就職・転職する際、「社会保険完備」であるかは1つのポイントになりますよね。
保険料が天引きされる分手取り給料は少なくなりますが、万が一の事態が生じても手厚いサポートを受けられます。
今回は、どのような社会保険があるのか、また加入条件などをお伝えします。
社会保険制度の内容は、年々更新されていくので、最新の情報をチェックするようにしましょう。今回ご紹介するのは、2021年1月10日時点の情報です。
社会保険とは
社会保険とは、国民の生活を保障するために国が設けた公的な保険制度です。
ケガをしたときや定年退職をしても一定の場合に収入を得られるのが社会保険のメリットです。
広く社会保険というと次の5つを指します。
- 公的医療保険
- 公的年金
- 介護保険
- 雇用保険
- 労災保険
このうち、労災保険は雇い主が保険料を全額負担しますが、それ以外のものは雇い主と従業員が保険料を負担します。
(1)医療保険
日本では国民皆保険制度が採られているため、私たち国民は何らかの医療保険に加入しなければなりません。
サラリーマンなどが加入する「健康保険」、自営業者などが加入する「国民健康保険」が公的医療保険の代表例です。そのほか船員が加入する「船員保険」、公務員が加入する「共済組合」があります。
医療費の自己負担額は次のとおりです。
一般・低所得者 | 現役並所得者 | |
---|---|---|
75歳~ | 1割 | 3割 |
70~74歳 | 2割 | |
6~69歳 | 3割 | |
6歳(義務教育就学前)未満 | 2割 | — |
(2)年金保険
公的年金としては、国民年金と厚生年金の2つがあります。
国民皆年金となっていますので、私たち国民は何らかの公的年金制度に加入しなければなりません。
かつては公務員や私立学校教職員を対象とした「共済年金」がありましたが、2015年10月に共済年金は厚生年金に統合されました。
個人事業主やフリーランスは厚生年金に加入できません。
これに対して、会社勤めであれば、2020年6月5日年金改革関連法が公布されたことで、パートでも厚生年金に加入できる方が段階的に増えていく予定です。
参考:年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました|厚生労働省
(3)介護保険
介護保険とは、介護を必要とする人が少しの負担で介護サービスを受けるための保険制度です。
たとえば、次のようなサービスを受けることができます。
- 介護士による訪問介護サービス
- 介護施設に入所するサービス
- 病院などでのリハビリのサービス
40歳以上になると介護保険に加入し、保険料を支払う必要が生じます。
40歳から64歳までは健康保険料と一緒に支払い、65歳以上の場合には原則として年金から天引きされていく仕組みです。
給付を受けるには、
- お住まいの市区町村の介護保険担当窓口で申請をして、要介護認定(要支援認定)を受ける
- ケアマネジャーに依頼して、ケアプランを作成してもらう
- 介護サービスを提供する事業者に、「介護保険被保険者証」+「介護保険負担割合証」を提示して、ケアプランに基づいて介護サービスを利用し始めます。
一部のサービスを除き、サービス利用金額のうち基本的に1割を負担しますが、所得に応じて3割まで増えることがあります。
参考:介護保険制度について(40歳になられた方へ)|厚生労働省
参考:平成30年8月から現役並みの所得のある方は、介護サービスを利用した時の負担割合が 3割になります|厚生労働省
(4)雇用保険
雇用保険とは、労働者が失業した場合や、雇用の継続が困難となった場合、育児休業をした場合などに、一定額が給付されるものです。
また、失業中・在職中の職業訓練などの費用も雇用保険から給付されます。
具体的には、失業給付金や教育訓練給付金などを受けることができます。
雇用保険に加入するための条件は、原則として次の3つです。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがある方
- 昼間学生でないこと
正社員に限らず、パート・アルバイトであっても条件を満たせば雇用保険に加入しなければなりません。雇い主や従業員の意思は関係ありません。
(5)労災保険
労災保険とは、従業員が仕事中や通勤中にケガや病気などをしたときに備える保険です。
例えば、次のようなものがあります。
- 療養(補償)給付
- 休業(補償)給付
- 障害(補償)年金
- 障害(補償)給付
- 介護(補償)給付
- 遺族(補償)給付
- 葬祭料(葬祭給付)
- 二次健康診断等給付
一部の事業所を除き、正社員に限らず、パートやアルバイトを一人でも雇用すれば、事業主は、労災保険に加入する義務があります。
2016年10月から社会保険(年金保険及び健康保険)の加入対象が拡大
2016年10月1日から社会保険(年金保険及び健康保険)の適用範囲が拡大されました。
従来、「週30時間以上労働」という絞りがかけられていたのですが、原則として次の5つの条件をすべて満たす場合には、社会保険(年金保険及び健康保険)の適用対象となったのです。
- 従業員規模501人以上の企業
- 1週間あたりの所定労働時間が20時間以上
