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交通事故における慰謝料の相場や計算方法、請求手順について詳しく解説

作成日:更新日:
リーガライフラボ

交通事故によって受ける損害には、様々なものがあります。
その中でも、交通事故で受けた精神的苦痛に対して認められる「慰謝料」は、入院・通院期間や、後遺障害認定されたか否か、何級に認定されたか、などの事情によって、かなり高額になることもあります。

また、交通事故の慰謝料の算定には3つの基準があり、どの基準で計算するかによって慰謝料の額が異なります。(※)

そこで、交通事故の被害者が、適切な額の慰謝料を請求して交通事故による損害を回復するためには、慰謝料の考え方や、計算方法などの理解が必要となります。
この記事では、交通事故の慰謝料の相場や計算方法、請求手順などについて詳しく解説します。

※個々人の心の痛みは外からは見えませんので、本当に正しい「慰謝料」額は誰にもわからないのですが、交通事故の判例の積み重ねにより、客観的な事情から計算するという一定の基準が確立しています。

この記事の監修弁護士
弁護士 村松 優子

愛知大学、及び愛知大学法科大学院卒。2010年弁護士登録。アディーレに入所後、岡﨑支店長、家事部門の統括者を経て、2018年より交通部門の統括者。また同年より、アディーレの全部門を統括する弁護士部の部長を兼任。アディーレが真の意味において市民にとって身近な存在となり、依頼者の方に水準の高いリーガルサービスを提供できるよう、各部門の統括者らと連携・協力しながら日々奮闘している。現在、愛知県弁護士会所属。

目次

交通事故の慰謝料とは?

交通事故の被害者は、ケガをしたことによって、痛みに苦しんだり、治療を強いられたりするなど、様々な精神的苦痛を受けます。
交通事故の慰謝料とは、被害者が交通事故でケガをしたことなどによって受けた精神的な苦痛を「損害」と考えて(民法710条)、その損害を慰藉(いしゃ)するために支払われる金銭です。
物損部分については、通常このような精神的苦痛は発生しないと考えられていますので、原則として慰謝料は認められません。

(1)交通事故の慰謝料3種類について詳しく解説

交通事故によってケガをして人身的な被害を受けた場合、請求できる可能性のある慰謝料は3種類あります(大きく分けると、症状固定前の傷害慰謝料と、症状固定・死亡後の後遺症慰謝料又は死亡慰謝料の2種類)。
この3種類の慰謝料について詳しく解説していきます。

(1-1)傷害慰謝料(入通院慰謝料)

交通事故でケガをして、治療のために入院や通院をしたときは、「傷害慰謝料(入通院慰謝料)」を受け取ることができます。
傷害慰謝料は、ケガの部位、ケガの程度、症状固定日までの入通院期間(総治療期間)の長短などを考慮して、ある程度定額化して算定されます。
ケガの程度が重く、入通院期間が長期間にわたれば慰謝料の額は高くなり、軽傷で入通院期間が短期間であれば、慰謝料の額は低くなります。

<症状固定日って何?>

「症状固定日」は、聞きなれない言葉かと思います。簡単に説明しますと、症状固定日とは、「治療を続けても症状の改善が見込めなくなった日」のことで、傷害慰謝料は、症状固定日までの治療内容を基準に判断します。労災保険では「治ゆ日」とも言います。
「症状固定日」がいつになるのかは、基本的に主治医が判断して、経過診断書や後遺障害診断書に記載します。しかし、任意保険会社と争いが生じた場合には、最終的には裁判所が症状固定日がいつであるのかを判断することになります。
症状固定日にも残ってしまった症状については、後遺症として別途損害賠償を請求することになります。

(1-2)後遺症慰謝料

治療をしたけれどもケガが完治せず、後遺症が残ってしまった場合は、「傷害慰謝料」とは別に、「後遺症慰謝料」を請求できることがあります。

後遺症が残ってしまったからといって、すぐに後遺症慰謝料を受け取れるわけではありません。
交通事故による後遺症については、自賠責保険により「後遺障害」(1~14級まで)の等級が認定されたものについて、後遺症慰謝料の支払いがなされることがほとんどです。
したがって、まずは後遺障害等級認定を受けた後、認定された等級を基準として、後遺症慰謝料を請求します。
後遺障害が重いほど後遺症慰謝料の額は高額になります。
また、後遺症慰謝料を請求できるのは基本的に被害者本人だけですが、後遺障害の等級が1級、2級など重度の場合には、近親者も独自に慰謝料請求をすることができます(民法711条類推)。

