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ひとり親家庭向けの支援はどんなものがある!内容を詳しく解説

作成日:
kiriu_sakura

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

「離婚をしてひとり親になったけれど、養育費も支払われなくて経済的に苦しい…」

現在、国や各地方公共団体によるひとり親に対する支援は少なくありません。
ひとり親に対する支援は、経済的な支援や就業支援など多様で、地方公共団体によってそれぞれ独自の支援制度を設けている場合もあります。
ひとり親になって経済的に苦しいという方は、まずは支援制度を確認して、受けられる支援は全て受けることをお勧めします。
また、子供の父親から養育費が支払われていない場合には、養育の請求も検討してみましょう。

今回の記事では、「ひとり親が利用できる支援制度」について弁護士が解説します。

この記事を読んでわかること
  • ひとり親家庭をめぐる現状
  • ひとり親家庭に向けた各種の支援制度
  • ひとり親の方の養育費の請求
この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

ひとり親家庭をめぐる現状について

厚生労働省の「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」によれば、現在、わが国のひとり親家庭は、父子世帯が約14万9000世帯、母子世帯は約119万5000世帯と推定されています。
また、調査によれば、令和2年のシングルマザー(母子家庭)の母親自身の平均年間就労収入は236万円(手当や養育費などを含めた平均年間収入は272万円)でした(※推計値)。
他方、シングルファザー(父子家庭)の父親自身の平均年間就労収入は496万円(平均年間収入は518万円)です。
国税庁の民間給与実態統計調査によれば、令和2年分の給与所得者の平均給与は約433万円ですので、ひとり親の場合、一般的に、シングルファザー家庭よりもシングルマザー家庭の方が経済的に苦しいことが推測されます。

シングルマザー(母子家庭)によるひとり親家庭は、就労可能な時間に限界があり仕事の選択肢が狭いなどという事情から、そうでない家庭よりも一般的に収入が低いことが多いのです。

参照:「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果の概要」|厚生労働省
参照:令和2年分 民間給与実態統計調査|国税庁

離婚後、養育費が支払われないひとり親家庭も少なくない

夫婦に未成熟の子がいる場合、離婚後に親権者となって子を監護する親は、他方の親に対して養育費の請求ができます。
ですが、実際に、未成熟の子を養育しているのに、養育費が支払われないことは少なくありません。

「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」によれば、離婚をしたシングルマザー(母子家庭)の方のうち、離婚した父親から「現在も養育費が支払われている」という方は、約28.1%にすぎませんでした(※推計値)。

養育費は「お金がないから支払わない」といって許されるものではありません。
養育費についてなにも取り決めずに離婚をしたという方は離婚後であっても、養育費の請求ができます。

離婚後に養育費を請求する場合について詳しくはこちらをご覧ください。

ひとり親家庭に向けた支援制度について

以上の統計から分かるように、ひとり親家庭のうち、特にシングルマザー(母子家庭)の方の中には、養育費も支払われずに経済的に苦しい思いをしている方が少なくありません。
そこで、次に、国や地方自治体がひとり親の方に向けて実施している支援制度についてご説明します。

ひとり親に対する支援については、主に次のようなものがあります。
  • お金を受け取れる/借りられる支援
  • 養育費を確保するための支援
  • 税金を優遇する支援
  • 支出を抑えるための支援   など

ひとり親の方は、受けられる支援を最大限受けられるようご確認ください!

(1)お金を受け取れる/借りられる、ひとり親に対する支援について

国や地方公共団体からお金を受け取れる、又はお金を借りられるひとり親の支援制度には、次のようなものがあります。

1.経済的支援児童扶養手当の支給ひとり親家庭の0~18歳に到達した後の最初の3月末日までの年齢の子供を対象に支給される手当。扶養人数や所得によって支給金額は異なる。
児童育成手当
(東京都の場合)
0~18歳に達した後の最初の3月末日までの年齢の児童を扶養しているひとり親を対象に支給される手当。所得制限等の受給要件あり。
母子父子寡婦福祉資金の貸付児童を扶養しているひとり親などに対して、事業開始資金、修学資金、住宅資金など12種類の福祉資金を貸し付けるもの
2.就業支援自立支援教育訓練給付金地方公共団体が指定する教育訓練講座を受講した母子家庭の母又は父子家庭の父に対して、講座終了後、対象講座の受講料の6割相当額を支給するもの(※上限あり)
高等職業訓練促進給付金看護師など、経済的自立に効果的な資格を取得するために6ヶ月以上養成機関等で就業する場合、生活費の負担軽減のため高等職業訓練促進給付金を支給するもの(※上限あり)
ひとり親家庭高等職業
訓練促進資金貸付
高等職業訓練促進給付金を活用して就職に有利な資格の取得を目指すひとり親家庭の親に対し、高等職業訓練促進資金(入学準備金50万円・就職準備金20万円)を貸し付けるもの
高等学校卒業程度認定試験
合格支援事業
ひとり親家庭の親又は児童が高卒認定試験合格のための講座を受けて修了した時及び合格した時に受講費用の一部(最大6割・上限15万円)を支給するもの
(※2023年2月時点の情報です)

参照:ひとり親家庭等の支援について|厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課

これらの支援は、各地方公共団体によって実施していないこともあります。
さらに、地方公共団体によっては、ひとり親家庭に対して『医療費助成』や『住宅費助成』などの支援を行っているところもあります。
支援を受けられる要件などが異なることもありますので、まずはお住まいの地方公共団体の窓口にご相談ください。

