2021年2月16日、東京地裁において、同性間の不倫も「不貞行為」にあたり、不倫相手に対して慰謝料請求を認める判決が言い渡されました。
これは画期的な判決となります。
そもそも、これまで同性間の不倫は、「不貞行為」にあたらないとする見解が一般的で、同性間の不倫に対しては不倫の慰謝料請求は難しいとして、断念せざるを得ない状況がありました。
しかし、同性間の不倫であっても「不貞行為」とする判決が出たため、「同性間の不倫だから」というだけの理由で、慰謝料請求をあきらめる必要はありません。
同性間の不倫に対して慰謝料請求を検討されている方は、慰謝料請求をする前に、同性間の不倫の慰謝料請求が認められた判決を知っておきましょう。
この記事では、次のことについて弁護士がくわしく解説します。
- 同性間の不倫が「不貞行為」として認められた判決の内容
- 同性間の不倫への慰謝料請求の実情
法政大学、及び学習院大学法科大学院卒。アディーレ法律事務所では、家事事件ドメイン(現:慰謝料請求部)にて、不貞の慰謝料請求、離婚、貞操権侵害その他の男女トラブルを一貫して担当。その後、慰謝料請求部門の統括者として広く男女問題に携わっており、日々ご依頼者様のお気持ちに寄り添えるよう心掛けている。第一東京弁護士会所属。
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「不貞行為」って何?
「不貞行為」とは、次のように定義されています。
配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいい、相手方の自由な意思にもとづくものであるか否かは問わない。
引用:最高裁判所第一小法廷判決昭和48年11月15日│裁判所 – Courts in Japan
あなたの夫(妻)が「不貞行為」を行っていた場合、あなたから、「不貞行為」を行った夫(妻)と不貞相手に対して、慰謝料請求をすることができます。
なお、「不貞行為」の発覚によって離婚に至らなかったとしても、慰謝料請求は認められます。
同性間の不倫を「不貞行為」と認めた判決、どういう内容?
ここで、同性間の不倫を「不貞行為」として認めた判決について説明します。
(1)事案の概要
男性は、妻とインターネットの出会い系サイトを通じて知り合った女性に対し、妻と性的関係をもったとして、慰謝料などを求めて損害賠償請求訴訟を提起しました。
男性は、妻が同性愛に関心があることについて理解し、女性と親しく付き合うことは許していましたが、性的関係を持つことまでは許していませんでした。
男性は、不貞行為は異性間に限るものではなく、同性同士の不倫であっても、夫婦共同生活の平和を損なうような性的な行為が存在すれば、不貞行為といえると主張しました。
対して、慰謝料を請求された女性は、不貞行為とは、異性との不倫に限られると主張しました。
(2)判決の内容(東京地方裁判所判決令和3年2月16日)
東京地裁は、「不貞行為」とは、「婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する蓋然性のある行為」であるとし、挿入行為を伴う性行為に限られず、「夫婦共同生活を破壊し得るような性行為類似行為」も含まれると判断しました。
そして、「同性同士の間で性行為あるいはその類似行為が行われた結果として、既存の夫婦共同生活が離婚の危機にさらされたり、離婚に至らないまでも形骸化するなど、婚姻共同生活の平穏が害される事態もまた想定される」とし、同性間の性行為類似行為について、「不貞行為」にあたると判断しました。
なお、東京地裁は、不倫相手である女性に対し、慰謝料など11万円を夫である男性に支払うように命ずる判決を下しましたが、男性は慰謝料が不十分であるとして控訴したとのことです。
同性間の不倫を「不貞行為」と認める今回の判決がどうして画期的なのか?
同性間の不倫を「不貞行為」として認める今回の判決が、画期的と言える理由についてご説明します。
これまで「不貞行為」は異性間の性的な行為に限定されるものであって、同性間の不倫は含まないとする考え方が一般的でした。
そのため、「不貞行為」を異性間に限るとする見解は、多様なパートナーの存在を前提とする現代にそぐわない現状がありましたが、同性間の不倫を「不貞行為」として、慰謝料請求を認めさせることは難しいと考えられていました。
そういった状況の中で、今回の判決は、異性間の不倫のみを「不貞行為」とする古い考えに一石を投じ、同性間の不倫も「不貞行為」として慰謝料請求の対象となる可能性を指ししめしたのです。
なお、今回の判決以外にも同性間の不倫に対して慰謝料請求を認めた裁判例(※補足参照)がありましたが、同性間の不倫を「不貞行為」であると認めるものではありませんでした。
【補足】同性間の不倫に対して慰謝料請求を認めた裁判例
<名古屋地方裁判所判決平成29年9月15日>
わかりやすくするために、妻については(仮称)X、夫については(仮称)Yとして説明します。
この事案は、Xが不倫相手である女性と性的関係を持ったことなどから婚姻関係は破綻の危機に瀕したとして、YがXの不倫相手の女性に対して慰謝料などを請求した事案でした。
⇒裁判所は、既婚者と知りながら肉体関係を有することは、同性であっても社会的相当性を逸脱した違法な行為で、不法行為に当たる判断しました。
その上で、不倫相手である女性がXと肉体関係を持ち、それをYが知ったことがXY夫婦の婚姻関係の破綻の決定的な原因となったことなどを考慮して、不倫相手である女性に対し、慰謝料100万円の支払いを命じました。
この判決が先ほどの事例と違うのは、同性間における性的な行為が「不貞行為」に当たると直接判断はしていない点です。
ただ、同性間の肉体関係は「不法行為」に当たると判断して、同性間の不倫についても慰謝料請求を認めています。
同性間の不倫を「不貞行為」とした判決が今後に与える影響とは?
今後、今回の判決をきっかけとして、同性間の不倫を「不貞行為」と判断する判決が出る可能性があります。
今回の判決があるからといって、今後、同性との不倫が必ず「不貞行為」と判断されるかというとそうとは言い切れません。ただし、今回の判決は、「不貞行為」は異性間の性的行為に限るとした従来の考え方に変化を求めるものになるでしょう。
同性間における不倫について詳しくはこちらの記事もご覧ください。
【まとめ】同性間の不倫を「不貞行為」とする地裁判決が出た|同性間の不倫も諦めずに慰謝料請求を!
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- これまで、同性間における不倫は「不貞行為」にあたらないとして、慰謝料請求をすることが難しいと考えられていた。
- 2021年2月、同性間における不倫を「不貞行為」として認めて、不倫相手に対して慰謝料の支払いを命じる判決が東京地裁で出た。
- 今回の判決により、「同性間の不倫だから」というだけの理由で慰謝料請求を諦める必要はなくなった。
配偶者が不倫をしたときに受けるショックは、大変なものです。精神的に不安定になり一晩中涙が止まらなかったり、不眠や胃痛など体調に影響したりすることもあります。
不倫相手に慰謝料を請求することは、精神的なけじめをつけるのに役立ったり、不倫相手との関係を断つことに役立ったりします。何より、精神的な苦痛を受けた方の法的な権利でもあります。
今回の判例を受けて、不倫相手が配偶者と同性だったとしても、不倫による慰謝料請求ができる可能性がありますので、「同性だから」という理由で慰謝料請求を諦める必要はありません。
アディーレ法律事務所では、不倫の慰謝料請求につき、相談料、着手金をいただかず、原則として成果があった場合のみ報酬をいただくという成功報酬制です。
原則として、この報酬は獲得した賠償金等からのお支払いとなりますので、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要がありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。
(以上につき、2022年2月時点)
不倫の慰謝料請求をお考えの方は、不倫の慰謝料請求を得意とするアディーレ法律事務所へご相談ください。