<「後遺症」と「後遺障害」の違いは?>
日常生活ではどちらも同じような意味ですが、交通事故の損害賠償をする場合には、区別して用いられています。
「後遺症」は、事実として、症状固定日に残ってしまい、今後の改善を見込めない症状です。
「後遺障害」は、自賠責保険に「永久残存し、就労能力に支障を生じる」ものとして後遺障害等級の認定を受けた後遺症です。

(1-3)死亡慰謝料

交通事故により被害者が死亡した場合に、本人と一定の遺族は死亡慰謝料を請求することができます。
ここで遺族とは、基本的に被害者の両親、配偶者及び子(胎児を含む)のことをいいますが(民法711条、721条)、同居し親密な関係にあるなどの事情によっては内縁関係、祖父母、兄弟、孫などに死亡慰謝料の支払いが認められることもあります。

(2)交通事故の慰謝料の時効は何年?

交通事故の被害者は、加害者に対して、慰謝料などの損害賠償の支払いを請求することができます。
これを、損害賠償請求権といいます。
この損害賠償請求権は、いつまでも行使できるものではありません。
民法には、消滅時効が定められており、一定期間を過ぎて消滅時効が完成してしまうと、この損害賠償請求権は行使することができなくなります。
権利があるのにそれを行使せずに放置する人まで法律上保護する必要はない、と考えられているためです。

また、交通事故については、少なくとも、この加害者に対する損害賠償請求権の時効と、自賠責保険に対する被害者請求権の時効の2種類を別々に考える必要があります。

(2-1)加害者に対する損害賠償請求権

消滅時効が完成する期間は次の通りです(2020年4月1日以降に発生した人身事故の場合)。

  1. 被害者が、交通事故による加害者及び損害を知った時から5年(民法724条の2)
  2. 不法行為の時から20年(民法724条2号)

ひき逃げで加害者が特定できないなど特殊なケース以外では、損害賠償請求権は、5年の時効で消滅することになると考えられます。

では、5年の時効期間はいつからスタートするのでしょうか。
法律上は、「損害及び加害者を知った時」となっています。
人身事故では、通常、交通事故発生後すぐに加害者を知ることができます。しかし、ケガを負った場合には、ケガの治療の経過や、後遺障害の有無などが分からないと、ケガによる損害がどの程度なのかわかりません。
ですので、人身事故の場合、ケガが完治するか、後遺症が残ると判断された日(症状固定日)の翌日から時効期間がスタートするケースが多いでしょう。(※)
※交通事故の時効については、損害や状況ごとに難しい議論がありますので、具体的ケースについて疑問がある際には、専門家にご相談ください。

この消滅時効ですが、一定の行為を取ることで時効の完成を阻止することができます。
法律上、時効の完成を猶予させたり、再度初めから進行させたりして時効の完成を阻止する方法は、大きくわけて3つあります。

  • 裁判上の請求など(民法147条)
  • 強制執行・仮差押えなど(民法148条・149条)
  • 承認(民法152条)

慰謝料を支払うように催告する方法でも、6ヶ月月間だけ時効の完成を猶予することができますが(民法150条)、その間に訴訟提起などの別の手段をとる必要があります。

なお、2020年4月1日に新しい民法が施行された関係で、同日より前に発生した人身事故については、基本的に、「被害者が、交通事故による加害者及び損害を知った時から3年」の時効期間となっています。
ただ、同日時点で3年の時効期間が完成していなかったり、承認などで時効が中断していて時効が完成していなかったりする場合の人身損害は、5年となります(物損部分の時効は法改正後も3年のままです)。

