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交通事故の慰謝料|相場と計算方法をアディーレの弁護士が解説

作成日:更新日:
kiriu_sakura

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

交通事故の被害にあってけがをした場合、加害者に慰謝料を請求できます。
交通事故の慰謝料には次の3種類あります。

  • けがをして入院や通院をした時の『入通院慰謝料』
  • 後遺障害等級認定がされた時の『後遺障害慰謝料』
  • 死亡した時の『死亡慰謝料』

入通院慰謝料の相場は、ケガが重く1~3ヶ月の通院で28万~73万円、後遺障害慰謝料の相場は等級により110万~2800万円、死亡慰謝料の相場は被害者の属性により2000万~2800万円です。

これは、基本的に被害者にとって最も高額となる相場です。

しかし、加害者側の任意保険会社の言われるままに、「これくらいの金額をもらえるなら」「交渉も疲れたから早く終わりにしたい」などと思ってと示談に応じてしまうと、この被害者にとって最も高額となる相場と比べて半額程度の慰謝料しかもらえないかもしれません。

なぜなら、慰謝料に関して、任意保険会社の提示する金額と、被害者が弁護士に交渉を依頼した場合の弁護士が基準とする金額(基本的に最も高額となる)にはかなりの隔たりがあるためです。

今回の記事では、交通事故の慰謝料、相場や計算方法などを、表を交えて解説します。「もっともらえたのに損をした」ということにならないよう、適切な額の慰謝料を受け取るためにも、こちらの記事をお役立てください。

今回の記事では、次のことについてアディーレの弁護士が解説します。

  • 交通事故の慰謝料について
  • 交通事故の入通院慰謝料について
  • 交通事故の後遺障害慰謝料について
  • 交通事故の死亡慰謝料について
  • 慰謝料に関する実際の裁判例
  • 慰謝料で損をしないために
この記事の監修弁護士
弁護士 中西 博亮

岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。

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交通事故の『慰謝料』について

交通事故の被害にあった時に発生する慰謝料は、次のとおりです。

この慰謝料は、交通事故の被害者がそれぞれ該当するものを請求できます。

例えば、交通事故でケガをして入通院し、後遺障害が残った場合は、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料を請求することができます。

それぞれの慰謝料額は、一定の額が定められているわけではなく、どの算定基準で計算するかによって異なります。算定基準は、「自賠責の基準」「任意保険の基準」「弁護士の基準」の3種類あり、どの算定基準で計算するかで、かなり慰謝料額は異なってきます。

通常は、自賠責の基準が一番低く、弁護士の基準が一番高くなります(※ただし、自賠責保険金額は、交通事故の70%未満の過失については減額対象にしませんので、ご自身の過失割合が大きい場合には、自賠責の基準がもっとも高額となることもあります)。
任意保険会社の基準は、自賠責の基準よりは高いですが、弁護士の基準には及びません。
それぞれの基準がどの程度違うのか、具体的にご説明します。

入通院慰謝料について

入通院慰謝料は、交通事故でケガをして入院や通院をしたときに認められる慰謝料です。入院せず、通院をしただけの場合でももらうことができます。

通院期間別に、自賠責の基準と弁護士の基準により、どの程度入通院慰謝料の金額に違いが出るのか見てみましょう。

(1)入通院慰謝料の相場の一覧表

通院期間自賠責の基準弁護士の基準
1ヶ月12万9000円28万円
(19万円)
2ヶ月25万8000円52万円
(36万円)
3ヶ月38万7000円73万円 
(53万円)

このように、1ヶ月~3ヶ月の入通院慰謝料は、自賠責の基準と弁護士の基準では2倍以上の差が生じることがわかります。

※2020年4月1日以降の事故で、通院期間の半数以上実際に通院した場合

※自賠責の基準の計算式:通院期間×4300円

※自賠責の基準では、傷害部分の補償には上限があり、治療費や慰謝料などを含めて合計120万円

※弁護士の基準は別表Ⅰという基準で算定、()内は別表Ⅱという基準で算定した場合

任意保険会社の基準は、各保険会社によって異なりますし、公表されていませんが、一般的に、ご自身で示談交渉をされる時は、自賠責の基準に近い金額を提示されることが多いです。

