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定年後再雇用で給与が減った!「同一労働同一賃金」と対処法を解説

作成日:更新日:
LA_Ishii

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

「定年後再雇用制度により再雇用されたけれど、給与が減ってしまった。これまでと同じように働いているのに……。
これってしかたないことなのかな?なにか対処法があるなら知りたい!」

定年後の再雇用により給与が減ってしまった場合、再雇用前と全く同じように働いているのであれば、場合によっては「同一労働同一賃金の原則」に違反してそのような扱いが違法とされる可能性があります。

この記事では、次のことについて弁護士が解説します。

  • 高年齢者の雇用に関するルールと定年後再雇用
  • 「同一労働同一賃金の原則」とは
  • 再雇用後に待遇の「不合理な格差」があるときの対処法
この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

高年齢者の雇用に関するルールと「定年後再雇用」

高年齢者の雇用には、ルールがあります。
高年齢者の雇用に関するルールと定年後再雇用についてご説明します。

(1)高年齢者の雇用に関するルールとは?

2000年の法律改正によって、老齢厚生年金の支給開始年齢が原則として60歳から65歳に引き上げられました。
多くの方にとって、原則65歳から年金を受け取り始めるまでの間は、働いて収入を得なければなりません。

このことと関連して、高年齢者の雇用を確保するための措置として、定年年齢を65歳未満とする会社は次のいずれかの措置を取らなければなりません(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条)。

  • 定年制の廃止
  • 65歳までの定年年齢の引き上げ
  • 希望者全員を対象とする、65歳までの「継続雇用制度」の導入

さらに、2021年4月1日以降は、会社はできるだけ70歳までの就業機会を確保するよう努めなければならないこととされました。

厚生労働省の令和3年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果によると、「継続雇用制度の導入」により高年齢者雇用確保措置を実施している企業は、全体の71.9%でした。「思ったより高い割合だな」という印象を受けた方が多いのではないでしょうか。

参考:令和3年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します|厚生労働省

(2)定年後再雇用制度とは?

継続雇用制度には、「勤務延長制度」と「再雇用制度」(定年後再雇用)の2つの形式があります。
それぞれの違いは次のとおりです。

  • 勤務延長制度:定年に達した後もそのまま雇用契約関係を継続する(労働条件は変わらない)
  • 再雇用制度:定年に達した時点でいったん雇用契約を解消し、あらためて雇用契約を結ぶ(一般艇に労働条件が変わる)

定年後再雇用は、定年前と同じ会社との間であらためて雇用契約を結びます。
この点で、定年退職後に別の会社の求人を探して雇用される「再就職」とは異なります。

(3)継続雇用者(勤務延長制度・再雇用制度)の給与の傾向

定年後再雇用では、雇用形態、賃金、労働時間、待遇などの労働条件が定年前と異なるものに変えられるのが一般的です。
例えば、正社員から嘱託・契約社員、パート・アルバイトへと雇用形態が変わるケースも多いです。

また、賃金についても大きく下がることが多いです。
2020年に厚生労働省が発表した資料「高年齢者雇用の現状等について」によると、60歳直前の賃金を100とした場合、フルタイムの継続雇用者(勤務延長・再雇用)の61歳時点の賃金水準は平均値で78.7でした。
平均値で20%以上も賃金が下がっていることがわかります。

参考:高年齢者雇用の現状等について|厚生労働省

なお、定年後再雇用での給与が定年前の75%を下回る場合、雇用保険の高年齢雇用継続給付(高年齢雇用継続基本給付金)を受給できる可能性があります。

高年齢雇用継続給付について、詳しくはこちらをご覧ください。

雇用保険に加入しているともらえるお金と給付条件について徹底解説

定年後再雇用の給与条件のポイントは「同一労働同一賃金」

定年後再雇用で契約社員としてあらためて雇用契約を結んだのですが、定年前と変わらない仕事を任されているのに、賃金が大幅に減ってしまいました。
これは許されることなのでしょうか?

賃金がどれだけ下がったかにもよりますが、定年前と変わらない仕事をしているのであれば、「同一労働同一賃金の原則」に違反して許されない可能性があります。

定年後再雇用の給与条件のポイントである「同一労働同一賃金の原則」についてご説明します。

(1)「同一労働同一賃金の原則」とは?

