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別居中の住民票はどうする?住民票を移動するメリット・デメリット

作成日:更新日:
kiriu_sakura

※アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

厚生労働省の統計によれば、離婚した年に別居している夫婦は、その年の離婚件数の71.9%にも上ります。

その年に離婚した夫婦のうちおよそ7割が、1年以内の別居を経てから離婚していることが分かります。

離婚を前提とする別居では、住民票をどうすべきなのでしょうか。

転居した場合には法律上住民票を移す義務がありますが、正当な理由がある場合はその限りではありません。

理由があって住民票を動かさない方もいます。

この記事では、別居中の住民票に関して、次のことについて弁護士が説明します。

この記事を読んで分かること
  • 【前提】住民票異動のルール
  • 離婚を前提とした別居では住民票をどうすべきか
  • 住民票を異動するメリット・デメリット
  • 別居前に確認しておくこと5つ
この記事の監修弁護士
弁護士 林 頼信

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。

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【前提】住民票異動のルール

住民基本台帳法では、転居(※)に伴い、転居をした日から14日以内に新しい住所などを変更する届出をしなければなりません(同法23条)。

また、正当な理由がなく届出をしない場合は5万円以下の過料を科する(同法52条2項)、と規定されています。

※転居は、同一市区町村内で住所を変更することを言います。別の市区町村に引っ越す場合には、引越し前の市区町村役場に転出届を提出し、引越し後の市区町村役場に転入届を提出することになります(同法22条・24条)。

参考:住所の異動届は正しく行われていますか?|総務省

従って、別居で違う住所に住むことになったのであれば、基本的に住民票を移す必要があります。

ただし、「正当な理由」があれば住民票は移さなくても良いものですし、実際には住民票を移さずに、住民票上の住所に住んでいない人もたくさんいます。
住民票を異動せず、「過料を支払うように言われた」という話はあまり聞きません。

また、頭を冷やすための一時的な別居で、別居中も行き来したり連絡を取り合ったりするのであれば、別居しても住民票を移動しないことも多いです。

参考:令和4年度 離婚に関する統計の概況(結果の概要1)|厚生労働省

別居後住民票を移した方がいいケース

次のようなケースの別居では、通常住民票を移した方がいいと考えられます。ただし、住民票をただ移すだけだと、配偶者は住民票を調べて新しい住所を知ることができます。新しい住所を知られても、問題ないケースであればよいですが、配偶者の自分への暴力や、子どもへの虐待などが別居の理由である場合、新しい住所は配偶者に知られたくないところです。

そのようなときは、窓口で「住民票の閲覧と交付を制限してもらいたい」と伝えるようにしましょう。

参考:配偶者からの暴力(DV)、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の方は、申出によって、住民票の写し等の交付等を制限できます。|総務省

(1)離婚を決意している場合

別居後の離婚を決意していて、復縁の意思や可能性もないような場合です。住民票を移動すれば、住民票を移動した時が別居開始時期の証拠となりますので、後で別居の事実や別居期間について争われた時に証拠になります。

また、届く予定の郵便物については、住民票を移動しなくても、住所変更や郵便局宛ての転送届を提出すれば、別居先の新しい住所に届くようになります。しかし、住民票上の住所に届く役所からの書類や、転送できない重要書類(クレジットカードなど)は、配偶者宅に取りに行く手間(転送を依頼する手間)や、勝手に開封されるリスクがあります。

(2)子どもを新しい学校に編入させたい場合

両親で話し合って、離婚後の生活に備えて、別居後の新しい土地で子どもを新しい公立学校に通わせたい場合には、住民票を移動した方がよいでしょう。

公立の小中学校では、住民票が移っていなければ、原則として転校が認められないためです。
これは公立の小中学校に通うお子さんのいるご家庭では無視できない問題です。

同じ学校に通える距離の引越しであれば問題ありませんが、遠方に引っ越す場合は子どもの学校の編入手続きで不都合が生じてしまいます。

ただし、事情を説明することで、住民票を移さなくても編入手続きを受け入れてもらえることもあるようですので、役所や学校の窓口で相談するとよいでしょう。

住民票を移動するメリット

別居の際に住民票を移動すると、主に次のようなメリットがあります。

(1)別居状態の証明になる

別居したタイミングで住民票を移動すると、後々調停や訴訟になった場合に、住民票自体が、別居の事実や別居開始時期の証拠となります。

その結果、調停や裁判で離婚が認められやすくなるというメリットがあります。

裁判の場合、長期間の別居が離婚理由として認められる場合もあるのですが、相手が別居の事実や別居期間を争ってきた場合、「別居していること」を証拠で証明する必要があり、住民票の移動はその証拠となるのです。

なお、別居が理由で離婚するには3~5年の別居が目安とされています。
これは一概にはいえず、婚姻期間などの具体的事情により、ケースバイケースで判断されています。
配偶者に不貞行為やDVなどの有責行為があれば、独自の離婚理由になりますので、別居期間が無かったり短くても離婚が認められる可能性があります。