(2-2)自賠責保険に対する被害者請求権の時効

交通事故によって受けた損害について、自賠責保険に支払いを請求することもできます。これを、「被害者請求権」といいます。
加害者に対する損害賠償請求権については、民法改正により5年に延長されましたが、自動車損害賠償保障法(通称:自賠法)に基づく被害者請求権の時効は3年のままです。(自賠法19条)
(なお、2010年3月31日以前の事故の自賠責の時効は2年です。)

自賠責保険に対する被害者請求権の時効は、以下のようになっています。

  • 傷害部分の損害については事故日から3年間
  • 後遺症部分の損害については症状固定日または最後の等級認定から3年間
  • 死亡の損害については死亡日から3年間

3年以内に請求が困難な場合には、実務上、自賠責保険に対して時効中断申請を行うことによって、中断時から新たに3年間の時効期間が進行しますので、忘れずに申請するようにしましょう。(2010年3月31日以前の事故の場合は2年延長)

(2-3)交通事故の時効は複雑!

交通事故の損害賠償については、上記の請求権の他にも、場合によっては労災保険や健康保険等についても考慮が必要です。また、治療が長期間となったり、症状固定日に争いがあったりする場合、時効の完成がいつになるのかの判断が難しいケースもあります。
「自分の時効期間が分からない」、「もうすぐ時効完成してしまう」というような場合には、自分で慰謝料請求について対応することはせず、すぐに弁護士に相談するようにしましょう。

交通事故に詳しい弁護士であれば、時効期間を判断してアドバイスをすることができますし、権利が時効で消滅することのないように、適切な時期に適切な対応を取ることもできます。

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交通事故における慰謝料算定には3つの基準がある

慰謝料の算出基準は、「自賠責の基準」「任意保険の基準」「弁護士の基準」の3種類あります。
基準が3種類もあるのは、それぞれの立場、目的に違いがあるためです。
多くの場合で、交通事故の慰謝料の金額が一番大きくなるのは「弁護士の基準」で、その次が「任意保険の基準」、一番少なくなるのが「自賠責の基準」となります。
3つの基準について説明します。

(1)自賠責の基準

自賠責保険は、車両の保有者に法律上その加入を強制しているものです。(自賠法5条)
被害者請求により慰謝料を自賠責保険から受け取るケースもありますが、その場合にはこの基準で算定されます。
交通事故の被害者に対して、最低限の保証を行うことを目的としていますので、基本的に支払額は3つの基準のうち最も低くなります。(※)

※ただし、自賠責保険金額は、交通事故の70%未満の過失については減額対象にしませんので、加害者側になってしまったなど過失割合が大きい場合には、自賠責の基準がもっとも高額となることもあります。

(2)任意保険の基準

任意保険の基準は、加害者側の保険会社が独自に設定している、示談交渉をする際の支払いの基準です。
保険会社によってその内容は異なり、正式には公表されていません。
保険会社が提示してくる初回の示談案を見る限り、一般的に自賠責保険と同等かそれ以上ではありますが、弁護士の基準と比べると、かなり低い額に抑えられていることが多いようです。

(3)弁護士の基準

これまでの裁判例により認められてきた、ケース別に賠償額を基準化したものが、弁護士の基準です(裁判所の基準ともいいます)。
実務では、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(通称「赤い本」)」及び「交通事故損害額算定基準(通称「青本」)」という本が、弁護士の基準として、損害賠償の算定に利用されています。
3つの基準の中で、一般的に一番高くなるのがこの弁護士の基準です。
弁護士は、弁護士の基準で慰謝料を算定して加害者と交渉します。

入通院慰謝料の3つの算定方法による金額の違いを比較

どの基準で算定するかにより、慰謝料の金額はどれくらい変わってくるのでしょうか。
具体的に、「事故日から治療終了まで6ヶ月通院したケース(入院はなし)」で、入通院慰謝料を比較してみましょう。

被害者が治療した日数について、以下の用語を用いて説明します。

  • 総治療期間:事故日から症状固定日までの日数。入通院期間と同じ
  • 実通院日数:入院していた日数+実際に通院した日数
  • 通院日数:自賠責保険が慰謝料算定に使う日数

