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逸失利益の定期金賠償とは?メリット・デメリットについても解説

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リーガライフラボ

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2020年7月9日の最高裁判決によって、後遺障害逸失利益の「定期金賠償」が認められました。後遺障害逸失利益の定期金賠償が最高裁によって認められるのは初めてで、今後の交通事故に関する賠償実務が、被害者に有利な形へと大きく変化することが期待されています。

今回の記事では、次のことについて弁護士が解説します。

  • 定期金賠償とは
  • 定期金賠償のメリット・デメリット
この記事の監修弁護士
弁護士 中西 博亮

岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。

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交通事故の逸失利益の定期金賠償について解説

まずは、2020年7月9日に出された最高裁判決の内容を紹介します。
この判決は、後遺障害逸失利益の定期金賠償を認めた点で画期的であるとされています。

参考:平成30年(受)第1856号 損害賠償請求事件 第一小法廷判決令和2年7月9日|裁判所 – Courts in Japan

【事案の概要】

この事案では、当時4歳の男児が大型貨物自動車に撥ねられ、後遺障害第3級に該当する重度の高次脳機能障害を負いました。
被害者は、加害者および加害者が加入していた任意保険の保険会社に対して、交通事故の後遺障害により労働能力を喪失したことに関する逸失利益を、「定期金賠償」で支払うよう求める訴訟を提起しました(他に、治療費、慰謝料、将来介護費等も請求)。

第一審の札幌地裁・第二審の札幌高裁ともに、被害者死亡までの将来介護費だけでなく67歳までの後遺障害逸失利益の定期金賠償を求める被害者の主張を認めました。
そのため加害者および任意保険会社は、次のように主張して、最高裁に上告したのです。

  1. 後遺障害逸失利益は、定期金賠償ではなく、あくまでも一時金による賠償によるべきだ。
  2. 逸失利益について定期金賠償が認められるとしても、67歳または死亡までとすべきだ。

【判決の結論】

最高裁は、第一審・第二審同様に、被害者の逸失利益について、被害者が67歳までに死亡したとしても、被害者の相続人に67歳時点までの定期金賠償を求める権利を認めました。1、2のいずれの論点においても、加害者・保険会社側の上告を棄却したのです。

判決のポイント|定期金賠償が最高裁で初めて認められた

従来から、交通事故の被害者が要介護となった場合の将来介護費の賠償については、終身の「定期金賠償」を用いることが判例実務で認められており、そのような和解が成立することもありました。特に重度の要介護の被害者の場合、裁判の時に見込んだ平均余命を超えて生きられたとき、賠償された介護費用が尽きて生活に窮するのは、被害者にとってあまりに酷だからです。
しかし、交通事故により後遺障害が発生した場合の逸失利益の賠償は、将来分を含めて一括で受け取る「一時金賠償」しか認められてきませんでした。

今回の最高裁判決は、被害者が求めた場合には、逸失利益についても定期金賠償が認められる可能性があると示したものになります。

従来の交通事故の損害賠償実務は、重度の将来介護費以外、一時金賠償の原則を念頭に動いていました。
しかし、本判決のインパクトは大きいです。今後は、被害者から、逸失利益も含めて、一時金賠償の方法か、定期金賠償の方法かを選択していくようになるでしょう。実務では、どのような場合に定期金賠償が認められるかを探りつつ、その範囲が広がっていくことが見込まれます。

定期金賠償とは

そもそも「定期金賠償」という言葉を聞き慣れない方も多いかと思います。どのような意味の言葉なのかを詳しく解説します。

「定期金」とは、ある一定の期間にわたって継続してもらえるお金を指す言葉です。
一番イメージしやすいのは、会社から毎月もらえる給料でしょう。給料は、労働者が会社で働いている期間中、毎月決まった日に一定の金額を受け取れる仕組みです。

ほかにも、離婚をした際に子どもの世話をする側に支払われる養育費や、老後に受け取れる年金などが定期金に該当します。
そして「定期金賠償」とは、後遺障害逸失利益を「定期金」で賠償してもらうことをいいます。
今回の事案のように、交通事故に遭って体が動かなくなったり脳にダメージを受けたりして「後遺障害」が残ると、労働能力が失われてしまいます。

労働能力を喪失した被害者は、将来稼げる収入が減ると考えられます。そこで労働能力損失による減収を補填するのが、「後遺障害逸失利益」の賠償なのです。

後遺障害逸失利益は、交通事故の後、将来にわたって定期的に発生していくと考えられます。
しかし、先述したとおり、従来の損害賠償実務では、将来もらえる金額を現在の価値に引き直して、一括で加害者側から被害者に対して支払わせる「一時金賠償」の原則が取られていました。

そこで、今回の事案の被害者側は、次のように主張しました。

つまり、「加害者は被害者に対して、毎月●日に●万円を支払う」など、会社から給料をもらうのと同じような形で、今後継続的に加害者からお金を受け取れるようにしてほしい、と主張したのです。

