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執行猶予とは?「実刑」判決との違いや要件・期間・取り消さるケースについても解説

作成日:
kiriu_sakura

執行猶予とは、簡単に言いますと、有罪ではあるが、その刑の執行が一定期間先送りされる制度をいいます。

実刑判決は、判決後すぐに刑に服する必要があるのに対し、執行猶予付き判決の場合は、判決後すぐに刑に服する必要はありません。さらに、執行猶予期間内に犯罪を起こし執行猶予が取り消されることなく過ごすことができれば、基本的には刑が免除されることになります。

実刑判決が下されるか、執行猶予付き判決が下されるかは、被告人にとっては大きな違いがあります。

執行猶予が付く条件や執行猶予が取りけられ刑に服さなければならなくなってしまう条件などを知っておきましょう。

この記事では、

  • 執行猶予の内容と期間
  • 執行猶予がつく要件
  • 執行猶予が取り消されてしまう条件

について弁護士が詳しく解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

執行猶予とは

ここでは、執行猶予の内容や目的と執行猶予が認められる期間について説明します。

(1)執行猶予の内容

執行猶予とは、簡単に言うと、「刑罰の執行の猶予」です。
具体的にいうと、有罪判決による刑の執行を一定期間の間先送りとし、その期間に別の犯罪を起こすことなどして執行猶予が取り消されることなく、無事に過ごすことができれば、刑が免除されるという制度です。

例えば、実刑判決の場合、「懲役2年」という判決が言い渡されると、刑務所などにすぐに入れられて、刑に服することになります。

しかし、執行猶予付き判決の場合、例えば、「懲役2年、執行猶予3年」という判決が言い渡された場合、すぐに刑務所に入るのではなく、3年間、懲役刑の執行を先送りにします。
そして、再び犯罪を行うことなどして執行猶予が取り消されることなく猶予期間を経過すれば、言い渡された刑罰(懲役2年)を受ける必要はなくなります(なお、前科はつきます)。

執行猶予期間は、刑務所に入るということはなく、基本的に普通に生活することができます(場合によっては保護観察が付くケースもあります)。

<コラム>執行猶予の中の保護観察とは?

保護観察とは、犯罪をした人が社会の中で更生できるように、保護観察官や保護司の指導や支援を受けながら社会復帰を促す制度のことをいいます。

特に、再犯防止の必要性が大きい場合には、裁判官から判決で執行猶予とともに保護観察が命じられる場合があります(なお、再度の執行猶予の場合には保護観察を付けることが必要であるとされています)。

保護観察が付けられると、保護観察官や保護司は、社会復帰ができるように支援を行うと同時に、定期的に面接を行い、きちんと生活ができているか、遵守事項を守って生活しているか確認します。

遵守事項(ルール)を守れない場合には、違反に対する措置が取られる場合があります。また、場合によっては、執行猶予が取り消されるケースもあります。

参考:保護観察所|法務省

(2)執行猶予の目的

「犯罪を起こした人に対して、一定期間を過ぎれば刑罰が免除されるなんてけしからん!」などと思っている人もいるかもしれません。

では、執行猶予の目的とは何でしょうか?

簡単に言うと、執行猶予の目的は、被告人の更生(社会復帰)を促し、再犯を防止するためです。

確かに、刑務所への収容は、犯罪への更生改善という点では必要な刑罰といえるでしょう。

しかし、刑務所へ長期に収容することは、犯罪を起こした人を社会から断絶させ(例えば、仕事や住居などを失うことになります)、社会復帰をより困難にしてしまうという側面があります。
一度犯罪を起こした人が、うまく社会復帰ができなかった場合、再度犯罪を起こしてしまうことも少なくありません。

そこで、被告人が初犯であり、犯罪が軽微な場合には社会の中で社会復帰の機会を与えることで、再犯を防止するという目的があります。

(3)執行猶予の期間

執行猶予の期間については、1~5年とされています。
期間については、犯罪の重さや被告人の反省の態度なども加味し、裁判官が判断します。

執行猶予が付く要件とは

執行猶予が付く要件として、刑法25条は次のような条件を定めています。

第二十五条 次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。

一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。

引用:刑法25条

例えば、3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金の刑の言い渡しを受ける場合に、前に禁錮以上の刑を受けたことがない者(禁錮以上の刑から5年以内に禁錮以上の刑を受けたことがない者)については、執行猶予が付く可能性があります。

一方、法律で定められている最低の刑罰が懲役3年を超える罪の重い犯罪(例えば、殺人(下限が5年以上の懲役)、傷害致死(下限が3年以上の懲役)、強盗(下限が5年以上の有期懲役)などの場合)は、刑を軽減する事情がない限り、裁判所が執行猶予付きの判決をすることはできません。

<コラム>刑の一部の執行猶予とは?

