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再婚したら養育費を減額できる?弁護士がケース別に解説

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リーガライフラボ

※アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

「元妻が引き取った子どもの養育費を払い続けているが、自分の収入が激減して養育費の支払いは難しい。聞いたところによると、元妻の再婚相手は高収入らしいが、養育費は減額できないのか」
という方もいらっしゃるかもしれません。
養育費について取り決めた後に、その当時予測できない事情の変化があり、その事情の変化を考慮すると、取り決めた養育費の額が妥当とはいえなくなるケースがあります。
事情の変化として代表的なものは、自分や離婚相手の再婚による家計の変化です。

今回の記事では、次のことについて弁護士が解説します。

  • 自分や離婚相手の再婚により養育費の減額を請求することできるのか
  • 養育費の減額が認められる可能性はどの程度なのか
  • 養育費を減額するためにすべきことは何か
この記事の監修弁護士
弁護士 林 頼信

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。

再婚しても養育費の支払いは義務

離婚の際や離婚後に、子どものために養育費について取り決めをすることがあります。
養育費は、基本的に、離婚後、子どもと別居し監護していない親が、親権者となって子どもを監護している親に対して支払うものです。
養育費を支払う義務は、親としての法律上の義務であり、「自分の生活を保持するのと同程度の生活を子にも保持させる義務」(生活保持義務)であるといわれています(民法877条1項)。

これは、一般的には、おにぎり一つあれば、それも分けるレベルの義務であって、収入が少なければ支払わなくて良いというものではない、と考えられています。
離婚後、父母のどちらかが再婚したとしても、前婚で生まれた子どもに対して、法律上の親としての生活保持義務がなくなるわけではありません。
そのため、自分や離婚相手が再婚したとしても、再婚後も養育費の支払いは必要です。

ただし、養育費を一度取り決めたとしても、当初予測できなかった事情の変化により当初取り決めた額が妥当とはいえなくなる事態(高額すぎる又は低額すぎる)が起こりえます。
例えば、急激な物価の上昇や、養育費を支払っていた者の大病による収入の減少などの事情の変化があったといえるかが問題となります。
「再婚」についても、当初予測できなかった事情の変化があったとして、養育費の減額を請求できる可能性があります。

監護権とは?

離婚の際には、未成年の子がいる場合、父母のいずれか一方を親権者と決める必要があります(民法819条1項)。
そして、親権者は、親権に基づき子を監護(かんご)します。
監護とは、子に社会性を身につけさせ自立させるために、身体的に監督・保護することをいいます。
監護については、民法上、居所指定権(民法821条)や職業許可権(民法823条1項)などがあります。

具体的には、子と共に生活してその生活全般の面倒を見て、養育することを指します。
通常、親権者と監護者は一致しますが(民法820条)、父母間の協議により親権者と監護者を分けることもできます(民法766条1項)。つまり、父と母が話し合って意見がまとまれば、離婚後の親権者は父、監護者は母、と決めることもできるということです。

再婚したら養育費は減額することができる?

子を監護している親と、監護していない親それぞれが再婚したケースについて、事情の変化があったとして養育費の減額請求が認められるのかどうか、ケース別に解説します。

(1)監護権を持つ元配偶者が再婚した場合

まず、子どもの監護権を持つ側(養育費を受け取っている側)が再婚したケースについて解説します。

(1-1)再婚相手が子どもと養子縁組したとき|減額の可能性は高くなる

子どもを連れて親が再婚しても、法律上当然には、再婚相手と連れ子の間に親子関係は発生しません。
再婚相手と連れ子が養子縁組をすることで、初めて両者間に法律上の親子関係が生じます(民法809条)。
養子縁組をすると、法律上、養親と実親は同じ扶養義務者となりますが、通常再婚により子どもは養親と共同生活をすることになりますので、養親が一次的な扶養義務者となり、実親が二次的な扶養義務者になると考えられています。

つまり、再婚相手(養親)の扶養義務の方が、元配偶者(実親)の扶養義務よりも優先することになりますので、元配偶者が養育費の減額を請求すれば、認められる可能性は高くなると考えられます。
例えば、子どもが母親の再婚相手と養子縁組した後に、前夫が取り決めた養育費(月4万円)の支払を怠ったとして、前夫に対して養育費の支払いを求めたケースがあります。

