実際に離婚している人は、どのような原因で離婚しているのでしょうか。
2020年9月に確認できる最新の統計(2018年度の司法統計)で、妻の場合と夫の場合、それぞれの原因を紹介していきたいと思います。
離婚の原因にはどのような理由がある?
話し合って離婚に合意できない場合には、次に、家庭裁判所に調停を申立てることになります。
家庭裁判所に調停を申立てる際には、申立書などに離婚原因を明記しますので、実際に調停を申立てた方が主張する離婚原因については、統計で知ることができます。
司法統計「性別離婚申し立ての動機別割合の推移(1975-2018)」から、実際に主張された離婚原因を紹介します。
次のように、様々な原因が挙げられています。
- 性格が合わない
- 異性関係
- 暴力を振るう
- 酒を飲み過ぎる
- 性的不調和
- 浪費する
- 病気
- 精神的に虐待する
- 家族を捨てて省みない
- 家族親族と折り合いが悪い
- 同居に応じない
- 生活費を渡さない
参考:性別離婚申し立ての動機別割合の推移(1975-2018)|司法統計
男女別で見る離婚原因ランキング
この司法統計からわかる男女別の離婚原因をランキング形式で紹介します。
離婚原因1位は夫も妻も「性格の不一致(性格が合わない)」です。
どの夫婦も大なり小なり抱えている問題であり、離婚の原因と考える方も大変多いようですね。
2位以降には男女で違いがみられますので、別々に紹介していきます。
(1)男性に多く見られる離婚原因
1位 性格が合わない(60.9%)
2位 精神的に虐待する(19.7%)
3位 異性関係(13.8%)
4位 家族との折り合いが悪い(13.4%)
5位 性的不調和(12.5%)
女性と比べると、男性は性的不調和(セックスレス、性的嗜好の不一致)の順位が高いです(女性は7.0%で8位)
また、家族との折り合いが悪いも4位と高く(女性は6.8%で9位)、男性が、女性と自分の家族との付き合い方に不満を持っている傾向が強いことが分かります。
(2)女性に多く見られる離婚原因
1位 性格が合わない(39.1%)
2位 生活費を渡さない(29.4%)
3位 精神的に虐待する(25.2%)
4位 暴力を振るう(20.8%)
5位 異性関係(15.8%)
男性と比べると、女性は生活費を渡さない、精神的に虐待する、暴力を振るうという経済的DV、精神的DV、身体的DVを離婚原因に挙げる割合が非常に多くなっています。
長期的にみると身体的DVは減少傾向にありますが、精神的DVと経済的DVは微増しています。
どのような離婚原因でも裁判で離婚できるのか
日本では、お互いが話し合って、協議や調停で離婚に同意することができれば、離婚原因は何であってもかまいません。
しかし、一方が離婚を拒否した場合には、離婚を希望する側は、離婚するためには裁判所に対して離婚訴訟を提起しなければなりません。
裁判所は、法で定められた離婚事由が存在する場合に限り離婚を認めますので、離婚訴訟の場合には、法定の離婚事由が存在するか否かが重要なポイントとなります。
(1)離婚訴訟で必要となる離婚原因
法定の離婚事由は次の5つです(民法770条1項各号)。
- 不貞行為(1号)
- 悪意の遺棄(2号)
- 3年以上の生死不明(3号)
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと(4号)
- 婚姻を継続しがたい重大な事由(5号)
男女ともに離婚原因第1位の性格の不一致は、直接的には法定の離婚事由に定められていません。
そのため、裁判所も、性格不一致が直ちに離婚原因になるとは考えていません。
ただし、性格の不一致が原因で、夫婦が努力しても婚姻関係が修復不能なまでに破綻していると認められれば、5「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するとして、離婚が認められる場合があります。
精神的・肉体的・経済的DVも、直接的には法定の離婚事由に定められていませんので、同じように5「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するか否かが判断されることになります。
(2)法定離婚原因があっても離婚できない場合がある
では、裁判所が法定の離婚原因があると認めた場合には、必ず離婚することができるのでしょうか。
実は、そうではありません。
民法770条2項には次のような規定があります。
裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
引用:民法770条2項
つまり、確かに不貞行為はあったけれども、その他の一切の事情を考慮して、まだ夫婦関係は修復可能で破綻しておらず婚姻の継続が相当と認められるときなどには、裁判所は、離婚を認めないことができるのです。
古い裁判例ですが、2ヶ月間不貞行為があったケースについて、不貞行為の存在は認めたけれども、期間が短く本気ではないとして、直接的な離婚原因とは認めなかったものがあります(名古屋地裁判決昭和26年6月27日)。
ただし、夫の妻子を顧みない態度から婚姻を継続しがたい重大な理由があるとして、別の離婚原因による離婚が認められています。
離婚訴訟では、離婚事由を1つだけ主張しても、裁判所がそれを離婚原因と認めない場合があります。
そこで、この裁判例のように、複数の離婚事由を主張・立証して、裁判所に一つ一つの離婚原因について判断してもらうことが多いです。
離婚する夫婦によく見られる特徴
最後に、離婚する夫婦によくみられる特徴を紹介します。
このような夫婦間のすれ違いが重なって、結果として離婚したいほどの「性格の不一致」に悩む方が多いのかもしれません。
- 家族で過ごす時間が少なく、連絡も取り合わない。
- 実親との仲が良すぎて、夫(妻)の意見を聞かない。
- 相手に無関心すぎる。
- 相手を束縛しすぎる。
- 相手の考えや意見、立場などを尊重できない。
- 相手の話を聞かず、自分の意見が正しいと主張する。
- 収入に格差があり、それを責めたり卑下したりする。
- 感謝の言葉を伝える機会が少ない。 など
【まとめ】離婚原因や離婚の手続きについて知りたい方は弁護士に相談を
離婚原因の第1位は男女ともに性格の不一致ですが、この場合、どちらかが離婚を拒否すると、離婚できるとは限りません。
離婚の同意があるとしても、離婚する前に、財産分与や養育費等の離婚条件についても話し合って取り決める必要があります。
しかし、すでに夫婦仲が悪化している場合には、お互い冷静に話し合いをするのが難しいこともあります。
弁護士であれば、個々人の事情に応じて、適切なアドバイスをすることもできますし、代理人として冷静に相手と話し合うこともできます。
法律上の離婚事由があるのか分からない方、離婚や離婚条件の話し合いを代わりにしてほしい方、自分で話し合うが法的なアドバイスが欲しいという方は、1人で悩まずにお気軽に弁護士にご相談ください。