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不倫慰謝料が払えない!親が払わなければならないケースはある?

作成日:更新日:
kiriu_sakura

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

ここを押さえればOK!

不倫の慰謝料は基本的に不倫をした本人が支払うものであり、親に支払い義務はありません。
ただし、親が(連帯)保証人になった場合や任意の支払いに応じた場合には、例外的に親が慰謝料を支払うこともあります。

また、親が保証人になるためには、親の同意と有効な書面が必要です。
慰謝料を請求された場合には、本当に慰謝料を支払う義務があるのかを確認し、支払う義務がある場合でも、減額や分割を求めるようにしましょう。
慰謝料請求を無視していると裁判になる可能性が高まり、示談交渉や裁判で不利になる可能性があります。また、請求を無視することで相手が怒りを募らせる可能性もあります。

「『あなたが不倫の慰謝料を支払えないなら、代わりに親に請求する!』と言われた…。慰謝料を払えないと親に請求されて、親にバレるの?」

あなたが既婚者と不倫をして、相手の配偶者から不倫の慰謝料を請求されて払えない場合でも、基本的に、あなたの親が代わりに支払わなければならない義務はありません。

また、相手の配偶者が、あなたが不倫をしたことを故意にあなたの親にバラすことは、プライバシー侵害などの不法行為に当たる可能性もあります。

この記事を読んでわかること
  • 親が慰謝料を支払う義務の有無
  • 親が慰謝料を支払う例外的なケース
  • 親に迷惑をかけないための対処法
この記事の監修弁護士
弁護士 池田 貴之

法政大学、及び学習院大学法科大学院卒。アディーレ法律事務所では、家事事件ドメイン(現:慰謝料請求部)にて、不貞の慰謝料請求、離婚、貞操権侵害その他の男女トラブルを一貫して担当。その後、慰謝料請求部門の統括者として広く男女問題に携わっており、日々ご依頼者様のお気持ちに寄り添えるよう心掛けている。第一東京弁護士会所属。

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目次

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不倫の慰謝料が支払えなくても基本的に、親に支払い義務はない

今回は、夫が妻以外の女性と不倫をしたというケースで、不倫をしていた女性の立場からご説明します(夫を「不倫相手」、妻を「慰謝料を請求する側」と言います)。

不倫の慰謝料は、基本的に不倫をした本人が支払うものです。
原則として、本人以外の親や親族が慰謝料の支払義務を負うことはありません。

そのため、不倫の慰謝料を請求する側の妻から「あなた(本人)が払えないのであれば、代わりに親に請求する」と言われた場合には、あなた(本人)から慰謝料を請求する側に対し、親には慰謝料を支払う法的義務はないことを伝えるようにしましょう。

また、不倫の慰謝料を請求する側の妻から「あなたが慰謝料を払わないなら、親にあなたが不倫をしていたことを伝える」と言われ、実際に親にバラされてしまうこともあるかもしれません。

この場合には、脅迫などの犯罪に当たる可能性や、プライバシー侵害などの不法行為が成立する可能性がありますので、警察や弁護士に相談するようにしましょう。

不倫の慰謝料を親が支払うことになる例外的なケース

このように、あなた(本人)が不倫の慰謝料を払えない場合でも基本的には親が支払うということにはなりません。

しかし、次のケースでは、例外的に不倫の慰謝料を親が支払うこともあります。

  1. 親が不倫の慰謝料の(連帯)保証人になった場合
  2. 親が任意の支払いに応じた場合

(1)親が不倫の慰謝料の(連帯)保証人になった場合

請求する側(妻)とされる側(本人)が慰謝料の支払について合意して、その際に親が保証人あるいは連帯保証人となった場合には、親も不倫の慰謝料の支払義務を負うことになります。

ただし、(連帯)保証人をつけるためには、(連帯)保証人となる者が、(連帯)保証人になることをしっかり理解・合意をして法律上の条件を満たした書面を作成することが必要です。

つまり、慰謝料を請求する側と本人の間で、親の承諾なしに、勝手に親を(連帯)保証人とすることはできません。親の承諾もないままに親を(連帯)保証人とする契約書を作成しても、その保証契約は無効です。それに基づいて親がお金を支払わなければならないことはありません。

親が(連帯)保証人となって慰謝料を支払う必要があるケースとは、あくまでも親が(連帯)保証人になることを承諾して、有効な保証契約書を作成している場合です。

(2)親が任意の支払いに応じた場合

このように、原則として、慰謝料の支払義務を負うのは不倫をした本人であって、親は慰謝料の支払義務は負いません。

もっとも、親がすでに不倫の事実や、子供が慰謝料が支払えずに困っていることを知っているケースでは、親としての責任感から任意に不倫の慰謝料の支払いに応じることもあります。

そして、親が本人と共に慰謝料を請求する側と話し合い、本人が請求されている慰謝料を支払うこともあります(※親が支払うには、原則として本人の同意が必要です)。

結局、親の同意もないのに、不倫をしていた本人の親が慰謝料の支払義務を負うことは、基本的にはありません。

不倫をした事実が親にバレやすいケースとは?