(1)自賠責の基準による入通院慰謝料

自賠責保険の入通院慰謝料は、1日4300円と決まっており(2020年4月1日以降に発生した交通事故。それ以前は1日4200円)、基本的な計算方法は、4300円×通院日数です。
通院日数は、被害者のケガの態様、実通院日数などの事情を考慮して計算します(通常、実通院日数×2と、総治療期間の少ない方で算定されます)。6ヶ月の総治療期間に70日間実際に通院したとすると、180日と140日の少ない方が採用されます。仮にその日数で計算すると、
4300円×140日=60万2000円 となります。

(2)任意保険の基準による入通院慰謝料

任意保険の基準は各保険会社が独自に定めたもので公表されておらず、各保険会社によって多少異なるようです。
ケガを負ったことに対する損害賠償については、自賠責基準とほぼ同額か、少し上乗せされる程度です。
骨折のないむち打ち症で6ヶ月間の治療の場合、任意保険の基準では、60万~65万円前後が提示されているようです。

(3)弁護士の基準による入通院慰謝料

弁護士や裁判所が介入したケースでは、「赤い本」や「青本」に記載された基準となる表に従って算定されます。
最もよく用いられている「赤い本」による場合について説明します。
原則として、1.「別表Ⅰ」という表を利用して算定しますが、2.むち打ち症、捻挫や軽い打撲、擦過傷等の場合は「別表Ⅱ」という表を利用します。同じ入通院期間であっても、1の算定額は、2の算定額よりも高くなります。

通院が、症状に比べて長期にわたる場合には、症状、治療内容、通院頻度を考慮して実通院日数の3.5倍程度(別表Ⅱの場合は実通院日数の3倍程度)が入通院期間の目安となることがあります。
しかし、単純骨折等で頻繁な通院が不要で、例えば5日しか通院しなかった場合にも、5日×3.5倍=17.5日 とはなりません。このような場合には、骨折の癒合や骨折後のリハビリに必要な期間が入通院期間となります。しかしながら、任意保険会社は機械的に3倍基準や3.5倍基準の日数を主張してくることがありますので注意が必要です。

「ケガの初診から治療終了まで6ヶ月通院したケース(入院はなし。実通院日数は70日)」を表ごとに算定してみましょう。

別表Ⅰの場合 116万円
別表Ⅱの場合 89万円

どちらの表で算定しても、自賠責の基準や任意保険の基準よりも高額になりますので、弁護士の基準で算定することが、適切な慰謝料を受け取るための重要なポイントとなります。

後遺症慰謝料の3つの算定方法による金額の違いを比較

交通事故で治療してもケガが完治せず、残念ながら症状が残ってしまった場合には、入通院慰謝料に加えて、「後遺症慰謝料」を請求できることがあります。
後遺症慰謝料についても、算定方法による金額の違いを比較してみます。

(1)後遺症慰謝料の請求にはまず後遺障害等級認定を

後遺症慰謝料を請求するために、まず、後遺障害等級の認定を受けるようにしましょう。
自賠責保険や任意保険会社から後遺症慰謝料を受け取るためには、基本的に後遺障害等級の認定を受けていることが前提として必要なためです(※)。
後遺障害の有無や等級の判断は、医師が作成した「後遺障害診断書」と、レントゲン写真・CT・MRIなどの資料を考慮して、自賠責損害調査事務所(損害保険料算出機構の下部組織)が行います。
後遺障害等級の認定を受けると、認定された等級(1~14級)に応じて、自賠責保険と任意保険会社に対して、後遺症による逸失利益と後遺症慰謝料を請求することができます。

※自賠責保険は、全国の交通事故被害者に迅速かつ公平に対応する必要性から、画一的な基準で判断することになりますので、本来であれば後遺障害等級認定されるべきであるにもかかわらず、認定されないことがあります。このような場合には、被害者は、裁判所に訴訟を提起し、後遺障害等級の認定と認定を前提とした損害賠償の支払いを求めることになります。