- 月額の所定内賃金(※)が8万8000円以上
※ボーナス、残業代、通勤手当などを除く - 1年以上雇用される見込みであること
- 昼間学生ではないこと
さらに、2017年4月1日から従業員規模500人以下の企業であっても、労使間で合意すれば、会社単位で社会保険(年金保険及び健康保険)に加入できるようになりました。
※個々の労働者が社会保険(年金保険及び健康保険)に加入するためには、上記2~5の条件を満たす必要があります。
参考:平成28年10月から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がっています!(社会保険の適用拡大)|厚生労働省
パート・アルバイトの社会保険(年金保険及び健康保険)について
パート・アルバイトの人が社会保険(年金保険及び健康保険)に加入することを義務付けられるのは次の2つの条件を満たす場合です。
- 週の所定労働時間が一般社員(常用雇用者)の4分の3以上
- 1ヶ月の所定労働日数が一般社員(常用雇用者)の4分の3以上
たとえば、一般社員の週の労働時間が40時間、月の所定労働日数が20日である場合には、1週間に30時間以上、1ヶ月に15日以上働くパート・アルバイトが社会保険に加入する必要があります。
もっとも、この条件にあてはまらなくとも、上記のとおり、
- 2016年10月以降は、従業員規模が501人以上の会社
- または2017年4月1日以降は、従業員規模500人以下の企業でも年金保険・健康保険の加入につき労使間の合意ある場合
であればパートやアルバイトの方でも次のいずれの条件を満たす限り、社会保険(年金保険及び健康保険)に加入しなければならなくなりました。
- 1週間あたりの所定労働時間が20時間以上
- 月額の所定内賃金(※)が8万8000円以上
※ボーナス、残業代、通勤手当などを除く - 1年以上雇用される見込みであること
- 昼間学生ではないこと
社会保険に加入するメリット
何のために社会保険があるのかわからないと、給料から天引きされていくことに抵抗を感じるかもしれません。社会保険は万が一の事態が生じたときに私たちを支えてくれる保険です。以下では、年金保険と健康保険について説明します。
参考:パート・アルバイトの皆さんへ社会保険の加入対象が広がっています。|政府広報オンライン
(1)老後にもらえる年金が増える
厚生年金に加入すると、全国民共通の基礎年金に加えて、在職中の給料の額に基づいて計算された保険料を納入し(報酬比例)、厚生年金を受け取ることができます。
たとえば、厚生年金に40年間加入し毎月8000円の保険料を納めると、将来受け取る年金の金額は1万9000円増えます。
(2)障害年金と遺族年金の支給額が増える
厚生年金の加入期間中に障害のある状態になると、障害基礎年金に加えて障害厚生年金が支給されます。また、万一亡くなった場合にも、遺族は遺族基礎年金のほかに遺族厚生年金を受け取ることができます。
(3)けがや病気、出産の際、健康保険は給付が充実している
健康保険に加入していれば、けがや病気、出産などで仕事を休まなければならない場合でも、傷病手当金や出産手当金として賃金の3分の2程度の給付を受け取ることが可能です。
(4)保険料の半分を会社が負担してくれる
厚生年金や健康保険では保険料を雇い主と従業員が半分ずつ負担するのに対して、国民年金や国民健康保険では被保険者本人が保険料を全額負担します。
社会保険に加入する際の手続きについて
社会保険(厚生年金保険・健康保険)の適用拡大により、新たにこれらの社会保険に加入する際の手続きをお伝えします。
基本的には勤務先の会社で手続きを進めてくれますが、国民健康保険の喪失届の提出など一部自分で行わなければならないこともあるので注意してください。
参考:パート・アルバイトの皆さんへ社会保険の加入対象が広がっています。|政府広報オンライン
(1)国民年金に加入している場合
勤務先の会社にて、厚生年金保険の加入手続きを行ってもらうようにしましょう。
(2)国民健康保険に加入している場合
勤務先の会社にて、健康保険の加入手続きを行ってもらうようにしましょう。
ただし、国民健康保険の資格喪失の届け出は自身で行う必要があります。
手続きには、次の3つの書類が必要となります。
詳しくはお住まいの市役所でお尋ねください。
- 新しく加入した健康保険証
- 不要となった国民健康保険証
- マイナンバー(個人番号)の確認できる書類・本人確認書類(運転免許証など)
窓口に直接行くのが難しい場合には、郵送で手続きを進めることもできます。
(3)配偶者の健康保険に加入している場合
勤務先の会社にて、健康保険の加入手続きを行ってもらうようにしましょう。
ただし、配偶者の健康保険の資格喪失の届け出を配偶者の勤め先を通じて行う必要があるため、その旨を配偶者の勤め先に申し出ましょう。
【まとめ】社会保険の相談は専門家へ
社会保険には、公的医療保険、公的年金、介護保険、雇用保険、労災保険の5つがあります。
2016年10月から社会保険の加入対象が拡大しました。
本来であれば社会保険に加入できるはずなのに加入していないことになっている場合には、専門家に相談してください。