定期金賠償のメリット3選

定期金賠償には、一時金賠償にはない被害者側のメリットが存在します。
どのようなメリットがあるか、詳しく見ていきましょう。

(1)中間利息控除がない(受け取れる金額が有利に計算される)

一時金賠償の場合、将来もらえるはずだったお金を前倒しして一括で受け取ります。
しかし、将来もらえるはずのお金は、現在手元にあるお金よりも価値が低いと考えられています。
いま手元にお金があれば、運用して手元のお金よりも増やせる可能性があると考えられるからです(金融の世界でも、「収益還元法」などで同じ考え方をしています)。

そのため一時金賠償の場合、「中間利息控除」により、将来にわたってもらえるはずだった金額から一定程度減額した分しか被害者は受け取れない仕組みになっています。

中間利息控除の計算の具体例を見てみましょう。

【例】
  • 被害者の年収は500万円
  • 労働能力を100%喪失
  • 労働能力喪失期間は30年
  • 加害者側に100%の過失あり

後遺障害逸失利益の金額は、基本的には年収に労働能力喪失期間の年数をかけて計算されます。
しかし一時金賠償の場合は、将来と現在でお金の価値が異なる点を考慮しなければなりません。
そのため労働能力喪失期間の年数のかわりに、その年数に対応する「ライプニッツ係数」をかける決まりになっています(ホフマン方式もありますが、基本的に用いられていません)。

2020年4月1日の民法改正以後、法定利率の3%を基準としてライプニッツ係数が設定されるようになり、2020年4月1日以降の事故については、これを用いることになります。
30年に対応するライプニッツ係数は19.600であり、被害者が一時金賠償により受け取れる後遺障害逸失利益の金額は次のとおりです。

【一時金賠償の金額=500万円×19.600=9800万円】

対する定期金賠償の場合は、中間利息控除を考慮する必要がありません。
したがって、被害者が受け取れる後遺障害逸失利益の総額は、単純に年収に対して労働能力喪失期間の年数をかけて計算されます。

【定期金賠償の総額=500万円×30=1億5000万円】

計算の結果、一時金賠償の金額に比べて、定期金賠償の総額が5000万円以上高くなりました。
上で計算したように、定期金賠償では中間利息控除が適用されない分、被害者が受け取れる後遺障害逸失利益の賠償金が一時金賠償の場合よりも高額になるメリットがあるのです。

特に、被害者が18歳未満の場合、労働能力喪失期間が長い分、一時金の中間利息控除は極めて不利な計算となってしまいます。
そのため、定期金賠償が認められることは、そのような被害者の救済に役立つと考えられます。

(2)後の事情変更にも対応した支払いが受けられる

定期金賠償の場合、確定判決の内容について、口頭弁論終了後の事情変更が生じたのであれば、判決の変更を求める訴えを提起することができます(民事訴訟法117条1項)。
後遺障害が裁判後に重篤化した場合や、インフレで平均賃金や物価が大幅に上昇した場合などに、定期金賠償の増額を求める訴えを提起し、それが認められれば、実態に沿った適切な支払いを受けられるというメリットがあります。

(3)早期の消費リスクの回避

後遺障害逸失利益の賠償を一時金で受け取ると、早い段階でお金を使いきってしまう可能性があります。
この点、定期金賠償の場合だと、給料や年金などと同じように、毎月支払いを受ける仕組みのため、早いペースで賠償金を消費し切るのを避けられます。

定期金賠償のデメリット3選(+α)

定期金賠償には、被害者側に有利な点がある反面、一時金賠償にはないデメリットも存在します。
定期金賠償を求める際には、次のデメリットを受け入れられるかをよく考えてください。

(1)支払い義務者の資力悪化リスク

定期金賠償の場合、今後長期間にわたって加害者側から定期的に賠償金を支払ってもらう必要があります。
後遺障害逸失利益の定期金賠償は、多くの場合、事故当時から67歳前後までの就労期間中ずっと継続します。そのため、定期金賠償の支払いを加害者側は数十年単位で続けていくことになります。

その間、加害者側の任意保険会社が倒産せずに、順調に経営を続けている保証はありません。もし経済混乱や大災害などで任意保険会社の経営が立ち行かなくなれば、定期金賠償の支払いも滞るでしょう。このように、定期金賠償には支払い義務者の資力悪化の影響を受けるという大きなデメリットがあります。

(2)インフレなど事情変更への対応に「変更の訴え」が必要

現状の判決による定期金賠償では、期間ごとの定額の支払いしか想定されていません。しかし、20年後や30年後の物価、賃金、介護費用の相場が変わらないとはかぎりません。平成の30年は、デフレでほとんど物価が変わりませんでしたが、今後もそうだとは誰にも言えません。

