「若い女性相手にパパ活をしていて、犯罪になるなんてことはある?」
このような疑問を持ったことはないでしょうか?
デートをしたり金品をあげたりするだけでは、基本的に犯罪にはなりませんが、性行為をともなうパパ活は犯罪になる可能性があります。
特に、相手の女性が未成年である場合は罪に問われる可能性が高いですが、成人女性が相手であっても犯罪になるケースもあります。
加害者ということになれば逮捕の可能性があるため、パパ活でトラブルになったり、何らかの容疑をかけられたりしたのであれば、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
今回の記事では次のことについて、弁護士がご説明します。
- パパ活とは
- 性行為ありのパパ活で犯罪が成立するケース
- パパ活で犯罪が発覚するきっかけ
- パパ活で逮捕される可能性
- パパ活トラブルを弁護士に相談すべき理由
法政大学、及び学習院大学法科大学院卒。アディーレ法律事務所では、家事事件ドメイン(現:慰謝料請求部)にて、不貞の慰謝料請求、離婚、貞操権侵害その他の男女トラブルを一貫して担当。その後、慰謝料請求部門の統括者として広く男女問題に携わっており、日々ご依頼者様のお気持ちに寄り添えるよう心掛けている。第一東京弁護士会所属。
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そもそもパパ活は犯罪や違法行為に該当する?
いわゆるパパ活は、何らかの法律に違反することがあるのでしょうか。
パパ活の定義や、違法となる可能性について解説します。
(1)パパ活とは?
パパ活とは、一般的に、若い女性が年上の男性と食事やデートをし、金品による経済的援助を受ける行為を指します。
援助交際と似たような行為であるといえ、数時間のデートだけで数万円を支払う男性も多いようです。
昨今、金銭目的にパパ活をする女性が増えており、パパ活相手の男性と出会うために、マッチングアプリやSNSで呼びかける方法が多く使われています。
(2)デートのみのパパ活は違法にはならない可能性が高い
若い女性とデートをするだけであり、性行為がなければパパ活は違法にならないケースが多いといえます。
ただし、あなたが既婚者である場合、不倫問題に発展する可能性があります。そのため、既婚者の男性は、パパ活をしない方がよいでしょう。
法律上、不倫が「不貞行為」に該当すれば、不倫された配偶者は、(不倫した)自分の配偶者とその不倫相手に慰謝料を請求できる可能性があります。
不貞行為とは、基本的には「配偶者以外の人と性行為をすること」をいい、犯罪ではありませんが、民法上の不法行為に該当します。
そして、仮に性行為にまでは至っていなかったとしても、あまりに頻繁にデートを繰り返すなどの親密な交際をしていれば、不法行為に該当し得るケースがあります。
その場合、あなただけではなく、パパ活相手の女性も、あなたの奥さんから慰謝料を請求される可能性があるのです。
パパ活で犯罪になるケースとは?
パパ活はデートが主体であるというのは建前で、相手の男性と性的関係を持つ女性も多いのが実際のところです。
そこで、パパ活での性行為が犯罪になるケースについて解説します。
(1)性行為ありのパパ活は売春防止法違反の可能性
パパ活と称して、性行為の対価として金品のやり取りをする行為は、売春防止法における「売春」あるいは「買春」と判断される可能性が高いでしょう(金品を受け取った側の行為を「売春」、支払った側の行為を「買春」といいます)。
売春や買春と判断されれば売春防止法に違反する違法な行為となるのです(同法3条)。
なお、同法で処罰されるのは売春の勧誘やあっせんをした場合や、売春の場所を提供した場合などであって、売春や買春そのものは、違法ですが処罰の対象とはされていません。
(2)女性が18歳未満の未成年の場合
未成年の女性とのパパ活で問われる可能性のある犯罪やその罰則について解説します。
なお、民法改正により、2022年4月1日から18歳以上が成人となっています。
(2-1)児童買春・児童ポルノ禁止法違反
正式名称は、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」といいます。
児童とは、18歳未満のことをいい、性行為等を目的に金品を渡すことは児童買春になる可能性があります。
児童を買春するだけでなく、わいせつな動画や写真を撮影した場合にも、児童買春・児童ポルノ禁止法違反に該当する可能性が高いでしょう。
同法により処罰の対象となる行為と、その刑罰は次の表のとおりです。
児童買春(同法4条) | 5年以下の懲役又は300万円以下の罰金 |
児童買春のあっせんや勧誘 (同法5条、6条) | 5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又はその両方 (業として行った者は、7年以下の懲役及び1000万円以下の罰金) |
児童ポルノの所持(同法7条1項) | 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
児童ポルノの提供(同法7条2項) | 3年以下の懲役又は300万円以下の罰金 |
児童ポルノの公然陳列等 (同法7条6項) | 5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又はその両方 |
児童買春等を目的とした人身売買 (同法8条1項) | 1年以上10年以下の懲役 |
(2-2)児童福祉法違反
児童に淫行をさせる行為は、児童福祉法に違反します(同法34条1項6号)。
淫行とは、児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ずる性交類似行為をいいます(最高裁判所決定平成28年6月21日)。
したがって、金品をその対価として支払い、18歳未満の女性と性行為を行った場合には、同法における淫行に当たる可能性が高いと考えられます。
(2-3)未成年者誘拐罪
パパ活と称して、未成年者を自宅やホテルに連れ込んだり、車で連れ回したりするなどの行為は未成年者誘拐罪(刑法224条)に該当する可能性があります。
そして、同罪は当該未成年者が同意のうえで付いてきたとしても成立する可能性があります。
同罪の法定刑は、3ヶ月以上7年以下の懲役となっています。