(2)3つの算定方法による後遺症慰謝料を一覧表で比較

後遺障慰謝料は、等級によって基準額が決まっているため、入通院慰謝料のように実際に計算する必要はありません。
任意保険の基準は、一般的に自賠責の基準とほぼ変わらないか約2割上乗せされる程度ですので、被害者本人の後遺症慰謝料について、自賠責の基準と弁護士の基準を表で比較してみましょう(2020年4月1日以降に発生した事故について)。

等級自賠責の基準弁護士の基準
第1級1150万円(1350万円※)2800万円
第2級998万円(1168万円※)2370万円
第3級861万円(1005万円※)1990万円
第4級737万円1670万円
第5級618万円1400万円
第6級512万円1180万円
第7級419万円1000万円
第8級331万円830万円
第9級249万円690万円
第10級190万円550万円
第11級136万円420万円
第12級94万円290万円
第13級57万円180万円
第14級32万円110万円

※被害者に被扶養者がいる場合

どの等級をみても、弁護士の基準は自賠責の基準の2倍以上となっていることがわかります。
また、裁判においては、重度の後遺障害の場合、本人の他に一定の近親者にも別途慰謝料請求権が認められるケースもあります。被害者の年齢や後遺障害の内容にもよりますが、100万~300万円であることが多いようです。
後遺障害は、等級が高ければ高いほど、認められる後遺症慰謝料の額も高くなり、算定基準による金額の差も多額になります。
被害者が適切な賠償を受けるためには、被害者にとって一番有利となる弁護士基準(裁判所基準)で計算されることがポイントとなります。
ですが、自分で任意保険会社に弁護士の基準で後遺症慰謝料を算定するよう請求しても、まず応じてもらえないでしょう。
弁護士が、場合によっては訴訟も辞さない姿勢で毅然と保険会社と交渉することによって、弁護士の基準で話し合うことができるようになるのです。

死亡慰謝料の3つの算定方法による金額を比較

交通事故で被害者が亡くなってしまった場合、被害者本人は死亡慰謝料を請求することができます。被害者本人は亡くなっていますので、本人の慰謝料請求権を遺族が相続したものとして、遺族が請求することになります。死亡事故の交通事故賠償金を相続する場合、賠償金に相続税は課されない取り扱いです。
また、裁判では、被害者の一定のご遺族は、被害者の死亡により精神的苦痛を受けたとして、遺族固有の死亡慰謝料を請求することができます。
一定の遺族とは、基本的に被害者の両親、配偶者及び子(胎児を含む)のことを指しますが(民法711条、721条)、同居し親密な関係にあるなどの事情によっては内縁関係、祖父母、兄弟、孫などに慰謝料の支払いが認められることもあります。

(1)自賠責の基準による死亡慰謝料

自賠責の基準では、死亡慰謝料は次の通りです。

  • 被害者本人の慰謝料     400万円
  • 遺族の慰謝料
    請求権者1人の場合     550万円
    請求権者が2人の場合    650万円
    3人以上の場合       750万円

※被害者に被扶養者がいる場合 上記の額に各200万円加算

例えば、被害者に配偶者と子供2人(幼児)がいた場合の死亡慰謝料を計算してみましょう。

400万円(本人の慰謝料) + 750万円(遺族の慰謝料・請求権者は3人以上) + 200万円(被扶養者あり)=1350万円

となります。

(2)任意保険の基準による死亡慰謝料

任意保険会社が示談交渉で提案する死亡慰謝料の金額は、被害者の属性によって相場が決められているようですが、自賠責保険と同程度か2~3割上乗せされる程度で、通常は2000万円未満であり、弁護士の基準と比べると相当程度低額になることがほとんどです。

(3)弁護士の基準による死亡慰謝料

任意保険基準同様、被害者の属性によって死亡慰謝料額の相場が決まっています。
「赤い本」によると、弁護士の基準は次の通りで、具体的事情により増減される場合があります。被害者本人と一定の遺族の死亡慰謝料を合計した金額です。

  • 一家の支柱(※)          2800万円
  • 母親・配偶者            2500万円
  • その他(高齢者、独身の男女、幼児等)2000万~2500万円