法律上、雇用形態にかかわらず同じ仕事をする労働者は基本的に同じ待遇を受けることができるという「同一労働同一賃金の原則」があります(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律8条、9条、10条)。

同一労働同一賃金の原則は、定年後再雇用であっても適用されます。
実質的な職務内容が定年前と変わらないのに賃金などの待遇だけが定年前より低くなってしまう場合は、この同一労働同一賃金の原則に反している可能性があります。

同一労働同一賃金の原則について、詳しくはこちらをご覧ください。

同一労働同一賃金とは何か?根拠となる法律と対応方法を知ろう

(2)定年後再雇用の給与と「同一労働同一賃金」の扱い

定年後再雇用であっても同一労働同一賃金の原則は適用されますが、少しでも給与が下がればただちに違法となるわけではありません。
「定年後再雇用である」ということは、待遇の低下が不合理といえるかどうかの判断の際にひとつの要素として考慮され、裁判例でも、定年後再雇用ではある程度の待遇の低下は許容されています(長澤運輸事件・最高裁判決平成30年6月1日民集72巻2号202頁)。

ある裁判例では、当該事情の下で基本給が定年前の60%を下回る限度で違法とされました(名古屋自動車学校事件・名古屋地裁判決令和2年10月28日労判1233号5頁)。

さらに、会社が再雇用条件として賃金月額を定年前の約25%にまで引き下げて条件提示した事案で、この条件提示に固執したことが違法とした裁判例もあります(九州惣菜事件・福岡高裁判決平成29年9月27日労判1167号49頁)。

ある裁判例では、基本給が定年前の60%を下回る部分につき違法とされたことから、60%がひとつの目安ともいえます。

しかし、どのような場合でもこれが基準になるわけではなく、具体的な事案に応じてどこまで給与が下がれば違法なのかは異なります。

給与が60%を下回らなかった場合でも違法とされる可能性はあるので、あきらめないようにしましょう。

参考:長澤運輸事件・最高裁判決平成30年6月1日民集72巻2号202頁| 裁判所 – Courts in Japan

参考:名古屋自動車学校事件・名古屋地裁判決令和2年10月28日労判1233号5頁| 裁判所 – Courts in Japan

再雇用後に待遇の「不合理な格差」があるときの対処法

定年後再雇用がなされた後、定年前と比べて給与などの待遇に関して「不合理な格差」があると思われる場合には、次のような対処法があります。

  • 会社に「待遇改善」を直接申し入れて交渉する
  • 「労働基準監督署」に相談・申告する
  • 「裁判手続き」をとる

会社との交渉や裁判手続きは、法律知識や交渉のノウハウが必要です。
このため、労働トラブルに精通した弁護士に相談・依頼することがおすすめです。

労働問題の相談先について、詳しくはこちらをご覧ください。

【まとめ】定年後再雇用で給与が減ったら「同一労働同一賃金の原則」に違反していないか確認を

この記事のまとめは次のとおりです。

  • 定年後再雇用は、法律で義務付けられた高年齢者の雇用を確保するための措置のひとつ。
    定年後再雇用などでは、待遇などの労働条件や雇用形態が定年前と変わったり、賃金が大きく下がったりすることが多い。
  • 『同一労働同一賃金の原則』とは、法律上、雇用形態にかかわらず同じ仕事をする労働者は基本的に同じ待遇を受けることができるという原則。
    定年後再雇用で、定年前と変わらない仕事をしているのであれば、賃金の低下率にもよるが、『同一労働同一賃金の原則』に違反して許されないことがある。
  • 定年後再雇用がなされた後に待遇の『不合理な格差』があると思われる場合には、『会社に待遇改善を直接申し入れて交渉する』などの対処法がある。
    この場合には、労働トラブルに精通した弁護士に相談・依頼することがおすすめ。

『定年後再雇用で給与が下がるのはしかたがないこと』と諦めてしまってはいませんか?
定年後再雇用でも、あまりにも大幅に給与が減ったり待遇が悪くなったりしてしまうことは、『同一労働同一賃金の原則』に違反して違法である可能性があります。

あまりにも大幅に給与が減ったりした場合には、あきらめることなく対処するようにしましょう。
会社と交渉したりする場合には、ご自身だけでは対応が難しいこともあるので、労働問題に精通した弁護士に相談・依頼するようにしましょう。

この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

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