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医師の当直・宿直で残業代を請求したい!支払われる場合について解説

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kiriu_sakura

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

「当直や宿直が多くて大変だ。当直や宿直の最中にも、患者さんを診なければならないことも少なくないし、これでは通常の業務が延長されているのと変わらない…。
それなのに、当直や宿直だからといって病院は残業代を支払ってくれない。
周りの医師はそれが当たり前だと思っているみたいだけれど、本当に残業代がもらえないのが当然のことなのだろうか。
医師の当直・宿直勤務だと、法的に残業代がもらえないのか知りたい。もし残業代がもらえるのなら、しっかり残業代を請求したい!」

実は、医師の当直・宿直勤務でも、多くの場合で残業代をもらえる可能性があります。
当直・宿直勤務だからといって一律に残業代がもらいないという扱いは、間違った扱いである可能性が高いです。

この記事では、次のことについて弁護士が解説します。

  • 医師の「当直」「宿直」とは何か
  • 医師の当直・宿直は「労働時間」にあたるか
  • 医師の当直・宿直において労働基準法の適用が除外される場合
この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

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医師の「当直」「宿直」とは何か

「当直」とは、所定労働時間(定時)以外の時間に、緊急事態に備えるため病院内に待機し、緊急事態が発生した場合には、医師として最初に対応することが求められる勤務のことです。日中に行う当直が「日直」、泊まり込みで行う当直が「宿直」と呼ばれています。

「残業代」とは何か

雇用されている勤務医や研修医であれば、残業代をもらうことができます。
残業代には、次の3種類があります。

  • 時間外労働に対する割増賃金
  • 休日労働に対する割増賃金
  • 深夜労働に対する割増賃金

「時間外労働」とは、法定労働時間(1日8時間・週40時間の労働時間)を超えて労働することです。「休日労働」とは、週1日以上又は4週あたり4日以上の法定休日に労働することです。「深夜労働」とは、原則22~5時の時間帯に労働することです。

時間外労働・休日労働・深夜労働に対しては、それぞれ割増賃金(所定の割合以上の率で割り増した賃金)が支払われます。それぞれの割増賃金を総称して「残業代」と言います。

割増賃金やその割増率について、詳しくはこちらをご覧ください。

「割増賃金率」とは?2023年4月からの引き上げも併せて解説

当直・宿直は、所定労働時間(定時)以外の時間に行うものであるため、時間外労働に対する割増賃金が発生することが多いです。
特に、所定労働時間(定時)が8時間である医師は、当直・宿直をすれば時間外労働になり、割増賃金が発生する可能性があります。

また、宿直は泊まり込みで行うものなので、多くの場合深夜労働に対する割増賃金が発生します。

医師の当直・宿直は「労働時間」にあたるか

医師の当直・宿直が「労働時間」にあたれば、雇い主である病院は当直・宿直をした医師に対して賃金を支払わなければなりません。
また、当直・宿直が時間外労働や休日労働にあたるのであれば、法定の割増率による割増賃金を支払わなければなりません。

医師が行う当直や宿直は、「労働時間」にあたるの?
所定労働時間(定時)以外の時間に行うものだし、患者さんが来なければ仮眠することもあるから、労働時間にはあたらないような気もするけれど……。

医師の当直・宿直の時間も、基本的には「労働時間」にあたります!
労働時間にあたる以上、基本的には、当直・宿直に対しても残業代が支払われます。

医師の当直・宿直の時間が労働時間にあたることについて、ご説明します。

(1)「労働時間」にあたれば残業代がもらえる!「労働時間」の考え方とは?

始業から終業までの間に、はっきりと「労働している」とは言えないような時間があることがあります。
例えば、ある業務から次の業務までの間の待機時間や移動時間などが典型例です。

ある時間について残業代(割増賃金)を請求するためには、当然ですが、その時間が労働していると言える時間(労働時間)にあたる必要があります。

ある時間が「労働時間」にあたるかどうかは、客観的に見て、「労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものといえるか」という観点から判断します。
そして、「労働者の行為が使用者の指揮命令下にあるといえるか」は、それぞれの行為の内容や状況等から個別具体的に判断することとされています。

ここでは、当直・宿直勤務で行われる行為ごとに、簡単に労働時間にあたるかどうかを説明します。

(2)医療行為などを行った時間

当直・宿直勤務の最中でも、必要に応じて、自分の所属する診療科はもちろんそれ以外の患者に対しても医療行為を行わなければならないことがあります。
このような医療行為を行った時間は、明らかに使用者の指揮命令下で本来なすべき労働に従事していると言えるため、労働時間にあたります。

さらに、通常とは異なり医療行為以外の事務的な業務を行うこともあります。
このような通常と異なる事務的な業務も、それが当直・宿直の勤務時に行うことが予定されているのであれば、この時間も労働時間にあたります。