(2)児童手当の受給者を変更できる

児童手当は、中学生卒業までの子どもがいる家庭に支給される手当です。
児童手当を受給する名義は父親となることが多いため、妻が子どもと一緒に別居した場合には、受給者変更の手続きをしなければ児童手当はそのまま夫の口座に振り込まれます。

夫が児童手当を振り込んでくれるのであればよいですが、いちいち振り込みをお願いしたりするのもストレスになります。また、振り込まれないリスクもあります。自分に直接給付されるのであれば、トラブルとなるリスクをなくすことができます。

基本的に、両親が別居中で離婚協議中の場合、児童手当は児童と同居している人に支給されます。

住民票を移動すると、別居中であることを証明できます。また、離婚協議中であることを示すために、離婚を申し入れたことが分かる内容証明郵便、離婚調停中であることがわかる書類(事件係属証明書)などの提出が求められることがあります。

住民票が変更できない場合でも、事情によっては児童手当を受け取れる可能性もありますので、転居先の児童手当の担当部署に相談してみましょう。

参考:児童手当Q&A(配偶者と別居されている場合の取扱いについて): 子ども・子育て本部 |内閣府

(3)ひとり親の支援が受けられる

離婚前提の別居で、ひとり親家庭として支援が受けられる場合があります。
医療費助成制度、保育料の減額や就学支援、公営住宅の申し込みなどです。

ただ、自治体により扱いが異なりますので、別居先の自治体の情報をあらかじめ調べておくとスムーズです。

住民票を移動するデメリット

逆に、住民票を移動することには主に次のようなデメリットもあります。

(1)子どもの転校を余儀なくされる可能性

住民票を移していると、公立学校に通う子どもの転校はスムーズですが、その反対に学区外に住民票を移動すると、原則として子どもは同じ公立学校や幼稚園・保育園に通うことができなくなります。
「校区外に引っ越しするが、同じ学校に通わせたい」という場合には、市区町村役場の担当窓口との相談が必要となります。お住いの市区町村にもよりますが、相談することで、卒業までは同じ学校に通えることもあるようです。

(2)国民健康保険の支払いが必要になることも

配偶者が勤め先の健康保険に加入しており、自身が扶養になっている場合は、別居しても被扶養者でいることに変わりはありませんので、子どももあなたもそのまま健康保険を使うことができます。
ですが、国民健康保険の場合は世帯主がまとめて支払うため、住民票を移動するとご自身で国保に加入し保険料を支払うことになります。
子どもがいる場合には子どもの分の保険料も上乗せされるため、負担が大きくなることは考える必要があるかも知れません。

(3)住宅ローンの契約違反の可能性

別居する側が住宅ローンの名義人になっている場合、原則としてローンを完済するまでの間に住民票を移動させると契約違反になる可能性があります。
これは、そもそも住宅ローンは自分が住むことが前提で借り入れするため、住民票を移動しないことが契約の内容になっているためです。

このような契約違反があると、住宅ローンの一括返済、ローンの借り換えなどを要求される可能性もあります。
また、住宅ローン控除を受けるためには、購入した6ヶ月以内に住み、その年末まで引き続き住まなければいけない、という条件などがあります。住民票を移動することで、住宅ローン控除を受けられなくなることがあるので注意しましょう。

参考:No.1234転勤と住宅借入金等特別控除等|国税庁

(4)配偶者に居場所が特定されるおそれ

離婚前に別居をする人の中には、配偶者からのDVから身を隠すためという理由で別居を選んでいる人もいます。
ところが別居しても、住民票を移動すると、原則として配偶者は役所に照会することで、戸籍の附票や住民票(除籍票)を閲覧できるため、居場所を知られてしまうのです。

しかし、このような場合は、すでにご説明したように、住民票や戸籍の附票の写しの交付や住民基本台帳の一部の写しの閲覧を制限することができます。

具体的には、市区町村に対して「住民基本台帳事務におけるDV等支援措置」を申しでることで、「DV等支援対象者」となることで、住民票の写しの交付申請や住民基本台帳の一部の写しの閲覧申請があっても、これを制限してもらうことができます。
DV等支援措置の申立ては、管轄の警察署や配偶者暴力支援センターなどの相談機関に相談のうえ、必要書類を提出することで行います。
ご自身とお子さんの身の安全を護るためには管轄の警察署や配偶者暴力支援センターとの連携も大切ですので、この機会に相談に行くことをおすすめします。どこに相談すればよいか分からないという場合には、「DV相談ナビ」(#8008)に連絡すると、最寄りの相談機関につないでもらえます。