このケースでは、裁判所は、養育費が請求されるに至った経緯、扶養義務の順位、養親と実親それぞれの収入・支出額、子どもを養育する経済的能力などの様々な事情を考慮しました。
そして、最終的には、再婚家庭の家計を圧迫しているのは再婚後に組んだ住宅ローンのためであることや、前夫は劣後する扶養義務を負担しているにすぎないことなどを理由に、最終的に養育費の請求を認めませんでした(神戸家庭裁判所姫路支部判決平成12年9月4日・家月53巻2号151頁)。

(1-2)再婚相手が子どもと養子縁組しないとき|減額の可能性は一定程度ある

再婚相手が連れ子と養子縁組しない場合には、両者間に法律上の親子関係は発生しませんので、法律上の扶養義務も生じませんし、どちらかが亡くなってもお互いに相続することもありません。
したがって、再婚したとしても、元配偶者(実親)が子どもに対して第一次的な扶養義務を負うことは変わりません。
しかし、再婚相手が子どもの養育費など家族の生活費を負担しているなどという事情がある場合には、事情の変化があるとして、養育費の減額請求が認められる可能性があります。

監護権を持つ側(養育費を受け取っている側)が再婚した場合

再婚相手が子どもと養子縁組した場合養育費が減額される可能性は高くなる
再婚相手が子どもと養子縁組しない場合養育費が減額される可能性は一定程度

(2)監護権を持たない元配偶者が再婚した場合

次に、子どもの監護権を持たない側(養育費を支払っている側)が再婚した場合のケースについて解説します。

(2-1)再婚相手に子どもがいない|減額の可能性は一定程度ある

再婚すると、法律上、夫婦間には同居して相互に協力する義務(民法752条)及び生活費を分担する義務(760条)が生じます。
例えば、元夫の収入が十分ではなく、再婚相手も専業主婦やパートタイムなどで収入が低い場合には、元夫の生活費の負担が再婚により大きくなります。
そうなると、再婚家庭の家計などの事情を考慮すると、もともと取り決めた養育費が高すぎると判断される可能性があります。
この場合には、再婚した側が、再婚して事情が変化したとして養育費の減額を請求することが多いです。

(2-2)再婚相手との間に子どもが生まれた|減額の可能性が高い

再婚相手との間に子どもが生まれた場合、法律上の扶養義務を負う子どもが増えることになります。
前婚での子どもに対する扶養義務と、再婚後の子どもに対する扶養義務は同等と考えられており、どちらかが優先されるといった関係になるものではありません。
前婚の子どもに対する養育費の負担により、再婚後の子どもに対する扶養を果たすことができないという事態は避けるべきです。

そこで、事情の変化があったとして、養育費減額請求をすれば、それが認められる可能性が高くなります。
ただし、裁判所は、各家庭の収入・支出状況などの様々な事情を考慮したうえで、最終的に判断します。そのため、再婚相手との間に子どもが生まれれば必ず養育費の減額が認められるものではないことに注意しましょう。

(2-3)再婚相手の子ども(連れ子)と養子縁組する|減額の可能性が高い

再婚後、再婚相手の連れ子と養子縁組をすると、両者間に法律上の親子関係が生じ、連れ子に対する扶養義務も発生します。
そうすると、同等の扶養義務を負う子どもが増えますので、一方の子どもの養育費の負担により、他方の子どもに対する扶養を果たすことができないという事態は避けるべきです。

このような場合には、養育費減額請求をすれば、事情の変化があったとして、減額が認められる可能性は高くなります(※再婚相手との間に子どもが生まれた場合と同じです)。
ただし、この場合も、裁判所は、各家庭の収入・支出状況などの様々な事情を考慮したうえで、最終的に判断します。そのため、再婚相手の子どもと養子縁組をしたというだけで養育費の減額が必ず認められるものではないことに注意しましょう。