このため、当直・宿直勤務の最中に医療行為やそれ以外の予定された事務的業務を行った時間については、残業代をもらうことができます。

(3)何もしないで待っている時間・仮眠時間

医師の当直・宿直勤務の時間中には、常に医療行為などの仕事をしているというわけではなく、何もしないで待っている時間や仮眠時間もあります。
当直・宿直勤務中に何もしないで待っている時間や仮眠時間があり、結果的に医療行為等を行わないで当直・宿直を終えた場合に、それらの時間を労働時間として扱うことができるかが問題となります。

たしかに、何もしないで待っている時間には、医療行為などといった業務そのものをしてはおりません。
しかし、通常、医師の当直・宿直は、自主的に行われているのではなく、病院の指示に従って行われるものです。

また、何もしないで待っている時間は、当直・宿直中に何らかの対応が必要となる事態に備えるための時間であり、休憩時間とは全く異なるものです。

何らかの対応をする頻度が余りにも少なく、皆無に等しいという事情でもない限り、医師の当直・宿直勤務中に何もしないで待っている時間なども、労働から解放されているとはいえず、使用者からの業務命令に基づくものであるとして、使用者の指揮命令下に置かれている時間であるというべきです。
したがって、当直・宿直勤務中に何もしないで待っている時間なども、労働時間にあたるといえるのです。

当直・宿直勤務の時間中に何もしないで待っている時間なども労働時間にあたる以上、この時間についても、残業代をもらうことができます。

このように、当直・宿直勤務の時間も労働時間にあたるとするのが一般的な理解です。
これに対して、自宅などで待機しつつ病院からの呼び出しを受けてから出勤するオンコール当番勤務(いわゆる「宅直」)は、当直・宿直とは異なり、勤務時間外であって自宅で待機していることから、労働時間とは言えないとされる可能性が高まります(必ず労働時間性が否定されるわけではありません)。

(4)不活動仮眠時間

当直・宿直勤務のうち、夜間の時間帯に行う勤務であれば、当直・宿直勤務時間中に仮眠時間が設定されていることがあります。

仮眠時間として設定されている時間帯であっても、実際に必要に応じて医療行為などの業務を行ったのであれば、当然その時間は労働時間に含まれます。
これに対して、実際にそのような業務を行っていない時間帯(不活動仮眠時間)についても労働時間であると言えるかが、問題とされることがあります。

このような不活動仮眠時間であっても、基本的には労働時間と考えることができます。
なぜなら、不活動仮眠時間中であっても労働者が完全に労働から解放されているわけではないからです。
不活動仮眠時間中であっても、必要に応じて呼び出しを受ければ医療行為などを行うなどの義務を負っているのが通常です。
このような義務を負っている以上は、医師が労働から完全に解放されているとは言えません。
このため、医師が使用者の指揮命令下に置かれたままであると評価でき、不活動仮眠時間も労働時間に含まれると考えられるのです。

労働時間にあたるのであれば、不活動仮眠時間であっても、残業代をもらうことができます。

「不活動仮眠時間であれば一切業務に応じなくても良い」という実態があるのであれば、そのような不活動仮眠時間は労働時間に含まれないとも考えられます。
しかし、通常は、当直・宿直中である以上、必要に応じて医療行為などを行わなければならないとされています。
そのため、一般的には、不活動仮眠時間は労働時間にあたると考えられるでしょう。

医師の当直・宿直において労働基準法の適用が除外される場合

労働時間に該当する場合であっても、次の条件を満たす場合には、労働時間や休日などに関する労働基準法の規定は適用されません(労働基準法41条3号)。

  • 「監視又は断続的労働」に該当すること
  • 労働基準監督署長の許可を受けていること

「労働時間や休日などに関する労働基準法の規定の適用がされない」とは、すなわち、時間外労働や休日労働にあたる労働をしても残業代や休日手当がもらえないということです。

さらに、「宿直又は日直の勤務で断続的な業務」のうち労働基準監督署長の許可を受けたものについても、労働基準法の規定が適用されません(労働基準法施行規則23条)。

このことから、医師の当直・宿直勤務もこの「宿直又は日直の勤務で断続的な業務」にあたれば、労働基準監督署長の許可がある限り、残業代や休日手当は支払われません。

なお、深夜労働に対する割増賃金は、このような労働基準監督署長の許可があっても、支払わなければならないとされています。

(1)労働基準監督署長の許可の基準

「宿直又は日直の勤務で断続的な業務」にあたり、労働基準監督署長の許可を受ければ、残業代をもらえないのか。とすると、病院は許可を取るだろうし、結局ほとんどの場合で残業代をもらえないってことなのかな。