「不倫をしたなんて、親にはとても言えない…。不倫が親にバレることってある?」

この点、不倫をした本人が未成年である場合、本人が親権者の同意なしに慰謝料の支払いに合意しても、その合意は一定の場合、親が取り消すことができると民法で定められています。

そのため、本人が未成年者である場合には、慰謝料を請求する側が示談交渉の際に親の同席を求めるケースが一般的であり、不倫について親に知られてしまうのはやむを得ない面があります。

逆に、あなたが成人しているのであれば、親に不倫の事実を伝える必要はないといえます。

ただし、あなたが親と同居している場合、慰謝料を請求する内容証明郵便が自宅に届いたり、裁判になった時は訴状などが自宅に届きますので、それをきっかけに親に不倫をした事実がバレてしまう可能性はあります。

親に迷惑をかけないための2つの対処法

不倫の慰謝料を支払えない場合でも、親に迷惑をかけたくないと思うのは当然です。

そこで、ここでは、不倫の慰謝料を支払えない場合でも親に頼らずにすむ2つの対処法について解説します。

そもそも、あなたに不倫の慰謝料を支払う義務が本当にあるのかを確認しましたか。

また、減額や分割はできないかと不倫の慰謝料を請求する側に交渉したでしょうか。

親に迷惑をかけないためには、本当に不倫の慰謝料を支払わなければならないのかを確認し、次の2つのパターンのどちらかで交渉してみましょう。

  • (あなたに慰謝料を支払う義務がない場合)支払い義務がないと主張する
  • (あなたに慰謝料を支払う義務がある場合)減額や分割払いを交渉する

交渉や具体的状況次第では、慰謝料の支払義務自体がなくなる可能性や、減額や分割が認められる可能性があります。

(1)慰謝料の支払義務があるかを確認する

不倫の慰謝料の支払義務があるかないかは、不貞行為(肉体関係を伴う不倫)の有無や、夫婦の状況、事実の把握などによって、左右されます。

たとえば、次のようなケースではあなたに不倫の慰謝料を支払う義務がない可能性があります。

  1. 肉体関係を持つには至っていない場合
  2. 既婚者であることを過失なく知らなかった場合
  3. 不倫を始めた当時すでに夫婦関係が破綻していた場合
  4. 自らの意思で肉体関係を持っていない場合      など

(1-1)肉体関係の伴う不倫がない場合

肉体関係がなければ、不倫の慰謝料を支払う必要がないのが原則です。

ただし例外として、社会通念上、許されない親密な関係を持っていた場合があります。

たとえば、頻繁にデートを重ねて、キスなどの行為をしていたときです。既婚者と親密な関係を持てば、「夫婦の平穏・円満な共同生活を送る権利」の侵害にあたり、肉体関係はなくても慰謝料を支払わなければならないと判断されるケースもあります。

(1-2)既婚者であることを過失なく知らなかった場合

肉体関係を持った時点で、不倫相手が既婚者であることを過失なく知らなかった場合には不倫の慰謝料を支払う必要がない可能性があります。

そもそも、不倫の慰謝料請求が認められるためには、あなたに既婚者だと知りながら不倫をしたか、気づくべきだったのに不注意で知らなかったという「故意・過失」が必要になるからです。

したがって、あなたが既婚者であることを知らずに、かつ、知らなかったことについてあなたに落ち度がない場合、不倫の慰謝料を支払う必要はありません。

ただし、「故意・過失」は、単に「知らなかった」と言えば、当然に認められるわけではありません。「故意・過失」の有無を判断するには専門的な知識が必要となります。

(1-3)不倫を始めた当時すでに夫婦関係が破綻していた場合

夫婦が長年別居しているなど、あなたとの不倫が始まる前から相手の夫婦関係が完全に破綻している場合には、法律が保護している「夫婦が平穏・円満な共同生活を送るという権利」が存在しないため、慰謝料の請求は認められません。