次に、自賠責の基準と弁護士の基準の計算方法を説明します。

(2)入通院慰謝料の算定基準別の計算方法

自賠責の基準は、原則として、次の(1)・(2)のうち少ない金額のほうが採用されます(2020年4月1日以降に発生した事故の場合)。

(※1ヶ月は30日として計算します)

他方、弁護士の基準は次の表のとおりです(※次の表から導き出される金額は、あくまでも「基準額」であり、この金額が必ずしも裁判で認められるとは限りません)。

別表Ⅰ(原則)                              (単位:万円)

入院1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月13月14月15月
通院→A
↓B
53101145184217224266284297306314321328334340
1月2877122162199228252274291303311318325332336342
2月5298139177210236260281297308315322329334338344
3月73115154188218244267287302312319326331336340346
4月90130165196226251273292306316323328333338342348
5月105141173204233257278296310320325330335340344350
6月116149181211239262282300314322327332337342346
7月124157188217244266286304316324329334339344
8月132164194222248270290306318326331336341
9月139170199226252274292308320328333338
10月145175203230256276294310322330335
11月150179207234258278296312324332
12月154183211236260280298314326
13月158187213238262282300316
14月162189215240264284302
15月164191217242266286

横の「入院」の列と、縦の「通院」の列について、それぞれ該当する列が交わるところの金額が入通院慰謝料です。

なお、交通事故で負ったけがの内容がむち打ち症で、画像所見などの他覚所見がない場合や軽い打撲などの軽傷の場合の入通院慰謝料の基準表は次のとおりです(※あくまでも「基準額」であり、この金額が必ずしも裁判で認められるとは限りません)。

別表Ⅱ(むち打ち症で他覚症状がない場合)                 (単位:万円)

入院1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月13月14月15月
通院→A
↓B
356692116135152165176186195204211218223228
1月195283106128145160171182190199206212219224229
2月366997118138153166177186194201207213220225230
3月5383109128146159172181190196202208214221226231
4月6795119136152165176185192197203209215222227232
5月79105127142158169180187193198204210216223228233
6月89113133148162173182188194199205211217224229
7月97119139152166175183189195200206212218225
8月103125143156168176184190196201207213219
9月109129147158169177185191197202208214
10月113133149159170178186192198203209
11月117135150160171178187193199204
12月119136151161172180188194200
13月120137152162173181189195
14月121138153163174182190
15月122139154164175183

入通院慰謝料の実際の裁判例

実際の裁判で、交通事故の入通院慰謝料を算出する場合は、基本的には先にご紹介した弁護士の基準によりますが、個別の事案によって調整がなされます(形式的な入通院日数ではなく、実質的にもそれだけの入通院期間が必要だったかという観点からの調整です)。

入通院慰謝料は、入院せず通院だけだった場合でももらえます。また、後遺障害等級は認められなかったけど、入通院した場合にももらえます。

ここでは、後遺障害等級は認定されなかったけれども、入通院慰謝料が認められた裁判例を紹介します。

入通院の内容認められた入通院慰謝料裁判年月日
入院3日
通院9ヶ月半
(ただし、4ヶ月目以降は医療機関への通院は月1回)
90万円さいたま地裁
2018年9月14日
通院期間9ヶ月強139万円東京地裁
2016年12月6日
入院期間合計85日100万円高松高裁
2016年7月21日
通院220日(実通院日数67日)95万円岡山地裁
2009年5月28日

けがが重大で入通院期間が長くなると、入通院慰謝料も高額になります。

加害者側の任意保険会社が提案する入通院慰謝料額に納得できない、妥当かどうか分からないという方は、弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士であれば、治療内容や通院頻度などから、弁護士の基準に基づいた入通院慰謝料を計算し、増額可能性があれば弁護士の基準を前提に保険会社と交渉します!