※「一家の支柱」とは、被害者の世帯が、主として被害者の収入で生計を立てている場合をいいます。

同じように、被害者に配偶者と子供2人(幼児)がいた場合の死亡慰謝料を計算してみましょう。
被害者の属性が「一家の支柱」だとすると、死亡慰謝料の額は2800万円になりますので、自賠責保険基準の2倍以上の金額となります。

交通事故の慰謝料が増額される可能性がある場合

入通院慰謝料、後遺症慰謝料、死亡慰謝料ともに、具体的な事情が考慮されて、基準からさらに増額される可能性や、逆に減額される可能性もあります。
まずは、交通事故の慰謝料が増額されたケースについて、赤い本や裁判例を参考に説明していきます。

(1)被害者が死亡するまで入院していた場合

被害者が亡くなった場合、死亡慰謝料の金額が多額になるので忘れがちですが、亡くなるまでに入院して治療していたのであれば、入通院慰謝料を請求することもできます。
そして、入通院慰謝料は次のような場合に増額されますので、増額して請求することも検討しましょう。

  • 傷害の部位・程度によっては別表Ⅰの金額を20~30%増額する
  • 生死が危ぶまれる状態が継続したとき、麻酔なしでの手術など極度の苦痛を被ったとき、手術を繰り返したとき

(2)加害者に著しく不誠実な態度がある場合

被害者(仕事をしている母親)が亡くなった交通事故で、加害者が刑事事件の法廷で謝罪したい旨述べながら結局謝罪せず、裁判所から謝罪を示唆されたのに謝罪しなかったことなどが考慮され、基準から増額して、合計2900万円(本人、夫、両親)の死亡慰謝料を認めた裁判例があります(埼玉地方裁判所判決平成24年10月22日・自保ジャーナル1886号81頁)。

被害者(単身者)が亡くなった事例で、加害者が刑事事件や民事事件で自分には過失がないなど不合理な弁解を続けていたことを考慮し、基準から増額して、合計2800万円(本人と両親)の死亡慰謝料を認めた裁判例があります(名古屋高等裁判所判決平成23年9月22日・自保ジャーナル1872号20頁)。

被害者(一家の支柱・男性)が亡くなった交通事故で、加害者は事故直後に謝罪したが、半年後から衝突したことを否定し、刑事事件手続きでは不合理な供述を繰り返すなどしたことが考慮され、基準から増額して、合計3100万円(本人、妻、子2人)の死亡慰謝料を認めた裁判例があります(東京地方裁判所判決平成23年9月16日・自保ジャーナル1860号144頁)。

(3)加害者に悪質な交通違反がある場合

被害者(単身者)が亡くなった交通事故で、加害車両は最大積載量の3.4倍を超える荷物が積載されていたことに加えて、最大積載量を偽るステッカーを張るなど過積載の態様も悪質だったことなどが考慮され、基準から増額して、合計2800万円(本人と父親)の死亡慰謝料を認めた裁判例があります(京都地方裁判所判決平成27年3月9日・交民49巻5号1304頁)。

姉妹2名(ともに単身者)が亡くなった交通事故で、はみ出し通行禁止場所で高速で追い越しをしようとした加害者の危険な運転態様などを考慮し、基準から増額して、一人当たり合計2800万円(本人と両親)の死亡慰謝料を認めた裁判例があります(秋田地方裁判所判決平成22年9月9日・自保ジャーナル1840号75頁)。

被害者(単身者)が外面醜状及び疼痛(7級12号)の後遺障害を負った交通事故で、加害者が酒気帯びかつ制限速度25km超で追突しそのまま現場から立ち去ったという悪質性などを考慮して、基準から増額して、1250万円の後遺症慰謝料を認めた裁判例があります(東京地方裁判所判決平成20年7月22日・交民41巻4号935頁)

(4)被害者の親族が極めて大きな精神的打撃を受けた場合

被害者(生後6ヶ月)が亡くなった交通事故で、加害者が無免許運転であること、不妊治療を受けてようやく出生した子であること、子が道路に投げ出される光景を目撃した母親がPTSDと診断され治療継続の必要があることなどを考慮し、基準から増額して、合計3000万円(本人と両親)の死亡慰謝料を認めた裁判例があります(名古屋地方裁判所判決平成14年12月3日・交民35巻6号1604頁)。