また、メールやSNSで24時間相談できる「DV相談+(プラス)」もあります。

参考:DV相談について|男女共同参画局
参考:配偶者からの暴力全般に関する相談窓口|男女共同参画局

別居する前に確認しておくこと5つ

離婚前提の別居をするときには、きちんと事前に確認して準備をしておかないと、例えば離婚訴訟や慰謝料請求などをするときに不利な立場に陥ることもあります。
そこで、別居前に確認しておくべきことを5つ説明します。

(1)別居に正当な理由があるか

法律上、夫婦には「同居」「協力」「扶助」の義務があり(民法第752条)、離婚前の引っ越しは、これらの義務に違反してしまう可能性があります。
そうなれば、別居の原因が配偶者にあっても、自分が有責配偶者になってしまい、離婚請求が認められないことや、逆に慰謝料請求されるリスクも出てきます。

ただ、例えば「単身赴任や長期入院等、やむを得ず同居生活を送れない」「配偶者のDVや子どもへの虐待から取り急ぎ避難したい」といった正当な事由のある場合には、同居義務違反とはなりません。

(2)配偶者に別居の同意を得る

このような正当な理由がなかったとしても、別居する前に、配偶者に別居の理由を話し、別居の同意を得ていれば、夫婦の同居義務違反とはなりません。

(3)別居前に別居後の生活のシミュレーションをする

スムーズな別居のために、事前に実家や転居先を確保しておきます。

引っ越しするには費用がかかるので、まとまったお金を準備しておかなければなりません。

また、離婚を前提とした別居であれば、別居した時から、離婚後の生活を見据えて準備する必要があります。

別居後すぐは経済的自立が困難でも、職業訓練や就職活動をすることで、収入を確保できるようにしたいところです。

(4)婚姻費用を交渉しておく

同居か別居かにかかわらず、婚姻期間中の生活費等は婚姻費用として夫婦の収入に応じて分担しなければなりません(民法第752条、同第760条)。

別居したあなたが、配偶者よりも収入が低い場合や子どもと同居している場合等には、配偶者に婚姻費用を請求できる可能性があります。

ただしこの婚姻費用を請求できる時点は、実務的には「請求した日から」と考えることが多いです。したがって、過去の未払い期間があったとしても、後で未払い期間についてまとめて請求することは難しいです。

生活費を確保するためにも、別居前に婚姻費用について交渉して合意できるとよいです。合意できない場合には、別居後速やかに婚姻費用を請求しましょう。

(5)共有財産を確認しておく

共有財産とは、婚姻生活を通して夫婦が協力して築いた財産のことです。
共有財産となるかどうかは、財産の名義によるのではなく、実質的な判断によります。
例えば、銀行口座や不動産などは名義が夫婦の一方であることが多いでしょうが、名義が夫、妻のどちらであったとしても、婚姻生活を通して夫婦が協力して気づいた財産であれば、共有財産となります。

別居してしまうと、家に残されたままの財産や家に資料がある財産の把握が難しくなります。
引っ越し前に、あらかじめ共有財産を把握しておきましょう。
そうすることで、離婚時にスムーズに財産分与の請求が可能です。

配偶者名義の通帳や源泉徴収票、確定申告書、保険証券などのコピーを取っておくと良いですね。

また、引っ越しをするとなれば、生活するために当座の家財道具が必要となります。
しかし、引っ越し前の家から家具を持ち出すにあたり、何を持ち出すかでトラブルになるケースもあります。

共有財産は、自分のものであると同時に配偶者にも所有権があるため、引っ越し時に無断で持ち出すとトラブルの火種になる可能性があるのです。
そのため、共有財産については相手に無断で持ち出すことは控える方が無難と言えます。

【まとめ】離婚を決意した別居は住民票を移動した方がよい

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 離婚の意思がある場合は別居中に住民票を移動した方がよい。
  • 冷却期間などの一時的な別居は移動しなくても良い場合も。
  • 住民票を移動しないと学校の編入ができなかったり、重要書類が届かなかったりする。
  • 住民票の移動にはメリット・デメリットがあるため、個々の事情を考慮して慎重に判断すること。
  • 別居する前に住まいや仕事を確保するほかに、婚姻費用の交渉、共有財産の確認が必要。

離婚は話し合ってできればよいのですが、二人の利害関係が対立する部分もありますので、冷静な話し合いが難しいこともあります。
話合いが難しくてお悩みの方は、一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

アディーレ法律事務所では、離婚問題を取り扱っており、安心してご依頼いただけるよう、離婚問題について、ご依頼の目的を全く達成できなかったような場合には、ご依頼時にお支払いいただいた基本費用などを原則として返金いたしますので、費用倒れになることは原則ありません。(2023年3月時点)

離婚でお悩みの方は、離婚問題を積極的に取り扱っているアディーレ法律事務所(フリーコール0120-783-184)にご相談下さい。

この記事の監修弁護士
弁護士 林 頼信

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

※¹:2024年4月時点。拠点数は、弁護士法人アディーレ法律事務所と弁護士法人AdIre法律事務所の合計です。

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