後遺障害慰謝料について

後遺障害慰謝料は、基本的には後遺障害等級認定がなされたら請求できる慰謝料です。
後遺障害等級認定について詳しくはこちらをご覧ください。

症状固定とは?診断時期の目安や後遺障害認定手続を弁護士が解説

後遺障害慰謝料の相場の一覧表

後遺障害慰謝料について、自賠責の基準と弁護士の基準の差は次のとおりです。

※2020年4月1日以降に発生した事故の場合

後遺障害等級が上がるほど、自賠責の基準と弁護士の基準の差は大きくなります。
最も後遺障害等級の軽い14級であっても、その差は78万円です。
任意保険会社の基準は、各会社によって異なりますし、公表されていませんが、通常は自賠責保険の基準よりも高いものの、弁護士の基準には及びません。

任意保険会社が示談交渉当初から弁護士の基準に近い金額を提示することはあまりありません。
後遺障害等級認定をされるようなけがをした場合には、ご自身の等級で、弁護士の基準による後遺障害慰謝料はいくらなのかをしっかり把握したうえで、任意保険会社と交渉するようにしましょう。

自分で交渉することでストレスを感じたり、交渉自体うまくいかなかったりする場合もあります。そのような場合には、弁護士に一度ご相談下さい。

死亡慰謝料について

死亡慰謝料は、被害者が交通事故で死亡した場合に認められる慰謝料です。

(1)死亡慰謝料の相場の一覧表

死亡慰謝料についての自賠責の基準と弁護士の基準の差は、次のとおりです。

自賠責の基準弁護士の基準
被害者400万円被害者が一家の支柱である場合:2800万円

被害者が母親・配偶者である場合:2500万円

その他の場合:2000万~2500万円

被害者の家族の慰謝料請求権者が1名+550万円
被害者の家族の慰謝料請求権者が2名+650万円
被害者の家族の慰謝料請求権者が3名以上+750万円

※2020年4月1日以降に発生した事故の場合

※自賠責の基準で、被害者に扶養家族がいる場合は、上記金額に200万円が加算されます

※請求権者は被害者の父母・配偶者・子です

※弁護士の基準は、基本的にはご家族の慰謝料も含まれた金額です

例えば、交通事故により亡くなられた被害者が一家の支柱で、配偶者と子ども2人の扶養家族がいた場合、死亡慰謝料は、自賠責の基準と弁護士の基準では、次のような大きな差がでます。

死亡慰謝料は、自賠責の基準で計算すると、最も多額となるケースでも1350万円が限度で、弁護士の基準の2800万円とは大きな差があります。任意保険の基準は公開されていませんが、自賠責の基準より高くても、弁護士の基準には及ばないことがほとんどです。

(2)死亡慰謝料の実際の裁判例

死亡慰謝料は、被害者の職業や年齢などでそれほど大きくは変わりません。
死亡した当時、被害者が高齢であったり無職であったりしても、死亡慰謝料が基準から大きく外れることは基本的にはありません。
死亡した当時、被害者が高齢であったり無職であった場合、実際の裁判ではどの程度の慰謝料が認められているのか実際の裁判例をいくつかご紹介します。

被害者の年齢死亡慰謝料入通院慰謝料近親者慰謝料裁判年月日
91歳
男性
2100万円2万1000円
事故翌日死亡
子 95万円
孫 47万5000円
孫 66万5000円
(近所に居住)
大阪地裁
R2.6.18
87歳
男性
2100万円273万円
(事故後224日入院後、死亡)
孫 66万5000円
(近所に居住)
東京地裁
R2.2.21
65歳
男性
2300万円請求なし
(事故後5時間余後に死亡)
妻 200万円
子 100万円
神戸地裁
H29.12.20
82歳
女性
2000万円25万円
(事故後14日間入院後、死亡)
子 200万円神戸地裁
H28.5.18