(5)ケガが重大で治療に多大な苦痛を伴う場合

被害者(単身者・会社員・21歳女性)が高次脳機能障害等(1級3号)と1眼摘出(8級1号、併合1級)の後遺障害を負った交通事故で、生死の境をさまよい6回の大手術を受けたこと、若くして重大な障害を負ったこと、外貌にも著しい醜状が残ったことなどを考慮して、合計4000万円(本人と両親)の後遺症慰謝料を認めた裁判例があります(東京地方裁判所判決平成15年8月28日・交民36巻4号1091頁)。

交通事故の慰謝料が減額される可能性がある場合

次に、慰謝料が減額される事情について説明していきます。

(1)過失相殺された場合

交通事故は、事故の当事者のどちらか一方が100%事故の責任がある、というようなケースよりも、当事者共に一定の責任があるケースが多いです。この責任を、「過失割合」といい、過失割合の低い方を被害者としています。
被害者であっても、事故の過失割合があれば、その割合に従って、慰謝料が減額されます。これを、「過失相殺」といいます。
例えば、弁護士の基準の7級の後遺症慰謝料1000万円ですが、被害者に3割の過失がある場合には3割減額され、700万円となります。
過失相殺は、慰謝料だけではなく、交通事故により生じたすべての損害に対して行われますので、過失割合が高い場合には、減額される額も大きくなります。

ただし、自賠責の基準による算定額は、70%未満の過失については相殺されません。したがって、過失割合が60%程度である場合、弁護士の基準で過失相殺がされるよりも、過失相殺がされない自賠責の基準の方が賠償額が高くなるケースがあります。

(2)もともと症状があった場合

交通事故より前に、別の交通事故ですでに後遺障害を負っていたなどの既往症がある場合には、現在の症状に過去の事故の影響があると考えられて慰謝料が減額されることがあります。これを「素因減額」と言います。

自賠責保険は、同じ身体の部位に残存した症状について後遺障害等級が認定されている場合には、同じ後遺障害等級を認定しない運用です。既往症を超える等級が認定された場合には、「加重障害」として今回の認定等級から既往症の等級の差額の保険金額を支払います。
任意保険会社は、このような「加重障害」については、自賠責と同様に考え、任意保険の基準における今回の認定等級と既往症の等級の差額を提示するのが通常です。
弁護士の基準や裁判所では、事故前の症状や就労状況と、事故後の後遺症による影響等を詳しく検討して、具体的な損害額を算定することになります。

(3)被害者がすでに賠償金を受け取っている場合

自賠責保険からすでに慰謝料の支払いを受けている場合であっても、自賠責保険は最低限の被害者補償を迅速に行うことが目的の制度ですから、足りない部分について、加害者側任意保険会社に請求することができます。
このとき、請求できるのは足りない部分だけであって、二重取りできるわけではありませんので、すでに受領した慰謝料の分は、全体の損害賠償額から差し引かれます。(※)
※交通事故の既払金については、受領された保険金の種類や過失割合によって複雑な計算がありますので、具体的ケースについて疑問がある際には、専門家にご相談ください。

(4)過剰診療とされる場合

交通事故の被害者のほとんどは、人生で初めて交通事故の被害にあってケガを負ったので、どのような治療をどれくらい続ければよいかわかりません。そのため、症状が残る限り、医師の勧めるままに治療を継続することも少なくありません。
しかし、同じようなケガをした他の被害者に比べて治療期間が長すぎたり、治療費が高額すぎたりする場合は、すでに症状固定していたとして、症状固定時期を前倒しされ、その日以降の治療費が被害者負担とされることがあります。
これは、示談交渉中に加害者側の任意保険会社に主張される場合もありますし、裁判でもそのように認定されることがあります。
多くの場合、加害者側の任意保険会社は病院に治療費を支払い済みですので、「払い過ぎ」とされた治療費については、最終的に被害者の慰謝料等の賠償金から差し引かれて調整されることとなります。