(2-4)再婚相手の子ども(連れ子)と養子縁組しない|減額の可能性は一定程度ある

再婚後、再婚相手の連れ子と養子縁組をしない場合には、両者間に法律上の親子関係は生じませんし、法律上の扶養義務も発生しません。
したがって、再婚したからといって扶養義務を負う子どもが増えるわけではありませんので、事情の変化があったとして、養育費の減額請求をしても認められる可能性は高くありません。

しかし、再婚すると、法律上、夫婦間には同居して相互に協力する義務(民法752条)及び生活費を分担する義務(760条)が生じます。
自分の収入も高くはなく、再婚相手が無職又はパートタイムなどで収入が無い又は低い場合には、生活費の負担が大きくなります。そのような場合、再婚家庭の家計などの事情を考慮すると、取り決めた養育費が高すぎると判断される可能性があるため、養育費の減額請求が認められる可能性も一定程度あるといえるでしょう。

監護権を持たない側(養育費を支払っている側)が再婚した場合

再婚相手との間に子どもがいない場合養育費が減額される可能性は一定程度
再婚相手との間に子どもが生まれた場合養育費が減額される可能性が高い
再婚相手の子ども(連れ子)と養子縁組する場合養育費が減額される可能性が高い
再婚相手の子ども(連れ子)と養子縁組しない場合養育費が減額される可能性は一定程度

養育費を減額するために再婚時にすべきこと

養育費は子どものために必要なものですが、養育費の取り決めをした後に事情の変化があれば、取り決めた養育費が妥当でなくなる事態が発生するかもしれません。
養育費の負担が重く、再婚後の新生活を送ることが難しいという状態に陥ってしまうことは避けたいところです。
元配偶者が再婚した場合又は自分が再婚した場合で、養育費の減額が必要だと考える方がとるべき具体的な行動について紹介します。

(1)当事者同士で減額について話し合う

裁判所が、事情の変化はなく、養育費の減額が認められないと判断するようなケースであっても、当事者同士で話し合って減額に合意することは可能です。
そこで、まずは元配偶者に対して、養育費の減額を希望すること、その理由などについて真摯に説明して、同意を得られるよう話し合うようにしましょう。

(2)養育費減額調停の申立てを検討する

当事者同士で話し合っても、減額について折り合いがつかない場合には、養育費の減額を求める調停を申立てて継続して話し合いを行うことができます。
調停では、調停委員が双方の主張を聞き、養育費の減額が妥当か、それについての合意が可能かどうかについて、話合いの間に立ってくれます。

調停での話合いの結果、減額に合意ができた場合には、調停は成立し、養育費は成立した調停の内容の通りに変更されます。
調停で話し合っても合意できない場合には、調停は不成立となりますが、引き続き審判手続きへと移行します。

審判手続きでは、裁判所が、「養育費の合意がなされた当時に予測できなかった事情の変更があったかどうか」という観点から様々な事情を考慮して、事情の変化があり、養育費の減額が妥当だと認められる場合には、減額後の養育費について判断し、審判を下します。
判断のポイントは、次のような点です。

判断のポイント(具体例)
  • 支払う側の収入の変化
  • 受け取る側の収入の変化
  • 再婚・養子縁組など、身分関係の変化

審判に不服がある当事者は、即時抗告をしてその判断を争うことができます(家事事件手続法156条4号)。

参考:養育費請求調停|裁判所 – Courts in Japan

養育費の決め方や計算方法

養育費減額請求をするためには、前提として、養育費の金額や支払い方法などについて、取り決めて合意をしていることが必要です。
養育費の取り決めをしていない場合には、まず合意をする必要があります。
養育費を決める方法は、大きく二通りあります。

(1)養育費の決め方

まずは、離婚の際又は離婚後に、当事者が養育費について話し合って合意する方法があります。
養育費を支払う側が、できるだけ自主的に支払うように、話し合いを十分に行い、お互いが納得する話し合いができればベストです。
その際には、養育費の金額、支払期間(始期と終期)、支払時期(毎月、月末までになど)、振込先、支払いが遅延した場合の遅延金なども決めるようにしましょう。