(※全て無職の被害者の事案です)

(3)死亡慰謝料が相場よりも高額になったケース

また、次のようなケースでは、慰謝料が基準よりも高額になる可能性があります。

  • 相手方の対応があまりに不誠実
  • 事故態様が極めて悪質
    酒酔い運転
    医師から運転しないように言われていたのに運転した
    悪質なあおり運転
    ことさらに信号無視
    大幅なスピード違反 など

基準よりも慰謝料が高額になった実際の裁判例を、いくつかご紹介します。

慰謝料が高額となった特殊事情被害者の年齢・性別死亡慰謝料入通院慰謝料近親者慰謝料裁判年月日
時速30キロの速度超過
赤信号無視
60歳
男性
2500万円80万円
(事故後39日入院)
妻 400万円
子 100万円
京都地裁
H30.11.26
持病のてんかん発作による意識障害に陥ったまま運転40歳
男性
2700万円請求なし
(事故後1時間余後に死亡)
両親 各150万円大阪地裁
H29.9.29
時速85キロの速度超過30歳
男性
2400万円請求なし
(事故後1時間余後に死亡)
両親 各300万円
兄 200万円
高松地裁
H26.7.30

近親者の慰謝料は、被害者が死亡したときだけでなく、重篤な後遺障害が残る場合など、死亡したと同じくらいの精神的苦痛を被った場合についても認められます。
交通事故により被害者が重い障害を負ったにもかかわらず、保険会社が近親者慰謝料項目について触れない場合などは、弁護士にご相談ください。

交通事故の示談交渉で損をしないために

交通事故の被害でケガをし、治療をして日々の忙しい生活を送りながら、加えて適切な賠償を得られるように交渉することは大変なことです。

交渉に疲れて、任意保険会社の提案額に応じてしまうと、後で「もっともらえたのに損をしてしまった」と後悔することになりかねません。

交通事故の損害賠償の交渉では、被害者にとって一番高額となる基準で算定した額を主張する必要があります。通常それは、下のイメージ図のように弁護士の基準となります。

しかし、被害者が弁護士の基準で交渉しようと思っても、なかなか弁護士の基準で示談できることはありません。
弁護士に依頼した場合には、弁護士は、もらえる賠償額が一番多くなるように通常(被害者側の過失が大きくない場合)は、弁護士の基準をベースに交渉します。

その結果、弁護士の基準に近い金額で示談できることもよくあります。

示談前に、増額可能性があるのかどうか、一度弁護士に相談してみましょう。

【まとめ】慰謝料額は算定基準によって異なるので、最も高額になる基準で請求を!

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 交通事故の慰謝料には、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3種類がある。
  • 慰謝料の算定基準は3つあり、自賠責の基準、任意保険会社の基準、弁護士の基準のどれで計算するかによって相場が異なる。

交通事故の示談交渉で損をしないためには、示談前に、増額可能性がないか弁護士に相談し、示談交渉を依頼することを検討する。慰謝料の相場は基準によって異なり、交渉によっても増減することがあります。

今後の生活のために、適切な額の慰謝料を受け取り、後で後悔しないためにも、示談前に弁護士に相談するようにしましょう。

交通事故の被害に遭った方が、賠償金請求をアディーレ法律事務所にご相談・ご依頼いただいた場合、原則として手出しする弁護士費用はありません。

すなわち、弁護士費用特約が利用できない方の場合、相談料0円、着手金0円、報酬は、獲得できた賠償金からいただくという成功報酬制です(途中解約の場合など一部例外はあります)。

また、弁護士費用特約を利用する方の場合、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので、やはりお客様に手出しいただく弁護士費用は原則ありません。
※なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです。弁護士費用が、この上限額を超えた場合の取り扱いについては、各法律事務所へご確認ください。

(以上につき、2022年12月時点)

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