談することもひとつの方法です。
総合労働相談コーナーは、セクハラも含めてあらゆる分野の労働問題を対象として相談を受け付けている公的な相談窓口です。総合労働相談コーナーの連絡先について、詳しくは次のページをご覧ください。
法的措置を検討する
状況が深刻な場合、1人で解決することは困難です。裁判などの法的措置を検討しましょう。場合によっては、慰謝料などの損害賠償を請求することができることがあります。
また、事業者は1人でも労働者を雇用する場合は、労災保険に加入し、労災保険料は事業主が支払う義務があります(農林水産の一部の事業を除きます)。そして、セクハラによって心身の健康を害した場合、労災だと認められれば労災保険を利用できます。
労災保険では、療養給付(治療費・手術費・入院費など)や休業給付(休業の4日目から休業基礎日額の60%を支給)といった給付を受けることができます。
参考:セクシュアルハラスメントが原因で精神障害を発病した場合は労災保険の対象になります|厚生労働省
参考:労働保険とはこのような制度です|厚生労働省
参考:労災保険給付の概要|厚生労働省
(4)改善されない場合は会社をやめる
セクハラは心へのダメージが大きく、うつ病などの病気になることもあります。無理をし続けてはいけません。セクハラが改善されない場合は、会社をやめることも考えましょう。
セクハラの被害に遭って会社をやめたいけれども自分だけではうまくやめることができないという場合には、退職代行サービスを利用するというのも一つの方法です。
退職代行サービスとは何かということや利用の流れなどについて、詳しくは次のページをご覧ください。
【まとめ】セクハラとは職場における性的な言動により労働者に嫌な思いをさせること
この記事のまとめは次のとおりです。
- セクハラとは、簡単に言えば、職場における性的な言動によって労働者に嫌に思いをさせること。
- セクハラになるケースには、性的な事実関係の確認や性的な冗談やからかいなどがある。
- セクハラには、対価型セクハラと環境型セクハラの2種類がある。
対価型セクハラは、セクハラを拒否したりすると労働条件上の不利益を受けるもの。
環境型セクハラは、性的な言動により職場の環境を不快にして労働者が働くうえで重大な支障を生じさせるもの。 - 職場でセクハラされたときにできることとしては、嫌であることをはっきりと伝えることや、総合労働相談コーナーなどの窓口に相談することなどがある。
- セクハラが改善されない場合には、会社を辞めるという手段もある。
また、自分だけではうまく会社を辞められないという場合には、退職代行サービスを利用するという方法もある。
職場における性的言動を不快に感じたら、それはセクハラである可能性があります。
「我慢していれば大丈夫」と考えていると、どんどんエスカレートして心身が不調に陥ることもあります。
第三者への相談や、会社の退職などを検討しましょう。
自分だけでは会社をうまく退職できないという場合には、退職代行サービスを利用することも一つの方法です。
アディーレ法律事務所では退職代行に関する相談料は何度でも無料です。
退職代行でお悩みの方は、退職代行を得意とするアディーレ法律事務所へご相談ください。