ただし、夫婦が別居する理由は様々であり、お互い頭を冷やすための一時的な別居や、長期間別居していても夫婦として頻繁に連絡し合っているなどの場合には、通常、夫婦関係が破綻しているとは判断されないでしょう。

夫婦関係が破綻していたといえるかどうかは、専門的な知識が必要な難しい判断となります。
そのため、自分の不倫相手の場合において、夫婦関係が破綻していたといえるかについては、弁護士に相談すると良いでしょう。

婚姻関係の破綻について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

婚姻関係の破綻は認められる?認められない?両パターンの判例を交えて解説

(1-4)自らの意思で肉体関係を持っていない場合

たとえば、不同意性交等罪(刑法177条)に該当するような状況で相手と肉体関係を持たされた場合、基本的には、あなたに責任はなく、不倫の慰謝料の支払いに応じる必要はありません。

ただし、自分の意思で断ることができた場合など、このような主張が認められるとはかぎらず、具体的状況次第になります。

不倫の慰謝料の支払義務がないと主張する場合には、不倫の慰謝料を支払わなくてもよくなる可能性があります。

ただし、支払義務がないと主張する場合には示談交渉がまとまりにくくなり、裁判となってしまう可能性が高まってしまうかもしれません。
裁判を避けたい場合には、誤解を招く行動をしてしまったとして、解決金を提示する方法もあり、請求する側がこれに応じれば、裁判を避けることができます。

(2)支払義務があることを認め、減額や分割を求める場合

これまで説明した不倫の慰謝料の支払義務がない4つのケースに当てはまらない場合、つまり、不倫の慰謝料の支払義務があることを認める場合には、減額や分割払いを交渉しましょう。

不倫の慰謝料を支払う義務があると認めるが、慰謝料を一括で支払えない場合には分割交渉、慰謝料の減額を求める場合には慰謝料の減額交渉をすることになります。

(2-1)分割交渉

あなたと慰謝料を請求する側との双方の合意があれば、分割払いにすることが可能です。回数も、交渉次第です。

分割交渉をしても「一括で支払ってもらいたい」と頑なに主張してくる人もいますが、一般的には「支払ってもらえるなら、分割払いを認める」と譲歩する人が多く、分割払いは認められやすい傾向にあります。

なぜなら、一括の支払いを求めて裁判をして勝訴しても、お金がない人から、自主的な一括での支払いを期待することはできません。また、差押えをしても手間や費用がかかるうえ、本当にお金がなければ一括で回収することは困難だからです。

分割であっても、確実に支払ってもらえるのであれば、請求する側にもメリットがあります。

減額交渉が可能か検討したうえで、分割払いであれば不倫の慰謝料を支払えるという場合には、一度分割交渉をしてみましょう。

なお、通常、分割払いの合意をする際には、「分割払いの支払いが遅れたら、残額を一括で支払う」など、分割の支払いが確実に行われるようにするための条件が付きます。

したがって、確実に支払える額で合意することが大切です。

(2-2)減額交渉

減額交渉をする場合には、たとえば、請求金額が相場を逸脱していることや不倫の慰謝料の減額要素があることなどを主張して、減額を求めていくことになります。

不倫の慰謝料の減額が見込めるケースとしてはたとえば次のような場合があります。

  1. 相場とかけ離れた高額な慰謝料を請求された場合
  2. 不倫相手の方が積極的に誘ってきた場合
  3. 不倫をしていた期間が短い場合
  4. あなたの収入や資産が少ない場合
  5. あなたが真摯に反省・謝罪した場合      など
(2-2-1)相場とかけ離れた高額な慰謝料を請求された場合

相場とかけ離れた高額な不倫の慰謝料を請求された場合には、不倫の慰謝料を減額できる可能性があります。

そもそも、不倫の慰謝料の裁判上の相場は、不倫が原因で夫婦が離婚する場合は「およそ100万~300万円程度」、夫婦が離婚しない場合には「およそ数十万~100万円程度」です。

そのため、たとえば、500万円を超える請求をしてきた場合などは、特別な事情がない限り、相場からかけ離れていることを理由に、不倫の慰謝料を大幅に減額できる可能性があります。

