「ジャクソンテストって何?」
交通事故の被害に遭って初めて、「ジャクソンテスト」という言葉を聞いた人がほとんどでしょう。
ジャクソンテストとは、神経根の障害の検査のことで、むち打ち症による後遺障害等級認定を受けるために役立つ可能性があります。
また、むち打ち症の後遺障害等級に認定されるには、ジャクソンテスト以外にも重要なポイントがありますので、適切な後遺障害等級認定を受けるために、ぜひこの記事をご覧ください。
今回の記事では、次のことについて弁護士がご説明します。
- ジャクソンテストの検査方法と費用負担
- むち打ち症におけるジャクソンテストの必要性
- むち打ち症で後遺障害等級認定されるために必要なこと
東京大学法学部卒。アディーレ法律事務所では北千住支店の支店長として、交通事故、債務整理など、累計数千件の法律相談を対応した後、2024年より交通部門の統括者。法律を文字通りに使いこなすだけでなく、お客様ひとりひとりにベストな方法を提示することがモットー。第一東京弁護士会所属。
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ジャクソンテストの基礎知識
まずは、ジャクソンテストの概要と、スパーリングテストとの違いについてご説明します。
(1)ジャクソンテストとは?
ジャクソンテストとは、神経根に障害があるかを調べる方法のことで、交通事故のむち打ち症の症状を裏付けるための検査として用いられています。
ジャクソンテストは、次のような手順で行われます。
医師が椅子に座った被験者の後ろから、被験者の頭部を後ろに傾けながら圧迫する
この姿勢を取ることで、首から手にかけて走る神経根の出口である椎間孔(ついかんこう)の幅が狭くなる
骨の変形や椎間板ヘルニアなどによって椎間孔の幅が狭くなっている場合、肩や腕、手などにしびれや痛みが生じる
被験者にしびれや痛みが生じる場合は陽性、これらの症状がない場合は陰性となる
ジャクソンテストで得られた結果は、後遺障害診断書に記載されます。
(2)スパーリングテストとは?
似たような検査方法として、スパーリングテストというものもあります。
スパーリングテストとは、頚椎(頸部)の神経根障害を調べる検査のことで、むち打ち症の症状を裏付けるために用いられるという点で、ジャクソンテストと共通しています。
スパーリングテストは、医師が椅子に座った被験者の後ろから、被験者の頭部をしびれや痛みが出ている側(左右どちらか)に傾けながら、圧迫します。
ジャクソンテストと同様、肩から手にかけてしびれや痛みが生じれば陽性、なければ陰性となります。
ジャクソンテストを受ける方法と注意点
次に、ジャクソンテストを受ける方法と、検査費用についてご説明します。
(1)整形外科などの医療機関で検査を受ける
ジャクソンテストは、整形外科などの医療機関で検査することができます。
ジャクソンテストは医療器具を使用する検査ではありませんが、後遺障害診断書は医師が作成するため、整骨院に通っているのであれば、あらためて医療機関で検査を受ける必要があります。
そのため、なるべく最初から整形外科や総合病院を受診することをおすすめします。
むち打ち症の場合、最初から整骨院に通うケースもありますが、医療機関にかかったうえで、医師に整骨院への通院の許可を得た方が良いでしょう。
もっとも、整骨院への通院は保険会社が治療費として認めないケースが少なくないため、できるだけ医療機関に通うべきでしょう。
(2)ジャクソンテストの検査費用はどうなる?
ジャクソンテストの検査費用は、治療費の項目で、相手方の保険会社に請求できる可能性が高いです。
なお、健康保険でジャクソンテストを受けた場合、自己負担3割で1500円程度の支出になるようです。
むち打ち症の後遺障害等級認定とジャクソンテストの関係性
では、むち打ち症で後遺障害等級認定を受けるために、ジャクソンテストはどのように役立つのでしょうか。
(1)後遺障害等級認定とは?