2016年6月1日、新たに刑の一部執行猶予制度が新設され、施行されました。
刑の一部執行猶予とは、一部の刑期については服した上で、残りの刑期は執行猶予とされる制度です。

例えば、「懲役2年、その刑の一部である懲役6月の執行を2年間猶予する」との判決がされた場合には、1年6ヶ月間刑務所で刑期に服した上、2年間執行猶予期間を過ごすことになります。執行猶予期間に犯罪を起こすことなく、無事に過ごすことができれば6ヶ月の刑期は服す必要はなくなります。

一部執行猶予の判決が言い渡されるケースでは、執行猶予期間中に保護観察が付くケースが多いといえます。

執行猶予が付く要件が揃っても必ず執行猶予になるわけではない

執行猶予が付く要件が揃っても必ず執行猶予になるわけではありません。
執行猶予が付くかどうかはあくまでも裁判官が判断することになります。

犯罪の軽重や前科の有無のみならず、具体的な事件の内容や被害者との和解の有無、犯罪を起こした人の反省の有無なども考慮して執行猶予を付けるかどうかを裁判官が決めます。

執行猶予が取り消されてしまう条件

執行猶予が取り消されてしまう条件には、必ず取り消されてしまう場合ときと裁判官の判断で執行猶予が取り消されてしまう場合があります。

なお、ここでは、刑の全部について執行猶予の取り消しの条件について説明します。

(1)執行猶予が必ず取り消されるケース

刑法26条は、次の場合には、執行猶予を取り消さなければならないと定めています。

一 猶予の期間内に更に罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言渡しがないとき。
二 猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言渡しがないとき。
三 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられたことが発覚したとき(※)。

引用:刑法26条

例えば、懲役1年、執行猶予3年の判決を言い渡されてから2年後に懲役2年の実刑判決を受けると、「必ず」執行猶予が取り消されてしまうので、執行猶予が取り消された懲役1年と新たに犯した罪の懲役2年、合計3年も刑務所に入らなければならなくなります。

このように、執行猶予が付けられている場合、執行猶予期間に再度犯罪を起こすことなんてないのではないかと考えてしまう人もいるかもしれません。しかし、特に薬物犯罪や性犯罪などの依存性の高い犯罪については執行猶予期間に再犯をしてしまう人も少なくありません。

依存性の高い犯罪によって執行猶予が付けられた方に関しては、ご家族やお友達などが注意しておくことも重要でしょう。また、病院などで治療を受けられることも検討されるとよいでしょう。

(2)執行猶予が取り消される可能性がある条件

刑法26条の2は、次の場合には、裁判所の判断により、執行猶予を取り消すことができると定めています。

一 猶予の期間内に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき。
二 保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守せず、その情状が重いとき。
三 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その執行を猶予されたことが発覚したとき。

引用:刑法26条の2

例えば、執行猶予の期間内に別の罪を犯して罰金刑に処せられたときは、裁判所の判断により執行猶予が取り消されることがあります(必ず取り消されるわけではありません)。

【まとめ】執行猶予とは刑の執行が一定期間先送りされる制度

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 執行猶予とは、有罪判決による刑の執行を一定期間の間先送りとし、その期間に別の犯罪を起こすことなく、無事に過ごすことができれば、刑が免除されるという制度。
  • 執行猶予によって、被告人の更生(社会復帰)を促し、再犯を防止することを目的としている。
  • 例えば、3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金の刑の言い渡しを受ける場合に、前に禁錮以上の刑を受けたことがない者などについては、執行猶予が付く可能性がある。
  • 一方、執行猶予期間内に禁錮以上の刑(例えば、懲役2年など)の言い渡しを受け、その判決に執行猶予が付けられていなかった場合には、執行猶予は取り消されることになります。

ご家族や知人が逮捕され、お困りの方は、刑事事件を取り扱う弁護士への相談をおすすめします。

この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

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