先述したとおり、定期金賠償の場合、将来、物価水準が大きく変化して判決の定期金が不相当となった場合には、判決の変更を求める訴えを提起することができますが、逆に言えば、変更の訴えを提起する必要があるといえます。

(3)事故と紛争を忘れることが難しくなってしまう

賠償金を一回支払ってもらえば終わりの一時金賠償とは異なり、定期金賠償の場合は、今後長期間にわたって加害者(の加入していた任意保険会社)からの賠償金支払いが続きます。
任意保険会社は、定期金の支払いに当たって、定期的に被害者の現状を確認してくるでしょうし、いつまでも事故と紛争を忘れることができず、辛い気持ちが長期間残存するかもしれません。

(4)将来の事情変更により減額される可能性も

メリットの箇所でも解説しましたが、定期金賠償に関する確定判決は、裁判後の事情変更があった場合には、判決変更の訴えによって覆される可能性が残ります。
被害者にとって有利な事情変更があれば定期金賠償の増額が見込めますが、逆もまた然りであることに留意しなければなりません。

たとえば後遺障害が裁判後に大きく回復して働けるようになった場合には、もちろんそれは良いことなのですが、定期金賠償の金額が減額される可能性があります。これはデメリットではなく、幸いにも損害が減った結果、妥当な賠償額に減額されるだけなのですが、考慮すべき事情です。

一時金賠償と定期金賠償のどちらを選択すべきか?

一時金賠償と定期金賠償には、それぞれにメリット・デメリットがあるため、どちらが被害者にとって有利かは具体的な事情によって異なります。

現状の判例と運用の延長から考えると、次のような場合には、逸失利益の定期金賠償の必要性が高く、裁判所にも認められやすそうだと言えそうです。

  • 被害者が18歳未満であり、賠償の期間が長期の場合
  • 重度の後遺障害で、被害金額が大きい場合
  • 将来介護費が必要で、もともと定期金賠償の必要性が高い場合

もちろん、そうでない場合にも認められる可能性はありますし、今後その範囲を広げていくのが弁護士の任務とも言えます。

被害者側としては、一時金賠償でまとまった現金を受け取ることで被害者の今後の人生を再建できるかどうか、それとも加害者側の資力悪化のリスクを受け入れながらも、定期金賠償で将来の事情変更に備えるかなど、両者をよく比較検討するのが大切です。
一時金賠償と定期金賠償のどちらを選択すべきなのかは、弁護士に相談してみると良いでしょう。

【まとめ】一括ではなく一定期間継続して賠償金が貰えるのが、定期金賠償

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 2020年7月9日に出された最高裁判決は、後遺障害逸失利益の定期金賠償を初めて認めた
  • 定期金賠償とは、後遺障害逸失利益を「定期金」で賠償してもらうことで、「定期金」とは、ある一定の期間にわたって継続してもらえるお金のこと
  • 定期金賠償であれば、中間利息控除がなく、インフレなどの事情変更にも対応可能で、早いペースで賠償金を使い切ってしまうリスクを回避できる、といったメリットがある
  • 一方、定期金賠償だと、支払い義務者である保険会社の倒産リスクや、事情変更があった場合に「変更の訴え」を提起する必要が生じるなどのデメリットがある
  • 長期間継続して支払いを受けることで、辛い事故や紛争について忘れることが難しくなるといったデメリットもある
  • 定期金賠償には、メリット・デメリットがあるため、弁護士に相談するなどして、よく検討するのが大切

交通事故で重篤な後遺障害を負った場合、加害者側に対して高額の損害賠償を請求できる可能性があります。弁護士に依頼すれば、加害者側との示談交渉や訴訟を有利に進められる可能性があることを知っておきましょう。
特に今回最高裁により認められた定期金賠償の方法も含めて、被害者にとってどのような形で賠償を受けるのが望ましいのかについては、弁護士に相談することをおすすめします。

交通事故の被害による賠償金請求をアディーレ法律事務所にご相談・ご依頼いただいた場合、原則として手出しする弁護士費用はありません。

すなわち、弁護士費用特約が利用できない方の場合、相談料0円、着手金0円、報酬は、獲得できた賠償金からいただくという完全成功報酬制です(途中解約の場合など一部例外はあります)。

また、弁護士費用特約を利用する方の場合、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので、やはりご相談者様・ご依頼者様に手出しいただく弁護士費用は原則ありません。
※なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです。

実際のケースでは、弁護士費用は、この上限内に収まることが多いため、ご相談者様、ご依頼者様は実質無料で弁護士に相談・依頼できることが多いです。
なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです。弁護士費用が、この上限額を超えた場合の取り扱いについては、各弁護士事務所へご確認ください。

(以上につき、2022年10月時点)

交通事故の被害にあって賠償金請求のことでお悩みの場合は、交通事故の賠償金請求を得意とするアディーレ法律事務所にご相談ください。

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