そもそも後遺障害等級認定とは、交通事故で受傷した場合に、後遺症の症状によって等級を認定する制度です。
後遺障害等級認定されると、等級に応じた後遺障害慰謝料、逸失利益を加害者に請求できます。

むち打ち症の場合、12級13号、14級9号の後遺障害等級に認定される可能性があります。
それぞれの後遺障害の内容は次のようになります。
12級13号 | 14級9号 | |
---|---|---|
後遺障害の内容 | ・局部に「頑固な」神経症状を残すもの →(身体の一部分に他覚的所見が認められる神経症状(痛みやしびれ、めまいなど)のこと) つまり、MRIやレントゲンなど画像所見があるもの | ・局部に神経症状を残すもの →(身体の一部に他覚的所見は認められないものの、医学的に一応の説明がつく神経症状のこと) つまり、画像所見はないものの、ケガの内容や治療の経過から一応の説明がつくもの |
後遺障害等級認定について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
(2)むち打ち症におけるジャクソンテストの必要性
後遺障害等級に認定されるためには、MRIやレントゲンの画像所見など、基本的に他覚的所見が必要です。
しかし、むち打ち症の原因は、首周辺の筋肉や靱帯などの軟部組織の損傷ですが、軟部組織はX線の吸収率がほぼ同じになっており、撮影しても白と黒のコントラストがなく、画像による判別が難しいため、他覚的所見が得られにくいという特徴があります。
そのため、むち打ち症の自覚症状があるものの、画像で筋肉や靱帯の損傷が判別できず、他覚的所見がないと判断されるケースでは、ジャクソンテストなどによって神経学的所見を得る必要が生じてきます。
神経学的所見が認められると、14級9号に認定される可能性が高くなります。
12級13号は、レントゲンなどの他覚的所見が必要となりますが、補充的に神経学的検査を実施することで、12級13号の認定が受けやすくなる可能性もあります。
ただし、ジャクソンテストやスパーリングテストで陽性になったからといって、必ずしも後遺障害等級認定が受けられるとはかぎりません。
(3)むち打ち症による後遺障害等級認定で必要なこと
むち打ち症で後遺障害等級認定を受けるために必要なのは、他覚的所見・神経学的所見だけではありません。
他にも後遺障害等級認定を受けるために気を付けていただきたい点は次のとおりです。
(3-1)事故後すぐに病院で診察を受ける
事故直後は興奮状態にあることも多く、怪我をしていても痛みに気付かないことがあります。どこにも怪我はないと思っていても、むち打ち症の症状が現れるのは事故から数日経ってからというケースも少なくありません。
後遺障害等級認定を受けるためには、なるべく事故直後に病院に行き、検査と診察を受けることが大切です。
通院開始が遅れると、むち打ち症と交通事故との因果関係の存在を証明するのが難しくなってしまい、本来ならば認定された後遺障害等級が認定されなくなる可能性があるからです。
(3-2)ジャクソンテストで嘘をつかない
先述のとおり、ジャクソンテストはしびれや痛みの自己申告をもとに、陽性・陰性を判断する検査です。
したがって、本当は症状がなくても痛いと申告すれば、陽性だと判断してもらうことができるかもしれません。
しかし、そのような嘘は絶対につかないようにしましょう。
神経学的に、損傷を受けた神経と症状が出る部分は関連しているため、症状があると嘘をついた部位と、圧迫されている神経が異なる場合、(申告した嘘の)痛みは、むち打ち症と関連がないと判断される可能性があります。
後遺障害等級認定を受けられない可能性があるため、ジャクソンテストに限らず検査の際は、症状を正直に申告するようにしてください。
(3-3)自覚症状を医師に確実に伝える
後遺障害等級認定を受けるためには、後遺症による症状に一貫性があることが重要です。
むち打ち症による症状があるのであれば、医師に対しその症状を具体的かつ正しく、分かりやすく説明する必要があります。
自覚症状を客観的に説明するために、事故現場や車の写真などを提出すると、自覚症状の内容が医師に伝わりやすい場合があります。
(3-4)症状固定と診断されるまで通院する
後遺障害等級認定を受けるためには、それ以上治療を続けても改善の見込みがない「症状固定」と診断されたことが前提となります。
症状固定後は後遺障害慰謝料と逸失利益を請求できるようになります。軽微事故でのむち打ち症の場合は治療を始めてから1、2ヶ月程度、軽微でない事故の場合は、3~6ヶ月程度で症状固定と診断されるのが一般的です。
事故態様、症状の程度等によっては1年~1年半程度で症状固定と診断されることもあります。
ただし、症状固定の前に、保険会社が治療の打ち切りを打診してくるケースがあります。
保険会社としては、保険金の支払いを少なくしたいですし、過剰診療であることを疑っている場合もあるからです。
症状固定かどうかは医師が判断するため、保険会社に治療の打ち切りを打診されたとしても、治療を継続した方が良い場合もあります。
また、通院の間隔が1ヶ月以上空いてしまうと、保険会社が治療費として負担してくれないことがあるため、それより短い間隔での通院を心掛けた方が良いでしょう。
(もちろん、症状固定後、自覚症状がないのに無理に通院する必要はありません!)