ただし、あなたにとって不利になる事情が多い場合には、減額が認められにくいこともあります。

(2-2-2)不倫相手の方が積極的に誘ってきた場合

不倫相手が積極的に不倫に誘ったなど、不倫相手が不倫を主導していたような場合には、慰謝料を減額できる可能性があります。

たとえば、あなたと不倫相手が同じ職場で、不倫相手が上司であるという立場を利用してあなたを誘って肉体関係を持った場合にも、慰謝料を減額できる可能性があります。

(2-2-3)不倫をしていた期間が短い場合

不倫をしていた期間が短い場合には不倫の慰謝料が減額できる可能性があります。

長期間の不倫ではなく、肉体関係を持ったのは一度きりであった場合などには、慰謝料は低額になる傾向があります。

(2-2-4)あなたの収入や資産が少ない場合

あなたの収入が少なく、資産もほとんどない場合には、「責任は取りたいが、○○万円が支払える限度である」ことを、誠意を持って伝えることで、請求する側が減額に応じてくれる可能性があります。
先述したとおり、本当にお金がない人からお金を回収することは困難だからです。

ただし、「お金がない=支払う義務がない」ということではありませんので、真摯に謝罪することも大切です。

(2-2-5)あなたが真摯に反省・謝罪した場合

あなたが、不倫を深く反省し、真摯に謝罪をすれば、慰謝料を請求する側もあなたに対する「許せない」気持ちが和らぎ、その結果、減額に応じてもらえる可能性もあります。

不倫の慰謝料の請求を無視した場合の3つのデメリット

慰謝料を請求する側から「親に請求する」などと言われ、怖くなったとしても、慰謝料請求を無視することはおすすめできません。

不倫の慰謝料請求をされた場合には、無視せずにきちんと交渉を行うようにしましょう。請求を無視してしまうとさらに状況が悪化するおそれがあります。

不倫の慰謝料請求を無視した場合のデメリットは次の3つです。

  1. 裁判になる可能性が高まる
  2. 示談交渉や裁判で不利になる可能性がある
  3. 慰謝料の請求をする側がさらに怒りを募らせる可能性がある

慰謝料請求を無視した場合について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

不倫の慰謝料請求を無視したらどうなる?慰謝料請求された際の対処法

(1)裁判になる可能性が高まる

不倫の慰謝料請求を無視し続けると、請求する側が話し合いができないと判断して裁判を起こす可能性が高くなります。
裁判となれば、手間も時間もかかり、あなたに大きな負担がかかります。

また、裁判を起こされると、原則としてあなたの自宅に裁判所から訴状などの書類が届きます。

親と同居しているのであれば、裁判所からの郵便物に驚いた親に追及され、親に不倫の事実や裁判を起こされた事実を知られてしまう可能性があります。

(2)示談交渉や裁判で不利になる可能性がある

さらに、不倫の慰謝料請求を無視し続けると、示談交渉がまとまりにくくなったり、のちに裁判となった場合に、あなたにとって不利な要素となったりする可能性があります。

不倫の慰謝料の請求を無視し続けると、慰謝料請求をする側や裁判官は、あなたが無視をしていたことを、不誠実な対応であると評価する可能性があります。

(3)慰謝料を請求する側がさらに怒りを募らせる可能性がある

不倫の慰謝料請求を無視することで、慰謝料を請求する側がさらに怒りを募らせて、その後、減額交渉や分割交渉をしたいと思っても、交渉に応じてもらいにくくなる可能性があります。

【まとめ】不倫の慰謝料が支払えなくても、基本的に親が支払う義務はない

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 不倫の責任はあくまで不倫をしていた当事者にあり、基本的には親が慰謝料を支払う義務はない
  • 不倫の慰謝料を親が支払う例外的なケースは、親が不倫の慰謝料の保証人になった場合や親が任意の支払に応じた場合
  • 慰謝料を請求された場合には、本当に慰謝料を支払う義務があるのかを確認し、支払う義務がある場合でも、減額や分割を求めるようにする
  • 不倫の慰謝料の請求を無視した場合の3つのデメリット
  • 裁判になる可能性が高まる
  • 示談交渉や裁判で不利になる可能性がある
  • 慰謝料の請求する側がさらに怒りを募らせる可能性がある

あなたが不倫をしていたとしても、基本的に、あなたの親が慰謝料を支払う法律上の義務はありません。
しかし、不倫されて慰謝料を請求する側が激怒しており、「支払えないなら親に請求する」、「親に不倫の事実を伝える」などと主張してくるケースはあります。
親に法的な責任がないことを説明するだけでなく、冷静になって減額に応じてもらうためにも、弁護士に交渉を依頼すると良いでしょう。

アディーレ法律事務所では、不倫慰謝料を請求された事件の相談料は何度でも無料です。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため、費用倒れの心配はありません。

(以上につき、2023年2月時点)

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