いいえ、そんなことはありません。
この許可を得ることは簡単なことではなく、許可の対象もあまり幅広くないからです。

医師の当直・宿直勤務が「宿直又は日直の勤務で断続的な業務」にあたるものとして許可を受けるためには、次にご説明する基準を満たしている必要があります(昭和22年9月13日発基第17号、昭和63年3月14日基発150号)。

基準の概要は、次のとおりです。

【勤務の態様について】

  1. 基本的に、ほとんど労働をする必要がない勤務だけであるもの
  2. 原則として、通常の労働を続けることは許されないこと
  3. 通常の勤務時間の拘束から完全に解放されたものであり、従事する業務は一般の宿日直業務か、又は次のような特殊な措置を必要としない軽度又は短時間の業務に限られること
  • 医師が、注意を必要とする少数の患者の状態が変動することに対応するため、問診などによる診察などや、看護師に対する指示・確認を行うこと
  • 医師が、外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間において、少数の軽症の外来患者への対応やかかりつけ患者の状態が変動することに対応するため、問診等による診察等や、看護師に対する指示・確認を行うこと

参考:断続的な宿直又は日直勤務に従事する者の労働時間等に関する規定の適用除外許可申請について|厚生労働省 岩手労働局

このような基準からすれば、通常の勤務時間と同じような形で業務に従事することが一般的であると判断されるものについては、許可を受けることができません。

宿日直の中で通常の診療業務に従事することが一般的であれば、許可を受けることができません。
そのような場合には、原則通り残業代をもらえるということになります。

(2)労働基準監督署長の許可がない場合

ここまででご説明したとおり、日直・宿直勤務に対して残業代を払わなくてもよくなるのは、あくまでも労働基準監督署長の許可がある場合です。
したがって、労働基準監督署長の許可がない限りは、日直・宿直勤務の時間に対しては残業代が支払われなければなりません。

もしも病院側から「断続的な宿日直勤務であり労働基準法の規定は適用されない」との反論がされた場合には、まずは労働基準監督署長の許可があるかどうかを確認しましょう。

(3)労働基準監督署長の許可がある場合

適法に取得された労働基準監督署長の許可がある場合には、基本的には労働基準法の適用が除外される効果があるということになります。

もっとも、たとえ労働基準監督署長の許可がある場合であっても、なお残業代がもらえる場合があります。
それは、当直・宿直勤務が、実態として見ると、断続的な宿日直勤務の基準を満たさない場合(例えば、通常の診療業務が常にある場合など)です。
このような場合には、労働基準法の適用が除外されません。

残業代がもらえると主張する医師の側としては、当直・宿直勤務中の実際の働き方などについて、通常の診療業務と変わらないなどと、具体的に主張し、証拠で明らかにする(立証)ことになります。
このような主張・立証がうまくいけば、労働基準監督署長の許可がある場合であっても、残業代をもらうことができる可能性があります。

【まとめ】医師の当直・宿直も残業代請求できる場合がある

この記事のまとめは次のとおりです。

  • たとえ医師(勤務医や研修医)でも、雇用されていれば残業代をもらうことができる。
  • 当直・宿直をした場合には、時間外労働に対する割増賃金や深夜労働に対する割増賃金をもらえる可能性がある。
  • 医師の当直・宿直は、基本的には労働時間にあたるので、残業代をもらうことができる。
    不活動仮眠時間についても、完全に労働から解放されているのでない限りは、労働時間として残業代がもらえる可能性がある。
  • 医師の当直・宿直が、「宿直又は日直の勤務で断続的な業務」のうち労働基準監督署長の許可を受けたものにあたる場合には、残業代がもらえないことがある。しかし、ほとんど労働をする必要がない勤務であることなどの基準を満たさなければ許可は得られないため、許可がないことも多い。

医師の当直・宿直勤務で残業代がもらえないという悩みを抱えている方は多いです。
なかには、それが当たり前だと思ってしまっている方も多くいます。
ですが、ここまででご説明したように、当直・宿直勤務でも残業代がもらえる場合は多くあります。

せっかく当直・宿直勤務という労働をしたのに、その分の残業代がもらえないというのは、なんだかおかしなことではないでしょうか。
医師としての職責を果たすことと、残業代をきっちりと請求することとは、決して矛盾することではありません。
当直・宿直勤務をした分の残業代がもらえていないのであれば、しっかりと残業代を請求しましょう。

アディーレ法律事務所は、残業代請求に関し、相談料、着手金ともにいただかず、原則として成果があった場合のみを報酬をいただくという成功報酬制です。
そして、原則として、この報酬は獲得した残業代からお支払いとなり、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。
※以上につき、2022年11月時点

残業代請求でお悩みの方は、残業代請求を得意とするアディーレ法律事務所へご相談ください。

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