症状固定について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
(3-5)後遺障害診断書に検査結果を正しく記載してもらう
ジャクソンテストやスパーリングテストを受けたら、その結果を後遺障害診断書にきちんと記載してもらうことが大切です。
後遺障害診断書は、後遺障害等級認定のための書類で、認定結果を左右する重要な資料であるためです。
医師によっては、後遺障害診断書の書き方に慣れておらず、後遺障害等級認定を受けるうえで不利になってしまう可能性があるため、後遺障害診断書をきちんと書いてもらうためにも、弁護士に依頼することをおすすめします。
後遺障害等級認定に精通した弁護士に依頼すれば、医師と連携して、後遺障害診断書を正確に作成するための手助けをしてくれます。
また、後遺障害等級認定を「被害者請求(※)」する際には、必要な検査の実施など、弁護士から認定に有利になるようなアドバイスをもらうことも期待できます。
※「後遺障害等級」の認定の申請には、「事前認定」と「被害者請求」の2つの方法があります。それぞれの違いは次のとおりです。

事前認定と被害者請求について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
後遺障害診断書について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
【まとめ】ジャクソンテストは、交通事故のむち打ち症の症状を裏付けるための検査方法として用いられる
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- ジャクソンテストは神経根の障害を調べる検査で、むち打ち症の神経学的所見を判断できる(スパーリングテストも同様の検査)
- むち打ち症は画像などの他覚的所見が見つからない場合があり、ジャクソンテストはむち打ち症の症状の裏付けになり得る
- すぐに病院で診察を受ける
- ジャクソンテストで嘘の症状を言わない
- 自覚症状を正確に伝える
- 症状固定まで通院する
- 後遺障害診断書を正しく書いてもらうには、後遺障害等級認定に精通する弁護士に依頼すると良い
交通事故でむち打ち症などの後遺障害が生じた場合、治療費のほかに慰謝料や逸失利益も請求することができます。
ただし、後遺障害等級認定によって認定された等級により、受け取れる金額は大きく異なることになります。
後遺障害等級認定や、保険会社の対応に疑問がある場合、一度弁護士に相談してみると良いでしょう。
交通事故の被害による賠償金請求をアディーレ法律事務所にご相談・ご依頼いただいた場合、原則として手出しする弁護士費用はありません。
すなわち、弁護士費用特約が利用できない方の場合、相談料0円、着手金0円、報酬は、獲得できた賠償金からいただくという成功報酬制です(途中解約の場合など一部例外はあります)。
また、弁護士費用特約を利用する方の場合、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので、やはりご相談者様・ご依頼者様に手出しいただく弁護士費用は原則ありません。
※なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです。
実際のケースでは、弁護士費用は、この上限内に収まることが多いため、ご相談者様、ご依頼者様は実質無料で弁護士に相談・依頼できることが多いです。弁護士費用が、この上限額を超えた場合の取り扱いについては、各弁護士事務所へご確認ください。
(以上につき、2024年9月時点)
交通事故の被害にあって賠償金請求のことでお悩みの場合は、交通事故の賠償金請求を得意とするアディーレ法律事務所にご相談ください。