(2-4)都道府県の青少年健全育成条例違反
青少年の健全な育成のため、各都道府県で条例が制定されています。
東京都の場合、「東京都青少年の健全な育成に関する条例」という名称になっており、各都道府県により名称や条例で規制される内容は異なります。東京都の青少年健全育成条例では、次の行為が禁止されています。
- 淫行(「みだらな性交又は性交類似行為」)
- 深夜に外出させること
- 児童ポルノの要求 など
淫行については、最高裁が次のように定義しています。
(※この判例は、福岡県青少年保護育成条例における「淫行」の定義について判断したものです)
最高裁判所判決昭和60年10月23日
福岡県青少年保護育成条例一〇条一項の規定にいう「淫行」とは、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解すべきである。
引用:最高裁判所判決昭和60年10月23日|裁判所 – Courts in Japan
東京都の場合、条例で18歳未満と淫行した場合、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金という罰則が定められています。
(3)女性が成人でも犯罪になる場合
相手が成人している女性であっても、合意のないまま性行為等に及ぶと犯罪になる可能性があります。
(3-1)強制わいせつ罪
暴力や脅迫を用いてわいせつな行為に及んだ場合、強制わいせつ罪(刑法176条)に問われる可能性があります。
また、暴力や脅迫がなくても、薬物やアルコールなどの影響で抵抗できない状態の人間に対し、わいせつな行為をすれば、準強制わいせつ罪が成立し得ます。
法定刑は、いずれの場合にも6ヶ月以上10年以下の懲役となっています。
(3-2)強制性交等罪
暴力や脅迫を用いて相手の抵抗を著しく困難にし、性交、肛門性交、口腔性交に及んだ場合、強制性交等罪(刑法177条)に問われる可能性があります。
また、暴力や脅迫がなくても、薬物やアルコールなどの影響で抵抗できない状態の人間に対し、同様の行為に及ぶと、準強制性交等罪が成立し得ます。
法定刑は、いずれの場合にも5年以上の有期懲役となっています。
【補足】~刑罰について~
2022年の刑法改正において、「懲役刑」と「禁錮刑」が廃止され、これらを一本化する「拘禁刑」が新たに創設されました。
この点に関する改正刑法の施行は2025年になると見込まれています。
パパ活が犯罪になる経緯と逮捕について
パパ活が犯罪として捜査されるきっかけや、逮捕される可能性について解説します。
(1)パパ活が犯罪として捜査されるきっかけ
相手の女性が警察に被害届や告訴状を提出すると、それをきっかけに捜査が始まる可能性があります。
相手の女性が未成年だった場合には、親など保護者の通報や、警察官の補導がきっかけで発覚することが多いです。
あるいは、相手の女性と一緒にいるときに職務質問を受けたことや、警察のサイバーパトロールにより、女性のSNSアカウントからパパ活をしていた事実が発覚するケースもあります。
女性がSNSを通じて他の男性ともパパ活をしており、その男性が犯罪に当たる行為をしたとします。
あなたが犯罪に当たるようなことをしていなかったとしても、女性のSNSから、あなたもパパ活をしていたことが警察に発覚して、事情聴取をされたり、場合によっては犯罪の嫌疑をかけられたりする可能性があります。
(2)パパ活で逮捕される可能性とその影響
先述したようなことがきっかけとなって捜査が進み、処罰の対象となる犯罪行為が発覚すれば、逮捕される可能性は十分にあり得ることです。
もし起訴されてしまうと、長期間にわたって身体拘束を受けることにもなりかねず、そうなった場合には家庭生活や社会生活に大きなダメージとなってしまいます。
さらに、未成年に対する淫行や強制性交等、社会的に重大な犯罪の場合、メディア等で実名報道されることもあります。
パパ活のトラブルは弁護士に相談・依頼
パパ活でトラブルになった場合、まずは弁護士に相談すべき理由について解説します。
(1)逮捕を回避できる可能性がある
パパ活でトラブルになった場合や、犯罪になり得る行為をしてしまったかもしれない、という不安がある場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すれば、自分の行為に犯罪が成立するのか、するとしてどの犯罪が成立するのか、ということを判断してもらえます。
また、犯罪が成立する場合であれば必ず逮捕されるわけではありません。
弁護士が警察に対し、逮捕の必要性がないことを主張することで、逮捕を回避できる可能性があります。
(2)被害者との示談交渉が成立しやすい
被害届が提出されている場合、被害者の処罰感情は強く、特に被害者が未成年者の場合には、その保護者の処罰感情は非常に強いことが予想されます。
そのため、本人による示談交渉が上手くいく可能性は低く、かえって被害者側の感情を刺激してしまい、逆効果にもなりかねません。
弁護士に示談交渉を依頼すれば、本人が交渉の場に出向くよりは、被害者が冷静に対応することが期待できますし、適切な内容や金額で示談を成立させられる可能性が高まります。
(3)逮捕後の早期釈放、不起訴処分
パパ活をきっかけとした行為により、逮捕されてしまった場合、早急に弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士による示談交渉などの弁護活動が成功すれば、早期釈放につながる場合や、不起訴処分となる可能性が高まります。
【まとめ】パパ活は相手の年齢や性行為の有無によって犯罪になる可能性がある
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- デートのみのパパ活は罪にならない可能性が高い
- 性行為ありのパパ活は売春防止法違反になる可能性がある
- 女性が未成年の場合、性行為の有無にかかわらず罪に問われる場合がある
- 合意がないまま性行為に及ぶと相手が成人しているか否かにかかわらず犯罪になる
- 被害者が被害届や告訴状を提出すると、捜査が開始され逮捕される可能性もある
- 犯罪の嫌疑をかけられている、逮捕された、被害者と示談交渉をしたい場合などは、早急に弁護士に相談すべき
パパ活によるトラブルでお困りの方は、警察や刑事事件を取り扱っている弁護士にご相談ください。