児童扶養手当について詳しくはこちらをご覧ください。

児童扶養手当はいくらもらえる?金額をシミュレーションしてみよう

(2)『養育費』を確保するための、ひとり親に対する支援について

養育費の支払は、未成熟の子供を育てるひとり親家庭にとってとても重要です。
ですが、先ほどご紹介したとおり、厚生労働省の調査によれば、現在も養育費が支払われていると回答したひとり親家庭の方(離婚によりシングルマザーになった方)は、全体の約28.1%(推定値)にすぎません。
そのような状況で、国もひとり親の方が養育費を受け取ることができるよう「養育費確保支援事業」を推進する方針が取られています。

具体的な支援内容については各地方公共団体によって異なりますが、例えば、東京都の町村では、次のような支援が実施されています。

  • 公正証書による債務名義の作成支援
    ➡公証人に支払う公証人手数料などが助成される
  • 家庭裁判所への調停申立てや裁判に関する支援
    ➡調停や裁判に必要な戸籍謄本等の添付書類の取得費用や収入印紙代などが助成される
  • 養育費に関する保証契約における保証料への支援
    ➡養育費立替保証を行う保証会社と保証契約を締結した場合の初回の保証料(※上限あり)が助成される               など

参照:東京都養育費確保支援事業|東京都福祉保健局

東京都の市区や、その他全国の地方公共団体においても、養育費を確保するための支援の範囲は広がっています。
養育費について取り決めをしていない、養育費について取り決めをしたのに支払われないとお悩みの方は、お住まいの地方公共団体が実施する支援についてご確認ください。

【コラム~養育費の取り決めは『公正証書』が良いのはなぜ?】

当事者同士の合意で離婚をする「協議離婚」の場合、養育費について単なる口約束や当事者間の合意書などで取り決めることが多いです。
ですが、口約束や当事者同士で作成した書面による場合、相手が養育費を支払わないとき、直ちに相手の給料や預金などの財産を差し押さえることはできず、財産を差し押さえるためには、原則として、相手に対してまずは養育費を請求する調停を申立てる必要があります。

他方、養育費の支払について「公正証書」(※強制執行認諾約款のあるもの)で取り決めておけば、養育費の不払いがあると調停などを経ることなく、直ちに相手の給料や預金などの財産を差し押さえることが可能になります。

≪養育費の未払いがあった場合≫

公正証書で養育費を取り決めれば良いというわけではなく、いざという時に公正証書に基づいて差押えができるようにするためには、公正証書の文言などにも注意が必要です。
今日、ひとり親の方への養育費確保支援事業の一環として、相談支援を強化しており、各地方公共団体には養育費の相談ができる窓口が設けられていることも多いです。養育費の不払いにお悩みの方は、そのような窓口や離婚問題を取り扱っている弁護士にご相談ください。

(3)税金に関する、ひとり親に対する支援について

また、ひとり親の方については、次のような税金関係の支援もあります。

寡婦控除・ひとり親控除
(併用不可)
申告により所得税・住民税の課税対象となる所得金額から一定額を差し引くことができる制度(※要件あり)
ひとり親に対する
住民税の非課税
寡婦又はひとり親で、前年度の合計所得が135万円以下の場合に住民税が非課税となる制度

寡婦控除・ひとり親控除の対象となる方の所得の要件は、合計所得金額500万円以下です。寡婦控除・ひとり親控除によって27万~35万円の所得控除が受けられますから、経済的に厳しい方は控除を受けることをお勧めします。

参照:No.1170 寡婦控除|国税庁 (nta.go.jp)
参照:No.1171 ひとり親控除|国税庁 (nta.go.jp)

(4)支出を抑えるための、ひとり親に対する支援について

また、ひとり親の方の支出を抑えるために、各地方公共団体によって、次のような支援を受けられることがあります。

  • 公共交通機関の料金の減免
  • 上下水道料金の割引
  • 粗大ごみ処理の手数料の減免
  • 公営の駐車場、駐輪場の利用料の減免  など

これらも、各地方公共団体によって実施内容が異なります。
まずは、お住まいの地方公共団体でどのような支援があるのかお確かめください!

借金がある場合には『債務整理』を

「ひとり親で生活が苦しくてキャッシングをしたら、その支払いでますます苦しい…」
ひとり親で経済的に苦しいという方で、そんな悩みをお持ちの方も少なくありません。
公的な支援や養育費の請求によっても、借金問題が解決できないという場合には、「債務整理」を検討することも一つの前向きな解決策です。

債務整理には、次の3つの手続があります。

借金問題を何とかしたいという方は、まずは弁護士にご相談ください。
弁護士があなたと一緒に、良い解決方法を検討します!

【まとめ】ひとり親家庭向けの支援は「経済的支援」「就業支援」「養育費の確保」などさまざまあります!

今回の記事のまとめは、次のとおりです。

  • ひとり親家庭に対する公的な支援は、次のようにさまざまある
    1. お金を受け取れる/借りられる支援
    2. 養育費を確保するための支援
    3. 税金を優遇する支援
    4. 支出を抑えるための支援   など
  • ひとり親家庭に対する支援は、各地方公共団体によって内容が異なる。まずは、どのような支援を受けられるのか住んでいる地域の支援制度を確認すべき。
  • 養育費について取り決めずに離婚した場合、離婚後でも養育費の請求はできる。養育費が支払われていない場合には、役所の窓口や離婚問題を取り扱っている弁護士に相談すべき。

ひとり親家庭対する支援は、申請しないと受けられないものも多いです。地方公共団体によっては、意外と知られていない制度もありますので、まずはひとり親家庭に対する支援を調べてみることをお勧めします。

ひとり親家庭向けの支援でお悩みの方は、弁護士かお住まいの自治体へご相談ください。

この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

※¹:2024年4月時点。拠点数は、弁護士法人アディーレ法律事務所と弁護士法人AdIre法律事務所の合計です。