口約束でも養育費の合意はできますが、後々、合意自体していない、養育費の額が違うなどと言って争いになることがあるので、書面に残しておくことが多いです。
また、「支払いを滞納した場合は直ちに強制執行されてもかまわない」旨を記載した公正証書を作成するケースもあります。このような記載を「執行認諾文言」といいます。
執行認諾文言が記載された公正証書があれば、将来養育費が未払いとなったときに、裁判を起こさなくても強制的に養育費を回収すること(強制執行)ができるようになります。

そのため、このような公正証書を作成していた場合に、自己判断で養育費の支払いを停止したり減額したりすると、いきなり給料を差し押さえられる可能性があります。くれぐれも合意内容を一方的に破ったりしないようご注意ください。

次に、家庭裁判所の調停手続きを利用する方法があります。
当事者で話し合っても養育費について合意できない場合には、家庭裁判所に調停を申立てて、調停委員のもとで、話し合いを継続します。調停で話し合っても合意できない場合には、調停不成立となり、引き続き審判に移行します。
審判では、裁判所が双方の事情を考慮して、養育費について判断することになります。

(2)養育費の計算方法

養育費の基本的な算定方法は、標準算定方式と呼ばれています。
標準算定方式は、親の収入のうち、子どもが義務者(養育費を支払う側)と同居していた場合に子どものためにあてられていた費用(子どもの生活費)を計算し、その費用を、権利者(養育費を受け取る側)・義務者の収入割合で案分し、義務者が負担する子どもの生活費(=養育費)を算定する、という考え方を採用しています。
算定について詳しくは、こちらの記事を参照ください。

養育費とは?支払期間や不払いへの対処法などを弁護士が解説

実務においては、養育費を迅速に算定するために、裁判所が公表している算定表が積極的に利用されています。
この算定表は、典型的な家族について、上記の標準算定方式で計算した養育費が一目で分かるようになっています。

具体的には、権利者(養育費を受け取る側)と義務者(養育費を支払う側)の収入、子どもの年齢、数が分かれば、算定表に当てはめるだけで妥当な養育費が分かりますので、養育費について話し合う際にも利用するとよいでしょう。

参考:平成30年度司法研究(養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について|裁判所 – Courts in Japan

【まとめ】どちらかの再婚により、養育費の減額が認められる可能性がある

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 再婚しても、養育費の支払いは義務である。

  • 再婚など、養育費を取り決めた時点で予測できない事情の変化があった場合には、養育費の減額を請求できる可能性がある。

  • 養育費の減額請求で、知っておきたいポイント
  1. 監護権を持つ側(養育費を受け取っている側)が再婚した場合

再婚相手が子どもと養子縁組したのであれば、養育費が減額される可能性が高くなる。
再婚相手が子どもと養子縁組していないのであれば、養育費が減額される可能性は一定程度にとどまる。

  1. 監護権を持たない側(養育費を支払っている側)が再婚した場合
  • 再婚相手に子どもがいないなら、養育費が減額される可能性は一定程度にとどまる。
  • 再婚相手との間に子どもが生まれたのであれば、養育費が減額される可能性が高くなる。
  • 再婚相手の子どもと養子縁組したのであれば、養育費が減額される可能性が高くなる。
  • 再婚相手の子どもと養子縁組しないのであれば、養育費が減額される可能性は一定程度にとどまる。
  1. 養育費を受け取っている側と支払っている側の収入の変化も重要な考慮要素
  • 養育費を減額するためにすべきこと
    1. 当事者同士で減額について話し合う
    2. 養育費減額調停の申立てを検討する

  • 養育費には裁判所が公表している算定表があり、妥当な金額が分かるようになっている

養育費の減額が認められる可能性については、弁護士のような専門家でなければ判断が難しいところがあります。離婚時には予想していなくても、再婚することによって養わなければならないお子さんの数が増えることは珍しくありません。お困りの方は、養育費について取り扱っている弁護士にご相談ください。

この記事の監修弁護士
弁護士 林 頼信

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

※¹:2024年4月時点。拠点数は、弁護士法人アディーレ法律事務所と弁護士法人AdIre法律事務所の合計です。

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