交通事故の慰謝料を請求する方法は?一般的な手順を紹介

交通事故の慰謝料の額は、弁護士が弁護士の基準で交渉することで、増額する可能性が高くなります。また、事情によっては慰謝料の計算は困難な場合もあり、実際に金額の交渉をする際には、時間や労力も必要となります。
交通事故の慰謝料請求の一般的手順は次の通りですが、弁護士であれば、被害者の利益を第一に考えて、冷静に粘り強く交渉することができますので、まずは気軽に相談してみるとよいでしょう。

交通事故の慰謝料請求の手順

  1. ケガが完治するまで治療を行い、治療が終わった後(又は症状固定後)に各損害を算定
  2. 障害が残った場合には後遺障害等級認定を申請
  3. 2の結果が分かった後、示談交渉開始
  4. 示談が成立し、慰謝料を含む示談金を受け取る
  5. 示談が成立しない場合は、交通事故紛争処理センターのあっせんなどのADR(裁判外紛争解決手続き)を利用するか、裁判所に訴訟を提起する。

交通事故の慰謝料を請求する際の注意点

交通事故の慰謝料を請求するときの注意点を解説します。
詳しくは、「交通事故の示談、交渉を円滑にするためのタイミング、ポイントを弁護士が解説」の記事もご覧ください。

(1)治療が終わってから交通事故の慰謝料を請求する

治療が終わるまでは、完治するかどうかもわからず、後遺症が残るかどうかもわかりませんので、請求できる慰謝料の額や種類が確定しません。
治療が終わって完治するか、症状が残って症状固定と判断された後が、慰謝料の請求を考えるタイミングです。(※)
生活が苦しい場合には、まず自賠責保険から賠償金の一部(仮渡金)を受け取ったり、任意保険会社に治療費や休業損害の内払(前払い)を求めたりすることもできます。

※症状固定時期に争いがあったり、任意保険会社の治療費や休業損害の内払いが止まっている場合には、自費で治療継続中でも、時効に注意する必要があります。

(2)症状が残った場合は後遺障害等級認定を受けてから交通事故の慰謝料を請求する

後遺症が残った場合は、基本的に、後遺障害等級認定を受けることが、後遺症に対する慰謝料や逸失利益などの損害賠償を請求する前提となります。
被害者が希望すれば、加害者側の任意保険会社が申請の手続きを行ってくれますが(この申請方法を「事前認定」といいます)、保険会社が被害者に有利となる資料を積極的に集めてくれるとは限りません。少し申請の手間はかかりますが、被害者自身が申請を行った方がよいでしょう(この申請方法を「被害者請求」といいます)。
等級認定を受けたら、その等級を前提として、増額事由の有無を考慮しながら慰謝料の請求を行います。

もしも、正当な等級認定を得られなかった場合には、追加のカルテを取り付けたり、医学的な追加の検査や画像鑑定をして自賠責保険に異議申立てをします。また、一度だけですが、自賠責保険・共済紛争処理機構に後遺障害等級認定の調停を申し立てて、等級認定を求めることができます。これらの手続きは、被害者ご自身で行うこともできますが、効果的に手続きを行うためには、等級が認定されなかった理由を調べ、不足していた被害者に有利となる資料を集めることが必要ですので、専門知識や経験のある弁護士に依頼されることをお勧めします。

【まとめ】交通事故被害の相談はアディーレ法律事務所へ

この記事では、交通事故における慰謝料の相場や計算方法、請求手順について解説しました。
慰謝料の算定方法には3種類あり、どの基準で計算するかによって、慰謝料額が2倍以上になることがあります。
弁護士であれば、一番高くなる基準である弁護士基準(裁判所基準)で慰謝料を算定し、被害者の利益を一番に考え、細かな増額事情も踏まえて慰謝料を請求することができます。
また、交通事故の被害から元の生活を取り戻そうとしている大変な時期に、慰謝料の請求手続きや交渉を行うことは、時間と労力がかかりますし、ストレスになって生活に悪影響を及ぼすことも想定されます。
交通事故について弁護士に交渉を任せることで、それにかかる負担やストレスを軽減し、自分の生活を取り戻すことに集中する時間を確保することができるかもしれません。
交通事故の被害でお困りの方は、アディーレ法律事務所へご相談ください。

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